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  プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

バイト先→某損保系コールセンター 

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2007/11/21 (Wed)
 タイトル、変に気合いの入った変換ミスをしたのであえてそのままで。笑。

 そんなわけで、風邪引いちゃったよ。

 といっても症状は重くなくて、微熱が続いてダルいのと、ちょっと喉に違和感があるくらい。

 去年、サウスケラストツアーの札幌で熱を39度出した時に比べればなんでもないぜ。笑。

 見知らぬ街で意識朦朧としながら駆け込んだ小さい薬局のおじさんは元気だろうか。
 簡単に症状を言ったらルルを出してくれたんだが、あのルルがなかったらライブに参加どころか、帰ってくることもできなかったよ。

 それ以来風邪引いたらルルを飲むことにした。ルルは偉大です。

 あの時のライブのことは全然覚えてないけど、ハコのスタッフが実に感じのいい人たちだったのと、薬局のおじさんの笑顔と、ルルの凄さだけは忘れない。

 札幌にはまた行きたいが、いつになるかなー。

 もう一頑張り働いて、帰ったらAngeloのDVD見るぞー☆

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2007/11/15 (Thu)
 最近コールセンターの仕事の合間にノートにエセ漫画を執筆中。
 その名も「ドンペリ戦隊ホストマン」。
 タイトルの元ネタはVitamin XのイベントDVDで小ネタとして出てきた「ホスト戦隊ドンペリマン」。引っくり返しただけ。笑。

 隣のデスクにどう見てもホストにしか見えない新人が入って来て、みんなでいろんな妄想をしていたのがきっかけで、勝手に彼をモデルにした漫画を書き始めてしまったという。笑。

 なにしろ片手間に描いてるからノープランだし、絵は専門外だから適当もいいとこだけど(基本背景とか一切描かないしね 笑)、一応ストーリーとキャラクターをご紹介。




《ストーリー》

 一流店のナンバー1ホストのみで結成された新宿歌舞城町(読みはカブキチョウだが、架空の街)の守護神・ドンペリ戦隊ホストマン。彼らにはある悩みがあった。
 戦隊といえば五人が基本にも関わらず、イエローが空席のため長きに渡り四人での活動を続けていたのだ。
 イエロー=三枚目というイメージの悪さと、黄色いスーツのダサさに誰もが敬遠する「ホストイエロー」。
 諦めかけた彼らの前に、失敗続きでクビになったばかりの冴えない元ホスト・真(マコト)がタイミングよく(?)現れてしまい……。


《主な登場人物》



【真(マコト)】

 壊滅的な不器用さと、話下手のために失敗ばかりして、前の店を一ヶ月弱で首になった冴えないダメダメホスト。

 しかし、ホスト=女性を楽しませてあげる仕事、と純粋に信じている珍しい男。

 単純でおだてに弱いお調子者だが、正義感が強く、前向きな明るい性格の持ち主。
 ダメ元で面接を受けた、歌舞城町一の名店「シャーロット」にホストイエロー襲名を条件に採用される。

【薔夜(ソウヤ)】


 ホストマンのリーダー・ホストレッド。
 歴史ある歌舞城町一のホストクラブ「シャーロット」のナンバー1ホスト。
 オーナーの子息でもある。
 実質上の店の経営と、歌舞城町を自治する使命を父親から引き継いだ。
 一見線が細く、中性的な雰囲気を持つが、意外と硬派で骨太な人物。穏やかで知的な話し方をする。
 ただし銃火器マニアで、こちらが絡むと人格が変貌する。
 自らがイエローに任命した真には「ジュニア」と慕われ、師弟のような関係であり、何かと世話を焼いている。



【雪(ユキ)】


 ホストホワイト。
 ホストクラブ「ZERO-G(ゼロジー)」のナンバー1ホスト。
 薔夜とは幼馴染みの腐れ縁。かつては「シャーロット」のナンバー2だったが、独立して店を構えた。
 ホストマン一の武闘派で、ワイルドで男気があり、義理人情を重んじる熱い男だが、足し算もままならないほど頭が弱い。
 あまりにも丼勘定な経営をしているため、薔夜からよく説教をされている。
 筋トレを日課としており、少々ナルシスト傾向にある。
 真に「兄貴」と呼ぶよう強制している。



【深影(ミカゲ)】


 ホストブラック。関西人。
 東京進出をもくろむ大阪の名店「LOVE SICK」新宿支店のナンバー1。
 何を考えているかわからないような不思議な雰囲気を持つ。
 巧みな弁舌とフットワークの軽さを武器としており、狡猾で計算高い人物。
 状況不利と見ればあっさり敵に寝返るほどだが、言い訳も天才的なので、また何食わぬ顔で戻ってきたりする。
 愛称は「ミカちゃん」。


【桜樹(オウジュ)】


 ホストピンク。
 「麗苑(レオン)」のナンバー1ホスト。
 一見十代の少年のような容姿のため、しばしば補導されかける。
 無邪気で自由奔放な性格で、他のホストの指名客を横盗りするのが大好き。
 極Sであり、拷問グッズのコレクションが趣味という危険人物。
 おまけにバイセクシャルを公言しており、しょっちゅう真にセクハラまがいな行為を行う。
 観察眼が鋭く、唯一深影の裏切り行為を見抜くことができるが、後でお仕置きしたいがために野放しにすることが多い。
 



