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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
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おはようございます、今日は駄犬くんのお誕生日(おめでとう)なのに、そんなことは全くお構い無しな、大地信者の氷渡マニア・麻咲です。
あ、もう忘れられてるかもしれないので確認しておきますが、私の最萌は大地先輩ですよ。笑。
何しろ今携帯の着うたが「大地讃頌」ですから(←今でもこれ、中学校で唄うのかな? 笑)。
ただ大地先輩のことを考えると、「ああ……星奏学院祭(涙)」ってなるので、今氷渡に逃避してるのかもしれません。笑。
昨日の公式の更新見る限り、星奏学院祭の追加キャストもどうやら打ち止めっぽくて、ショックだったのですが、まあ、ナレーションとCDだけでも大地分をがっつり補給したいと思いました。汗。
あとイベントの前に、追加シナリオの配信がありますよねー。
どうやら4校オールキャラ総出演のようですが……大丈夫、氷渡くんの出番には最初から期待してません。もちろんスクールシリーズも。笑。
コルダ3アンコールが出たとして、芹沢くんが攻略出来るようになる可能性が50なら、氷渡は3くらい? 多すぎますかね。笑笑。
そうそう、拍手コメントも頂いていた芹沢の名前の件ですが、名字にもちゃんと意味があったんですよ。
メモリアルブックによれば、準惑星の「セレス」をもじっているみたいですよ。
モチーフからして、やっぱり、他校のサブキャラより格上な気がする……もうメイン昇格内定のような気がしてきましたよ。いいなー。
さて、前書きが長くなりましたが、本題です。
前作、前々作と、拍手&コメントを下さった皆様、本当にありがとうございますm(__)m
世の中に、氷渡×かなでの需要がこれだけあったのか、という驚きと、氷渡×かなで書いてるやつはそんなに少ないのか、という納得。笑。
何よりも、うちのSSを読んでから氷渡が好きになったとか、興味が湧いたとか、オトしたくなった……という方が少なからずいらっしゃるのが最高に嬉しいことですね。
そして、そんな暖かい言葉に支えられ、また書いてしまいました。笑。
今回は【恋の音 ♪♪♪】のイベントという体で、予告通り「ドルチェ」です。笑。
「ドルチェ」なので、前回とは異なり、主要な人物はかなでと氷渡だけです。
……一応、糖度は今までで一番高い、と、思います、多分(自信ないのかよ)。
今回も氷渡×かなでシリーズ既読前提で、ゲーム本編ネタバレありです。
おっけー、な方は「つづき」からどうぞ。
それではまた今夜、反省会でお会いしましょう。
あ、もう忘れられてるかもしれないので確認しておきますが、私の最萌は大地先輩ですよ。笑。
何しろ今携帯の着うたが「大地讃頌」ですから(←今でもこれ、中学校で唄うのかな? 笑)。
ただ大地先輩のことを考えると、「ああ……星奏学院祭(涙)」ってなるので、今氷渡に逃避してるのかもしれません。笑。
昨日の公式の更新見る限り、星奏学院祭の追加キャストもどうやら打ち止めっぽくて、ショックだったのですが、まあ、ナレーションとCDだけでも大地分をがっつり補給したいと思いました。汗。
あとイベントの前に、追加シナリオの配信がありますよねー。
どうやら4校オールキャラ総出演のようですが……大丈夫、氷渡くんの出番には最初から期待してません。もちろんスクールシリーズも。笑。
コルダ3アンコールが出たとして、芹沢くんが攻略出来るようになる可能性が50なら、氷渡は3くらい? 多すぎますかね。笑笑。
そうそう、拍手コメントも頂いていた芹沢の名前の件ですが、名字にもちゃんと意味があったんですよ。
メモリアルブックによれば、準惑星の「セレス」をもじっているみたいですよ。
