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乙女ゲーマー麻咲(あさき)の、2.5次元を彷徨うブログ
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  プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

バイト先→某損保系コールセンター 

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2024/11/23 (Sat)
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2008/12/25 (Thu)
 予告通り、大石三部作をひとつずつupしていきます。

 まずはシリアス編。
 初めて書いた幕末恋華SSがこれでした。

 大石との恋愛っていえば、もうこういう形しかありえないだろうな……と思ってましたが、花柳をやってそれは間違ってなかったと思いました。


 例によって鬱話です。汗。

 暴力的な表現、というか結構グロい描写があるので、苦手な方は読まない方がいいですね。多分。

 これまた超展開なのですが、本編より史実に近い部分もあったりします。


 そんなところを踏まえてどんと来い、という方は先へお進み下さい↓↓↓

 《緋色の恋華》


 その日、青白い上弦の月の下で死神が刀を振るうのを見た。

 長く冷たい刃の切っ先は音もなく薄闇を滑り、空気の揺らぐのもわからぬままに、刹那にして一を二にも、五を十にも分けた。

 その光景を偶然に見つけた暫時には、一歩も動かれないまま、返り血に濡れた背中を見つめて息を殺す他なかった。

 真冬の乾いた風にまじって口笛の音が響く。

「なかなか、いい趣味してるね」

 闇の中で、死神・大石鍬次郎が振り返る。突き刺さるような切れ長の瞳が薄笑いを浮かべて少女の小柄な姿を映す。

「もう少しで新手と間違えて斬るところだったよ」

 月光を受ける刀から滴る血が、ほんのりと道に被る淡雪をぽつぽつと染める。緋色の華が咲く。

「あれ、どうかした?」

 人斬りは嘲笑する。

「そんなに震えて」

 少女は一歩退き、睨むような眼差しを向けて口を開いた。

「……今日は夜警巡察の当番じゃあないですよね? 大石さん」

「へえ、わざわざ仕事熱心を褒めに来てくれたわけか」

「ふざけないで」

 膝の震えを反映する声は、擦れて響く。

「今斬った人たちは一体誰です……?」

 大石は面倒臭そうに白い息を吐きながら答えた。

「脱走隊士御一行だけど?」

「隊規では脱走した隊士は捕縛して、切腹の筈でしょう!? 勝手な真似はよして下さい!!」

「あんたもたいがいうるさいねえ」

 うんざりしたように大石は口の端を曲げた。

「三日も人を斬らないと、腕が落ちる気がするんでね。……まあ、でも本音を言えば、ただ無償に斬りたくなるってだけかも」

「……あなた、おかしいんじゃない? 人を斬るのが楽しいなんて……命の重みがわからないの?」

 無惨に転がった肉の塊を見渡す。
 いつかの場面がそこに重なり、悪夢の記憶が呼び起こされる。嗚咽したいのを飲み込んで続ける。

「あなたは今夜と同じように、……平助くんや伊東さんたち御陵衛士……それに梅さん……死ななくていい人をたくさん死なせた。あなただけは絶対に許せない。……大嫌いよ」

 狂気に憑かれた魔性の剣士は、流れるような動作で愛刀を返し、少女のほうへ向けた。

「俺も、大嫌いだよ。桜庭鈴花。あんたみたいな人間も、つまらないお説教も、他人に太刀筋を見られるのもね」

 鈴花は腰のものに手をかけて姿勢を低くした。いつでも抜ける状態のまま目の前の男と見つめ合う。

 抜けば、斬り合えばおそらく自分は死ぬ。そう確信出来た。

 力の差は歴然。

 けれどもし、一太刀でも報いることが出来たなら。腕の一本でも落とせたなら。


 死んでも構わない。


 ところが。

 大石は決死の思いなどそ知らぬように刀を引いた。

「……え?」

 戸惑いつつも警戒を緩めない鈴花を鼻で笑う。

「なかなかいい目をするようになったなあと思って。今あっさり殺すのは勿体ない気がしてきたよ」

「何を……!?」

「その憎しみでもばねにしてもっと強くなったら? 面白い斬り合いが出来るようになったらまたおいで。その時は相手をしてやるから」

 大石は血を拭った刀身を鞘に収め、そのままきびすを返し、溶け出してぴちゃぴちゃ音を立てる雪道をゆっくりと歩み去っていった。

 あっけにとられるとともに脱力し、鈴花はその場に膝をついた。

 今はまだ斬るにも値しないと言われたようで、ただ無償に悔しさが込み上げた。

 声も出ない。

 少女と月と屍だけが残った辻を、また降りだした小雪が覆っていった。








 やがて時の流れは加速し、時代の奔流に押し流された新撰組は抗いきれぬまま解体した。隊士たちの多くが命を落とし、残った者も各地へと散った。

