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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2009/02/17 (Tue)
一次創作関連
……俺、やけど……まだ仕事やったか?
……そうか。……別に、急ぎの用ってことでもないんやけどな……。
ジブン、今週末とか、予定空いてへんか……?
……いや、あいつが……菊人が遊園地に行きたいゆうてて、俺が連れてくことになりそうなんやけど……俺だけやとまた、ほら、わかるやろ?
だから、出来たらジブンも……。
は……?
……っ!? おいっ! ジブンいつの間に……!!
《終章 鏡の城の…… ―Dream of not ending―》
「あんたねえ、いい年して、いたいけな子どもをだしにするもんやないよ……情けないなー」
通話中に横から日向子の携帯を取り上げた美々は、憤慨した様子で、実の兄をなじる。
もちろん本気で罵倒しているわけではなく、彼女なりの親愛表現の一環なのだろう……と、日向子はとりあえず見守る。
美々が有砂と話す時の、たまに関西弁が混ざる話し方。日向子には最初違和感があったのだが、もうすっかり慣れてしまった。
「……うん。そういうことで、よろしく。じゃあね」
どうやら話は終わったらしい。通話の途切れた携帯電話が日向子の手に返ってくる。
美々は、今までとうって変わった上機嫌な笑顔を見せた。
「今週末、空けといてね。Wデートだから」
「Wデート?」
「そ。あたしと日向子、佳人と菊ちゃんのWデート」
「それは……」
女女・男男で果たしてWデートが成立するものなのだろうか……という疑問もさることながら、引っ掛かる組み合わせだ。
「あの、せっかくならご兄弟水入らずのほうがよろしいのでは?」
「だって遊園地でしょ? 大抵のアトラクションは2人ずつ乗るように出来てるじゃない。3人じゃ余っちゃうでしょ」
言われてみればその通り。思わず納得しかけていた日向子に、美々はさらにこう囁いた。
「いいじゃない。菊ちゃんからしたら日向子もお姉ちゃんみたいなものだし……お兄ちゃんの婚約者なんだからさ」
「そっ」
予想だにしない発言に、弁解の言葉が喉に引っ掛かって出て来ず、日向子は目を白黒させる。
「ま、そういうことで。よろしくねー!」
言いたいことだけ言いっぱなしで、ご機嫌なまま去っていく美々を見送りながら、日向子は思い切り赤面していた。
婚約……それは正式に交わされたことではなく、そもそも形だけのものでしかない。
それでも指摘されると意識してしまうのは何故か……その理由は、日向子自身が一番よくわかっていた。
日向子が着いた時、遊園地の入場ゲートの側にある待ち合わせ場所のモニュメントの前には、すでに待っている人の姿があった。
有砂だ。
妹ではなく、兄のほうの。
練習やミーティングには比較的遅れて来ることの多い有砂が一番乗りとは珍しい。
駆け寄る日向子の足もおのずと早足になってしまった。
「有砂様!」
笑顔で呼び掛けた直後に、日向子は思い切り固まった。
半年に満たない付き合いとはいえ、わからない筈もない。
有砂は、機嫌が悪い。
「あの……」
戸惑っている日向子を斜め上から見下ろして、有砂は、
「来たか……ほんなら、帰るで」
思いもよらない提案を投げ掛けてきた。
「はい?? 帰る……んですか?」
「そうや」
「あの……まだ、お姉さまと菊人ちゃんも来ていらっしゃ」
「来ないから帰るんや」
有砂は深く溜め息をつくと、いよいよ混乱している日向子に告げる。
「……ハメられたかもしれん」
有砂の説明によれば、ついたった今、有砂の携帯に美々からドタキャンの連絡が入ったのだという。
菊人がお腹が痛いと言っているので、このまま休日診療の病院に連れて行く……遊園地は2人で楽しんで来て、と。
「まあ、それは心配ですわね」
「どうだか……怪しいもんやな」
