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乙女ゲーマー麻咲(あさき)の、2.5次元を彷徨うブログ
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  プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
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星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
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妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

バイト先→某損保系コールセンター 

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2010/04/02 (Fri)
 おはようございます、氷渡×かなでシリーズの累積拍手数が、50を突破したことに驚きが隠せない麻咲です。

 ありがとうございます、本当にありがとうございますm(__)m

 ちなみに今のところ一番人気は一作目です。
 皆様のお気に入りはどのエピソードでしょうか??

 ちなみに昨日から、新年度ということで、かなり久々に携帯版のスタイルシートを変えました。

 ちょっとだけ爽やかになりましたねー。色とか。
 書いてる内容は相変わらずだけど。笑。

 大してタグの知識ない人が、雰囲気でカスタマイズしてるので、変更後は不具合が出る場合もあります。
 何かあればご一報下さいね。


 さて、今回は氷渡×かなでシリーズの大詰めということで、内容的にも詰め詰めです。笑。

 まだ消化していなかったゲーム内要素をこれでもか、と詰め込んでおります。

 出て来る人物も今までで一番多いですし。


 とりあえず、本編の流れに沿って、氷渡×かなででやりたかったことは全部やったので、私自身は大満足。

 あとは読者の皆様がちょっとでも楽しんでもらえたら何よりです。


 今回もシリーズ既読前提&本編ネタバレありです。ご注意の上、「つづき」へどうぞ。


 それでは今夜、反省会と言う名の祝賀パーティーでお会いしましょう★

「はあ……」

 夏の夜風に、溜め息が溶けた。
 実りの季節が近づき、赤茶けてきた向日葵の前に立ち、吐き出した分と同じだけの空気をゆっくり吸い、ゆっくり吐いたが、その胸のわだかまりが晴れることはなかった。

