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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2008/12/25 (Thu)
二次創作関連
4年前、PS2版幕末恋華新選組に最初にハマった時に、当時書いていたブログにupしていたSSシリーズをちょっと晒してみます。
身内以外で知ってる人がいたら、ディスティニーですね。笑。
コンセプトは、サブキャラとの恋愛で、「伊東編」「芹沢編」そして「大石三部作」があります。全部で5本ですね。
稚拙な内容なのは今と変わらないんですが、DS版のサブキャラ勢の活躍を祝して再upします。
注意としては、
・幕末恋華新選組本編のネタバレを若干含みます。
・史実から引用した、本編にないオリジナル設定が出てきます。
・史実も本編も超越した超展開があります。笑。
・暴力的なシーン、鬱展開があります。
・主に大石のせいです。
↑↑以上の点に気をつけて、ご覧くださいませ↓↓
身内以外で知ってる人がいたら、ディスティニーですね。笑。
コンセプトは、サブキャラとの恋愛で、「伊東編」「芹沢編」そして「大石三部作」があります。全部で5本ですね。
稚拙な内容なのは今と変わらないんですが、DS版のサブキャラ勢の活躍を祝して再upします。
注意としては、
・幕末恋華新選組本編のネタバレを若干含みます。
・史実から引用した、本編にないオリジナル設定が出てきます。
・史実も本編も超越した超展開があります。笑。
・暴力的なシーン、鬱展開があります。
・主に大石のせいです。
↑↑以上の点に気をつけて、ご覧くださいませ↓↓
《時が二人を分かつまで》
「伊東さん!!」
息をきらせてようやく追い付いた。
「桜庭さん……?」
「屯所までお送りしますよ」
宵闇にもそれとわかる、人形的な完璧さを誇る美青年は、元より大きな瞳を見開いた。
「そのために走っていらっしゃったのですか?」
見つめられた少女は苦笑する。
「あはは、来ちゃいました」
青年はクスリと笑みをこぼして頷いた。
風も吹かない静かな夜の路地を、淡い灯りが一つゆっくり流れていく。
それは連れ立って歩く男女の燈で、一見すれば仲の良い恋仲同士のようであった。
しかし現実の当人たちの立場は大変に複雑な状況で、今の今まで寿命の縮むような話し合いが行なわれていたのである。
「でも良かったです。話が平和的にまとまって」
鈴花は今更のように安堵のため息を吐き出した。
「ええ、本当に。私も心から安心しましたよ」
伊東の顔にも同じような穏やかな色が浮かんでいる。
「平助くんたちも喜ぶだろうな……あ、でも、《梅さんを暗殺したのは新選組じゃない》って、みんなを説得するの大変じゃないですか? 特に篠原さんなんて完全に頭に血がのぼっちゃってるし」
「時間はかかるかもしれますが、わかってもらえる筈です。私の仲間たちですから。それに……」
「それに?」
「新選組が黒ならば、相手の懐に飛び込んで、古株の隊士の方に屯所まで送って頂いて無事なわけもないではありませんか」
伊東は尚も冗舌に続けた。
「最初にあなたの足音を聞いた時には、一瞬ひやっとしましたけどね」
言われてはっとする。
よく考えてみれば、油断をついて襲い掛かるために近づいた刺客と疑われても仕方のない状況だった。
現実に先程まで「万が一」会談が失敗した時のための伊東襲撃斑がこの小路周辺に身を潜めていたのだから。
そう改めて考えると、鈴花もまた背筋に寒いものを感じた。
「勇気がありますね、伊東さんは。本当に一人で乗り込んで来るんですもん」
はじめから薩摩の陰謀を予感していたとはいえ、あまりにも無謀な賭けではないだろうか?
