住めば都の花柳館 第二回 ある人斬りの憂鬱と幸福の巻 ※ネタバレ有

　攻略一人目、「大石鍬次郎(オオイシ・クワジロウ)」のネタバレレビューです。一番下の→リンクからどーぞ。








　なんでこんな人好きになっちゃったんだろう。笑。

　前作では脇役、というか完全に悪役だった新撰組隊士の「大石鍬次郎(オオイシ・クワジロウ)」。
　攻略キャラになったって別にいいヤツになったりしません。
　いつも他人を小馬鹿にした雰囲気で冷笑し、人を斬ることにしか興味がない殺人鬼(斬人鬼と言うべきか？？)です。

　こういうヤツに限って無駄に頭の回転が早く、無駄に腕が立ち、無駄に色っぽいのはなぜなんだか。笑。

　花柳剣士伝の物語は前作の5.5章くらいのエピソードから入るので、開始の時点ですでに大石は新撰組に入隊済み。

　ただし序章には出てこないため、ヒロインとは第一章が初対面になります。

　富山を探していたヒロインは、大石が富山を斬ろうとしている現場に遭遇(富山がうっかり浪士の逃亡を助けてしまったため)。

　富山は大石の攻撃をひらりとかわし、関係者が続々と集まったためにことなきを得ますが、大石はヒロインに「さっき自分を斬ろうとしなかったか？」と問います。

　確かに富山を守るつもりだったヒロインが素直に謝ろうとするも、大石はいきなりヒロインに斬りかかります。
　ヒロイン、ここはギリギリかわす。

　と、大石は「ひゅう♪　やるね」と、なんか楽しそうに帰っていきます。笑。

　早速おなじみの「ひゅう♪」が出ました。爆。

　相変わらずです。



　そっからなんか知らないがよく花柳館(見学自由が売り)に出入りするようになる大石。

　ヒロインが「たまには一緒に稽古しませんか？」と言えばおもむろに真剣を抜いてくる物騒なお客さんです(竹刀や木刀なんか振っても実戦じゃ役に立たないとのことです。わかんなくもないが)。

　花柳館の先代の孫娘・おこうさんがならず者に捕まった時に、沖田と二人でどっちが斬るかで盛り上がり、おこうそっちのけの大石には流石にどん引きするヒロイン。

　プレイヤーも大石にハマる人と絶対的に受け付けない人とわかれていくんじゃなかろうか。笑。


　大石のことが全く理解できないヒロインに、才谷が 沖田は「純白の魂」、大石は「漆黒の魂」だと話す。

　正反対ではあるが、どちらも何物にも染まっておらず、自分の中に「理性」という監視者を持たない人間だと。

　無垢な正義も、無垢な悪も等しく危険だってことですね。汗。



　大石はただの気晴らしに人を斬るさまをヒロインに見せ付けて、人を斬り続けることでどんどん苦痛(心の痛み。この人にもそんなもんがあったのか)は薄れ、純粋な快感だけを得られるようになると語る。

　その言葉に大石の「憧れ」を感じたヒロインは、何気無く問います。


「でも大石さんはまだその境地に至っていないですよね？」


　この言葉。

　これが全ての引き金となります。


　わざとヒロインの目の前で隊を抜けようとした隊士たちを斬り殺し、罠を巡らせて坂本竜馬を殺し、そして伊東甲子太郎を手にかける大石。

　伊東の血を浴びた大石はついに自分は憧れた境地に達し、完成されたと言う。

　それはヒロインの言葉に後押しされたからだと。

　自分が口にした言葉が引き起こした悲劇に絶句するヒロイン。


　しかしそれ以上にヒロインを戸惑わせたのは、そんな大石のことが気になっている自分自身。

　気が付けば大石が来るのを待っている。
　大石の姿を探している。

　説明のつかない感情。


　結局それって完全に自分と異質な存在だからだと思うんですよね。
　怖くて仕方ないのに、どうしても気になるっていう。
　それに自分の中に理想や生きる指針を持たないヒロインからしたら、大石の迷いのなさってすごいことに見えるんだと思う。
　それが悪だとわかっていても。


