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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2009/04/04 (Sat)
二次創作関連
そう、またなんだ。
1万ヒットに続いてまたもや、日下部×さつき。
悩んだ挙げ句、単純にリクエスト数が多かったCPにしました。
いい加減他のCP書けよ、と思う方は、常にリクは募集してますから、またリクエストしてやって下さい。汗。
今回、色々ありえないことが起きてます。捏造しまくりです。
心の広いプロデューサーさんだけつづきからお読み下さい。
1万ヒットに続いてまたもや、日下部×さつき。
悩んだ挙げ句、単純にリクエスト数が多かったCPにしました。
いい加減他のCP書けよ、と思う方は、常にリクは募集してますから、またリクエストしてやって下さい。汗。
今回、色々ありえないことが起きてます。捏造しまくりです。
心の広いプロデューサーさんだけつづきからお読み下さい。
【パステルカラード・デイドリーム】
「卒業式のこととかって、覚えてる?」
「え?」
脈絡のない質問に驚いて彼の視線を追うと、証書入りの筒を抱えた制服姿の女の子のグループが横切るのが見えた。
あれ、桜高の制服だ。そういえばこのカフェは桜高から結構近い。
「そういえば、そんな季節だものね」
まだ、午後のお茶には温かいココアのほうが嬉しいけれど、確実に季節は春へ移り変わっていた。
椅子の背にかかったお客さんのコートも、私たちを含めてみんな淡い彩り。
さっきから、メニューに躍る春の新作デザートが私を誘惑している。
「卒業式か……なんだか遠い昔みたい」
「……俺はそうでもないかな。今でもよくあの日のことを夢に見るしね」
彼の視線はまだ、女の子たちがいたところを……ううん、そこを通してずっと遠くを見つめていた。
「今日を過ぎたら二度と会えないかもしれないと思ったから目に焼き付けなくちゃ、って、君のことばかり見てた……そんな情けない自分を、客観的に眺めてる夢を見るんだよね」
「……時田、くん」
最近ようやく間違えずに呼べるようになった名前。
私だけしか知らない……アイドル・日下部浩次の素顔がそこにある。
「私もね、時田くんのこと見てたよ……」
私がそう言うと、彼はまつげの長い両目を一瞬見開いて、すぐに小さく笑った。
「ウソでしょ。だって目が合わなかったもん」
「うん……目が合ったら恥ずかしいから、背中しか見てなかったかな」
あの頃の甘酸っぱい感覚が胸に込み上げてくる。
時田くんほどはっきりは自覚していなかったけど、高校生活の3年間、いつも心のどこかに彼のことを置いていた気がする。
だから彼氏も作れなかったんだろう。
淡い憧れの男の子と、永遠に決別する日……私にとってもそれは、せつないものだった。
時田くんはちょっと複雑な顔で溜め息をついた。
「……俺があの日、告白出来てたら、俺たちって付き合ってたのかな?」
「……うん、多分ね」
「……そっか……あの人の言った通りだったな」
「え?あの人?」
「あ」
思わず私が反芻すると、彼はいきなり落ち着かないような、バツの悪いような顔になって、目をそらした。
「……ううん、ただの独り言。そろそろ出よっか、ね?ね?」
「う、うん」
変なの……急にどうしたのかしら。
カフェを出てからもしばらく、時田くんは物思いにふけっているようだった。
なんとなく声をかけにくくて、2歩遅れて歩く。
目の前の背中は、確かに記憶の中のそれと重なる。
あの日、どちらかが行動を起こしていたら、今頃私たちはどうなっていたんだろう。
今の私だったら、あの頃の彼にどんな言葉を伝えるだろう……?