伊東は「確かにそうですが」と受けて、静かに囁くような口調で続けた。
「私は新選組を疑いたくないし、敵にもしたくありませんでした。良い方ばかりですからね。短い間とはいえ仲間として生活し、皆さんのことはとてもよく見てきたつもりです。……あなたのことも」
「あ」
鈴花は短く声をあげ、立ち止まって伊東の顔を凝視した。
さりげなく。
前触れもなく。
夜気に冷えた互いの手が重なって、包まれた。
「い、いとっ」
「あなたは魅力的な女性ですね」
「……」
柔らかく握られた手の感触と、面と向かって言われた言葉の威力に鈴花の思考はほとんど停止していた。
「京へ上り、私の思想を理解してくれなかった妻と離縁して以来、女性には関心を持たないようにしていたのですが……」
包み込んだ鈴花の手を自らの胸に引き寄せて、少し気恥ずかしげに頬を染める。
「いつからか、あなたにひかれ始めていました」
その仕草の美しさに、鈴花の鼓動は唐突に早まった。
「伊東、さん……」
「隊を分離する際、あなたを誘うかどうかを随分悩みましたが、あなたを困らせたくなくて言えなかったのです」
確かに。
もし正式に誘われたとしても、照姫様への恩義から会津藩に従属する鈴花には新選組は捨てられない。
鈴花のことをよく見ていたという伊東には、それがよくわかったのだろう。
「覚えておいて下さい。私はあなたと同じ道を歩むことは出来ませんが、これからもずっとあなたを見ていますから」
自分が今、愛を打ち明けられているのだとようやくはっきり気付いた鈴花は、必死に返すべき言葉を模索する。
「あの、私……私も……伊東さんにはすごく憧れてて……その」
離れてからずっと不安で仕方がなかった。
……いつかあの人と戦わなくてはならないのだろうか?と。
そうならないとわかったのに、まだなぜだか不安で、思わず追い掛けてしまった背中……。
いつまでも離してもらえない手は、燃えるように熱く感じる。
「えっと、あの……嬉しいです」
胸の高鳴りは、遅咲きの恋の芽生え。
不思議な高揚感と幸福感が指先から伝う。
この人となら、お互いを信頼し合い、尊重し合いながら生きてゆけるかもしれない……。
そんな気がした。
「では迷惑ではないのですか? 私の想いは」
「と、とんでもないです! 迷惑なんかじゃ……あ」
握っていた手を離し、そっと肩に触れてきた。
「目を、閉じていただけませんか?」
「えっ……はい」
緊張にからだを強ばらせながら、鈴花はゆっくりと瞳を閉じた。
もう全身が熱くてわけがわからない。ぼんやりする。痛いくらい胸が音を立てる。
これが愛しいということなのだろうか?
目を閉じて、鈴花は待つ。
ほどなく、静かに口づけが下りてくる。そう思った。
しかし、そうではなくて。
「桜庭、さん……」
一瞬、触れられていた肩を痛いくらい強く掴まれて、そのまま伊東の細身な体が、しなだれるように鈴花を抱き締めてきた。
「……えっ!?」
律儀に目を閉じたまま、鈴花は道に尻餅をついた。計らずしも抱き合うような格好で。
「伊東さん? 一体どうし……」
背中に回した手に不可解な感覚があった。
思わず目を開けた鈴花は、さっきまで握られていた温もりの残る自らの手を見やった。
……赤い。
「なに……これ?」
血に染まった手。
伊東の肩ごしに、同じ色にみるみる染まっていく伊東の背中が見える。
「……っく……」
「伊東さん!?」
「……あなたは、逃げて下さい……」
逃げる? 何から?
鈴花はゆっくりと視線を上げていった。
そして、絶句した。
鮮やかな血に塗れた、刀身の長い独特の剣。
返り血で着物と顔を彩られた男が、三日月のような吊り目でニタニタと笑う。
「二流を収めた剣の猛者も、頭と口ばかり使ってるうちにとうに錆びついたらしいね。こんなに近づいても気配すら感じないなんてガッカリだよ」
耳障りな嘲笑が低く響いた。
「惨めだねえ」
鈴花はまだしっかりと呼吸と鼓動を続ける伊東を抱き締めたまま、男をきつく睨んだ。
「なぜ斬ったの」
「命令だからね」
「近藤さんは斬るなと伝令した筈よ」
「さあ、聞いてないね」
「……あなたはっ!」
命令だから、などではない。
ただ自分の手で斬りたかっただけ。人殺しを楽しみたいだけ。
そのための大義を求めて新選組を名乗っているだけ。
「……桜庭さん……逃げて」
苦痛に喘ぎながら伊東は声を絞り出す。
「……そして、私の仲間に……私が、死んだのは、近藤さん、たちの、望むところでは……ない、と……伝え……」
「そんな……!!」
伊東の傷が深いのは明白だった。このままでは本人が言うように命はない。
伊東が新選組隊士に討たれたとなれば、御陵衛士との全面抗争はもはや避けられない。
「……さあ、今日は祭りだ。久々に楽しい夜になりそうだな」
「……最低ね」
「そう? 俺は最高の気分だけど」
鈴花は込み上げる感情を必死で飲み込んだ。
今感情的になっては負けだ。