「……明日は大事な日なのに……」

 微かに呟いたその時、

「小日向、眠れないのかい?」

 音も立てず、いつの間にか後ろに立っていた親友が、いつものように飄々とした声で語りかけてきた。

「ニア……」

 驚いたかなでが振り返ると、親友はフッと口端を持ち上げて微笑した。

「そんな君に差し入れだ」

 彼女が差し出したのは、一杯のカモミールティー。そして……。








【 Take me again 】








 しばらくニアと星を眺めて語らった後、部屋に戻ったかなでは、ベッドに身を沈めながら、先ほどカモミールティーと一緒に渡されたものをもう一度眺めていた。

 それは、写真だった。

「いつの間に撮られたんだろう……」

 ニアは笑いながら言っていた。

「今のところこれが、この夏のベストショットだ」

 ……と。

 四角く切り取られた景色。
 その中心に映っていたのは、かなで……そして、氷渡貴史だった。

 セミファイナルの何日か前、山下公園で練習に付き合って貰った時のものだろう。

 こうして写真を眺めていると、その時の会話まで鮮やかに蘇ってくる。



「そういえば私、氷渡くんのチェロの音聞くの初めてなんだよね」

「……初めて、って、聞いてなかったのか? 東日本大会の演奏」

「……えーっと……その、ちょっと遅刻を……ごめん、ね?」

「……あ、そう」

「……あーあ、氷渡くんが拗ねちゃった」

「拗ねてない」

「拗ねてるじゃん」

「あぁ、もう、うるさい。練習するならとっとと準備しろ」

「はーい」



 半分喧嘩みたいなやりとりをしていた気がするのに、2人とも何て生き生きした楽しげな顔で写っているのだろう。

 思えば、あの事件から、氷渡と最後に会った花火の夜まで、わずか一週間あまり。短い、あまりにも短い時間。

 その短い時間の中で、小日向かなでは、東金千秋をさえも驚かせる大輪の花を咲かせる1stヴァイオリンになった。

 その短い時間の中で、氷渡貴史は、激しいまでの失意から立ち直り、一から自分の音楽と向き合うことができた。

 その短い時間の中で……恋は、始まったのだ。

 いつからそうだったのか、何がきっかけだったのか、それはわからないが、今かなでは確かに恋をしている。

 まだ伝えてはいないけれど。

 明日の戦いが終われば、氷渡に会える。

 天音学園と全力で戦い、勝って、胸を張って会いに行く。

 そう決意した途端、不思議と心が穏やかになった。
 あるいは、カモミールティーが効いてきたのかもしれない。

「ありがとう……ニア」

 かなでは、親友がくれたかけがえのない「差し入れ」を枕元に置き、部屋の灯りを、消した。










 そして幕を開けた、最後の舞台。

 星奏学院と天音学園は、お互いの持てる力全てを尽くし、戦い、決着をつけた。

 栄光の銀のトロフィー。
 それを手にしたのは……星奏学院、だった。












 押し寄せる波のように、いつまでも収まることのない喝采。

 ステージ上で、勝利の微笑みを浮かべ、仲間たちと喜びを分かち合うかなでの姿を、氷渡は半ば放心状態で眺めていた。

 様々な感情が、まるでプリズムのように乱反射している。

 自校の「仲間」がベストを尽くしながら、惜しくも優勝を逃したことに対する悔しさ。

 ずっと、自分にとって世界の中心……いや、「すべて」だった「冥加玲士」が敗北したことへの驚愕。

 今日この会場に集まった全ての人間の記憶に生涯刻まれるであろう、2校のステージに対する感嘆。

 出来ることなら自分も、あのステージに立っていたかったという、抑えられない羨望。

 そして。

 太陽のように眩しく輝く、1人の少女へと絶えずあふれ出す思慕。


 だが。


 道端に転がる小石には、太陽は、あまりにも遠すぎる。
 遠い、高いところで、数多の星々に愛され、守られているあの輝き。

 その光がこの短い夏、一時でも自分を照らしてくれていた……それだけで満足しなければ。


「氷渡先輩」

 突然呼び掛けられて、はっとする。
 思考に埋没しているうちに、いつの間にかステージにから退場していた七海が、客席に降りて来ていたのだ。

 興奮で顔を紅潮させ、悔し涙で目を赤くして、七海は真っ赤な顔をしている。

「……すいません、オレ……負けちゃって……氷渡さんのためにも絶対勝ちたかったのに……っ」

 俯いて、肩を震わせている七海の姿に、ああ、こいつはこんなに負けず嫌いだったんだな……と思った。

「まったく……何をグチグチ言ってるんだ。……人がせっかく見直してやってたのに」

「え……?」

 真っ赤な目を丸くする七海に対して、

「来年があるだろ」

 思わず口をついた言葉に、自分で驚いた。

 来年?
 冥加玲士も、天宮静ももういない。
 来年の大会なんかに興味はなかった筈なのに。

「そうですね……! 来年こそは何がなんでも優勝しましょう!!」

 氷渡の戸惑いをよそに、七海は涙を拭って、晴れ晴れと笑う。
 そして。

「聞いたかい? 冥加。七海と氷渡が来年仇を取ってくれるらしいよ」

「っ」

 七海の後ろから姿を見せた天宮と冥加に気付き、氷渡は思わず身を固くした。

 楽しげな天宮の傍らで、敗戦の将とはとても思われない威光を放つ冥加が、氷渡と七海を悠然と無言で見下ろしている。

「はいっ、オレたちが必ず銀のトロフィーを手に入れてみせます……!!」

 その冥加を前にして、キッパリと言い切った七海のことを、氷渡は今心から「凄い」と思えた。

 そして、この「ライバル」にはもう負けられないとも思った。

「冥加、部長……」

 あの日以来初めて、対峙する冥王。
 足がすくみそうな恐怖を感じながらも、視線をそらさず真っ直ぐ見つめる。

「……来年の大会、必ず聞きに来て下さい。