「……っ……」
不意に吹き付けて来た横からの突風に、私は思わず立ち止まった。
春一番のような強い風に、思わず車道側によろけそうになる。
「あっ」
危ない……と思ったけれど、私は倒れなかった。
しっかりと支えられている感覚がある。
私はほっとして目を開けた。
「ありがとう、時田くん」
「えっ……!?」
いきなり支えてくれていた力が失われて、私は結局尻餅をついてしまった。
「キャッ……いたたた……」
もう……。文句を言おうと思って視線を上げた私は、そのまま固まった。
私を見下ろしていたのは、制服姿の男の子。
黒縁の眼鏡越しに、困惑したように私を凝視している。
「……なんで、名前……」
「え……?」
「名前、知ってるんですか……?」
私の目は、思わず制服の胸元に行く。
桜高の制服は、胸元に名前の刺繍がある。
そこに綴られていたのは、まさしく先程私が口にした名前だった。
「あ……そうか。刺繍でわかったんですね……すいません。……大丈夫、ですか?」
彼は思い切り目を逸らして、少しためらいがちに、私に手を差し出して来た。卒業証書を持っていないほうの手を。
私はその手を取って立ち上がった……でも頭の中は真っ白で、手を放したらまた倒れてしまいそうだった。
「あの……手……」
「時田、くん……よね?」
「そうですけど、それより、手を……」
「桜高の時田航平くん?」
「……はい、今日で卒業ですけど……あの、だから、手……」
今、何が起きているんだかさっぱりわからない。
でも、私の目の前に高校生の時田くんがいる。
あの日、永遠に決別した筈の男の子がいる。
そして今日が卒業式なら、私は彼に伝えたいことがある。
「ねえ、後悔していること、ないの?」
「は……? って、あっ……」
握ったままだった彼の手を、祈るように両手で包み込む。
「誰かに、伝えていない想いがあるでしょう? このままでいいの?」
「……っ、どうして……」
「打ち明けなくていいの? もしかしたら、両想いかもしれないじゃない」
時田くんは俯いて首を左右に振る。
「そんなこと、ありえない」
「どうして言い切れるの?」
制服の肩が少し震えている。
「……僕自身が好きになれない『僕』を……誰かが好きになってくれるわけがないか……ら」
圧し殺していたものがあったんだと思う。
絞り出した声は、泣きそうなものだった。
「ごめんね……」
私は彼の手を離して、思わず自分よりずっと背の高い、彼の頭を撫でてしまった。……姉の性分というやつかもしれない。
「っ」
驚いて顔を上げた彼と、初めて正面から目が合った。
「じゃあいつか、ちゃんと迎えに行くのよ」
微笑んでみせる。
「彼女が好きにならざるを得ないような格好いい大人になって、ちゃんと気持ちを伝えてあげて……ちょっとくらい強引でも、しつこくてもいいから、ちゃんと口説き落としなさい」
「……っ……」
時田くんは、顔を真っ赤にしてまた俯いてしまった。
あの頃はクールで近より難い人だと思っていたのに……こんなに可愛い人だったんだ。
思わず抱き締めたい衝動に駆られたけど……流石にちょっと犯罪な気がする。
もう一度手を握るくらいならいいかな……と、手を伸ばそうとした刹那。
「こらー!」
暢気な声がすぐ近くで聞こえたかと思ったら、後ろから思い切り抱き締められていた。
「俺というものがありながら浮気するのー?
いたいけな高校生をそれ以上誘惑しちゃダ・メ」
顔は位置的に見えないけど、こんなお馬鹿な物言いをする人を、私は一人しか知らない。
目の前の時田くんは、いきなり現れた彼のことをギョッとした顔で見つめている。
「……これは浮気じゃないと思うけど」
「でもやっぱりダメなのー! ……第一、これは俺の夢なんだから君はここにいちゃダメでしょ?」
「夢……? あ」
カフェで話していたこと。
卒業式の日の自分を客観的に見ている夢……って……これがその夢??
「わかったら一緒に帰ろうね♪」
抱き締められたまま、半ば強引に体を裏返しにされてしまう。
首だけひねって、制服姿であっけにとられている彼を見る。
その目を優しくふさぐ、ヤキモチ妬きな手のひら。
「……少年! 悔しかったら早く俺みたいないい男になりなよ」
また馬鹿なこと言って。
思わずクスクス笑ってしまった。
「……何がおかしいの?」
「え?」
一瞬だけ意識が途絶えたような気がした。
「私今、何やってるんだっけ?」
「んと、街中でイケメンなダーリンに抱き締められて、通行人から羨ましがられてるところ、かな」
「ええっ!?」
私は慌てて彼の腕からすり抜ける。
「うそうそ、誰も通らなかったから大丈夫」
時田くんは悪戯っぽく笑って、私のほっぺにチュッとお詫びのキスをする。
「もう……。あ、でも今、助けてくれたのよね。ありがとう」
支えてくれなかったら、風で煽られて転んじゃうところだった。
「そんなこと当たり前でしょ? 君が転ばなくて良かった……そういえば、あの時は失敗したんだっけ……」
「……今日はなんだか、『あの人』とか『あの時』とかわからないことばかり言うのね」
「……あれ、怒っちゃった?」
「ちょっとね」
「……ふふ、どうせ怒られるなら話したほうがいいかな」
時田くんは困ったように笑う。そして、話し始めた。