 ……という感じなんだけど、まだヒロインはおろか敵も出てきてない。何と戦ってるんだかよくわからん。笑。

 一応イメージカラーのスーツで胸に同系色の薔薇、そしてサングラスという戦闘服姿は出てきた。


 とにかく早く女子を出したい。でないとBLになってしまいそうだ。笑。

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2007/11/14 (Wed)
 二枚同時リリースのキャラクターソングCD「庵と大石鍬次郎」「辰巳と富山弥兵衛」ゲット。

庵「志」
大石「晦冥の剣」
辰巳「問」
富山「東西南北」

 改めて見てもすっげータイトルばかりだ。
 4曲とも非常にライブで乗りにくい曲だが、渋い曲だった。
 辰巳あたりが激しい曲で来るかと思ったけど、そうでもなかった。意外。

 ヒューネックスのはっちゃけソングや、ネオロマのなんでもありな感じに慣れてしまっていたが、通常作品の世界観を尊重したらこうなるよな。


 いわゆる普通のラブソングは一曲もなく、どれも本人の生きざまを歌った歌。

 ただ庵の場合は、ほとんどヒロインのためだけに生きてきた男なので、乱世の中で自分なりの生き方を見い出したヒロインを、自分の元から送り出すといった曲。
 ヒロインが庵以外を選んだ時の彼の気持ちはこんな感じなんだろうか。そう考えるとせつねー。


 そして、今回もT6の時同様歌唱指導が入ってるんだが、正直イマイチ価値が見い出せないので、モノローグとかミニドラマにしてくれないかなあ。

 ただし大石のこ憎たらしいコメントだけはツボにハマったが。笑。

 次回は本命の陸奥のCDが出るんで楽しみっす。

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2007/11/13 (Tue)
「なんだ、まだ誰も来てねェのか」

「はい、紅朱様が一番乗りですわ」

 突発クリスマスパーティーの最初の客が着いた時、日向子はパーティーの会場として解放するピアノ室の準備を進めていた。

 といっても料理や何かは買い出し部隊が到着するまで用意できないため、テーブルを用意した以外は、少し物を動かしたり、掃除したりという程度だが、紅朱は壁の色が他と違う一角を目にとめて、

「日向子、アレは撤去したのか?」

 と問うた。

 アレとは以前訪問した時に見た、日向子の大切なタペストリーのことだ。

「ええ、今夜は」

 日向子がそう答えると、紅朱は苦笑した。

「あんまり俺に気ィ使うな……後で綾に睨まれちまうだろうが」











《第10章 吸血鬼 -baptize-》【3】










 やることはやりつくした日向子は、簡易ベッドをソファーがわりにして、座っていた紅朱の横に人一人分くらいの間隔を空けて座った。

「皆様遅いですわね」

「ああ。綾たちは美々を迎えに行ったから仕方ねェが、蝉と有砂は何やってんだろうな。
まさか久々の再会に号泣しながら抱き合ってるわけでもねェだろ」

 冗談で言ったわりに、実はなかなかいい線をついている。

「まあ、あいつらの遅刻癖は今に始まったことじゃなかったか……」

 などと言いながら、日向子から見ても紅朱はすこぶる機嫌がよさそうだった。

「やっと全員でカウントダウンライブの練習が出来ますね?」

「……ああ、そうだな」

 もしもあのまま蝉がheliodorを離れてしまっていたら、紅朱は粋の時と同じように心に深い傷を負ってしまったに違いない。

 もちろん紅朱だけではない。
 他の仲間たちも、そして日向子も。

 5人揃ってこそのheliodor。
 誰が欠けたheliodorも見たくはないと、今、日向子は改めて感じていた。

「……そういや、ホテル出る前に、お前の親父さんに声かけられたぞ」

「まあ、お父様が……?」

 よもや式でのことを咎められたのではないかと不安になってしまった日向子に気付き、紅朱は軽く首を横に振った。

「別に説教されたわけじゃねェよ。睨まれはしたが……あれはあの人のデフォルトなんだろ??」

「ええまあ……では何を言われたのですか?」

 紅朱はふっと目を細めて小さく笑う。

「よろしく頼む、ってよ。蝉のこと」

「……まあ」

「よくわかんねェけど、緩和されつつあるんじゃねェか? 親父さんのロックバンド嫌い」

「……そうだと嬉しいのですけどね」

 日向子は肩をすくめて笑った。

 実際はロックバンドが嫌いであることには変わりはないのかもしれない。
 だが高槻は蝉の選択を認め、紅朱の心意気を認めたのだろう。
 そして仲間たちの絆と、日向子の願いも……。

