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乙女ゲーマー麻咲(あさき)の、2.5次元を彷徨うブログ
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  プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

バイト先→某損保系コールセンター 

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2009/02/19 (Thu)
 ……私だ。仕事は終わったのか?

 ……そうか。

 ……いや、今夜の予定を念のため確認しておこうと思っただけだ。

 ……ああ。漸は遅れるようなので小原を迎えには行かせようと思う。

 ……では、そうしよう。……気をつけて帰りなさい。








《終章 午前零時の戯言 -Under the moon-》










「そういえば今日だっけ、日向子のパパのお誕生日」

「ええ。そうですの」

「そっか、いいね」

 「羨ましいな」と美々は微笑する。

 確かにこのところ、釘宮父子の関係はわりとうまくいっていた。

 雪乃の一件以来、日向子は高槻を純粋に尊敬することができるようになったし、高槻のほうも日向子のことをある程度認めてくれているようだ。

 時々はこうして、直接電話もしてくる。

 わざわざ電話をして、発売したばかりの雑誌の、担当記事のダメ出しをしてくることさえあった。

 そんな時は喜んでいいのか、落ち込んでいいのか迷ってしまう。

 しかし電話の最後にはいつも「頑張りなさい」と激励の言葉が添えられているので、やはり少し嬉しくなる。


 結婚についてはまだ多少気をもんでいるようだが、日向子の気持ちははっきりしている。

 まだ当分、結婚はしない。

 今一番大切にしたいもの、それは「記者」という仕事だからだ。


 はじめは、伯爵に近づきたいという、不純な動機からついた仕事ではあったが、得たものは数えきれない。

 たくさんの仲間や、一生ものの親友と出会い、家族との関係や自分自身の心と向き合って大きく成長を遂げた。

 そして今は純粋に記者という仕事にやりがいを感じ、楽しんでいる。

 自分の見聞きしたもの、感じたものを、言葉としてたくさんの人に伝える……それはとても困難で、とても面白い。


 自分には音楽で誰かの心を動かす力はないけれど、素晴らしい音楽と、誰かの心を引き合わせることはできるかもしれない。

 そう考えると、日向子にはやる気がみなぎってくるのだ。


 











