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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2010/04/10 (Sat)
二次創作関連
こんばんは、CDに釣られて、うっかり星奏学院祭両日参戦を視野に入れてしまった麻咲です。
初日だけのつもりだったのに……。
大地先輩が絡むと、私はもうダメかもしれません。廃人まっしぐらですよ。汗汗。
と、言いつつ、相変わらずSSはサブキャラパラダイスですが。笑。
今回は、また某イベントからの派生で、芹沢×かなでの【恋の音:♪♪】のつもりで途中まで書いていたのですが、何故かその前振りで終わりました。
あえて先に言っておきますが、ラストでまたひどい引きで終わってます。笑。
そのかわり、次回は畳み掛けるように、♪2つ目と3つ目一気にやっちゃうつもりなので、よろしくお願いします。
それと、今回は、前回名前しか出なかった方々がちょろっと出て来ますよー。
そしてそして、毎度のことながら「その1」既読前提の、本編ネタバレありとなっています。
オッケーな方は「つづき」からどうぞ。
反省会は明日upします★
初日だけのつもりだったのに……。
大地先輩が絡むと、私はもうダメかもしれません。廃人まっしぐらですよ。汗汗。
と、言いつつ、相変わらずSSはサブキャラパラダイスですが。笑。
今回は、また某イベントからの派生で、芹沢×かなでの【恋の音:♪♪】のつもりで途中まで書いていたのですが、何故かその前振りで終わりました。
あえて先に言っておきますが、ラストでまたひどい引きで終わってます。笑。
そのかわり、次回は畳み掛けるように、♪2つ目と3つ目一気にやっちゃうつもりなので、よろしくお願いします。
それと、今回は、前回名前しか出なかった方々がちょろっと出て来ますよー。
そしてそして、毎度のことながら「その1」既読前提の、本編ネタバレありとなっています。
オッケーな方は「つづき」からどうぞ。
反省会は明日upします★
ふと、流れて来た旋律に、かなでは卵を解いていた菜箸の動きを止めた。
ピアノの音。
芹沢の音だ。
けれど、何だろう。
少し荒れている……
ような、気がする。
かなでは、卵の入ったボールを抱えたままキッチンを出て、旋律の糸を手繰るようにしてラウンジへ向かった。
そして。
ラウンジのピアノの前に座っていたのは、やはり芹沢だった。
神南高校のアンサンブルを陰で支える有能な伴奏者。
それはさながら、鮮やかに咲き誇る薔薇の花弁を支え、守る「うてな」のような存在。
けれど。
やはり今日は少し、様子が違う。
理由は……恐らく、あのことだろう。
かなでは、ラウンジの入り口に立ったまま、演奏が終わるのを待つつもりだったが、最後の小節を待たずして、旋律が途絶えた。
音が止むと同時に、重い溜め息が聞こえてきた。
かなでは思わず、口を開いた。
「……そんなに東金さんが心配なの?」
振り返った黒い瞳には、確かにわずかながらの動揺が見られた。
「……まさか」
短く答えると、芹沢はかなでに背を向けて、テキパキと片付けを始める。
そんな様子を見ていると、思わず、苦笑が漏れてしまう。
「芹沢くん……意外と隠し事、下手?」
【 めざましきもの 】
菩提樹の枝を夜の風が揺らす頃。
彼女の言う通りなのかもしれない……と、芹沢は思い始めていた。
落ち着かないのは事実だった。
ヴァイオリンソロ部門のファイナルはいよいよ明日。
東金千秋と、横浜天音学園の冥加玲士が一騎討ちで雌雄を決する。
神戸を出る時には、ヴァイオリンソロの優勝は、もう東金が「獲ったもの」だと思い込んでいた。
一昨年、惜敗したという如月律がエントリーしていないならば、何ら障害はないだろう、と。
しかし、アンサンブル部門セミファイナルで思い知った、全国の壁の厚さと、冥加玲士の圧倒的な実力は、そんな慢心を容易く打ち砕いた。
東金千秋が敗れるかもしれない……という思いが時々頭をかすめ、その度にどうしようもなく苛々する自分がいる。