「……高校の卒業式の帰りに、ここで今の君と同じように風で煽られた女の人を助けようとして失敗したことがあったんだよね……恥ずかしくてほとんどまともに顔を見られなかったから、姿形はどんな人だったかあんまり覚えてないんだけど……随分年上で、声とか雰囲気が素敵な人だった。
全て見透かしたみたいなことを言って、なんだかわからないけど、俺を励ましてくれたんだ」
「……ふうん」
なんとなく冷たいものが表に出てしまう……昔のこととは言え、彼の口から他の女性を讃える言葉を聞くのは楽しくない。
それに、彼女の話が出掛けた時にバツの悪い顔をするのは、彼も満更ではなかったからじゃないかって思ってしまう。
「その人、時田くんに気があったんじゃない? いたいけな高校生誘惑するなんて危険なお姉さんね」
「……ううん。なんか彼氏っぽい人が迎えに来てすぐに行っちゃったんだ。
……なんか、1日に2回失恋した気分だった」
「やっぱり……!」
「えっ、あ、でも今思うとちょっとあの人君に似てたかも」
「そんなんでごまかされないわよ」
思わずプイッと背中を向けてしまう。
「違うよっ、ホントだってばー!! 許してよ、さつきちゃん」
ガバッと後ろから抱き締められる。
一瞬だけフワッと、何かが頭を過った気がした……でもすぐに我に返って、周りに誰かいないかとキョロキョロしてしまう。
「ちょ、もう、怒ってないから離して」
「いやだ」
「時田くん!」
「いやだ……君が笑ってくれるまで離さないよーだ」
もう、なんなのこの大きいこどもは……と、思わずクスクス笑ってしまうと、首筋に唇の感触があった後で、解放された。
振り返ると彼は、思いの外真剣な目で私を見ていた。
「……俺、好きな人を幸せな顔にしてあげる人になりたかったんだ……あの時の、あの人の、彼氏に憧れてたのかもしれない。
自分を変えたいって、思った時に無意識にお手本に選んでたような気がする」
そう呟くように言った後で、我に返って自分の口を押さえる。
「あ、ごめん……この話はもういいよね」
また私を怒らせやしないかと、びくびくしている彼が愛しくなって、思わず私からその手を握った。
「もう怒ってないってば!」
何度も繋いできた、綺麗な、でも大きくてしっかりした大人の男の手。
ああ、あの頃とはやっぱり違うんだ……と、何故か一瞬思った。
あの頃? ……何を考えているんだろう。昔の時田くんの手を握ったことなんないのに。
でも……ああ、なんだかちょっと……。
「さつきちゃん……?」
私は説明のつかない、でも優しい気持ちで胸を満たしながら、彼に微笑んだ。
「ねえ、私今、誰よりも幸せな顔してるでしょ……?」
……あなたの夢は、叶いましたか……?
《END》
「卒業式のこととかって、覚えてる?」
「え?」
脈絡のない質問に驚いて彼の視線を追うと、証書入りの筒を抱えた制服姿の女の子のグループが横切るのが見えた。
あれ、桜高の制服だ。そういえばこのカフェは桜高から結構近い。
「そういえば、そんな季節だものね」
まだ、午後のお茶には温かいココアのほうが嬉しいけれど、確実に季節は春へ移り変わっていた。
椅子の背にかかったお客さんのコートも、私たちを含めてみんな淡い彩り。
さっきから、メニューに躍る春の新作デザートが私を誘惑している。
「卒業式か……なんだか遠い昔みたい」
「……俺はそうでもないかな。今でもよくあの日のことを夢に見るしね」
彼の視線はまだ、女の子たちがいたところを……ううん、そこを通してずっと遠くを見つめていた。
「今日を過ぎたら二度と会えないかもしれないと思ったから目に焼き付けなくちゃ、って、君のことばかり見てた……そんな情けない自分を、客観的に眺めてる夢を見るんだよね」
「……時田、くん」
最近ようやく間違えずに呼べるようになった名前。
私だけしか知らない……アイドル・日下部浩次の素顔がそこにある。
「私もね、時田くんのこと見てたよ……」
私がそう言うと、彼はまつげの長い両目を一瞬見開いて、すぐに小さく笑った。
「ウソでしょ。だって目が合わなかったもん」
「うん……目が合ったら恥ずかしいから、背中しか見てなかったかな」
あの頃の甘酸っぱい感覚が胸に込み上げてくる。
時田くんほどはっきりは自覚していなかったけど、高校生活の3年間、いつも心のどこかに彼のことを置いていた気がする。
だから彼氏も作れなかったんだろう。
淡い憧れの男の子と、永遠に決別する日……私にとってもそれは、せつないものだった。
時田くんはちょっと複雑な顔で溜め息をついた。
「……俺があの日、告白出来てたら、俺たちって付き合ってたのかな?」
「……うん、多分ね」
「……そっか……あの人の言った通りだったな」
「え?あの人?」
「あ」
思わず私が反芻すると、彼はいきなり落ち着かないような、バツの悪いような顔になって、目をそらした。
「……ううん、ただの独り言。そろそろ出よっか、ね?ね?」
「う、うん」
変なの……急にどうしたのかしら。
カフェを出てからもしばらく、時田くんは物思いにふけっているようだった。
なんとなく声をかけにくくて、2歩遅れて歩く。
目の前の背中は、確かに記憶の中のそれと重なる。
あの日、どちらかが行動を起こしていたら、今頃私たちはどうなっていたんだろう。
今の私だったら、あの頃の彼にどんな言葉を伝えるだろう……?