「……私は何も諦めません。だから、伊東さんも諦めないで。私を信じて」
絶対に誰も死なせたりしない。
「……はい……」
今一度、誓いを交わすように一度だけ指を絡めた。 ゆっくりと伊東の身体を路傍に横たわらせて、鈴花は立ち上がった。
運命を切り開くために、最初に戦わなければならない強大なものと向き合うために……。
「俺とやるのかい?」
「そう。そして必ず私が勝つ」
冷え冷えとした夜の闇で、後に「油小路の戦い」と呼ばれた乱闘があった。
かつての仲間たちが血で血を洗い、命を落とした悲惨な戦いだった。
結局、誰にも争いを止めることは出来なかった。
しかし。
運命は少しだけ動いていた……。
「はい、これお土産!」
屈託のない少年のような笑顔を浮かべた青年が、ひょいと包みを手渡すと、あの夜よりほんの少し大人びた少女もにっこりと笑みを返した。
「いつもありがとね! 平助くん」
油小路の戦いの直前、間一髪、永倉に助けられて大石に勝利した鈴花は、衛士の屯所に駆け付けた。
鈴花の言葉を聞き入れ、戦いに加わらなかった藤堂平助は、保身のために死んだことになってはいるが、この通り無事だった。
救うことが出来た。
今は名前を変えて、無名の平隊士として新選組に戻っている。
とはいえ、これは「一時的な措置」らしい。
時がきて、戻るべき場所に戻るまでの。
「……どう? 伊東先生は」
「うん。なんとなくだけどね、前より顔色がよくなった気がする」
「……あ、そうかも」
質素な屋敷の一室で、伊東は眠っていた。
斬られた際に仮死に陥っていたものの、処置が間に合ってほどなく蘇生した。
しかし、一月経った今も意識は未だに戻っていない。
鈴花は隊を離れて、隠れて伊東の世話をしている。このことは幹部格しか知らないことだ。
伊東は死んだと信じている衛士の残党の耳に入ればまた争いの火種になりかねない。
「平助くん、伊東さんが気が付いたらやっぱり……?」
「伊東先生が行くところについていくよ。そう決めたからね」
「うん。平助くんならきっと支えてあげられるよ……私の分も」
「……戻るんだね」
「私は私の道にね」
一緒にいられるのは今だけ。目覚めた時が別れる時だ。
鈴花は新選組として忠義を尽くし、彼らは彼らの思想のために戦い続ける。
その途中で命が尽きようとも。
どちらかが道を曲げて、傍に寄り添って生きるのもいいかもしれない。
しかしそれでは互いが愛した姿ではなくなってしまうから。
「かっこいいね」
「ありがと」
「でもさ」
「ん?」
「伊東先生、多分もうちょっとだけ傍にいたいんじゃないの? だから起きないんだよ、きっと!」
「あはは、なによ、それ!」
笑い飛ばしてはみたものの、鈴花こそが思っていたのかもしれなかった。
もう少しだけ、あと少しだけ穏やかな二人の生活を……と。
もう一度二人が見つめ合って、手をつないで、出来なかった口付けをして、笑って別れの挨拶をするその日が訪れるまで。
《完》
「伊東さん!!」
息をきらせてようやく追い付いた。
「桜庭さん……?」
「屯所までお送りしますよ」
宵闇にもそれとわかる、人形的な完璧さを誇る美青年は、元より大きな瞳を見開いた。
「そのために走っていらっしゃったのですか?」
見つめられた少女は苦笑する。
「あはは、来ちゃいました」
青年はクスリと笑みをこぼして頷いた。
風も吹かない静かな夜の路地を、淡い灯りが一つゆっくり流れていく。
それは連れ立って歩く男女の燈で、一見すれば仲の良い恋仲同士のようであった。
しかし現実の当人たちの立場は大変に複雑な状況で、今の今まで寿命の縮むような話し合いが行なわれていたのである。
「でも良かったです。話が平和的にまとまって」
鈴花は今更のように安堵のため息を吐き出した。
「ええ、本当に。私も心から安心しましたよ」
伊東の顔にも同じような穏やかな色が浮かんでいる。
「平助くんたちも喜ぶだろうな……あ、でも、《梅さんを暗殺したのは新選組じゃない》って、みんなを説得するの大変じゃないですか? 特に篠原さんなんて完全に頭に血がのぼっちゃってるし」
「時間はかかるかもしれますが、わかってもらえる筈です。私の仲間たちですから。それに……」
「それに?」
「新選組が黒ならば、相手の懐に飛び込んで、古株の隊士の方に屯所まで送って頂いて無事なわけもないではありませんか」
伊東は尚も冗舌に続けた。
「最初にあなたの足音を聞いた時には、一瞬ひやっとしましたけどね」
言われてはっとする。
よく考えてみれば、油断をついて襲い掛かるために近づいた刺客と疑われても仕方のない状況だった。
現実に先程まで「万が一」会談が失敗した時のための伊東襲撃斑がこの小路周辺に身を潜めていたのだから。
そう改めて考えると、鈴花もまた背筋に寒いものを感じた。
「勇気がありますね、伊東さんは。本当に一人で乗り込んで来るんですもん」
はじめから薩摩の陰謀を予感していたとはいえ、あまりにも無謀な賭けではないだろうか?