「え……?」
「ハナっから来る気なかったんやないか……俺とお嬢を2人にするつもりでな」
確かに、美々ならやりかねない……日向子にも反論しようがなかった。
わかっていた。美々は多分、気づいているのだろうと。
日向子が有砂に対してどういう感情を抱いているのかを……。
「有砂様は……」
自然と口をつく言葉。
「有砂様は、わたくしと2人きりではお嫌ですか?」
「っ」
ほとんど反射的に目を逸らした有砂に、日向子は思わずしゅんとしてしまう。
「お嫌ですのね……」
「……誰も嫌とはゆうてへんけど……ただ」
「ただ?」
「俺と遊園地に行っても楽しくはないで……多分」
「そんなことはないと思いますけれど……」
日向子は少し笑って、逸らされた視線の先に頭を傾けた。
「楽しくなくても構いません……と言ったらご一緒して頂けるのでしょうか」
「これは……」
「……意味はわかるやろ」
「ええ、まあ……」
入場してすぐに有砂が要求したもの……それは日向子が仕事柄常に携帯しているもの……ペンだった。
有砂は渋い顔をしながら、ゲートで渡された園内パンフレットを開くと、そこにペンで無数の記号を書き込み、ペンと一緒に日向子に手渡した。
パンフレットのMAPの上に、ざっと見ただけで20個くらいは書き込まれている記号……「×」。
意味するところは「拒絶」だった。
有砂が拒絶の意志を表明したアトラクションは、コースター、フリーホール、バイキング……心臓に疾患のある人や、妊婦さんが乗ってはいけない類いのものたち。
あるいは、身長130センチ未満の子どもが一緒なら、乗らなくて済むジャンル。
「有砂様、あの……もしや絶叫マシーンが」
「うるさい。とりあえず、向こう行くで」
それ以上追及するなとばかりに、先んじて早足で歩き出す有砂の後ろ姿を見つめながら、日向子は笑いを堪えるのに必死だった。
「あの」
「……ん?」
「どうしてここも『×』なのですか?」
いくつかの『平和な』アトラクションを回って、次はどこへ行こうかとマップを眺めていた日向子は、他とは少し趣の違う『拒絶』ポイントを見つけた。
しかもそれは、今まさに目の前に建っている。
「『ミラー・キャッスル』は絶叫マシーンではないですわよね」
「そうやな……」
キラキラと、陽光を照り返す銀色の城。
それを見上げながら、有砂は複雑な表情を浮かべていた。
「……思い出がある」
「悪い思い出ですか?」
「……そう悪い思い出でもないところが始末が悪い」
「それは……」
そこにそれ以上踏み込んでも平気なのかどうか、躊躇して言葉を選ぶ日向子。それをチラリと見やって、有砂のほうから口を開いた。
「ガキの頃1回だけ、家族4人でここに来たことがあった。
……けど、その頃から円満な家庭やなかったから……些細なことで両親が険悪な雰囲気になってな。
俺は幼心に嫌気がさして、妹連れて2人でここに逃げ込んだ」
「……綺麗なお城ですものね」
「まあ、当然ながら、そう長くはおれんかったけどな」
小さな子どもが2人、アトラクションの中に入ったまま出て来なくなれば、すぐに従業員も気がつくだろう。想像にたやすい。
「ほんの小一時間くらいのことやったのに、母さんはボロボロ泣いてて化粧がぐちゃぐちゃやった。
おまけにあのクソ親父まで、めちゃめちゃ嬉しそうに『お前たちが無事で良かった』……とか……」
沢城家の事情を知らない者が聞けば、何とも微笑ましいエピソードだと思うだろう。
しかし日向子は知っている。彼が何故、苦い薬を飲み干すような顔で記憶を辿っているのか。
その優しい思い出はやがて彼を裏切り、より深い絶望をもたらしたのだ。
「……有砂様……」
日向子はたまらず、有砂の手を取った。
はっとしたように、切れ長の眼差しが日向子を見つめてくる。
愛情深いが故に、寂しげな瞳。
「……幸せに、なりましょう」
「……なんて?」
「幸せに……ならなくてはダメだと思います」
有砂の大きな手を、ギュッと握った。