 桜庭鈴花と大石鍬次郎もまた戦場にて姿をくらましたのだった……。







 また月日は流れ、ある春の日のこと。


「……久しぶりですね」

 意を決して声をかけると、男は少しだけ顔を上げて虚ろな瞳を向けてきた。

「……あなたは生きてると思ってました」

 男は何も言わず、以前にも増して痩せ細り、こけた顔を無表情のまま晒していた。
 かつてそら恐ろしい槍先のようだった眼差しに光はない。

「……桜庭、鈴花?」

 疲れきったような力ない声がようやく漏れた。

 無理矢理のように口角が引き上げられ、あの皮肉な微笑がわずかに蘇る。

「……まさか、新政府軍にいるとはねえ」

 鈴花は唇を噛み、俯いた。

「そう……私は、結果として新撰組を、みんなを裏切った。生きるために」

 ただ生き残るために。

「生きて、もっともっと強くなって、あなたを捜し出すために。……あの夜の決着をつけるためだけに私は生きてきたんですよ、大石さん」

 そして、運命は再び巡り逢うことを許した。

 新政府軍によって捕らえられた「元新撰組隊士」で「坂本暗殺の主犯」と目される男。

 獄に繋がれたその容貌はひどく変わり果てていたものの、紛れもなく人斬り鍬次郎だったのだ。

「……ふうん……」

 大石は鈴花を牢の格子ごしに見つめた。

「……俺と斬り合いしたくて頑張ったってわけか。……けど……あいにく、希望には添えそうにないんだよね」

 大石は薄汚れた着物の袖から両腕を突き出して、鈴花の前に晒した。

「……あ……あ……」

 鈴花は目を見開き、息を飲んだ。

「終わってるだろ」

 大石は深い諦念をこめて、息を吐き出した。
 大石の右手は手首から先が無く、左手の指は二本しか残っていなかった。


「……もう人が斬れない」

 呟きを聞いた瞬間、鈴花の頬を一筋、涙が伝った。

「……そんなのって……」

 大石に勝つこと、復讐することだけを考えて、やみくもに生きてきた。

 けれど、結局彼と戦うことは永久に出来なくなってしまった。

 悔しい。

 あの夜の思いが蘇る。

 けれど。

 涙の理由は他にもあった。鈴花自身、無自覚なことであった。

 もう二度と、あの太刀筋を見ることは出来ない。

 誰よりも冷酷で狂っていて、ゆえにどうしようもなく美しかったあの剣を。

 人を斬る喜びにぎらつく、死神の技を。

 認められなかったが、どこかで魅せられていた。

 哀しかった。

「……こんな再会がしたかったわけじゃないのに」

 大石はくっと喉を鳴らして笑った。

「でも、俺はあんたを待ってたんだ」

「……私、を?」

 大石は重そうに細い身体を持ち上げて格子ににじり寄り、そこに頭をもたげた。そして、

「あんたは俺を、殺してくれるよね……?」

 はっきりと告げてきた。

「もう気が触れそうなんだよ。人が斬れなくなった今、もう生きる理由もない。一刻だって永らえたくない。早くくたばりたいのに、連中、取り調べだなんだと俺を生かそうとする。死なせてくれないんだ、絶対に」

「そんな……」

「だから今すぐ、俺を殺してよ。あんたの好きなだけ斬り刻んでいいから」

 格子に寄り掛かったまま下を見ている大石の顔は見えない。

「いいよね……?」

 しかし泣いているような気がして仕方がなかった。

「……勝手な人ね……だから大嫌いなのよ。あなたは人の命を弄んできた。だからあなたも他人に命を握られて、死すら与えられないんでしょう?」

 大石は何も言わず、動かなかった。

 鈴花もしばらく黙ったままそれを見つめていたが、やがてゆっくりと、左手を格子の向こうに伸ばして、大石の乱れた長い黒髪に触れた。

「でも許せないと言いながら、剣士として少しだけ憧れてた……大嫌いと言いながら、どこかで憎みきれなかった」

 また一筋、涙が伝う。

「多分、女としても……」

 右手に握った懐刀を隙間からくぐらせて、大石の喉笛に当てがった。

「私は結局、あなたに勝てなかったね」

 大石は少しだけ顔を持ち上げて、また鈴花を瞳に入れた。
 そこにはほんの微かだが輝きが戻っていた。

「また地獄で待ってるから……いつでも来なよ。今度はちゃんと殺り合おう」

「そうね。さよなら」

 右手に力を込めて、ぐっと押し込んだ……。

「……っぐっ……」


 少しの間身悶えて、一際美しく花を咲かせ、人斬りは散った。

 見つめる女の瞳からは淡雪のような涙がまだ零れ落ちている。

「あなた、やっぱりおかしいよ」

 仕事を終えた懐刀を彼の傍らに添え置いた。

「人を斬るって、ちっとも楽しくなんかないじゃない……」


 彼と牢獄に背を向けて、鈴花は歩きだした。
 その虚しさと哀しさを知りながらも、それでも生きるために。戦うために。強くあるために。
 いつかまた、出会う時まで。
 次は絶対に負けない。
 もうけしてどこへも逃がしはしないから……。


《完》

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