「まあ、有砂の親父とすら親しく付き合えるくらいだから、意外とキャパが広いのかもな」

「そうですわね」

 これにはあっさりと躊躇いなく同意する。

「わたくしは今回の一件で父を色々な意味で尊敬するようになりましました」

「だろうな……まあ、それにしても、お前の婚約が延期になってほっとしたぜ。かなりヒヤヒヤしたからな」

「ヒヤヒヤ……ですか」

 日向子が何の気なしに反芻すると、紅朱は何故かはっとしたように一瞬大きく目を見開き、

「いや、ヒヤヒヤってのは……その……お前が寿退社なんかされちまったら、heliodorの記事は誰が書くんだ、って話になんだろーが」

「もしそうなったら、美々お姉さまが後任になって下さると思いますから、ご心配にはおよびませんわ」

「……そりゃあ、美々は信用できる相手だとは思うが……」

 紅朱は深く息を吐いて、日向子を見つめる。

「俺が認めたheliodorの担当記者はお前なんだ。
特集の連載が終わっても、お前にはずっと俺たちの行く末を見てってほしい」

「紅朱様……」

「……いいよな?」

「……はい」

 思いもかけず、真剣な口調で告げられた言葉。

 それはベッドの上というシチュエーションもあいまって、日向子にいつかの停電の夜を思い出させていた。

 逃げ込んだ個室の中で、身を寄せ合って。

 失いかけた自信を取り戻させてくれたのは紅朱の力強い優しさと、伝わる体温。

 少し不器用で誤解を受けやすい性格だけれど、仲間のため、夢のため、家族のために紅朱はいつもひたむきだった。

 今ならそれは父親の高槻と同じ生き方だと理解できる。

 高槻とは血の繋がった親子でありながら幼い頃より、親子らしい交流などほとんどなかった。

 かつては母も健在で、雪乃や小原、他の使用人たちにも囲まれて。

 それでもどこかで寂しさを感じていた。

 街を歩く、自分と同じくらいの子どもが父親と手を繋いで楽しそうに歩いているのが羨ましかった。

 父親の大きな手に包まれたいと思っていた。

 そんな時に現れたのが「伯爵」だった。

 あるいは探し求めていた父性を伯爵の中に見ていたのかもしれない。

 だからずっと追い掛けてきたのだろうか……?


 求めてやまなかったのだろうか??



