カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
web拍手★
ブログ内検索
お気に入り
Lost Heaven
↑↑美夜プロデューサー様の素敵過ぎるマイドルSSサイト★
ありったけの愛を君に
↑↑かりんプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
ときめきの星たち★彡
↑↑みさきプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
↑↑美夜プロデューサー様の素敵過ぎるマイドルSSサイト★
ありったけの愛を君に
↑↑かりんプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
ときめきの星たち★彡
↑↑みさきプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
新品価格 |
新品価格 |
新品価格 |
カテゴリー
最新記事
(10/31)
(05/23)
(05/19)
(05/18)
(05/13)
(05/09)
(05/02)
(04/22)
(04/19)
(04/17)
カウンター
プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2008/12/25 (Thu)
二次創作関連
で、これが2本目。芹沢編です。
ちなみに4年前にupした時には誰からも何のリアクションもありませんでした。笑。
芹沢×鈴花とか、需要がないんですかねー……個人的にはサブキャラでもかなり好きなほうだし、会話できるサブキャラで唯一花柳に出なくて、超悲しかったんですけどね。汗。
大石の三部作は全部問題作なのですが、仕事の昼休みにでも若干校正して、今日の夜upします。
三部作の内訳は、「シリアス」「ブラックコメディ」「ラブラブ」です。爆。
当時はまだ倫がいなかったので、大石×鈴花ですが、それでもいいという方は是非今夜見に来て下さい。
そんなところで芹沢SSへ行きたいと思います。
注意事項はだいたい伊東SSと同じですが、当然のように大石は出ません。笑。
それでは、どうぞご覧下さい。感想を頂けたら嬉しいです。↓↓
ちなみに4年前にupした時には誰からも何のリアクションもありませんでした。笑。
芹沢×鈴花とか、需要がないんですかねー……個人的にはサブキャラでもかなり好きなほうだし、会話できるサブキャラで唯一花柳に出なくて、超悲しかったんですけどね。汗。
大石の三部作は全部問題作なのですが、仕事の昼休みにでも若干校正して、今日の夜upします。
三部作の内訳は、「シリアス」「ブラックコメディ」「ラブラブ」です。爆。
当時はまだ倫がいなかったので、大石×鈴花ですが、それでもいいという方は是非今夜見に来て下さい。
そんなところで芹沢SSへ行きたいと思います。
注意事項はだいたい伊東SSと同じですが、当然のように大石は出ません。笑。
それでは、どうぞご覧下さい。感想を頂けたら嬉しいです。↓↓
《芙蓉恋歌》
全ての音を飲み込み、全ての思いを飲み込み、路傍の花を打ち付けて、雨は注いでいる。
その冷たい雨を全身に受けながら、桜庭鈴花は膝を抱えてしゃがんでいた。
もう終わっただろうか?
あの人は死んだのだろうか??
「……芹沢さん」
不意に。
まったく不意に。
一月ほど前の、夏の日差しをはじく庭先でのことが頭をかすめた。
「おい、桜庭」
ぶっきらぼうに名前を呼ばれ、肩を竦めて振り返った。
「そんなところでお前は何をやってやがる」
最近では素面なほうが珍しいような筆頭局長が、廊下からこちらを見やっていた。
一瞬緊張が走ったが、幸いなことに機嫌は悪くないようであった。
「えっと、今日は暑いから庭の花に水を」
手桶と柄杓を軽く持ち上げてみせると、フンと鼻で笑われた。
「そんなもの、お前がわざわざやる必要もないだろう。八木家の連中に任せておけ」
「まあ、そうですけど……非番だし、水を見てると涼しくなるし」
手桶の中で揺れる水が陽光を虹色に散らす。
芹沢は少し眩しそうに眉根を寄せた。
「……それはなんて花かわかるか?」
「え?」