「……っ……」
不意に吹き付けて来た横からの突風に、私は思わず立ち止まった。
春一番のような強い風に、思わず車道側によろけそうになる。
「あっ」
危ない……と思ったけれど、私は倒れなかった。
しっかりと支えられている感覚がある。
私はほっとして目を開けた。
「ありがとう、時田くん」
「えっ……!?」
いきなり支えてくれていた力が失われて、私は結局尻餅をついてしまった。
「キャッ……いたたた……」
もう……。文句を言おうと思って視線を上げた私は、そのまま固まった。
私を見下ろしていたのは、制服姿の男の子。
黒縁の眼鏡越しに、困惑したように私を凝視している。
「……なんで、名前……」
「え……?」
「名前、知ってるんですか……?」
私の目は、思わず制服の胸元に行く。
桜高の制服は、胸元に名前の刺繍がある。
そこに綴られていたのは、まさしく先程私が口にした名前だった。
「あ……そうか。刺繍でわかったんですね……すいません。……大丈夫、ですか?」
彼は思い切り目を逸らして、少しためらいがちに、私に手を差し出して来た。卒業証書を持っていないほうの手を。
私はその手を取って立ち上がった……でも頭の中は真っ白で、手を放したらまた倒れてしまいそうだった。
「あの……手……」
「時田、くん……よね?」
「そうですけど、それより、手を……」
「桜高の時田航平くん?」
「……はい、今日で卒業ですけど……あの、だから、手……」
今、何が起きているんだかさっぱりわからない。
でも、私の目の前に高校生の時田くんがいる。
あの日、永遠に決別した筈の男の子がいる。
そして今日が卒業式なら、私は彼に伝えたいことがある。
「ねえ、後悔していること、ないの?」
「は……? って、あっ……」
握ったままだった彼の手を、祈るように両手で包み込む。
「誰かに、伝えていない想いがあるでしょう? このままでいいの?」
「……っ、どうして……」
「打ち明けなくていいの? もしかしたら、両想いかもしれないじゃない」
時田くんは俯いて首を左右に振る。
「そんなこと、ありえない」
「どうして言い切れるの?」
制服の肩が少し震えている。
「……僕自身が好きになれない『僕』を……誰かが好きになってくれるわけがないか……ら」
圧し殺していたものがあったんだと思う。
絞り出した声は、泣きそうなものだった。
「ごめんね……」
私は彼の手を離して、思わず自分よりずっと背の高い、彼の頭を撫でてしまった。……姉の性分というやつかもしれない。
「っ」
驚いて顔を上げた彼と、初めて正面から目が合った。
「じゃあいつか、ちゃんと迎えに行くのよ」
微笑んでみせる。
「彼女が好きにならざるを得ないような格好いい大人になって、ちゃんと気持ちを伝えてあげて……ちょっとくらい強引でも、しつこくてもいいから、ちゃんと口説き落としなさい」
「……っ……」
時田くんは、顔を真っ赤にしてまた俯いてしまった。
あの頃はクールで近より難い人だと思っていたのに……こんなに可愛い人だったんだ。
思わず抱き締めたい衝動に駆られたけど……流石にちょっと犯罪な気がする。
もう一度手を握るくらいならいいかな……と、手を伸ばそうとした刹那。
「こらー!」
暢気な声がすぐ近くで聞こえたかと思ったら、後ろから思い切り抱き締められていた。
「俺というものがありながら浮気するのー?