 それはわからないが、あの停電の夜に紅朱にはっきり認めて貰ったことがあんなにも嬉しかったのは、彼に父の面影を重ねたからだ。それだけは確信出来る。

 本当に認めてほしかったのは父だったのだから。


 反発しつつも渇望した、父という大きな存在。
 

 それを理解出来た今、日向子はまた新たな気持ちで伯爵への想いや、紅朱との関わりを見出していけるような気がしていた。

 父親の代替ではなく。

 もっと別な……。

「どうした? 日向子」

「いえ……」

 怪訝な顔をする紅朱に、クスリと微笑む。
 ふと、相変わらず艶やかで綺麗な彼の深紅の髪に目がいく。

「紅朱様……また、おぐしに触らせて頂けませんこと?」

「は? いいけど……あれから、まだ大して伸びてねェぞ?」

「近くで見ているとどうしても触りたくなってしまいますの」

 日向子は空いていた人一人分の距離をすり寄り、そっと手を伸ばして、紅の絹糸のような髪に指先で触れる。

「……紅朱様のおぐしは相変わらずお綺麗ですわね」

 髪を撫でながらうっとりしたように笑みを浮かべる日向子に、紅朱は何故か落ち着かない表情で視線を泳がせる。

「……そんなに好きなのかよ。変な奴だな……」

「うふふ、ですけれど……女としてはほんの少し嫉妬してしまいますわね」

「なんでだ? お前だってこんなに……」

 紅朱は思わず日向子の髪に触れて、すぐに離した。

「あ、悪ィ」

「……紅朱様?」

 日向子は更に距離を詰めて、紅朱の顔を覗いた。

「……なんだかいつもとご様子が違いますわ」

 いつも真っ直ぐ日向子をとらえていた紅朱の鋭利な刃物を思わせる2つの瞳が、今日は何故か明後日のほうばかり見ている。

「……別に何も違いやしねェよ」

 いつも耳に心地好い美声が、心なしか上擦っている。

「でも……」

 更に言い募ろうとした時、ベッドの傍らに無造作に置かれたままの日向子の携帯が着信を告げる。

 着信音が毛嫌いしている男の新曲であることにも構わず、紅朱は、

「ほら、電話だぞ。早く出ろよ」

 と救いを得たような安堵の色が滲む声で告げる。

「あ、はい……では失礼致します」

 日向子はほんのわずかな引っ掛かりを感じながらも、促されるままに携帯電話に手を伸ばした。

「あら……編集長様ですわ」

 ディスプレイを確認して、通話ボタンを押す。

「はい、森久保です……はい……」

 編集長が、携帯ごしに妙に興奮した口調で早口にまくし立てるのを相槌を打ちながら聞いていた日向子は、やがて相槌を忘れ、瞬きすら忘れ、呆然とした表情になっていた。

「日向子……? どうした?」

 紅朱も異変を察し、小声で問うが、それすら気付かない様子の日向子。
 どうやらそのまま一方的に通話は終了してしまい、やがて携帯を持つ手を静かに下ろした。

「……日向子!?」

 少し強い口調で再度問う紅朱。

 日向子ははっと我に返り、紅朱をゆっくりと見た。

「……伯爵様が、RAPTUSの取材をお受けになると……」

「……高山獅貴、が?」

 眉間に皺を寄せる紅朱。日向子は困惑したような声で更に続ける。

「……取材記者に、名指しでわたくしを……」

「……お前を担当にしろ、ってのかよ」

「にわかには信じられないことなのですが……わたくしのheliodor特集記事を読んで下さって、大変気に入って頂けたようだと編集長が……」

「……へえ……よかったじゃねェか。もっと喜んだらどうだ?」

 紅朱は多分に含みのある口調でそう言った。
 しかし日向子は素直に受け止めて、目を伏せた。

「はい……でも……」

 日向子にとってそれは、あまりにも現実離れした展開だった。
 
 伯爵の元へ続く長い旅の第一歩だと思っていた初めての大役であったheliodorの特集連載。
 それがいきなり当の伯爵の目にとまってしまうなど、誰が予想していただろうか?

 予想だにしない途方もない奇跡に直面すると、人間の感情はなかなか追い付いてこないものらしかった。

 日頃人を疑うことなどほとんどない日向子も、まだどこかで「担がれているのではないか?」と疑わずにはいられなかった。

「信じられませんわ……そんなこと、とても……」

「……ありえねェことじゃねェさ……」

 紅朱はひどく険しい表情で吐き捨てるように呟いた。

「紅朱様……?」

「……で、やるつもりなのか? 取材」

「それは……もちろん、またとない機会だと思います……。
編集長様も、珍しく手放しで激励して下さいましたし……期待もして下さっていました……でも」

「何か引っ掛かるのか?」

「……それが、取材の日時が、指定されていて……」

 日向子は膝上においていた手を丸めて、きゅっと握った。

「12月31日……大晦日の夜なのです」

「っ、な」

 紅朱は絶句した。

 大晦日の夜といえばもちろん、heliodorのカウントダウンライブが予定されている。
 彼等の新たな始まりとなるであろう特別なライブだ。

 紅朱はその突き刺すような視線を日向子に真っ直ぐ向けた。

「……だったら断れ」

 冷ややかな声。

「今さっき約束したばっかりだろ? ……お前はheliodorを……俺たちをずっと見てってくれんだろ?
だったら……迷うなよ」

 まるで責め立てるような言葉が次々と日向子の胸に突き刺さる。

 heliodorの大切なライブに参加できない……などと言えば紅朱が怒るのはわかりきったことだった。

「……今すぐ編集長に電話して、誰か他の奴に代わってもらえよ。
それで高山獅貴が納得しなくても知ったことか」

 有無を言わさない剣幕に、日向子はまだ片方の手の中にある携帯電話に目を落とした。

 確かに断るなら早いほうがいい。
 編集長はすぐに納得はしないかもしれないが、よく話せばどうにかなる筈だ。

「でも……」

 だが日向子には、躊躇われた。

 夢にまで見た憧れの人からさしのべられた手を振り払うなど、辛すぎる。

 伯爵への思いを見つめ直すためにも、是非かの人と会いたい。話をしたい。

 それが正直な気持ちだった。

 だが、heliodorと伯爵の間で迷う日向子の態度は紅朱の感情を逆撫でる。

「……あいつを選ぶのかよ、日向子……」

 かつて感じたことのないほどの、紅朱の強い怒りを感じて、日向子は微かな身体の震えを覚えた。

 一言「もちろんheliodorを選ぶ」と言えば済む。

 しかし、それができなかった……。

「……」

 無言のままうつむくことしかできない日向子に、紅朱は舌打ちしてベッドから立ち上がった。

「……見損なった。もう勝手にしろ」

 言い捨てて部屋を出ていく彼を引き留める言葉など、今の日向子には何もつむぐことができなかった。














《つづく》

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2007/11/09 (Fri)
 久々の育成記録。話題は3つ。

 今日D3P携帯公式で知ったけど、なんと「DEAR My SUN!!~ムスコ★育成★狂騒曲~」イベント大決定だったのね(実は私が幕末に入り浸ってる間に公式の制作日記ではとっくに発表されていたらしい)。

 まさか単独でイベントやるとはマジで思ってなかったよ。

 ファンの私が言うのもなんだけど、万人にお勧め出来るゲームじゃないのよ。結構システムなんかの作りが荒いから、ツッコミどころ満載だしね。笑。

 人によっては地雷かもしれない。
 だけど私はなんとなく愛着がある……やっぱりスチルが可愛いのと、楽曲や演出、それにキャラの個性の強さに魅力を感じる。

 OPとEDもなにげに佳作だよ。乙女ゲーム史上に残る伝説の曲となったVitamin Xの「放課後エデン」のせいで影は薄いけど、個人的にはすごく好き。
 この二曲のためだけでもイベント行きたいと思った。笑。