「有砂様も、美々お姉さまも、秀人様も、有佳様も、薔子様も、菊人ちゃんも、メンバーの皆様も、それにわたくしも……有砂様と、有砂様の人生に関わった人がみんな幸せにならなければダメだと思います。
有砂様を悲しませた出来事や、刻まれた傷が全て、無駄なことでも間違ったことでもなかったと……証明するために」
どんな不幸も後悔も、幸せな未来に繋がっていたのだと……そう思えれば何もかも報われる。
そんな気がする。
有砂は無言でしばらく日向子を見つめていたが、やがて低い声で呟いた。
「……中、入ってみるか」
「え?」
「『ミラー・キャッスル』……久々に入ってみたくなった」
そう言うと、日向子の答えを待つことなく、歩き出す。
「あっ」
自然と手を繋いだまま歩く格好になってしまっていた。
「まあ……綺麗」
『ミラー・キャッスル』の中では、鏡張りの壁が色とりどりのライトを反射して、キラキラと星のように瞬いていた。
「ロマンチックで幻想的で……夢の中の景色のようですわね」
思わず口をついた言葉に、有砂は小さく溜め息をついた。
ふと足が止まる。
「……お嬢は、いつもこんな綺麗な夢を見てきたんやな。
俺はずっと、悪夢しか見たことがなかった気がする……」
「有砂様……」
彼を苛んで来た哀しい過去……穏やかな眠りを奪ってきた悪夢。
「……でも、最近はそうでもない。
俺も綺麗なものを、夢に見るようになってきた」
「綺麗なもの……? どんな夢ですか?」
「……そうやな、例えば……」
え? ……と、驚くのが間に合わないほど突然、さりげなく、有砂の顔が日向子のすぐ目の前まで近づいて来ていた。
「……嫌なら、殴ってもええから」
囁かれた言葉の意味を把握するより先に、唇が触れ合っていた。
キスされたのだと理解した時には、もう離れていて、日向子はただ呆気にとられたように自分の唇に指で触れていた。
「……有砂様……今……」
「……例えば、こういう夢は悪くない」
夢?
夢なのだろうか?
夢だと言われれば、そんな気がする。
「これは……わたくしの見ている夢なのかしら……」
そうでなければ、有砂がこんなことをする理由がわからない。
「……わたくしが、有砂様のことばかり考えているからこんな夢を見ているのでしょうか……」
独り言のように呟く日向子を、見たこともないような優しい笑みを浮かべた有砂が見下ろしている。
「夢にしておきたいんやったら……まあ、それでもええ。
……ただし、二度と覚めないかもしれんけど」
「……そんなことをおっしゃるなんて、秀人様みたいで変です」
思わず日向子も笑ってしまった。
「……そうやな。俺もゆうててそう思った」
ああ、これが夢だとしたら本当に、なんて幸せな夢だろう。
「……けど、惚れた女の前でくらいは、こういうのもええんちゃうか」
美しい景色の中で、好きな人と想いが通じ合う夢。
気づけば腕の中にいて、抱き締められていて。
「……好きや、お嬢」
愛の言葉を捧げてくれていて、それに頷く自分がいて。
もう一度、唇が重なった……。
プリズムの海から、再び青い空の下へ。
まだ2月とは思えない暖かな日差しの元へと戻って来た。
斜め上を見やれば、そこにあった2つの瞳が、慌てたように逃げる。
「……恥ずかしいから、あんまり見るな」
何故か今更、照れているらしい。
そんなところがまたたまらなく愛しくて、見つめずにはいられない。
「ふふふ」
「笑うな」
幾千の鏡が見せる美しい幻想の世界が終わっても、まだ夢が覚める気配はない。
彼のコートのポケットの中、微かに熱を帯びた右手と左手は繋がったままだった。
《END》
……そうか。……別に、急ぎの用ってことでもないんやけどな……。
ジブン、今週末とか、予定空いてへんか……?
……いや、あいつが……菊人が遊園地に行きたいゆうてて、俺が連れてくことになりそうなんやけど……俺だけやとまた、ほら、わかるやろ?
だから、出来たらジブンも……。
は……?
……っ!? おいっ! ジブンいつの間に……!!