モチーフからして、やっぱり、他校のサブキャラより格上な気がする……もうメイン昇格内定のような気がしてきましたよ。いいなー。
さて、前書きが長くなりましたが、本題です。
前作、前々作と、拍手&コメントを下さった皆様、本当にありがとうございますm(__)m
世の中に、氷渡×かなでの需要がこれだけあったのか、という驚きと、氷渡×かなで書いてるやつはそんなに少ないのか、という納得。笑。
何よりも、うちのSSを読んでから氷渡が好きになったとか、興味が湧いたとか、オトしたくなった……という方が少なからずいらっしゃるのが最高に嬉しいことですね。
そして、そんな暖かい言葉に支えられ、また書いてしまいました。笑。
今回は【恋の音 ♪♪♪】のイベントという体で、予告通り「ドルチェ」です。笑。
「ドルチェ」なので、前回とは異なり、主要な人物はかなでと氷渡だけです。
……一応、糖度は今までで一番高い、と、思います、多分(自信ないのかよ)。
今回も氷渡×かなでシリーズ既読前提で、ゲーム本編ネタバレありです。
おっけー、な方は「つづき」からどうぞ。
それではまた今夜、反省会でお会いしましょう。
「うーん……どうしようかなー……」
寮に帰るつもりで人の流れに逆流しようとしたのは、間違いだったかもしれない。
会場に向かって押し寄せる人の波によって、その一帯はほとんどラッシュアワーの満員電車のような有り様で、牛歩どころかナメクジほどの速さでしか前に進めない。
みんなとははぐれちゃうし。
携帯の電池は切れちゃうし。
帰るにも帰れない状態だし。
八方塞がりだなー……と、かなでは溜め息をついた。
その時。
「……え?」
突然だった。
人の波がもたらす圧力よりも更に強い力で、かなでは拘束されていた。
後ろから回された腕が強い意志を持って、かなでをしっかり捕らえている。
「振り向くな」
後頭部に囁きかけられた声は、かなでの知っているものだ。
「氷渡、くん……?」
「……痛い思いをしたくなかったら、大人しくしていろ」
「え? きゃっ……」
両足が地面から少し、浮いた。
【 Survive - 2nd 】
人の比較的少ない壁際に移動した後、ようやく地面には足がついたが、相変わらず、「振り向く」ことは許されていない。
かなでは、言われた通り大人しく、それが終わるのを待った。
「……もういい。取れた」
その言葉に、ようやくかなでは安堵して、くるりと身を翻す。
「ありがとう! 氷渡くん♪」
「……別に。絡まったままじゃ、俺だって動けない」
すれ違い様に、氷渡のつけていたシルバーアクセサリーに、大して長くもないかなでの髪が絡まってしまったのは、ある意味奇跡的な出来事だったのかもしれない。
こんな広い場所で、こんなに人がいる中、すれ違えたことすら凄いことだというのに。
「でも、ちょっと前の氷渡くんなら気にしないで私の髪引き千切ってたでしょ?」
「……多分、そうだろうな」
複雑な表情を浮かべる氷渡に、かなでは、無事に危機を脱した自分の髪に触れながら、にこっと微笑みかけてみせる。
「シャンプー、お揃いにしたのバレちゃったかなー?」
「っ……」
リングを2つつけた左手が、こつん、と軽く、かなでの頭のてっぺんを打つ。
「……阿呆」
「あははっ、怒られちゃった」
初めて会った時は、すごく感じの悪い人だなー、と思った。
陰険な人だと思ったことも、可哀想な人だと思ったことも、怖いと思ったこともあって。
まさかこんなふうに、道端で顔を合わせて、ふざけたり出来る関係になるとは思ってなかった。
それが今、とても、嬉しい。
「ねえ氷渡くん、せっかくだから一緒に……」
「花火見物しようよ」と言おうとした刹那、少し離れたところから、聞こえてきた声があった。
「……おいあれ、室内楽部の氷渡じゃないか……?」
「……他校の女子とデートなんて、根暗そうな顔してやることはやってんだな」
一体何故なのだろう……?