 もしイベント行けなくてもDVDゲットは確定だな。

 そしてまたVitamin Xに続いて小野、岸尾、阪口と「ダイスケ」が三人集まるかもしれないから、ジンクス成立で雨も確定か?? イベントには傘がいるかもね。笑。


 そしてイベントに先駆けてキャラソンアルバム二枚同時リリース!!
 雷斗チームと風斗チームで出るんだけど、なんでパパと堂島がデュオで、幸四郎がソロなんだ。笑。

 幸四郎のほうが人気ありそうな予感もしないではないが……。

 チビどもや大地の歌がなくて残念だけど、剛徳寺母子の語りがあるならまあいいか……。


 制作日記を読む限り、Vitamin Xよりかはもう少し正統派っぽい雰囲気。
 でもどうかな……ヒューネックスだから何が起きるかわからんもんな。笑。


 最後に発売中の「Girls Style」という雑誌に載ってる描き下しイラスト超萌……!!

 やっぱこの絵師さん大好きだなあ。

 男性陣(ムスコと、パパ以外の攻略キャラ)がみんなで捨て猫の段ボールのぞいて、戯れてるやつ。
 このイラストのためだけに買おうか悩んでいる……設定資料集に入るのならいいんだけど……。

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2007/11/06 (Tue)
 昨日からずっと、ようやくゲットしたVitamin XのイベントDVDを見ている。行きたかったけどチケットとれなかったやつね。


 昼夜両公演がほぼノーカット収録って……しかも幕間のCMムービーまで両公演(内容一緒)収録してどうするんだろう。流石D3Pだ。笑。

 でもムービー流れてる時のお客さんの反応とか聞いてると、すごい臨場感だった。
 ラスエス2とか、DS版Vitamin Xとか今はもう出るの知ってんだけど、時空を越えて感動を分かち合ってしまった。笑。


 それに商品名とかアニメ・ゲームネタ連発で「ここカットだね」とか「これはDVDで使えないね」とか言ってんのに普通に使われてるし。爆。
 流通ルートが特殊だからアリなんだろうな。


 内容は基本的に歌、トーク、ドラマっていう普通のイベントなんだけど、とにかくドラマのパートがすごかった。

 声優イベントでドラマったら朗読劇だろうと思いきや(ネオロマはそう)、簡単な教室のセットとか用意して、演劇みたいにやってるからね(台本は読みながらだけど。でもアドリブのほうが多いくらいだ。笑)。


 個人的にはよっちんさんと鈴木達央さんがすごかったと思う。
 すごく容姿が似てるわけじゃないのに、ちゃんとキャラクターに見えた。
 
 特によっちんさんは教室のセットに入ってきて席に着くところから、まだ一言も喋ってないのに完全に清春になりきってて、鳥肌たったくらい。
 トークコーナー以外、最初から最後まで清春だった。あのテンションを二公演維持するってすごいことだよ。

 夜の部の最後に素の吉野裕行さんに戻って「これでもうこの喋り方しなくていいのかあ」って本音出ちゃったけれど(笑)、「えー!?」って言われて最後はまた清春で締めて。

 プロフェッショナルだよなあ。

 この間のトークイベントも良かったし、胸キュンラジオのゲストの回もめっちゃ面白かったから、今、井上和彦さんの次に好きかもしれん。


 メインの出演者が全員参加したのもよかった。人気サブキャラの永田@三浦さん、トゲー@西脇さんがいたらもっと嬉しかったけど、そこまでの贅沢は言うまいて。

 ベテランも売れっ子もいるのにレギュラー12人誰一人欠けることもなく、みんなで集まってくれる……スバラシイ!!
 しかもB6の面々は世代が近くて、普段から仲のよい面子が多いから、じゃれ具合が面白すぎるしね。

 T6はベテランも、この手のイベントに慣れてない人もいるけど、サービス精神旺盛で嬉しい。

 Vitamin Xチーム、全員好きですわ。
 改めてVitamin XというゲームとB6、T6の魅力も再確認したし、キャラソンもすごく好きだ。
 私的には2007年にプレイした中でベストの乙女ゲームです。


 次は幕末恋華のイベントが控えてるけど、Angeloの栃木と被ってしまったのでパスか。
 こちらは庵@子安さんだけ欠席だけど、予想通りだから別にいいっす。笑。
 ネオロマ出ないのにこっちに出るわきゃないよな。

 よっちんさんは三木三郎になりきるのだろうか……清春よりはるかに難しいだろうな。笑。



 しかし単体でイベントやるほど人気ないにしろ、DMS関係のイベントもやってほしいな。

 前にあった恋華とラスエスのやつみたいに、今年発売したD3P乙女ゲーム4作品合同で、トゥインクルデートイベントやってほしいな。
 出演者はあえて複数作品に跨って出てる人限定で。つまり、