 釘宮高槻の誕生日を祝う宴は、毎年夜更けまで続く。

 元々華やかな社交の場がそれほど得意ではなかった日向子には苦行でしかなく、ここ数年は何かと理由をつけては欠席していた。

 今回も、つい先日の騙し討ち見合いパーティーの件が頭を過って、かなり慎重になっていたのだが、意を決して参加を決めたのだった。

 結果として不安は杞憂に終わり、かわるがわる縁談話を持ちかけられるような事態にはならなかった。

 おそらく高槻が事前に根回しをしてくれていたのだろう。

 とはいえ、微笑みをキープしたままの状態で、息苦しいドレスと、不馴れなヒールを身につけて長時間過ごすのは楽なことではなかった。


 そろそろ限界かもしれないと思い始めた時、


「日向子」


 パーティーの主賓が声をかけてきた。

「……お父様」

「少し話したいことがある。ついて来なさい」

 口調は有無を言わさない命令調子であったが、どこか優しさを感じさせる言葉だった。

「……はい」

 素直に頷いた日向子は、歩き出した高槻に続いて、来賓たちの間を抜けていく。

「……よろしいのですか?主賓が席を外してしまって」

「気にすることはない……そう長い話ではないからな」

 父子はにぎやかな場所から離れ、人気のない庭園へ出た。

 冴え冴えと、三日月が輝く夜空の下へと。

「お話とはなんでしょうか? お父様」

「……日向子、お前に今一度覚悟を問いたい」

 威厳に満ちた父親の問いかけ。

「お前にとって何よりも大切なものは、記者という仕事……そうだな?」

「はい、その通りですわ」

 答えは即答だったが、もちろん軽い気持ちではない。

 真剣な気持ちがぶれることなく伝わるように、真っ直ぐ高槻の目を見つめて告げた。

「わたくしは、この仕事に生涯を捧げるつもりですわ」

「よくわかった……ならばこれを」

 高槻は、月明かりにキラリと光る、小さな金属製の何かを日向子に差し出した。

 レースの手袋をつけた、日向子の手にそれは手渡される。

「これは……」

 鍵だった。

 見覚えのあるものだ。

 日向子が自分の手で開け閉めをしたことはないが、どの部屋の鍵かはわかる。

「……行ってみなさい」

「……はい」


 ギュッと鍵を握り締めた。










 その鍵を飲み込み、カチリと音を立てる鍵穴。

 それはやはり、ゲストハウスのものだった。

 すべての始まりの場所……その扉を今、ゆっくりと開く。

 部屋の中は薄闇に沈んでいる。

 うっすらと闇照らすものは、テーブルの上と壁際にいくつか飾られたキャンドルの光と、大きな窓から差し込む月明かりだけ。

 それなのに、まるで自信が銀色の光を放っているかのように、窓辺に立つ彼の姿はくっきりと、鮮やかに見ることができた。

 どこか物憂げな眼差しをこちらに投げ掛け、彼は微笑している。


「やあ」


 静かな声。


 あまりにも短いその一言を聞いただけで、日向子はへたりこんでしまいそうだった。

 なんとか立っていることはできたものの、金縛りにでもあったように動くことができない。

 声すらも出せない。

 ただ気がつけば、何故か一筋、涙がほほを伝っていた。

「……何故泣くのですか?レディ」

 気取っているようで、他人を小馬鹿にしているようで、少し優しい……不思議な言葉。

「伯爵様……!」

 この世界に2人といない、唯一無二の銀色の吸血鬼。

 雲に隠れ、見えなくなっていた月がゆっくり姿を現したように、彼が再びそこに立っていた。

「いや……伯爵は廃業したので、単なる高山獅貴さ」

「何故、ここに……?」

「君に会いたくてね」

「……」

「ふふ、疑っている顔だ。可愛いな。
……先生は言ってなかったかい。仕事の話をしに来たんだよ」

 仕事の話……思いがけないことだった。
 だが、確かに高槻は、鍵を渡す前に日向子の仕事に対する覚悟を問うてきていた。

 高山獅貴には以前、自分の下で働く気はないかと誘われたことがあった。
 しかし今や高山獅貴の所有していた会社は全て他人の手に渡り、BLA-ICAのプロデュースも離れてしまっている。

 この上の「仕事の話」とはなんだろうか。

 戸惑う日向子に、高山獅貴は小さく笑って歩み寄ってくる。
 そして、こう言った。

「……本を、書いてくれないだろうか」

「……本?」

「そう……本だよ。私のことを本にしてくれないか?」

 高山獅貴の本……?
 日向子は驚きに目を丸くした。

「何もかも包み隠すことなく、削り落とすことなく……私の全てを、ね。
長い仕事になるだろうが……出来れば君に任せたい」

「何故、わたくしに……自著という形ではいけないのですか?」

「私本人の言葉よりも、第3者の言葉として記されたもののほうが、伝説の記録には相応しいとは思わないか?」

 伝説の記録……。

 そうまさに、彼の半生は伝説だ。

 表舞台から忽然と消え去った今でさえも、人々の心の中で伝説は綴られていく。

 虚も実も飲み込んで。

「やってくれませんか? 森久保日向子さん」


 そっと差し出された手。日向子はその手をしばらく見つめ、やがてゆっくりと、自らの手を重ねた。


「……書きます」


 指と指がわずかに絡む。

 彼の手はいつもひんやりして冷たい。

「わたくしに書かせて下さい」

 しかし、包み込むようにして握られた手には微かな温もりが感じられた。

 伯爵は満足げな笑みを浮かべ、日向子の手を放した。

 自由になった手に、寂しさを感じしまう。

 自由な空に放たれながら、鳥籠が恋しくて、舞い戻ってしまう小鳥のように……また戻って来てしまったのだろうか。

 卒業した筈の憧れ。
 過去になった筈の想い。

「覚えているだろうか……」

 不意に高山獅貴は口を開いた。

「……夢を叶えたらどうするつもりですか、と君は尋ねた」

「はい……覚えています」

 幾つかの真実を彼の口から打ち明けられた、あの再会の日に。

 確かにそんな疑問を投げ掛けた。

「ようやくその答えを考える余裕が出来た。
あくまでも考える余裕が出来た、というだけで、全く答えは用意出来ていないがね。
……その本の原稿が出来上がる頃には、何かひとつくらいは掴んでいるかもしれない」

「そうですか……では、本の最後を締め括るのは、その答えになるかもしれませんわね」

「……ああ。そうかもしれない」

 そう言って笑う高山獅貴は、もともと年齢不詳だったが、更に若々しい顔に見えた。

「命のあるうちにやってみたいことは、色々とあるにはあってね……まだ訪れていない国に行ってみるのもいい。まだ触れたことのない楽器を奏でるのもいい。絵を描いてみるのももいいな。
それから……一度くらい結婚しておいてもいいかもしれない」

「けっ、結婚ですか!?」

 サラッと口にした言葉に、思わず大きな声が出てしまった。

「まあ、こればかりは俺の一存では難しいからなあ……適当な相手が見つからなかったら、君がしてくれるかい?」

「な、何をおっしゃってるんですか!!」

 あまりにも軽い口調で言われた言葉に、滑稽なほど大袈裟に反応してしまい、日向子は恥ずかしさに俯いてしまう。

「……年頃の女性に、そのような冗談をおっしゃらないで下さいませ」

 ましてや、自分にずっと恋い焦がれていた人間に対して、そんな言い方をされては冷静でなどいられない。

「では、冗談で済むように祈っておいてくれればいい」

「おっしゃっている意味がわかりかねます!」

 冗談で済むように?

 冗談で済まないことがあるとでもいうのか。

 問い詰めても意味をなさない。

 それは未来の話。

 まだ決まっていない「答え」の話。

 ただひとつだけわかっていることは、少なくとも本の原稿が出来るその時までは、彼と離れることはできないということだ。


「では、よろしく頼むよ……レディ?」











《END》

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