恐らく……東金が敗退するところを、見たくないと思っているからだ。
大体、日頃あれほど好き放題自由に生きて、周囲を振り回しているのだから、勝ってくれなくては困る。
軽々と期待の斜め上を、飛び越えてくれないと困る。
ずっと、ついて来てよかったと思わせてくれないと困るのだ。
部屋に籠って、相変わらずどうしても帳尻が合わない会計報告書と向き合っていると、ますます神経が毛羽立ってきてしまう。
一息入れるべきだろうか。
そう思った時に、タイミングを見計らったように携帯が鳴った。
発信者は……「小日向かなで」。
箱根に行った折に、せがまれて一応番号を交換してはいたが、掛けてくるとは思わなかった。
この時間なので恐らく寮内のどこかから掛けているのだとは思うが。
『あ、こんな時間にごめんね……もう寝るところだったかな?』
まだ就寝はしない旨を伝えると、
『もしよかったら、キッチンに来てくれないかな。ちょっと芹沢くんのアドバイスが欲しくて』
と言って来た。
まあ、ちょうど気分転換をしようと思っていたところだし、気が紛れるかもしれない。
そう考えて、今から向かうと伝えた。
「ありがとう、来てくれて!」
芹沢がキッチンに行くと、愛用の白いエプロンをまとったかなでが、嬉しそうに迎えた。
「それで……俺は一体何をアドバイスすればいいんですか?」
「えっとね、お味噌汁なんだけど、関西風だとどんな感じなのかなって」
「はあ」
そう言われて見てみれば、各種の味噌や、昆布・鰹等の出汁用の食材、数十種類の具材、そして調理器具がところ狭しと並べられている。
「東金さんに差し入れ持って行きたいの……だから、味付けも関西風じゃないとね」
「差し入れ? こんな夜中にですか?」
「うん。今私に出来る応援ってそれくらいだしね……それともかえって迷惑かなー?」
「そんなことは、ないとは思いますが……」
東金を放っておけば、ろくに食事もとらずに練習に没頭するに決まっているが、他ならぬ「小日向かなで」の手料理を、彼が拒むわけはない。
だが、だからこそ彼女の行動は、傍目には「迂闊」に見える。
「小日向さん、ぶしつけなことをお聞きしても構わないですか?」
「うん、なに?」
「……あなたは、その……東金部長のことを、どう思っているんですか?」
自分で口にしておいて、気恥ずかしい質問だったが、確認しておきたかった。
彼女の優しさは、キャパシティが広すぎる。
太陽のように誰にでも降り注ぎ、容易く人の心を包み込んでしまう。
だが自分の行動が、どれだけの影響を及ぼすのか、考えたことはあるのだろうか?
彼女にとって「東金千秋」が特別な相手ならば、何も言うことはない。
しかし。
もし、何とも思っていないなら、ここまでの気遣いが必要だろうか。
かなでは、少し考えるような顔をしていたが、やがて、芹沢の問いに対する答えを口にした。
「東金さんは……師匠、かな」
「師匠……ですか?」
想像もしていなかった言葉だった。
「うん、1stヴァイオリンとして大切なことを教えてくれた、大事なお師匠様なの♪
だから明日は絶対勝って欲しいんだー」
かなでは少しだけ照れたような笑みを浮かべる。
「笑われちゃいそうだから、東金さんには内緒にしてね」
成る程。
特別な存在には、違いないらしい。
もっとも問題は東金がどう受け取るかであって、彼女が「迂闊」であることには変わりないのだが。
それでも彼女に対してある種の「共感」は芽生えた。
東金千秋には、負けてほしくない……という共通の意識を通しての「共感」だった。
芹沢は一つ息を吐いて、口を開いた。
「……関西風のお味噌汁でしたら、基本は昆布出汁に白味噌ですね」
かなでは嬉しそうに、
「オッケー!具は何がいいのかなー」
と、並べられた食材をあれこれ手に取る。
「随分さまざまなものがありますが……この寮には常にこれだけの食材や器具が揃っているんですか?」
「実は日に日にキッチンの設備と食材の在庫がゴージャスになっていってるんだよねー……」
「……それはもしや」
「納豆とチーズは勝手に撤去されちゃうし」