岸尾だいすけさん(Vitamin X・悟郎役、DMS・辰波役)
宮田幸季さん(令嬢探偵・康二役、Vitamin X・衣笠役)
吉野裕行さん(Vitamin X・清春役、幕末恋華・三木役)
諏訪部順一さん(令嬢探偵・金剛寺役、幕末恋華・辰巳役)
小野大輔さん(Vitamin X・一役、DMS・優しい風斗役)
宮野真守さん(DMS・神楽役、幕末恋華・咲彦役)
織田優成さん(Vitamin X・二階堂役、DMS・幸四郎役)
阪口大助さん(Vitamin X・真田役、DMS・ポンちゃん役)
三浦祥朗さん(Vitamin X・永田役、DMS・城錠役)
岡本寛志さん(令嬢探偵・伊吹役、DMS・爽やか風斗役)


 漏れがあったらすいません。
 ちなみに子安氏もだけど、絶対出ないだろうから省いてみた。笑。


 風斗が二人もいるとか、翼がいないのに永田がいるとか、ツッコミどころ満載だが、これなら昼夜でキャラかえてドラマできるじゃん。
 作品ごとのミニドラマと、合同コントで。

 合同コントは風斗二人いるから主役にして、「幕末から、何故か風斗の部屋のクローゼットにタイムスリップしてきた恋華キャラと右往左往する話」とかいかが?

 昼は爽やか風斗と三木、夜は優しい風斗と辰巳と咲彦がセットで。

 文化祭で新撰組やったのは確か甘え風斗だったけどね。笑。



 歌のコーナーはキャラソンがあるVitamin Xと幕末恋華が主に担当でいいんだけど、一と爽やか風斗はそれぞれデュオの相方不在だから、誰か違う人と組んで一夜限りのスペシャルデュオなんていかが?

 聞いてみたいのは、

 放課後エデン・一と清春ver、Shooting star・一と悟郎ver。笑。
 翼の台詞を清春が言うわけですよ。「わァかってんだろォ!?」みたいな。爆。
 悟郎ちゃんはあえて地声に近付けて、かっこよく歌ってほしい。

 一方雷斗の代役は、OPをポンちゃん、EDを神楽なんていかが??



 楽しそうだな……。

 実現しねェかな(多分無理だろう)。




 それにしても三宅さんはかなり乗り気っぽかったけど、T6のキャラソンもステージでいつか披露されるんかな。
 DS版出たらラスエス2と合同イベントぐらいならありそうだ。

 逆にキャストが誰も被ってないことだしね。笑。


 DS版自体がまだ詳細不明だけど、T6のエンディング、イベントは追加されそうな予感。
 ……永田は?? 笑。

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2007/11/05 (Mon)
 花柳剣士伝の個別レビュー、ラストは真打ち「庵」です。

 メインキャラクターながら、一月のイベントに一人だけ不参加が決まった庵さん。笑。

 仕方ないので本編をお楽しみ下さい。

 ネタバレレビューはもちろん下の→リンクの先でございます。















拍手[1回]

2007/11/04 (Sun)
 お待たせしました、咲彦編です。

 咲彦と庵は史実キャラクターじゃないから、キーワードは特にないっス。

 じゃあ、能書きはさておいて→リンクの向こうネタバレレビューへお進み下さいな☆















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2007/11/01 (Thu)
 太陽の国の新章を少し進めたのでUPしてみた。

 ゲームのレビューの続きも書いてたけど、うろ覚えなとことか、実家じゃ確認とれないから行き詰まってしまい。笑。

 恋華の咲彦編は順調なら明日公開。

拍手[0回]

2007/11/01 (Thu)
「若い、って羨ましいと思いません?」

「……君は私よりは随分若いと思うが」

「いやいや……もうね、いくら人生をリセットしようとしてもやり直せるような年やないですからね、僕も」

 指先でもてあそんでいた林檎の意匠の指輪をピンと弾くと、高く上がったそれはくるくる回転しながら床に落ちた。
 それは先ほど彼が「恋人」から返却されたもの。
 今となっては不要になってしまった虚しい飾り。