こんなに賑やかな場所なのに、好ましくない言葉ほどはっきり耳に響いてくるのは……。
「……まだ大会中だってのに余裕だよなー」
「……バーカ、あいつもうレギュラーじゃねえだろ」
「……そういやそうだったか。冥加玲士の後ろにくっついて、さんざんデカイ顔してたのに、あっさり切られるとか、マジで笑えるよな」
「……それでまだ普通に部に顔出してるってんだから呆れるぜ……俺なら恥ずかしくてとても無理だね」
「……くくく。だよなあ……」
聞こえよがしな嘲笑。
隠そうとしない悪意。
他者を傷つける意図を持って紡がれる言葉。
ようやく塞がった傷痕をえぐるような言葉。
「そんな言い方って……!」
ほとんど弾かれるように、声のほうに一歩歩き出したかなでの肩を、氷渡の手が掴んだ。
「……別にいい」
「良くないよ……!」
「……間違ったことは言われてない」
そう言い切った氷渡の声音も、表情も、実に落ち着いたものだった。
プライドが高く、傷つきやすい氷渡が、あんなことを言われて、平気でいられるわけがないと思っていたかなでは、正直、驚いていた。
「なんか、氷渡くんじゃないみたい……」
「……あんたも結構酷いことを平然と言うよな」
「あ、ごめん……そういうつもりじゃなかったんだけど」
「……わかってる」
虚勢でもなんでもなく、氷渡はどこまでも冷静で、穏やかな様子だった。
そして。
「そんなことよりいいのかよ」
「え?何が?」
「ぼーっとしてると終わっちまうだろ、花火が」
「あ」
確かに、さっきからもう幾つも幾つも夜空に大輪の花が咲いている。
そういえば、氷渡を誘おうとしていたのだということを思い出したかなでが、再度切り出そうとしたその時、先に氷渡のほうが口を開いた。
「……人が来なくて、花火が良く見えそうないい場所を知ってる……って言ったら、あんたついて来るか?」
「そこ、気を付けろ……?」
「うん、大丈夫」
開いた携帯電話のディスプレイを灯りにして、真っ暗な闇の中、いくつかの障害物をくぐり抜ける。
ギシギシと、軋んで悲鳴を上げる階段を慎重に登って、登って、登って……一番上までたどり着くと、氷渡は、
「ちょっと下がってろ」
と、かなでに指示した後で、目の前の錆び付いた扉を、力一杯、蹴った。
ガシャン、と重い音を立てて扉が開き、目の前が開けた瞬間、ドン、と音を立てて、ちょうど大きな丸い花が、上空に大きく開いた。
「すごい……!!」
かなでは感嘆の声を上げながら、扉から飛び出した。
「思った通り、いい穴場だったな」
その後ろから、制服についた埃を軽く払いながら、ゆっくり氷渡が出て来る。
「“薄汚いねずみのすみか”も、案外捨てたもんじゃないかもな」
「あはは、そーだね」
そこは、2人にとっては因縁の場所ともいえる、あの廃ビルの屋上だった。
みなとみらいからさほど離れていない、大桟橋の側にあるこのビルは、周りに背の高い建物が少ないこともあって、本当に遠くまで、よく見渡すことができたのだ。
2人は、花火が一番よく見える位置に並んで、転落防止の柵に身体を預けながら、しばらくは無言のまま、空を見上げていた。
そのうちに、口を開いたのは氷渡だった。
「あんた、ストックホルム症候群とか、リマ症候群って言葉知ってるか?」
「すとっく……何?」
「知らなきゃ別にいい」
「えーーっ、なになに? 気になるよー」
「だったら後で自分で調べるんだな」
そう言った後、氷渡はほんの少し押し黙り、そしてまた口を開いた。
「……本当は誰と、見たかったんだ?」
「え?」
「……携帯、電池が切れてなかったら誰かに連絡するつもりだったんだろ?」
空を見上げたまま問い掛ける、その横顔をかなでは見つめた。
