住めば都の花柳館 第十三回 美しき少年漫画の世界へようこそ！！の巻

　お待たせしました、咲彦編です。

　咲彦と庵は史実キャラクターじゃないから、キーワードは特にないっス。

　じゃあ、能書きはさておいて→リンクの向こうネタバレレビューへお進み下さいな☆

　咲彦(サキヒコ)。
　史実には存在しないオリジナルキャラクターで、恐らく恋愛対象ではシリーズ最年少。

　花柳流先代宗家の息子(ただし血縁はないらしい)にして師範代の、天才少年。
　新撰組の武田観柳斎がわざわざ見に来るほどなんで、巷では美少年剣士として知れ渡ってる模様。

　明るく素直な好青年ですが、稽古をサボりがちだったり、すぐに調子に乗って突っ走るところがあったり。なかなか危なっかしいやつです。
　しかもとんでもない実力を持っているのに、致命的な「へたれ」で、少しでも殺気を感じるとびびって手も足も出なくなってしまう。
　実戦では全く使えないというふがいなさ。

　咲彦と兄妹(姉弟かな　笑)同然に育った幼馴染みであるヒロインも、しばしばそんな咲彦に呆れております。


　そんなへたれ天才剣士の一大転機。

　それは新撰組の斎藤一との出会いです。

　竹林の中で一人剣を振っている斎藤の姿を見て衝撃を受けます。
　稽古をする姿を見るだけで実力のほどがわかるくらい凄いらしい。

　ちなみに私の記憶が確かなら、前作「幕末恋華・新撰組」では、「斎藤は天才だから稽古には参加しない」みたいなニュアンスで描かれてた部分がありましたが、今回斎藤はみんなに隠れてしっかり稽古していることが判明しました。笑。

　意外とイヤらしい人だったんですね。爆。

　その後、咲彦とヒロインは裏家業のほうの任務の最中に斎藤と再び遭遇し、「どうやったらそんなに強くなれるんですか～！？」とか馴れ馴れしく近付いて行った咲彦、物凄く辛辣に説教されます。笑。

　しかし咲彦の斎藤への憧れはここからどんどん加熱していきます。

　ヒロインや、他の花柳ファミリーと話していてもいつも「斎藤さんは本当に強い」「斎藤さんがすごい」と斎藤ネタばっかり話してきます。

　そして自分も斎藤みたいな強い男になろうと、いきなり稽古に励みだし、周囲が驚くほどめきめきと腕を上げていきます。


　何かを思い出すと思ったらyasuだ。笑。
　yasuのHYDEに向けた病的な(爆)憧れっぷりを連想した。


　そんなある日、憧れの斎藤が数人の隊士とともに天満屋にて三浦休太郎警護の任務につきます。

　咲彦はあからさまに迷惑そうな斎藤に、自分にも警護を手伝わせてくれと懇願し、これを局長が許可、ほとんど嫌々ながらヒロインも同行することになってしまいます。

　しかし、いざ襲撃が起こると、咲彦は最初こそちょっとびびったものの、今までのへたれキャラを返上する活躍を見せ、斎藤の危機を救い、斎藤から礼を言われます。

　咲彦は自分でも自分の強さにびっくりしていましたが、憧れの斎藤に礼を言われた＝認められたとして有頂天になり、自信を抱くと同時に「もっともっと強くなりたい」と思うようになります。

　そこで花柳流の奥技を修得したいと願うものの、慈照からはなかなか許しが出ません。


　そのしばらく後、花柳ファミリーが世話になっている遊郭「香久夜楼」にタチの悪い客が来て絡むという事件が起きます。
　助けに呼ばれた先代宗家の慈照はあくまでも話し合いで客に引き取ってもらおうと低姿勢で接し、頭を下げます。

　咲彦の目にはならず者に頭を下げてへらへらしている父親がとても情けない人間に映ります。

　ならず者がヒロインにまで手を出そうとしたことをきっかけにぶち切れた咲彦は、刀を抜いて戦おうとするのですが、駆け付けた庵がこれを制し、自らの放つ殺気だけで敵を追い払います。