「……すいまません」
よその学校の寮でここまで好き勝手出来るのは、あの2人くらいのものだろう。
かなでは豆腐のパックを片手に、イタズラっぽく笑った。
「せっかく提供してもらったものだし、出し惜しみなく使っちゃおうね」
熱々の味噌汁を保温容器に移し、おにぎりをランチボックスに並べ、それらを紙袋に入れると、かなでは会心の笑みを浮かべた。
「よーし、早速届けに行かないと」
と、紙袋の持ち手を掴もうとしたところを、横からサッとそれを先に掴む。
「参りましょう」
「えっ……芹沢くんも行くの??」
「当たり前です、何時だと思っているんですか」
どう考えても、女子高生が一人歩きで出掛けていい時間ではない。
「……あなたは、警戒心が希薄過ぎますよ」
ずっと思っていたことをとうとう口に出してしまった。
「危なっかしくて放っておけません」
言ってしまってから、余計なお世話だったかもしれない、と少し後悔した。
取り立てて親しい間柄でもない他校の生徒に、「放っておけない」などと言われては、不愉快だっただろうか?
しかし、かなでは特に気を悪くしたようでもなく、にこにこしている。
「わかった、じゃあ一緒に行こう」
エプロンの紐をしゅるり、とほどきながら、彼女は言った。
「芹沢くんなら、安心だなー」
安心。
一体、どういう根拠で言っているのかわからないが、それなりに信頼されているというなら、悪い気はしないと思った。
その時は、そう思ったのだ。
「まさかお前たちが2人で来るとはな」
差し入れを受け取った東金は、芹沢とかなでを一瞥して、小さく笑った。
「小日向、いつの間に芹沢を手懐けたんだ?」
手懐けた、ときたか。
多少カチンと来る物言いではあったが、そんなことで一々腹を立てても仕方がない。流すに限る。
遅い時間なので自分が付き添ったのだと説明すると、東金は更に口角を吊り上げた。
「確かに、お前なら送り狼になる心配もないだろうしな」
「……そんなことは当たり前です」
何を下らないことを……と思った。
だがしかし、
「そうですよ、東金さん。芹沢くんにそんなこと出来るわけないです!」
かなでのその言葉は、なんとなく引っ掛かった。
そんなこと出来ない……とは、一体、どういう意味なのだろう。
思わずそこで思考が停止しかかった時に、また東金が口を開いた。
「じゃあ、差し入れはありがたく貰っておく。お前たちはもう帰っていいぞ」
「えー、側で練習見て行くのはダメですかー?」
「小日向、お前は人の心配をしてる場合じゃないだろ? とっとと帰って寝て、明日もしっかり練習しろよ」
「はーい、わかりました……じゃあ、帰ろう?芹沢くん」
こちらを振り返る、無垢な笑顔。
本当に、なんてあどけない、無防備な顔を見せるのだろう。
「……はい、そうですね」
何故それが、こんなに胸をざわつかせるのだろう。
「……2人して、どこへ遊びに行ってたん?」
寮の玄関ホールで、思いがけず土岐と遭遇した。
恐らく残暑の寝苦しさに耐え兼ねて、どこかで涼むつもりだったのだろう。
土岐は、先刻の東金と同じように2人を見比べるように視線を流し、
「仲良しこよしで、ちょっと妬けてまうね」
と、冗談めかして言ったかと思うと、すっとかなでに歩み寄り、耳元に顔を寄せ、内緒話にしては大きな声で囁いた。
「……芹沢くんに、やらしいことされんかった?」
「副部長……!」
「……冗談や」
楽しそうに笑って、土岐はかなでから離れた。
「千秋んとこ行ったんやろ? 仲間外れにされてんから、このくらいの意地悪は許してや……ほな、おやすみ」
言いたいことだけ言って、あっという間に行ってしまった。
まったく、この人と来たら……そう呆れながらも、なんとなくかなでの反応が気になって、そっと様子を伺った。
かなでは、笑っていた。
「もう、東金さんも蓬生さんも冗談がキツくて困っちゃうよ……ね? 芹沢くん」
ああ、またこの笑顔だ。
「安心」しきった笑顔。
それは信頼感、なのだろう。
一切警戒心の生じる余地のない信頼……それは見方を変えれば、全く「男」として見られていない、ということなのではないか?