右目を隠す銀髪のせいで、こちらから氷渡の表情を察することはできない。
問い掛けにかなでが答えるのを待たず、氷渡は更に言葉を紡ぎ出す。
「俺は……大丈夫だ。もう、あんたは心配しなくていい」
確かに、その通りなのだろう。
今の氷渡はとても安定しているように見える。
挫折を乗り越えて、過ちを受け入れて、ちゃんと前を向いている。
もう一度チェリストとして、一からやり直す覚悟で室内楽部の合同練習にもちゃんと出るようになったし、七海や天宮ともそれなりにうまくやっているようだ。
すぐには難しくても、きっといつか他の生徒にもわかってもらえる。
氷渡貴史は、変わった。昔とは違うのだと。
しかし、どうしてなのか。
今、かなでの心は、安堵とは真逆のところで震えている。
心配しなくていい、というその言葉が、ひどく突き放したものに思えた。
それはまるで、決別の言葉。
「私が……氷渡くんを心配するのって、迷惑……なの、かな?」
心の震えが声にも伝わり、それに気付いた氷渡が、振り返った。
「違う……ただ、俺は」
心無しか、氷渡の声まで震えている。
「……俺はあんた以外と、一緒に花火を見たいとは思わない。……だけど、あんたはそうじゃないだろ」
言われた言葉の意味が一瞬では理解出来ず、かなではただ氷渡の顔を凝視していた。
「それがどんな意味だとしても、あんたが俺を気に掛けて、救おうとしてくれたことは……嬉しかった。
だからこそ……もう、いい」
あんなに酷い悪意に晒されても顔色を変えなかった氷渡が、このまま泣き出してしまうのではないかと思うくらい、張り詰めた表情をしていた。
「……これ以上近付いたら、あんたを、俺だけのものにしたくなる……だからもう、俺に構うな……小日向」
その表情、その言葉、その震え……全てがかなでの胸にじんわりと響く。
チェロの奏でる、温かい低音のようにゆっくりと染み渡っていく。
かなでは、目の前の柵をぐっと強く掴んで、口を開いた。
「氷渡くん!……私は」
その瞬間。
ガガッ、という鈍い異音が響いたかと思うと、
「え……?」
かなでの身体は大きく前に傾いた。
「……小日向っ!?」
スローモーションのようだった。
しっかり握り締めた柵のの両端が、無惨にへし折れているのが、見えた。
何の気なしに体重を預けていたそれは、先程の階段同様、老朽化して錆びていたのだ。
そして、柵だった鉄柱ごしに、真下にぱっくり口を開けた暗闇も、よく見えた。
ふわっと身体が浮く。
落ちる。
落ちてしまう。
落ちたら終わり?
ああ。神様。
もうちょっとだけ待ってくれればよかったのに。
終わってしまう前に、伝えさせてくれればよかったのに。
ギュッとつぶった目の端を、温かい雫が伝った。
「あれ……?」
終わって、いない。
どこも、痛くない。
かなではゆっくりと目を開けた。
どうなってしまったんだろう。
屋上の柵が壊れて、落下したのはわかる。
「終わり」を覚悟した直後から、一瞬意識が飛んでしまって、何が起きたのかすぐにはわからなかった。
目を開けて、最初に目に入ったのは、見知ったデザインのシルバーのクロスだった。
「……あ……」
その時ようやく、自分が落ちた場所が、固いコンクリートの上でも、冷たい土の上でもないことに気付いた。
かなでを受け止めていたのは氷渡だった。
「氷渡くん! 氷渡くん……!!」
呼び掛けたが、しっかりかなでを抱き留めた格好で、氷渡は目を閉じ、微動だにしない。
かなでは焦って頭上を見上げた。
階下のベランダのひさしに引っ掛かったおかげで、地上まで落下せずには済んだようだが、それでもそれなりに高さはある。
打ち所が悪かったら……??