伊東は「確かにそうですが」と受けて、静かに囁くような口調で続けた。
「私は新選組を疑いたくないし、敵にもしたくありませんでした。良い方ばかりですからね。短い間とはいえ仲間として生活し、皆さんのことはとてもよく見てきたつもりです。……あなたのことも」
「あ」
鈴花は短く声をあげ、立ち止まって伊東の顔を凝視した。
さりげなく。
前触れもなく。
夜気に冷えた互いの手が重なって、包まれた。
「い、いとっ」
「あなたは魅力的な女性ですね」
「……」
柔らかく握られた手の感触と、面と向かって言われた言葉の威力に鈴花の思考はほとんど停止していた。
「京へ上り、私の思想を理解してくれなかった妻と離縁して以来、女性には関心を持たないようにしていたのですが……」
包み込んだ鈴花の手を自らの胸に引き寄せて、少し気恥ずかしげに頬を染める。
「いつからか、あなたにひかれ始めていました」
その仕草の美しさに、鈴花の鼓動は唐突に早まった。
「伊東、さん……」
「隊を分離する際、あなたを誘うかどうかを随分悩みましたが、あなたを困らせたくなくて言えなかったのです」
確かに。
もし正式に誘われたとしても、照姫様への恩義から会津藩に従属する鈴花には新選組は捨てられない。
鈴花のことをよく見ていたという伊東には、それがよくわかったのだろう。
「覚えておいて下さい。私はあなたと同じ道を歩むことは出来ませんが、これからもずっとあなたを見ていますから」
自分が今、愛を打ち明けられているのだとようやくはっきり気付いた鈴花は、必死に返すべき言葉を模索する。
「あの、私……私も……伊東さんにはすごく憧れてて……その」
離れてからずっと不安で仕方がなかった。
……いつかあの人と戦わなくてはならないのだろうか?と。
そうならないとわかったのに、まだなぜだか不安で、思わず追い掛けてしまった背中……。
いつまでも離してもらえない手は、燃えるように熱く感じる。
「えっと、あの……嬉しいです」
胸の高鳴りは、遅咲きの恋の芽生え。
不思議な高揚感と幸福感が指先から伝う。
この人となら、お互いを信頼し合い、尊重し合いながら生きてゆけるかもしれない……。
そんな気がした。
「では迷惑ではないのですか? 私の想いは」
「と、とんでもないです! 迷惑なんかじゃ……あ」
握っていた手を離し、そっと肩に触れてきた。
「目を、閉じていただけませんか?」
「えっ……はい」
緊張にからだを強ばらせながら、鈴花はゆっくりと瞳を閉じた。
もう全身が熱くてわけがわからない。ぼんやりする。痛いくらい胸が音を立てる。
これが愛しいということなのだろうか?
目を閉じて、鈴花は待つ。
ほどなく、静かに口づけが下りてくる。そう思った。
しかし、そうではなくて。
「桜庭、さん……」
一瞬、触れられていた肩を痛いくらい強く掴まれて、そのまま伊東の細身な体が、しなだれるように鈴花を抱き締めてきた。
「……えっ!?」
律儀に目を閉じたまま、鈴花は道に尻餅をついた。計らずしも抱き合うような格好で。
「伊東さん? 一体どうし……」
背中に回した手に不可解な感覚があった。
思わず目を開けた鈴花は、さっきまで握られていた温もりの残る自らの手を見やった。
……赤い。
「なに……これ?」
血に染まった手。
伊東の肩ごしに、同じ色にみるみる染まっていく伊東の背中が見える。
「……っく……」
「伊東さん!?」
「……あなたは、逃げて下さい……」
逃げる? 何から?