「袖にされたのが堪えたのか?」

「まあ……それなりに。でも、あの時ほどやないかなあ」

「……あの時、とは?」

「水無子にフラれた時ですよ……」











《第10章 吸血鬼 -baptize-》【2】










「やっぱり気付いてなかったですか?
昔から色恋沙汰だけは疎かったですもんねぇ、先生は……」

 ホテルの地下にある静かなバーのカウンターで、世界的に有名なピアニストと、世界的に有名なデザイナー兼ブランドオーナーが肩を並べてグラスを傾けていた。

「水無子にね、もっと自由な場所で幸せにしたるから、僕と逃げようてゆうたったんですわ。
けど……水無子はなんぼしんどくても先生とおりたかったみたいですよ」

 高槻は神妙な顔付きで、黙って秀人の顔を見やった。
 秀人は年のわりに無邪気な印象を与える、彼独特の笑みを浮かべる。

「ま、僕としては軽い屈辱を感じるんですけど……水無子は高槻先生の妻として死ねたこと、満足なんと違いますかね」

 高槻は相変わらず黙っていたが、秀人は構わずに更に続けた。

「日向子はええ子に育ちましたね。水無子に似て情が深くて、先生に似て芯が強い。あの子がうちのんと一緒んなってくれたら僕はホンマに嬉しいです。
……けど」

「……けど?」

「あの子は、どんな男と結ばれても、どんな生き方を選んでも……絶対に幸せを掴めると思いますよ。心配ご無用です」

「……私が過保護だと言いたいのかね?」

「……そうですねぇ、僕は無責任なくらい放任でしたけど、みんな案外まともに育ってたみたいなんで。
もう少し気楽に構えても大丈夫でしょ」

 高槻は、いつもの気難しい顔で沈黙したきりだった。

 ややあって、秀人が空気を変えるように明るいトーンでまた話し始める。

「そうそう、さっき小原さんとこのお嬢さんを見かけましたよ。何て名前でしたっけね……」














 華やかなドレスからカジュアルなワンピースとコートに着替えた日向子は、少し早足でホテルの裏手で待っている筈の車へと急いだ。

 てっきり玄鳥か有砂の車が待っているのかと思っていたが、日向子の姿を見付けて、ライトの明滅でサインを示してきたのは釘宮家の所有する黒塗りの高級車だった。

 自然に、日向子の足はより一層早くなる。

 日向子が車のすぐ側まで辿り着くと、ゆっくりと運転席のドアが開いて、降りて来た人物は慣れた仕草で後部座席のドアを開き、恭しく頭を垂れた。


「どうぞお乗り下さい、お嬢様」


「あ……」

 日向子は思わず彼の顔をじっと見つめてしまう。

「いかがなさいました? お急ぎでいらっしゃるのではないのですか」

「え、ええ……」

 戸惑いながらもとりあえず車に乗り込んだ。
 丁寧にドアを閉めて、改めて運転席についた青年の顔を斜め後ろから見つめる。

 眼鏡をかけた顔を見るのはいつ以来だっただろうか……?

「……雪、乃……?」

 戸惑いを拭えないまま、そっと呼び掛ける。

「はい」

 すぐに返事が返ってくる。
 日向子は静かに問う。

「……本当の自分を偽る必要はもうなくなったのに、まだ続けるの……?」

 日向子が「雪乃」と呼んで接してきた、この口数が少なく、冷静沈着に構えた青年は、彼が演じていた偽りの姿。
 本来の彼は、「蝉」としてバンドの仲間といる時のような、明るく賑やかでよく喋り、コロコロと表情を変える青年の筈だ。

「もしお嬢様がご不快に感じるのでしたら、やめますが……」

 彼はいたって真面目な口調で答える。

「私はあなたに『雪乃』と呼ばれてきたこの『私』を、今はとても愛しく思います。
あなたは、どの私も大切だと言って下さいましたから……私の中で『雪乃』はもう偽りではなくなったような気がしています」

「雪乃……」

 今度はためらわずに呼ぶことができた。

 今ここにいるのは間違いなく「雪乃」なのだ。

 雪乃は少し目を伏せて、

「……お嬢様に、お返ししなければならないものがあります」

 と告げ、少し身を屈めると、サイドシートの下から何かを取り出し、両の手で丁重に抱え、それを日向子に差し出した。

「……これは……」

 日向子は目を丸くした。

 それは先日、処分されたとばかり思っていたビロードの表紙のアルバム数冊。
 そっくりそのまま、一冊も欠けることなく揃っていた。

「どうしてですの……?」

 受け取って、思わず胸にきつく抱き締めながら問う。
 雪乃はどこか苦しげな表情を浮かべた。

「……実際、処分するつもりで持ち出したのですが……結局どうしても出来ず、ここに隠していました。
お嬢様を悲しませてしまい、本当に申し訳ございませんでした」

「……あなたにとっても釘宮家での思い出は何の価値もないものではなかったのね……」

「……はい」

 どこかにまだくすぶっていた哀しみも不安も、全て一瞬にして消え去った気がした。

「……お嬢様を、深く傷付けて、悲しませてしまったこと……どう詫びたらよろしいでしょうか」

 いたたまれない顔をしている雪乃にそっと微笑みかける。

「いいえ、いいのです。あの時のあなたはそうしなければ自分自身を保てなかったのでしょう……?
嘘をついたあなたは、きっとわたくし以上に辛かった筈ですわ」

「……あなたが諦めてくれたなら、私を軽蔑し、憎んでくれたなら……最後の躊躇いを断ち切れると思いました。
けれどあなたは、私のごとき小者の思い通りになるような方ではありませんでしたね」