自分の血の気が引く音が聞こえた気がした。
「っ、氷渡くんっ、起きてっ、死んじゃやだーーっ!!」
こつん。
頭のてっぺんに固いものが当たった。
「……阿呆。顔、近すぎる」
はっとして、少し頭を持ち上げると、とんでもない近距離で視線が交わる。
「あ、ご、ごめん」
かなでは慌てて少し離れた。
「……大丈、夫?」
「……軽い脳震盪だ。あんたは……無事らしいな」
「……」
「……どうした?」
「……氷渡くんが微笑んでるの、初めて見た」
「……笑ってたか?俺」
氷渡は溜め息をついて、帽子の上から頭をかいた。
「……あんた、何人分の“心臓”になる気だよ」
「え?」
「何でもない……終わったな、花火」
いつの間にか静まり返った夜の中。
かなでは、はっと我に返る。
伝えたいことがあったのだった。
「氷渡くん、私」
しかし。
「明日からしばらく、会うの、よさないか?」
遮るように氷渡が告げた。
「一応俺も天音の一員だしな」
「そう、だね……」
氷渡は正しい。
けれど、伝えそびれた言葉がわだかまって、かなでの息はつまりそうだった。
《END》
寮に帰るつもりで人の流れに逆流しようとしたのは、間違いだったかもしれない。
会場に向かって押し寄せる人の波によって、その一帯はほとんどラッシュアワーの満員電車のような有り様で、牛歩どころかナメクジほどの速さでしか前に進めない。
みんなとははぐれちゃうし。
携帯の電池は切れちゃうし。
帰るにも帰れない状態だし。
八方塞がりだなー……と、かなでは溜め息をついた。
その時。
「……え?」
突然だった。
人の波がもたらす圧力よりも更に強い力で、かなでは拘束されていた。
後ろから回された腕が強い意志を持って、かなでをしっかり捕らえている。
「振り向くな」
後頭部に囁きかけられた声は、かなでの知っているものだ。
「氷渡、くん……?」
「……痛い思いをしたくなかったら、大人しくしていろ」
「え? きゃっ……」
両足が地面から少し、浮いた。
【 Survive - 2nd 】
人の比較的少ない壁際に移動した後、ようやく地面には足がついたが、相変わらず、「振り向く」ことは許されていない。
かなでは、言われた通り大人しく、それが終わるのを待った。
「……もういい。取れた」
その言葉に、ようやくかなでは安堵して、くるりと身を翻す。
「ありがとう! 氷渡くん♪」
「……別に。絡まったままじゃ、俺だって動けない」
すれ違い様に、氷渡のつけていたシルバーアクセサリーに、大して長くもないかなでの髪が絡まってしまったのは、ある意味奇跡的な出来事だったのかもしれない。
こんな広い場所で、こんなに人がいる中、すれ違えたことすら凄いことだというのに。
「でも、ちょっと前の氷渡くんなら気にしないで私の髪引き千切ってたでしょ?」
「……多分、そうだろうな」
複雑な表情を浮かべる氷渡に、かなでは、無事に危機を脱した自分の髪に触れながら、にこっと微笑みかけてみせる。
「シャンプー、お揃いにしたのバレちゃったかなー?」
「っ……」
リングを2つつけた左手が、こつん、と軽く、かなでの頭のてっぺんを打つ。
「……阿呆」
「あははっ、怒られちゃった」
初めて会った時は、すごく感じの悪い人だなー、と思った。
陰険な人だと思ったことも、可哀想な人だと思ったことも、怖いと思ったこともあって。
まさかこんなふうに、道端で顔を合わせて、ふざけたり出来る関係になるとは思ってなかった。
それが今、とても、嬉しい。
「ねえ氷渡くん、せっかくだから一緒に……」
「花火見物しようよ」と言おうとした刹那、少し離れたところから、聞こえてきた声があった。
「……おいあれ、室内楽部の氷渡じゃないか……?」
「……他校の女子とデートなんて、根暗そうな顔してやることはやってんだな」
一体何故なのだろう……?