鈴花はゆっくりと視線を上げていった。
そして、絶句した。
鮮やかな血に塗れた、刀身の長い独特の剣。
返り血で着物と顔を彩られた男が、三日月のような吊り目でニタニタと笑う。
「二流を収めた剣の猛者も、頭と口ばかり使ってるうちにとうに錆びついたらしいね。こんなに近づいても気配すら感じないなんてガッカリだよ」
耳障りな嘲笑が低く響いた。
「惨めだねえ」
鈴花はまだしっかりと呼吸と鼓動を続ける伊東を抱き締めたまま、男をきつく睨んだ。
「なぜ斬ったの」
「命令だからね」
「近藤さんは斬るなと伝令した筈よ」
「さあ、聞いてないね」
「……あなたはっ!」
命令だから、などではない。
ただ自分の手で斬りたかっただけ。人殺しを楽しみたいだけ。
そのための大義を求めて新選組を名乗っているだけ。
「……桜庭さん……逃げて」
苦痛に喘ぎながら伊東は声を絞り出す。
「……そして、私の仲間に……私が、死んだのは、近藤さん、たちの、望むところでは……ない、と……伝え……」
「そんな……!!」
伊東の傷が深いのは明白だった。このままでは本人が言うように命はない。
伊東が新選組隊士に討たれたとなれば、御陵衛士との全面抗争はもはや避けられない。
「……さあ、今日は祭りだ。久々に楽しい夜になりそうだな」
「……最低ね」
「そう? 俺は最高の気分だけど」
鈴花は込み上げる感情を必死で飲み込んだ。
今感情的になっては負けだ。
「……私は何も諦めません。だから、伊東さんも諦めないで。私を信じて」
絶対に誰も死なせたりしない。
「……はい……」
今一度、誓いを交わすように一度だけ指を絡めた。 ゆっくりと伊東の身体を路傍に横たわらせて、鈴花は立ち上がった。
運命を切り開くために、最初に戦わなければならない強大なものと向き合うために……。
「俺とやるのかい?」
「そう。そして必ず私が勝つ」
冷え冷えとした夜の闇で、後に「油小路の戦い」と呼ばれた乱闘があった。
かつての仲間たちが血で血を洗い、命を落とした悲惨な戦いだった。
結局、誰にも争いを止めることは出来なかった。
しかし。
運命は少しだけ動いていた……。
「はい、これお土産!」
屈託のない少年のような笑顔を浮かべた青年が、ひょいと包みを手渡すと、あの夜よりほんの少し大人びた少女もにっこりと笑みを返した。
「いつもありがとね! 平助くん」
油小路の戦いの直前、間一髪、永倉に助けられて大石に勝利した鈴花は、衛士の屯所に駆け付けた。
鈴花の言葉を聞き入れ、戦いに加わらなかった藤堂平助は、保身のために死んだことになってはいるが、この通り無事だった。
救うことが出来た。
今は名前を変えて、無名の平隊士として新選組に戻っている。
とはいえ、これは「一時的な措置」らしい。
時がきて、戻るべき場所に戻るまでの。
「……どう? 伊東先生は」
「うん。なんとなくだけどね、前より顔色がよくなった気がする」
「……あ、そうかも」
質素な屋敷の一室で、伊東は眠っていた。
斬られた際に仮死に陥っていたものの、処置が間に合ってほどなく蘇生した。
しかし、一月経った今も意識は未だに戻っていない。
鈴花は隊を離れて、隠れて伊東の世話をしている。このことは幹部格しか知らないことだ。
伊東は死んだと信じている衛士の残党の耳に入ればまた争いの火種になりかねない。
「平助くん、伊東さんが気が付いたらやっぱり……?」
「伊東先生が行くところについていくよ。そう決めたからね」
「うん。平助くんならきっと支えてあげられるよ……私の分も」
「……戻るんだね」
「私は私の道にね」
一緒にいられるのは今だけ。目覚めた時が別れる時だ。
鈴花は新選組として忠義を尽くし、彼らは彼らの思想のために戦い続ける。
その途中で命が尽きようとも。
どちらかが道を曲げて、傍に寄り添って生きるのもいいかもしれない。
しかしそれでは互いが愛した姿ではなくなってしまうから。
「かっこいいね」
「ありがと」
「でもさ」
「ん?」
「伊東先生、多分もうちょっとだけ傍にいたいんじゃないの? だから起きないんだよ、きっと!」
「あはは、なによ、それ!」
笑い飛ばしてはみたものの、鈴花こそが思っていたのかもしれなかった。
もう少しだけ、あと少しだけ穏やかな二人の生活を……と。
もう一度二人が見つめ合って、手をつないで、出来なかった口付けをして、笑って別れの挨拶をするその日が訪れるまで。
《完》
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