予想外の問い掛けに、鈴花は目の前の花木を見やった。幾つか堅いつぼみをつけてはいたが、まだ花開かない木を判別するのは困難だった。
「……え~っと、わからないです。咲いてくれればわかると思うんですけど」
勇気を絞って正直に答えると、芹沢は呆れたように一言、
「芙蓉だ」
と告げた。
「え、ふよう?」
「お前も女ならそういうことも少しは知っていろ」
からかうような口調で言われ、恥ずかしさに思わず俯く。
「……はい、勉強します。でも本当に芹沢さんは博識ですよね」
「少なくともお前よりはだいぶ長く生きているからな……知らなくていいことも、知りたくないことも随分知っちまった」
どこか遠くを見る眼差し。幾つも修羅場をくぐってきた大人の男。
息をきらせて走っても追い付けそうもないような場所にいる人。
そう意識すると、なんだか途端に胸がせつなくなった。
女らしくもなくて、まだまだこどもで、剣士としても未熟で。
花開く気配のない堅いつぼみと同じ……。
もしも打ち明けてしまったら。
きっと笑われる。
初めてダンダラの隊服に袖を通したあの日。
数十もの槍を向けられて一歩も引かなかった、あの豪胆な姿を見た時から。
目を離すことが出来なくなった。
父子ほども年の離れたこの人に。
たぶん。
恋をしてしまった……。
「私も知りたいです……それを知ることで傷ついたとしても……それでほんの少しでも」
「ほんの少しでも?」
あなたに近付けるなら。強くなれるなら。
とりとめもない回想に見切りをつけて、すくっと立ち上がった鈴花は、激しさを増すばかりの雨に濡れた前髪をすくい上げ、ことが行なわれている屋敷を見つめた。
「……ここでただ待っているなんて嫌だ」
ぎゅっと両手を握りしめた。
「……ごめんなさい、土方さん」
あれから一生懸命調べた。
芙蓉の花は朝方に白い大輪の花を咲かせ、夕方までゆっくりと薄紅色に染まってゆき、一夜で花を終える。
たった一日だけ、はかなくも華麗に、大きく優雅に開く花。
「何のつもりだ、桜庭。お前には見張りを命じた筈だ」
土方の厳しく、緊迫した怒号に一瞬ひるみながらも、鈴花ははっきりと言った。
「もうその命令に従うことは出来ません」
「桜庭くん、それはいけない」
山南が一歩歩み出て、諭すように囁く。
「君がそこをどかないつもりなら、我々は君を斬らなくてはいけない。頼むからこのまま退いてくれ」
鈴花は首を横に振った。そして腰の刀に静かに手をかける。
「馬鹿野郎!! 抜くんじゃねえぞ!? 抜いたらお前も敵だぜ」
槍を構え直す原田を見ても決意は揺らがなかった。
「……私が芹沢さんを守ります」
「何をわけのわからねぇことを言ってやがる」
鈴花の背中で芹沢が舌打ちをした。
「お前に守ってもらう筋合いはない……ガキはとっとと帰れ」
「ほらほら、芹沢さんもあなたの出る幕じゃないと言ってますよ」
沖田は端正なおもてに酷薄な笑みをたたえた。
「勝負の邪魔、しないで下さいよ」
対峙する四人を見渡し、一度息を整えると、そっと芹沢を振り返った。
「今の私は隊士としてよりも女として。好きになった人のために花を咲かせたいです……」
にわかに芹沢の顔色が変わった。
「お前……」
願わくばあなたのために強く、あなたのために美しく。
たとえ一夜だけでも。
あなたのために咲いて、散らせて。
四人に向き直り、握り締めた刀を一息に抜こうとした。その瞬間。
「うるさい」
「……っ!?」
左の肩口に強い痛みが走り、世界が揺れて、一瞬呼吸が止まった。
気が付けば畳に転がって、先程まで自分が立っていた場所を見ていた。
「……な……どうして……?」
自分を殴り飛ばしたものが、芹沢の鉄扇だと気付いて唖然とした。
「……芹……沢さん……?」
痛みで立ち上がることが出来ない。
「おい、これで邪魔者はいなくなったぞ。続きをやってやる。とっととかかってきやがれ、小虫どもが」
早く立たなくてはならないのに、ゆっくりと意識が遠退く。視界が霞んで、五人の声も、鍔迫り合いの音も遠くなっていく。
「……せり、ざ、わ……さん……」
つぼみのまま、花も開けないまま、夜が明けていく。
目を開けると、夕つ方の茜色の庭にたたずんでいた。芙蓉の花が咲き乱れ、ほんのりと香る晩夏の庭。
縁側にあぐらをかいた芹沢が、杯を傾けている。
「おい、酌をしろ」