 つい先日、秀人に似たようなことを言われたばかりのような気がして、日向子は思わず首を傾げた。

「……思い通りにならない、というのは誉め言葉ですの?」

「……そうは聞こえませんでしたか?」

「よくわかりませんわ」

「では言い方を変えましょう」

 雪乃はわずかに、ほんのわずかに微笑した。

「……お手を拝借致します」

 日向子は一旦アルバムを横において、言われるがままに片手を差し出した。
 雪乃は恭しくその手を取り、真摯な眼差しを日向子に向けた。

「……あなたは、美しい人です。心も身体も、全てに魅了されずにいられないほど」

 予想を遥かに越えた直球の賛美に、日向子の心臓は激しく反応を示す。
 体温が上がっていくのがはっきりとわかる。

「……雪乃……」

「……再びここに誓いを立てましょう。
いつか本当にあなたが誰かを選び、旅立つその日まで……この私があなたを守り通します」

 そっと指先に唇が触れた。
 誓いの口付け。


 その手を離した後、雪乃はまるで何事もなかったようにハンドルを握り、車を出した。

 日向子はいつものように目的地に着くまで他愛ないおしゃべりをし、雪乃は適度に相槌を打つ。

 けれど互いの胸の高鳴りは、しばらくおさまることなく続いていた。













 突発クリスマスパーティーは、heliodorメンバーと日向子、うづみ、後から誘った美々の八人で行われることになった。

 ちなみに秀人もかなり参加に意欲的だったのだが、全員一致で却下となり、いじけながら高槻と飲みに行った次第だ。

 パーティーの会場は話し合った結果、日向子のマンションに決まった。

 理由は単純に一番広いからだったが、誰より強く主張したのは万楼で、どうやらheliodorの中で自分一人が日向子の部屋に入ったことがないのを密かに不満に感じていたようだ。

 一度解散し、各自分担した買い出しを行い、約束の時間に日向子のマンションに集合することとなった。













 「何をぼーっとつっ立っとんねん。邪魔臭い」

「あ……うん……ごめん」

 有砂とシェアする部屋に久々に足を踏み入れた「蝉」は、着替えながらあちらこちらへ視線を向けた。

 出て行く前と何も変わっていない。

 何も変わっていない、ということは放置されていたということではない。

 維持されていたということだ。

「……ねえ、おれの部屋も掃除とかしてくれてたの……?」

 同居人に呼び掛ける。返事はない。

「……あ」

 ベッドの枕の上に、蝉が捨てた筈のオレンジのウイッグと携帯電話が並べて置かれている。

「ねえ、拾ってくれたの……?」

 懲りずに呼び掛ける。今度は返事があった。

「燃えるゴミのゴミ箱にほってあったやろ? ……いらんのやったら分別してもっかいほっとけ」

「……いつも分別しないのそっちじゃん……おれがいっつも後で直して、さあ……」

 感極まって目の端に熱いものが込み上げてくる。

「……いらないわけないじゃん……っ」


 この部屋ごと切り捨てようとした「蝉」。

 全てが、ここで待っていてくれた。

「……っ」

 今まで殺してきた分、一気にあふれ出した感情がとめどなく、流れる。

「……っ、うぁぁーあん、よっちぃぃーん……っ!!」


 たまらなくなり、キッチンで冷蔵庫の中のミネラルウォーターを取り出そうとしていた有砂の背中に駆け寄り、おもいっきり抱きついた。

「な、なんや……!」

 勢いで少し屈んだ姿勢のまま前のめり、頭を思いきり上段のドアにぶつけた有砂は後ろに首をひねり、抗議の目を向ける。

「……アホ、いきなり何すんねん」

 しかし当の蝉はそれに気付いていない様子で、ひしと有砂の細身な胴体にしがみついている。

「よっちぃん……ごめんねぇぇ……っ」

「キショいっちゅうねん……離せ」

「っふぇえん……っ、よっちぃぃん……!」

「泣くなっ、鬱陶しい……」

 ひどく久々に用いた「よっちん」という彼しか使わない呼称。
 それを繰り返し呟きながら、ついに背中に頭を押し付けて号泣しだした蝉に、有砂は不機嫌な顔で舌打ちし、溜め息をついた。


「……まったく……難儀な親友やな」


 蝉がより一層、火がついたように泣き出したことは言うまでもない。

 さながら季節を間違えて鳴くセミのように……蝉はしばらくの間そのまま泣いていた。












「そうですか、じゃあ蝉さんが帰ってきて、日向子も当分寿退社はなしってことで、めでたしめでたしな感じですね」

 今日の出来事を聞いた美々はかなり呑気に感想を口にした。

「めでたしめでたし……なんですかねえ」

 玄鳥はめでたくない顔でハンドルを握っている。

 助手席に美々を、後ろに万楼と、買い込んだ大量の食材を乗せて日向子のマンションへと向かう道すがら、彼のテンションはじりじり下降していく。

「……なんか最近、いつも俺、蚊帳の外なんですよね……」

「何言ってるの? ボクもリーダーもそうだったでしょう?」

「まあ……そうなんだけど、何ていうか」

 玄鳥は進行方向を見つめたまま、少しその瞳をすがめた。

「俺は蝉さんみたいに昔から一緒にいたわけでも、有砂さんみたいに家族ぐるみで関係があるわけでもない……二人とも、なんかズルいよな……」

「玄鳥さんって、本当に日向子が好きなんですね~」

 しみじみと評する美々に、玄鳥は今更顔を赤くする。
 それに美々は笑って、少し抑えた声で囁いた。

「……だったら覚悟して下さいね」

「はい??」

「……うちの日向子を傷付けたら、もう明日は来ないと思って下さい♪」


 冗談めいた口調と裏腹に、きらりと鋭く光る美々の眼差しに、玄鳥と万楼はただただ苦笑いをするしかなかった。












《つづく》

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* ILLUSTRATION BY nyao *