こんなに賑やかな場所なのに、好ましくない言葉ほどはっきり耳に響いてくるのは……。
「……まだ大会中だってのに余裕だよなー」
「……バーカ、あいつもうレギュラーじゃねえだろ」
「……そういやそうだったか。冥加玲士の後ろにくっついて、さんざんデカイ顔してたのに、あっさり切られるとか、マジで笑えるよな」
「……それでまだ普通に部に顔出してるってんだから呆れるぜ……俺なら恥ずかしくてとても無理だね」
「……くくく。だよなあ……」
聞こえよがしな嘲笑。
隠そうとしない悪意。
他者を傷つける意図を持って紡がれる言葉。
ようやく塞がった傷痕をえぐるような言葉。
「そんな言い方って……!」
ほとんど弾かれるように、声のほうに一歩歩き出したかなでの肩を、氷渡の手が掴んだ。
「……別にいい」
「良くないよ……!」
「……間違ったことは言われてない」
そう言い切った氷渡の声音も、表情も、実に落ち着いたものだった。
プライドが高く、傷つきやすい氷渡が、あんなことを言われて、平気でいられるわけがないと思っていたかなでは、正直、驚いていた。
「なんか、氷渡くんじゃないみたい……」
「……あんたも結構酷いことを平然と言うよな」
「あ、ごめん……そういうつもりじゃなかったんだけど」
「……わかってる」
虚勢でもなんでもなく、氷渡はどこまでも冷静で、穏やかな様子だった。
そして。
「そんなことよりいいのかよ」
「え?何が?」
「ぼーっとしてると終わっちまうだろ、花火が」
「あ」
確かに、さっきからもう幾つも幾つも夜空に大輪の花が咲いている。
そういえば、氷渡を誘おうとしていたのだということを思い出したかなでが、再度切り出そうとしたその時、先に氷渡のほうが口を開いた。
「……人が来なくて、花火が良く見えそうないい場所を知ってる……って言ったら、あんたついて来るか?」
「そこ、気を付けろ……?」
「うん、大丈夫」
開いた携帯電話のディスプレイを灯りにして、真っ暗な闇の中、いくつかの障害物をくぐり抜ける。
ギシギシと、軋んで悲鳴を上げる階段を慎重に登って、登って、登って……一番上までたどり着くと、氷渡は、
「ちょっと下がってろ」
と、かなでに指示した後で、目の前の錆び付いた扉を、力一杯、蹴った。
ガシャン、と重い音を立てて扉が開き、目の前が開けた瞬間、ドン、と音を立てて、ちょうど大きな丸い花が、上空に大きく開いた。
「すごい……!!」
かなでは感嘆の声を上げながら、扉から飛び出した。
「思った通り、いい穴場だったな」
その後ろから、制服についた埃を軽く払いながら、ゆっくり氷渡が出て来る。
「“薄汚いねずみのすみか”も、案外捨てたもんじゃないかもな」
「あはは、そーだね」
そこは、2人にとっては因縁の場所ともいえる、あの廃ビルの屋上だった。
みなとみらいからさほど離れていない、大桟橋の側にあるこのビルは、周りに背の高い建物が少ないこともあって、本当に遠くまで、よく見渡すことができたのだ。
2人は、花火が一番よく見える位置に並んで、転落防止の柵に身体を預けながら、しばらくは無言のまま、空を見上げていた。
そのうちに、口を開いたのは氷渡だった。
「あんた、ストックホルム症候群とか、リマ症候群って言葉知ってるか?」
「すとっく……何?」
「知らなきゃ別にいい」
「えーーっ、なになに? 気になるよー」
「だったら後で自分で調べるんだな」
そう言った後、氷渡はほんの少し押し黙り、そしてまた口を開いた。
「……本当は誰と、見たかったんだ?」
「え?」
「……携帯、電池が切れてなかったら誰かに連絡するつもりだったんだろ?」
空を見上げたまま問い掛ける、その横顔をかなでは見つめた。
右目を隠す銀髪のせいで、こちらから氷渡の表情を察することはできない。
問い掛けにかなでが答えるのを待たず、氷渡は更に言葉を紡ぎ出す。
「俺は……大丈夫だ。もう、あんたは心配しなくていい」
確かに、その通りなのだろう。
今の氷渡はとても安定しているように見える。
挫折を乗り越えて、過ちを受け入れて、ちゃんと前を向いている。
もう一度チェリストとして、一からやり直す覚悟で室内楽部の合同練習にもちゃんと出るようになったし、七海や天宮ともそれなりにうまくやっているようだ。
すぐには難しくても、きっといつか他の生徒にもわかってもらえる。