相も変わらない愛想のかけらもない声。
何故かいつものように恐くはなくて、鈴花は恨みがましい視線を投じた。
「酌をしろ、じゃないです」
「痛かったか」
「痛かったです」
「俺を恨むか?」
「恨みますよ」
ふと目を細め、真剣な顔つきで芹沢が呟いた。
「それでもお前を死なせたくなかったと言ったら?」
「……」
唇をかんだ。
「うそ……私なんてどうなったって構わないクセに……」
女として認めてなんてくれていなかったクセに。
「確かに女としてはまだまだだがな……命はってまで好いてくれる奴を憎く思う男なんざいねぇだろ?」
そう言って笑う芹沢の表情は今まで見たこともないほど優しく、穏やかだった。
「目の前に立ちはだかって俺に振り返った時。あの瞬間は、マジでお前に惚れてたかもな」
この芹沢鴨様がな、と楽しげに高笑いする。
「……芹沢さん……」
堅く堅く閉じていたつぼみが、ゆっくりとほころびる。
「……大好き」
「……わかったよ。わかったから、とっとと酌だ」
「……はい!!」
ゆっくりと、静かで幸福な一時がすぎていく。
短い夢から覚めると、自室の布団の中だった。
戸の隙間から朝日が差し込んできている。
雨の残り香。
左肩がじんじんと痛む。
それだけの事実が、現実に流れた時と、現実の運命を悟らせた。
声をあげて泣いた。
ほどなく、鈴花は真実と自らの想いを畳んで胸にしまいこみ、新選組を除隊した。
目まぐるしく移りゆく日本を見つめながら、最愛の人の墓を守って生涯を送る道を選んだ……。
「……私が芹沢さんを守ります」
《完》
全ての音を飲み込み、全ての思いを飲み込み、路傍の花を打ち付けて、雨は注いでいる。
その冷たい雨を全身に受けながら、桜庭鈴花は膝を抱えてしゃがんでいた。
もう終わっただろうか?
あの人は死んだのだろうか??
「……芹沢さん」
不意に。
まったく不意に。
一月ほど前の、夏の日差しをはじく庭先でのことが頭をかすめた。
「おい、桜庭」
ぶっきらぼうに名前を呼ばれ、肩を竦めて振り返った。
「そんなところでお前は何をやってやがる」
最近では素面なほうが珍しいような筆頭局長が、廊下からこちらを見やっていた。
一瞬緊張が走ったが、幸いなことに機嫌は悪くないようであった。
「えっと、今日は暑いから庭の花に水を」
手桶と柄杓を軽く持ち上げてみせると、フンと鼻で笑われた。
「そんなもの、お前がわざわざやる必要もないだろう。八木家の連中に任せておけ」
「まあ、そうですけど……非番だし、水を見てると涼しくなるし」
手桶の中で揺れる水が陽光を虹色に散らす。
芹沢は少し眩しそうに眉根を寄せた。
「……それはなんて花かわかるか?」
「え?」
予想外の問い掛けに、鈴花は目の前の花木を見やった。幾つか堅いつぼみをつけてはいたが、まだ花開かない木を判別するのは困難だった。
「……え~っと、わからないです。咲いてくれればわかると思うんですけど」
勇気を絞って正直に答えると、芹沢は呆れたように一言、
「芙蓉だ」
と告げた。
「え、ふよう?」
「お前も女ならそういうことも少しは知っていろ」
からかうような口調で言われ、恥ずかしさに思わず俯く。
「……はい、勉強します。でも本当に芹沢さんは博識ですよね」
「少なくともお前よりはだいぶ長く生きているからな……知らなくていいことも、知りたくないことも随分知っちまった」
どこか遠くを見る眼差し。幾つも修羅場をくぐってきた大人の男。
息をきらせて走っても追い付けそうもないような場所にいる人。
そう意識すると、なんだか途端に胸がせつなくなった。
女らしくもなくて、まだまだこどもで、剣士としても未熟で。
花開く気配のない堅いつぼみと同じ……。
もしも打ち明けてしまったら。
きっと笑われる。
初めてダンダラの隊服に袖を通したあの日。
数十もの槍を向けられて一歩も引かなかった、あの豪胆な姿を見た時から。
目を離すことが出来なくなった。
父子ほども年の離れたこの人に。
たぶん。
恋をしてしまった……。
「私も知りたいです……それを知ることで傷ついたとしても……それでほんの少しでも」
「ほんの少しでも?」
あなたに近付けるなら。強くなれるなら。
とりとめもない回想に見切りをつけて、すくっと立ち上がった鈴花は、激しさを増すばかりの雨に濡れた前髪をすくい上げ、ことが行なわれている屋敷を見つめた。