何故だろう。
着痩せする体型のせいだろうか。
東金や土岐の世話を焼いている姿が女性的に見えるのだろうか。
自分から積極的に前に出ないことを、煮え切らない女々しい態度だとでも思っているのだろうか。
わからない。
わからないが……少々、心外だ。
「芹沢くん、どうかした……?」
不思議そうに顔を覗き込む、曇りの無い眼差し。
まるで突き動かされるように、唇が動いていた。
「……小日向さん、俺と一度、デートをしてみませんか?」
【END】
ピアノの音。
芹沢の音だ。
けれど、何だろう。
少し荒れている……
ような、気がする。
かなでは、卵の入ったボールを抱えたままキッチンを出て、旋律の糸を手繰るようにしてラウンジへ向かった。
そして。
ラウンジのピアノの前に座っていたのは、やはり芹沢だった。
神南高校のアンサンブルを陰で支える有能な伴奏者。
それはさながら、鮮やかに咲き誇る薔薇の花弁を支え、守る「うてな」のような存在。
けれど。
やはり今日は少し、様子が違う。
理由は……恐らく、あのことだろう。
かなでは、ラウンジの入り口に立ったまま、演奏が終わるのを待つつもりだったが、最後の小節を待たずして、旋律が途絶えた。
音が止むと同時に、重い溜め息が聞こえてきた。
かなでは思わず、口を開いた。
「……そんなに東金さんが心配なの?」
振り返った黒い瞳には、確かにわずかながらの動揺が見られた。
「……まさか」
短く答えると、芹沢はかなでに背を向けて、テキパキと片付けを始める。
そんな様子を見ていると、思わず、苦笑が漏れてしまう。
「芹沢くん……意外と隠し事、下手?」
【 めざましきもの 】
菩提樹の枝を夜の風が揺らす頃。
彼女の言う通りなのかもしれない……と、芹沢は思い始めていた。
落ち着かないのは事実だった。
ヴァイオリンソロ部門のファイナルはいよいよ明日。
東金千秋と、横浜天音学園の冥加玲士が一騎討ちで雌雄を決する。
神戸を出る時には、ヴァイオリンソロの優勝は、もう東金が「獲ったもの」だと思い込んでいた。
一昨年、惜敗したという如月律がエントリーしていないならば、何ら障害はないだろう、と。
しかし、アンサンブル部門セミファイナルで思い知った、全国の壁の厚さと、冥加玲士の圧倒的な実力は、そんな慢心を容易く打ち砕いた。
東金千秋が敗れるかもしれない……という思いが時々頭をかすめ、その度にどうしようもなく苛々する自分がいる。
恐らく……東金が敗退するところを、見たくないと思っているからだ。
大体、日頃あれほど好き放題自由に生きて、周囲を振り回しているのだから、勝ってくれなくては困る。
軽々と期待の斜め上を、飛び越えてくれないと困る。
ずっと、ついて来てよかったと思わせてくれないと困るのだ。
部屋に籠って、相変わらずどうしても帳尻が合わない会計報告書と向き合っていると、ますます神経が毛羽立ってきてしまう。
一息入れるべきだろうか。
そう思った時に、タイミングを見計らったように携帯が鳴った。
発信者は……「小日向かなで」。
箱根に行った折に、せがまれて一応番号を交換してはいたが、掛けてくるとは思わなかった。
この時間なので恐らく寮内のどこかから掛けているのだとは思うが。
『あ、こんな時間にごめんね……もう寝るところだったかな?』
まだ就寝はしない旨を伝えると、
『もしよかったら、キッチンに来てくれないかな。ちょっと芹沢くんのアドバイスが欲しくて』
と言って来た。
まあ、ちょうど気分転換をしようと思っていたところだし、気が紛れるかもしれない。
そう考えて、今から向かうと伝えた。
「ありがとう、来てくれて!」
芹沢がキッチンに行くと、愛用の白いエプロンをまとったかなでが、嬉しそうに迎えた。
「それで……俺は一体何をアドバイスすればいいんですか?」