氷渡貴史は、変わった。昔とは違うのだと。
しかし、どうしてなのか。
今、かなでの心は、安堵とは真逆のところで震えている。
心配しなくていい、というその言葉が、ひどく突き放したものに思えた。
それはまるで、決別の言葉。
「私が……氷渡くんを心配するのって、迷惑……なの、かな?」
心の震えが声にも伝わり、それに気付いた氷渡が、振り返った。
「違う……ただ、俺は」
心無しか、氷渡の声まで震えている。
「……俺はあんた以外と、一緒に花火を見たいとは思わない。……だけど、あんたはそうじゃないだろ」
言われた言葉の意味が一瞬では理解出来ず、かなではただ氷渡の顔を凝視していた。
「それがどんな意味だとしても、あんたが俺を気に掛けて、救おうとしてくれたことは……嬉しかった。
だからこそ……もう、いい」
あんなに酷い悪意に晒されても顔色を変えなかった氷渡が、このまま泣き出してしまうのではないかと思うくらい、張り詰めた表情をしていた。
「……これ以上近付いたら、あんたを、俺だけのものにしたくなる……だからもう、俺に構うな……小日向」
その表情、その言葉、その震え……全てがかなでの胸にじんわりと響く。
チェロの奏でる、温かい低音のようにゆっくりと染み渡っていく。
かなでは、目の前の柵をぐっと強く掴んで、口を開いた。
「氷渡くん!……私は」
その瞬間。
ガガッ、という鈍い異音が響いたかと思うと、
「え……?」
かなでの身体は大きく前に傾いた。
「……小日向っ!?」
スローモーションのようだった。
しっかり握り締めた柵のの両端が、無惨にへし折れているのが、見えた。
何の気なしに体重を預けていたそれは、先程の階段同様、老朽化して錆びていたのだ。
そして、柵だった鉄柱ごしに、真下にぱっくり口を開けた暗闇も、よく見えた。
ふわっと身体が浮く。
落ちる。
落ちてしまう。
落ちたら終わり?
ああ。神様。
もうちょっとだけ待ってくれればよかったのに。
終わってしまう前に、伝えさせてくれればよかったのに。
ギュッとつぶった目の端を、温かい雫が伝った。
「あれ……?」
終わって、いない。
どこも、痛くない。
かなではゆっくりと目を開けた。
どうなってしまったんだろう。
屋上の柵が壊れて、落下したのはわかる。
「終わり」を覚悟した直後から、一瞬意識が飛んでしまって、何が起きたのかすぐにはわからなかった。
目を開けて、最初に目に入ったのは、見知ったデザインのシルバーのクロスだった。
「……あ……」
その時ようやく、自分が落ちた場所が、固いコンクリートの上でも、冷たい土の上でもないことに気付いた。
かなでを受け止めていたのは氷渡だった。
「氷渡くん! 氷渡くん……!!」
呼び掛けたが、しっかりかなでを抱き留めた格好で、氷渡は目を閉じ、微動だにしない。
かなでは焦って頭上を見上げた。
階下のベランダのひさしに引っ掛かったおかげで、地上まで落下せずには済んだようだが、それでもそれなりに高さはある。
打ち所が悪かったら……??
自分の血の気が引く音が聞こえた気がした。
「っ、氷渡くんっ、起きてっ、死んじゃやだーーっ!!」
こつん。
頭のてっぺんに固いものが当たった。
「……阿呆。顔、近すぎる」
はっとして、少し頭を持ち上げると、とんでもない近距離で視線が交わる。
「あ、ご、ごめん」
かなでは慌てて少し離れた。
「……大丈、夫?」
「……軽い脳震盪だ。あんたは……無事らしいな」
「……」
「……どうした?」
「……氷渡くんが微笑んでるの、初めて見た」
「……笑ってたか?俺」
氷渡は溜め息をついて、帽子の上から頭をかいた。
「……あんた、何人分の“心臓”になる気だよ」
「え?」
「何でもない……終わったな、花火」
いつの間にか静まり返った夜の中。
かなでは、はっと我に返る。
伝えたいことがあったのだった。
「氷渡くん、私」
しかし。
「明日からしばらく、会うの、よさないか?」
遮るように氷渡が告げた。
「一応俺も天音の一員だしな」
「そう、だね……」
氷渡は正しい。
けれど、伝えそびれた言葉がわだかまって、かなでの息はつまりそうだった。
《END》
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