　刀を安易に抜いたとして庵に叱られた咲彦は、飛び出して行ってしまいます。

　ヒロインがついて行くと、咲彦は新撰組に入隊するつもりだからついて来てほしいと告げます。

　花柳館で学ぶことなどもう何もない、あそこにいたら自分はこれ以上強くなれないと言う咲彦に、ヒロインは「どうしてそんなに強くなりたいの？」と問います。

　咲彦は「おまえを守りたいからだよ」「いい加減に気付けよ」と長年温めていた想いを打ち明けます。

　そう、咲彦はずっとヒロインのことが好きだったんですな。
　そこを踏まえて相馬ルートを振り返るとまた面白いんじゃないでしょうか。


　かくして咲彦とヒロインは新撰組に入隊することになります。

　ヒロインはあんまり乗り気じゃないんだけど、咲彦を放っておけなくて仕方なくついて行く感じ。

　まあもちろんヒロインも咲彦のことを大切に想っていたからこそなんでしょうがね。


　新入隊士２人は旧幕府軍に加わり、戦場へ出るのですが、新政府軍の近代兵器の前には手も足も出ずに、敗戦していくこととなります。

　しかし咲彦は戦場においてその力を爆発的に発揮し、ほとんど人間とは思われないような阿修羅のごとき様相で、敵の兵をバッタバッタ倒します。

　やがて敵軍から「化け物」と呼ばれ、恐れられる存在になるのですが、味方の撤退命令を無視して戦い続けるなど、無謀な振る舞いが目立つようになっていきます。

　ヒロインはその度に咲彦を追い掛けて、どんどん傷だらけになっていきますが、そのことにすら気付かない有り様。


　斎藤らと供に、北上する土方たちと袂をわかって会津での死闘に参加する咲彦とヒロイン。

　相変わらず暴走を続ける咲彦の前に、思いがけない敵が現れます。

　知らぬ間に新政府軍の遊軍参謀になっていた庵です。

　咲彦は今なら庵にも負ける気はしないと言い、庵に斬りかかりますが、庵は避けることも反撃することもせず、その刃を身に受けます。

　たじろぐ咲彦に「後ろを見てみろ」と言う庵。

　咲彦の後ろには、咲彦が倒した敵がごろごろ転がっています。

　地獄絵図でございます。

　「それがお前の求めた強さの結果か？」と問われ、動揺した咲彦は、撤退後「本当の強さとは何か？」を改めて考えるようになり、ある夜、斎藤にその答えを問います。

　斎藤は答えを聞く相手が違うと言い、陣の裏手にある水辺に行ってみろと促します。

　咲彦が言われた通り水辺に行くと、なんとヒロインがすっぱだかで沐浴中。

　斎藤さん、わかってて行かせたとすると……重ね重ね嫌らしい人だ。爆。


　咲彦は超取り乱しまくるんですが、ヒロインは赤い顔してうつむき、胸を布で隠しながら後ろを向く……この子はそういう子です。

　全然関係ないけど、状況から「キノの旅」の「帰郷」思い出した。笑。
　咲彦が「よけなけ」「ぬ？」にならなくてよかったです。


　咲彦、おもいっきり取り乱した後いきなり大胆な行動に出ます。
　ちゃぷちゃぷと水に入ってヒロインを後ろからギュッ。

　自分が無茶したせいで傷だらけになってしまったヒロインの身体を見て、自分の愚かさに気付いた咲彦。

　自分が求めていた「強さ」は敵を倒すための「強さ」ではなく、ヒロインを守るための「強さ」だったことをやっと思い出します。


　本来の自分を取り戻した咲彦は斎藤から、ヒロインともども除隊を命じられます。

　先のない新政府軍とともに心中させるのは可哀想だと思ったようですね。

　死地に向かう仲間達に置き去られた二人は、夜空の下で互いの気持ちを確かめ合い、１つの決意を固めて朝を迎えます。


　そして決死の戦いに挑む斎藤たちの前に、咲彦とヒロインが現れます。

　たとえ命を落とそうとも、ともに戦ってきた大切な仲間達と最後まで戦い抜く、それが二人の決意でした。

　力の限り戦いながらも次第に敵に追い詰められ、もはやこれまでと二人で自害して果てようかというまさにその時。

　庵の計らいによって颯爽と現れた咲彦の実父・慈照が二人の窮地を救います。
　初めて父の本領を見た咲彦はここでようやっとその実力を思い知るわけです。

　咲彦は慈照に花柳流の奥技を教えてくれるように改めて頼みますが、慈照はもう咲彦に教える必要はないと語ります。

　花柳流の奥技とは「守る心」。
　ただ敵を倒すためではなく、大切なものを守りたいという心があって初めて強くなれるのが花柳流というわけですな。


　なんとなく狐につままれた気分ですが、咲彦が納得したならそれでいいんです。笑。


　かくして生きて花柳館へと帰還した咲彦は、花柳流の三代目となって、今度は自分が人々に花柳流の精神を伝えるのだと決意を新たにします。

　最愛のヒロインに「手伝ってくれるね？」と囁き、夜空を臨む道場の屋根の上でそっと口付けを交し、めでたしめでたし……となります。


　咲彦というキャラクター、そして彼のルートは見事に少年漫画のヒーローのセオリーを踏んでます。


　才能がありながら、精神的にまだまだ未熟な発展途上の少年。

　少年の密かな想い人は、ちょっと鈍感だけど健気で可憐な幼馴染みの女の子。

　強い男に出会い、憧れる。

　父親に対する若さゆえの反抗心。

　強さを求め過ぎて、強さに飲まれそうになるという展開。

　少年を目覚めさせるためにあえて憎まれ役を担う、お師匠さん。

　仲間のために命をかけて戦いに行くという選択。


　最終的には精神論で押し切ってしまう。笑。

　最後は大団円。


　努力・友情・勝利ですわ。爆。


　水辺のシーンとか、屋根の上のキスとか、ラブシーンのシチュエーションも少年漫画的じゃないですか？？

　他のキャラクターならエロくなりそうだけど、あくまで爽やかで可愛らしい感じをキープしてますわ。


　正統派でシンプルなシナリオだし、前作の人気キャラクター・斎藤を大きく扱っていてとっつきやすいと思うので、初回プレイに適してるんじゃないかなあと。

　あとカップリング設定を斎藤×鈴花にしておくと、鈴花がヒロインを気遣ってくれる場面がいくつかあったり、見覚えのあるシーンが追加されたり、なかなかおいしいですぞ☆


　さて、次はいよいよラストの庵さんですか。
　なるべく早めにUPします！