「えっとね、お味噌汁なんだけど、関西風だとどんな感じなのかなって」
「はあ」
そう言われて見てみれば、各種の味噌や、昆布・鰹等の出汁用の食材、数十種類の具材、そして調理器具がところ狭しと並べられている。
「東金さんに差し入れ持って行きたいの……だから、味付けも関西風じゃないとね」
「差し入れ? こんな夜中にですか?」
「うん。今私に出来る応援ってそれくらいだしね……それともかえって迷惑かなー?」
「そんなことは、ないとは思いますが……」
東金を放っておけば、ろくに食事もとらずに練習に没頭するに決まっているが、他ならぬ「小日向かなで」の手料理を、彼が拒むわけはない。
だが、だからこそ彼女の行動は、傍目には「迂闊」に見える。
「小日向さん、ぶしつけなことをお聞きしても構わないですか?」
「うん、なに?」
「……あなたは、その……東金部長のことを、どう思っているんですか?」
自分で口にしておいて、気恥ずかしい質問だったが、確認しておきたかった。
彼女の優しさは、キャパシティが広すぎる。
太陽のように誰にでも降り注ぎ、容易く人の心を包み込んでしまう。
だが自分の行動が、どれだけの影響を及ぼすのか、考えたことはあるのだろうか?
彼女にとって「東金千秋」が特別な相手ならば、何も言うことはない。
しかし。
もし、何とも思っていないなら、ここまでの気遣いが必要だろうか。
かなでは、少し考えるような顔をしていたが、やがて、芹沢の問いに対する答えを口にした。
「東金さんは……師匠、かな」
「師匠……ですか?」
想像もしていなかった言葉だった。
「うん、1stヴァイオリンとして大切なことを教えてくれた、大事なお師匠様なの♪
だから明日は絶対勝って欲しいんだー」
かなでは少しだけ照れたような笑みを浮かべる。
「笑われちゃいそうだから、東金さんには内緒にしてね」
成る程。
特別な存在には、違いないらしい。
もっとも問題は東金がどう受け取るかであって、彼女が「迂闊」であることには変わりないのだが。
それでも彼女に対してある種の「共感」は芽生えた。
東金千秋には、負けてほしくない……という共通の意識を通しての「共感」だった。
芹沢は一つ息を吐いて、口を開いた。
「……関西風のお味噌汁でしたら、基本は昆布出汁に白味噌ですね」
かなでは嬉しそうに、
「オッケー!具は何がいいのかなー」
と、並べられた食材をあれこれ手に取る。
「随分さまざまなものがありますが……この寮には常にこれだけの食材や器具が揃っているんですか?」
「実は日に日にキッチンの設備と食材の在庫がゴージャスになっていってるんだよねー……」
「……それはもしや」
「納豆とチーズは勝手に撤去されちゃうし」
「……すいまません」
よその学校の寮でここまで好き勝手出来るのは、あの2人くらいのものだろう。
かなでは豆腐のパックを片手に、イタズラっぽく笑った。
「せっかく提供してもらったものだし、出し惜しみなく使っちゃおうね」
熱々の味噌汁を保温容器に移し、おにぎりをランチボックスに並べ、それらを紙袋に入れると、かなでは会心の笑みを浮かべた。
「よーし、早速届けに行かないと」
と、紙袋の持ち手を掴もうとしたところを、横からサッとそれを先に掴む。
「参りましょう」
「えっ……芹沢くんも行くの??」
「当たり前です、何時だと思っているんですか」
どう考えても、女子高生が一人歩きで出掛けていい時間ではない。
「……あなたは、警戒心が希薄過ぎますよ」
ずっと思っていたことをとうとう口に出してしまった。
「危なっかしくて放っておけません」
言ってしまってから、余計なお世話だったかもしれない、と少し後悔した。
取り立てて親しい間柄でもない他校の生徒に、「放っておけない」などと言われては、不愉快だっただろうか?