いたいけな高校生をそれ以上誘惑しちゃダ・メ」
顔は位置的に見えないけど、こんなお馬鹿な物言いをする人を、私は一人しか知らない。
目の前の時田くんは、いきなり現れた彼のことをギョッとした顔で見つめている。
「……これは浮気じゃないと思うけど」
「でもやっぱりダメなのー! ……第一、これは俺の夢なんだから君はここにいちゃダメでしょ?」
「夢……? あ」
カフェで話していたこと。
卒業式の日の自分を客観的に見ている夢……って……これがその夢??
「わかったら一緒に帰ろうね♪」
抱き締められたまま、半ば強引に体を裏返しにされてしまう。
首だけひねって、制服姿であっけにとられている彼を見る。
その目を優しくふさぐ、ヤキモチ妬きな手のひら。
「……少年! 悔しかったら早く俺みたいないい男になりなよ」
また馬鹿なこと言って。
思わずクスクス笑ってしまった。
「……何がおかしいの?」
「え?」
一瞬だけ意識が途絶えたような気がした。
「私今、何やってるんだっけ?」
「んと、街中でイケメンなダーリンに抱き締められて、通行人から羨ましがられてるところ、かな」
「ええっ!?」
私は慌てて彼の腕からすり抜ける。
「うそうそ、誰も通らなかったから大丈夫」
時田くんは悪戯っぽく笑って、私のほっぺにチュッとお詫びのキスをする。
「もう……。あ、でも今、助けてくれたのよね。ありがとう」
支えてくれなかったら、風で煽られて転んじゃうところだった。
「そんなこと当たり前でしょ? 君が転ばなくて良かった……そういえば、あの時は失敗したんだっけ……」
「……今日はなんだか、『あの人』とか『あの時』とかわからないことばかり言うのね」
「……あれ、怒っちゃった?」
「ちょっとね」
「……ふふ、どうせ怒られるなら話したほうがいいかな」
時田くんは困ったように笑う。そして、話し始めた。
「……高校の卒業式の帰りに、ここで今の君と同じように風で煽られた女の人を助けようとして失敗したことがあったんだよね……恥ずかしくてほとんどまともに顔を見られなかったから、姿形はどんな人だったかあんまり覚えてないんだけど……随分年上で、声とか雰囲気が素敵な人だった。
全て見透かしたみたいなことを言って、なんだかわからないけど、俺を励ましてくれたんだ」
「……ふうん」
なんとなく冷たいものが表に出てしまう……昔のこととは言え、彼の口から他の女性を讃える言葉を聞くのは楽しくない。
それに、彼女の話が出掛けた時にバツの悪い顔をするのは、彼も満更ではなかったからじゃないかって思ってしまう。
「その人、時田くんに気があったんじゃない? いたいけな高校生誘惑するなんて危険なお姉さんね」
「……ううん。なんか彼氏っぽい人が迎えに来てすぐに行っちゃったんだ。
……なんか、1日に2回失恋した気分だった」
「やっぱり……!」
「えっ、あ、でも今思うとちょっとあの人君に似てたかも」
「そんなんでごまかされないわよ」
思わずプイッと背中を向けてしまう。
「違うよっ、ホントだってばー!! 許してよ、さつきちゃん」
ガバッと後ろから抱き締められる。
一瞬だけフワッと、何かが頭を過った気がした……でもすぐに我に返って、周りに誰かいないかとキョロキョロしてしまう。
「ちょ、もう、怒ってないから離して」
「いやだ」
「時田くん!」
「いやだ……君が笑ってくれるまで離さないよーだ」
もう、なんなのこの大きいこどもは……と、思わずクスクス笑ってしまうと、首筋に唇の感触があった後で、解放された。
振り返ると彼は、思いの外真剣な目で私を見ていた。
「……俺、好きな人を幸せな顔にしてあげる人になりたかったんだ……あの時の、あの人の、彼氏に憧れてたのかもしれない。
自分を変えたいって、思った時に無意識にお手本に選んでたような気がする」
そう呟くように言った後で、我に返って自分の口を押さえる。
「あ、ごめん……この話はもういいよね」
また私を怒らせやしないかと、びくびくしている彼が愛しくなって、思わず私からその手を握った。
「もう怒ってないってば!」
何度も繋いできた、綺麗な、でも大きくてしっかりした大人の男の手。
ああ、あの頃とはやっぱり違うんだ……と、何故か一瞬思った。
あの頃? ……何を考えているんだろう。昔の時田くんの手を握ったことなんないのに。
でも……ああ、なんだかちょっと……。
「さつきちゃん……?」
私は説明のつかない、でも優しい気持ちで胸を満たしながら、彼に微笑んだ。
「ねえ、私今、誰よりも幸せな顔してるでしょ……?」
……あなたの夢は、叶いましたか……?
《END》
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