今度こそ、あなたの心を動かしてみせますよ……俺の、チェロで……!」

 冥加は、氷渡を一瞥し、すぐに白ランの長い裾を翻って背を向けた。

「……ねずみ風情が何を聴かせてくれるのか、期待せずに待っていてやろう」

 一言。
 ただそれだけだった。
 だが、今の氷渡には余りあるものだった。

「……ありがとう、ございます……」

 深々と頭を下げる氷渡を残し、冥王は歩き出す。

 静観していた天宮が口を開く。

「聴いていかなくていいのかい?」

「……必要ない」

 淀みない歩調で冥加が立ち去っていった後、氷渡は深く息を吐いて、半分へたりこむように座席に座り込んだ。

 殺されるかと思った。

 だが。

 これでようやく、本当に再出発できた気がする。

 一息つけたところで、氷渡は気になったことを口にした。

「……で、天宮さん、さっきのってどういう意味ですか? 聴いていかなくて、って」

「わからないかい? 喝采がまるで止まない。このままお開きというわけにはいかないだろ?」

「アンコールですよ、先輩」

 なるほど、と思った。

 こうしている間も拍手は鳴り止むことなく続いている。
 誰もがもう一度、星奏学院の演奏を聴きたいのだ。

 天宮と七海も着席し、今度は観客として楽しむつもりのようだった。

 もう一度、小日向かなでのヴァイオリンを聴くことができる。

 この夏の、最後の思い出には相応しいかもしれない……そう思いながら、氷渡はステージを再び、見上げた。














「本当に、それでいい?」


「ああ、こうなったら、お前の好きにしろよ」

「今日の主役は、ひなちゃんだからね……異論はないだろ? ハル」

「まったく……先輩にそこまで頼まれたらしょうがないですね」

「全員の意見が一致したようだな……よし、思う存分弾いて来い、小日向」


「ありがとう、みんな……」


 かなでは、大切な仲間たちに見送られながら、ステージへ歩き出した。ヴァイオリンを携え、ひとりで。


 客席が微かにざわめく。

「ほう、アンコールは1stヴァイオリンのソロか」

「これはなかなか面白い趣向ね」


 ステージの中央に立ち、かなでは客席を見渡した。

 ひとりでこんな景色を見るのは、久しぶりな気がした。
 けれど、少しも心細さは感じなかった。

 今なら、何も怖くない。

 どんな奇跡だって起こる気がする。
 どんな想いだってとどく気がする。

 ゆっくり、ヴァイオリンを構える。

 たったひとり。
 あの人の元へ。

 音楽の妖精よ、届けて下さい。


 「愛のあいさつ」を……。









 その旋律は、甘く優しく、澄みきって、朗らかに響く……「小日向かなで」の「声」そのものだった。

 どんな「音楽」も、誰の「声」も聞きたくないと思ったその時に、ああやはり、それはこんなに心地よくて、失えないものなんだと教えてくれた「音」。

 氷渡貴史が憧れた2つ目の「音」。

 憧れても、届かない「音」。

 胸の痛みに目をすがめた刹那、すぐ耳元に声が響いた。


「……あーあ、氷渡くんが拗ねちゃった」


 振り返ると、すぐ傍らに「小日向かなで」が座っていた。
 人の気も知らないで、茶化すように笑う。


「拗ねてない……」


 小さな声で呟いた。


「拗ねてるじゃん」


 前にもこんなやりとりをしたような気がする。
 まるで子どもじみた会話が何やら滑稽で、氷渡は苦笑した。


「でもね」


 「小日向かなで」は尚も語りかける。


「私だっていっぱい拗ねたんだよ……誰かさんが全然会ってくれないから」


 大きな瞳が微かに揺らめく。


「会いたいよ、氷渡くん……」


 無理だ。
 勝てるわけがない。
 いつもこの「声」は、幾重にも張った悲壮な心の壁に簡単にヒビを入れる。
 突き破ってしまう。

「……小日向……」

 せつなげに微笑んだその顔に、思わず手を伸ばしかけたその刹那、その甘い幻はふわり、と消え失せる。

 それと同時にまた、ホールは喝采に包まれた。

 氷渡はステージに向き直り、深々と頭を下げる小さな少女を見上げた。


 あの場所から、ずっと話し掛けていてくれたのだろうか。
 彼女にしか奏でられない、美しい「声」で。

 それとも、ただの都合のいい妄想なのだろうか?


 だがもう、そんなものはどちらでも、いい。
 なんでもよかった。










「では、一時解散する。祝賀会の会場に集合だ。遅刻は厳禁とする、いいな」

 律の言葉を受けて、オーケストラ部の部員たちは皆、めいめいにホールの敷地から出て行った。

 右手にヴァイオリンケース、左手にドレスの箱を抱えたかなでは、ふう、と一息ついた。

 パーティー。
 真っ白なドレス。
 普通なら心が浮き立って仕方がない筈なのに、今はそんな気分ではなかった。

 演奏を終えた後、急いで客席に降りたが、氷渡には会えなかった。

「さっきまでここにいたんですけど」と、七海が申し訳なさそうにしていた。

 氷渡はちゃんと聴いてくれただろうか?
 届いたのだろうか、音色に託した想いは……。

 やがて、答えは出た。


「まだ、拗ねてるのか?」


 後ろから、その声が聞こえた瞬間、優勝の瞬間と同じくらいの感動があった。

「どうしよう」

 まだ振り向かずに、震えた声で呟く。

「走り寄って、抱き付きたいんだけど、両手が塞がっちゃってる……」

「別に問題ないだろ……俺が、あんたを抱き締めれば、それで済む話だ」

「氷渡くん……!」


 振り返った瞬間、捕まった。

 捕まるのは2度目だった。

 だが今度は多分、彼から逃げられないだろう。









【END】

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