しかし、かなでは特に気を悪くしたようでもなく、にこにこしている。
「わかった、じゃあ一緒に行こう」
エプロンの紐をしゅるり、とほどきながら、彼女は言った。
「芹沢くんなら、安心だなー」
安心。
一体、どういう根拠で言っているのかわからないが、それなりに信頼されているというなら、悪い気はしないと思った。
その時は、そう思ったのだ。
「まさかお前たちが2人で来るとはな」
差し入れを受け取った東金は、芹沢とかなでを一瞥して、小さく笑った。
「小日向、いつの間に芹沢を手懐けたんだ?」
手懐けた、ときたか。
多少カチンと来る物言いではあったが、そんなことで一々腹を立てても仕方がない。流すに限る。
遅い時間なので自分が付き添ったのだと説明すると、東金は更に口角を吊り上げた。
「確かに、お前なら送り狼になる心配もないだろうしな」
「……そんなことは当たり前です」
何を下らないことを……と思った。
だがしかし、
「そうですよ、東金さん。芹沢くんにそんなこと出来るわけないです!」
かなでのその言葉は、なんとなく引っ掛かった。
そんなこと出来ない……とは、一体、どういう意味なのだろう。
思わずそこで思考が停止しかかった時に、また東金が口を開いた。
「じゃあ、差し入れはありがたく貰っておく。お前たちはもう帰っていいぞ」
「えー、側で練習見て行くのはダメですかー?」
「小日向、お前は人の心配をしてる場合じゃないだろ? とっとと帰って寝て、明日もしっかり練習しろよ」
「はーい、わかりました……じゃあ、帰ろう?芹沢くん」
こちらを振り返る、無垢な笑顔。
本当に、なんてあどけない、無防備な顔を見せるのだろう。
「……はい、そうですね」
何故それが、こんなに胸をざわつかせるのだろう。
「……2人して、どこへ遊びに行ってたん?」
寮の玄関ホールで、思いがけず土岐と遭遇した。
恐らく残暑の寝苦しさに耐え兼ねて、どこかで涼むつもりだったのだろう。
土岐は、先刻の東金と同じように2人を見比べるように視線を流し、
「仲良しこよしで、ちょっと妬けてまうね」
と、冗談めかして言ったかと思うと、すっとかなでに歩み寄り、耳元に顔を寄せ、内緒話にしては大きな声で囁いた。
「……芹沢くんに、やらしいことされんかった?」
「副部長……!」
「……冗談や」
楽しそうに笑って、土岐はかなでから離れた。
「千秋んとこ行ったんやろ? 仲間外れにされてんから、このくらいの意地悪は許してや……ほな、おやすみ」
言いたいことだけ言って、あっという間に行ってしまった。
まったく、この人と来たら……そう呆れながらも、なんとなくかなでの反応が気になって、そっと様子を伺った。
かなでは、笑っていた。
「もう、東金さんも蓬生さんも冗談がキツくて困っちゃうよ……ね? 芹沢くん」
ああ、またこの笑顔だ。
「安心」しきった笑顔。
それは信頼感、なのだろう。
一切警戒心の生じる余地のない信頼……それは見方を変えれば、全く「男」として見られていない、ということなのではないか?
何故だろう。
着痩せする体型のせいだろうか。
東金や土岐の世話を焼いている姿が女性的に見えるのだろうか。
自分から積極的に前に出ないことを、煮え切らない女々しい態度だとでも思っているのだろうか。
わからない。
わからないが……少々、心外だ。
「芹沢くん、どうかした……?」
不思議そうに顔を覗き込む、曇りの無い眼差し。
まるで突き動かされるように、唇が動いていた。
「……小日向さん、俺と一度、デートをしてみませんか?」
【END】
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