「……ここでただ待っているなんて嫌だ」
ぎゅっと両手を握りしめた。
「……ごめんなさい、土方さん」
あれから一生懸命調べた。
芙蓉の花は朝方に白い大輪の花を咲かせ、夕方までゆっくりと薄紅色に染まってゆき、一夜で花を終える。
たった一日だけ、はかなくも華麗に、大きく優雅に開く花。
「何のつもりだ、桜庭。お前には見張りを命じた筈だ」
土方の厳しく、緊迫した怒号に一瞬ひるみながらも、鈴花ははっきりと言った。
「もうその命令に従うことは出来ません」
「桜庭くん、それはいけない」
山南が一歩歩み出て、諭すように囁く。
「君がそこをどかないつもりなら、我々は君を斬らなくてはいけない。頼むからこのまま退いてくれ」
鈴花は首を横に振った。そして腰の刀に静かに手をかける。
「馬鹿野郎!! 抜くんじゃねえぞ!? 抜いたらお前も敵だぜ」
槍を構え直す原田を見ても決意は揺らがなかった。
「……私が芹沢さんを守ります」
「何をわけのわからねぇことを言ってやがる」
鈴花の背中で芹沢が舌打ちをした。
「お前に守ってもらう筋合いはない……ガキはとっとと帰れ」
「ほらほら、芹沢さんもあなたの出る幕じゃないと言ってますよ」
沖田は端正なおもてに酷薄な笑みをたたえた。
「勝負の邪魔、しないで下さいよ」
対峙する四人を見渡し、一度息を整えると、そっと芹沢を振り返った。
「今の私は隊士としてよりも女として。好きになった人のために花を咲かせたいです……」
にわかに芹沢の顔色が変わった。
「お前……」
願わくばあなたのために強く、あなたのために美しく。
たとえ一夜だけでも。
あなたのために咲いて、散らせて。
四人に向き直り、握り締めた刀を一息に抜こうとした。その瞬間。
「うるさい」
「……っ!?」
左の肩口に強い痛みが走り、世界が揺れて、一瞬呼吸が止まった。
気が付けば畳に転がって、先程まで自分が立っていた場所を見ていた。
「……な……どうして……?」
自分を殴り飛ばしたものが、芹沢の鉄扇だと気付いて唖然とした。
「……芹……沢さん……?」
痛みで立ち上がることが出来ない。
「おい、これで邪魔者はいなくなったぞ。続きをやってやる。とっととかかってきやがれ、小虫どもが」
早く立たなくてはならないのに、ゆっくりと意識が遠退く。視界が霞んで、五人の声も、鍔迫り合いの音も遠くなっていく。
「……せり、ざ、わ……さん……」
つぼみのまま、花も開けないまま、夜が明けていく。
目を開けると、夕つ方の茜色の庭にたたずんでいた。芙蓉の花が咲き乱れ、ほんのりと香る晩夏の庭。
縁側にあぐらをかいた芹沢が、杯を傾けている。
「おい、酌をしろ」
相も変わらない愛想のかけらもない声。
何故かいつものように恐くはなくて、鈴花は恨みがましい視線を投じた。
「酌をしろ、じゃないです」
「痛かったか」
「痛かったです」
「俺を恨むか?」
「恨みますよ」
ふと目を細め、真剣な顔つきで芹沢が呟いた。
「それでもお前を死なせたくなかったと言ったら?」
「……」
唇をかんだ。
「うそ……私なんてどうなったって構わないクセに……」
女として認めてなんてくれていなかったクセに。
「確かに女としてはまだまだだがな……命はってまで好いてくれる奴を憎く思う男なんざいねぇだろ?」
そう言って笑う芹沢の表情は今まで見たこともないほど優しく、穏やかだった。
「目の前に立ちはだかって俺に振り返った時。あの瞬間は、マジでお前に惚れてたかもな」
この芹沢鴨様がな、と楽しげに高笑いする。
「……芹沢さん……」
堅く堅く閉じていたつぼみが、ゆっくりとほころびる。
「……大好き」
「……わかったよ。わかったから、とっとと酌だ」
「……はい!!」
ゆっくりと、静かで幸福な一時がすぎていく。
短い夢から覚めると、自室の布団の中だった。
戸の隙間から朝日が差し込んできている。
雨の残り香。
左肩がじんじんと痛む。
それだけの事実が、現実に流れた時と、現実の運命を悟らせた。
声をあげて泣いた。
ほどなく、鈴花は真実と自らの想いを畳んで胸にしまいこみ、新選組を除隊した。
目まぐるしく移りゆく日本を見つめながら、最愛の人の墓を守って生涯を送る道を選んだ……。
「……私が芹沢さんを守ります」
《完》
PR
この記事にコメントする