　そんな折、「完成された」筈の無敵の大石がヒロインの前で不意に沈んだ表情を見せます。

　完成されてしまったがゆえに、もう人を斬っても以前ほどの快感を得ることができない。だが人を斬り続けなければ正気が保てそうもないと。

　未完の美学をうたっていた大石は、ある意味でヒロインに人生を狂わされていた(勝手に狂っただけなんですが。笑)。

　自分を完成に導いたヒロインが「愛しい」がとても「憎い」、と囁く大石に、ヒロインは思わず反応を示し、それに気付いた大石はニヤリ。

「……お前、オレのことが」

　ヒロインは反射的に小太刀を抜いて斬りかかり、逆に当て身を食らって意識を失います。



　さあここからです。いきなり展開しますよ。



　目を覚ますと、傍らに大石が座っていることにびびるヒロイン。
　「言葉で否定するならまだしも斬りかかってくるとは思わなかった」と楽しそうな大石。

　どうやら大石が自分を部屋まで運んでくれたらしく、「どうして斬らなかったんですか？」と尋ねると答えは「なんとなく」。

　と言いつつ、

「眠っている間に汚してしまおうかと思った」

「でも反応がないとつまらないからやめた」

「だからずっと寝顔を見てた」

　怒濤のエロス発言。笑。

　ヒューネックスのCERO-Bゲームばっかやってたから、いきなりのCな展開にドキッとしました。

　まだ続きます。むしろ本題です。

　自分の人斬りとしての一生にはもう未練がなく、あとはどう死ぬかしかないと言う大石だが、「憎くも愛しい」ヒロインに何もしないで死ぬのは未練が残ると。

　だから。

　今ここで自分に身を預けるか、自分を斬るかどっちか選んでくれ、と。

　実に彼らしい傲慢な問いです。

　このあと選択肢が出るんだけど、残念ながら煮えきらないリアクションしかありません。
　しかも保護者が乱入して、うやむやになります。


　後日改めて大石を訪ねたヒロインは「この間の返事をするから人気のないところに行きましょう」と。

　どっちともとれる発言ですが(笑)、ヒロインが大石を連れだしたのは荒れた原っぱみたいなところ。

　大石は殺風景で死に場所にぴったりだとはしゃいでいます(はしゃぐな)。

　がヒロインは「あなたを斬るつもりはありません」ときっぱり拒否。

　斬らないということは……大石は、「……え、じゃあここで？　オレは別にいいけど」みたいなことを言います。何故か可愛いと思った。笑。

　ヒロインはそっちも拒否。

　大石は「常識にとらわれなければ新しい世界が見えてくるのに」と囁きますが、結局なんやかんやあってそのまま一人立ち去ります。


　ヒロインは大石を拒絶したにも関わらず、結局大石の後を追い、鳥羽伏見の戦場にもおもむき、三木たちの依頼を口実として東へ下った新撰組を追い掛けます。

　大石にこれ以上関わるなと忠告する庵や相馬の言葉に逆らって。
　その理由すら自覚できないまま。


　そして、勝沼へ。敗戦により撤退する隊士たちの中に大石の姿を探します。


　そして、ようやく見つけた大石は斎籐と対峙していました。

　前作の斎籐シナリオをプレイした人はわかると思いますが、斎籐は大石を斬る機会をずっと探っており、今が好機と牙を剥きます。

　復讐ではなく、ただ大石が嫌いだからと言い捨てる斎籐。
　前作では大石も喜んで戦うのですが今回は違います。

　自分を斬っていいのは一人だけだからと言って、斎籐と剣を交える大石の姿に、ヒロインは「待って下さい！」と飛び出します。

　「来てくれたんだね」と笑う大石。

　斎藤は全てを理解し、それならばヒロインが大石を斬ることを許してもいいが、ヒロインに斬れなければ自分が斬ると言います。

　自分が大石を斬るか、斎藤に斬らせるか。

　より非情になった二者択一。

　ヒロインは覚悟をきめてついに刃を抜きます。

　「やっとその気になってくれたんだ」と呟く大石ですが、「でもちょっと待たせ過ぎたね」と続けると、いきなり意外な行動に出ます。

　不意打ちにヒロインの唇を奪い、深く口付ける大石。

　思わず身体の力が抜けてしまったヒロインは、その瞬間自身の想いを自覚します。

　しかし。

　そのまた次の瞬間、ヒロインは驚愕し、目を見開きます。

「……な……ぜ？」


　ここでエンディングテーマが流れます。
　初回だから飛ばしたくなくて聞いたけど、正直続きが気になって早く終われと思ってしまった。爆。

　エンディングテーマが終わると好感度一定以上で発生のエピローグへ突入。

　大石と唇を重ねたまま目を見開くヒロイン。
　そのまま画面が下にスクロールしていきます。

　ヒロインの握る刃が大石の腹を貫いています。

　大石がヒロインの手を取って、そうさせたのですが、「へえ、オレを手にかけた時はそんな顔をするんだ」と、ヒロインの反応を楽しみます。

「何度も汚そうと思ったけど汚せなかった」

「だったらこうするしかないよね」

「これでお前はオレに汚されたのさ」

「オレに汚された記憶を胸に生きていけ」

「もうなにも言うな」

「今までで最高の快感を味わっているんだから邪魔をしないでくれ」

　そう告げて大石は崩れ落ちる。
　呆然と立ち尽くすヒロインに、斎藤は「大石にとってお前が特別な女だったことだけは確かだ」と言い残して立ち去ります。

　ヒロインは大石の屍の傍らに立ち尽くしながら、これから自分は大石の望むように、この悪夢のような記憶とともに生きていくのだろう、と心に思って終幕となります。





　あの、言っておきますけどバッドエンドじゃないですよ？　爆。
　シーン回想の枠の数から推測してもエピローグは一種類しかない筈ですから。
　これが大石との恋愛の末路です。


　大石が攻略対象になったと聞いた時から、ヒロインが大石を殺すことだけは間違いないと思ってましたが、覚悟を決めた後とはいえ、無理矢理殺させられるとは……ねえ。

　最初見た時は死ぬほど後味悪かったけど、何回か見てたらそうでもないかなあと思い始めた。

　大石はもちろん一人で気持ち良くなりやがって(笑)、至福の最期だし、「汚したくても汚せなかった」という大石の言葉にはヒロインへの愛情らしきものを感じるしね。

　わざわざ記憶を胸に生きていけ、と言ったのも自分の後を追わせたくないからだと思うんですが……まあ、そこは大石だからわかんないけどね。キチ○イの考えなんてはかりしれないからねぇ。

　なんにせよ最期まで大石らしい傲慢ぶりで、私的には満足でした。


　またカップリング設定色々変えて大石ルートやってみたいなあ。