《終章 鏡の城の…… ―Dream of not ending―》
「あんたねえ、いい年して、いたいけな子どもをだしにするもんやないよ……情けないなー」
通話中に横から日向子の携帯を取り上げた美々は、憤慨した様子で、実の兄をなじる。
もちろん本気で罵倒しているわけではなく、彼女なりの親愛表現の一環なのだろう……と、日向子はとりあえず見守る。
美々が有砂と話す時の、たまに関西弁が混ざる話し方。日向子には最初違和感があったのだが、もうすっかり慣れてしまった。
「……うん。そういうことで、よろしく。じゃあね」
どうやら話は終わったらしい。通話の途切れた携帯電話が日向子の手に返ってくる。
美々は、今までとうって変わった上機嫌な笑顔を見せた。
「今週末、空けといてね。Wデートだから」
「Wデート?」
「そ。あたしと日向子、佳人と菊ちゃんのWデート」
「それは……」
女女・男男で果たしてWデートが成立するものなのだろうか……という疑問もさることながら、引っ掛かる組み合わせだ。
「あの、せっかくならご兄弟水入らずのほうがよろしいのでは?」
「だって遊園地でしょ? 大抵のアトラクションは2人ずつ乗るように出来てるじゃない。3人じゃ余っちゃうでしょ」
言われてみればその通り。思わず納得しかけていた日向子に、美々はさらにこう囁いた。
「いいじゃない。菊ちゃんからしたら日向子もお姉ちゃんみたいなものだし……お兄ちゃんの婚約者なんだからさ」
「そっ」
予想だにしない発言に、弁解の言葉が喉に引っ掛かって出て来ず、日向子は目を白黒させる。
「ま、そういうことで。よろしくねー!」
言いたいことだけ言いっぱなしで、ご機嫌なまま去っていく美々を見送りながら、日向子は思い切り赤面していた。
婚約……それは正式に交わされたことではなく、そもそも形だけのものでしかない。
それでも指摘されると意識してしまうのは何故か……その理由は、日向子自身が一番よくわかっていた。
日向子が着いた時、遊園地の入場ゲートの側にある待ち合わせ場所のモニュメントの前には、すでに待っている人の姿があった。
有砂だ。
妹ではなく、兄のほうの。
練習やミーティングには比較的遅れて来ることの多い有砂が一番乗りとは珍しい。
駆け寄る日向子の足もおのずと早足になってしまった。
「有砂様!」
笑顔で呼び掛けた直後に、日向子は思い切り固まった。
半年に満たない付き合いとはいえ、わからない筈もない。
有砂は、機嫌が悪い。
「あの……」
戸惑っている日向子を斜め上から見下ろして、有砂は、
「来たか……ほんなら、帰るで」
思いもよらない提案を投げ掛けてきた。
「はい?? 帰る……んですか?」
「そうや」
「あの……まだ、お姉さまと菊人ちゃんも来ていらっしゃ」
「来ないから帰るんや」
有砂は深く溜め息をつくと、いよいよ混乱している日向子に告げる。
「……ハメられたかもしれん」
有砂の説明によれば、ついたった今、有砂の携帯に美々からドタキャンの連絡が入ったのだという。
菊人がお腹が痛いと言っているので、このまま休日診療の病院に連れて行く……遊園地は2人で楽しんで来て、と。
「まあ、それは心配ですわね」
「どうだか……怪しいもんやな」
「え……?」
「ハナっから来る気なかったんやないか……俺とお嬢を2人にするつもりでな」
確かに、美々ならやりかねない……日向子にも反論しようがなかった。
わかっていた。美々は多分、気づいているのだろうと。
日向子が有砂に対してどういう感情を抱いているのかを……。
「有砂様は……」
自然と口をつく言葉。
「有砂様は、わたくしと2人きりではお嫌ですか?」
「っ」
ほとんど反射的に目を逸らした有砂に、日向子は思わずしゅんとしてしまう。
「お嫌ですのね……」
「……誰も嫌とはゆうてへんけど……ただ」
「ただ?」
「俺と遊園地に行っても楽しくはないで……多分」
「そんなことはないと思いますけれど……」
日向子は少し笑って、逸らされた視線の先に頭を傾けた。
「楽しくなくても構いません……と言ったらご一緒して頂けるのでしょうか」
「これは……」
「……意味はわかるやろ」
「ええ、まあ……」
入場してすぐに有砂が要求したもの……それは日向子が仕事柄常に携帯しているもの……ペンだった。
有砂は渋い顔をしながら、ゲートで渡された園内パンフレットを開くと、そこにペンで無数の記号を書き込み、ペンと一緒に日向子に手渡した。
パンフレットのMAPの上に、ざっと見ただけで20個くらいは書き込まれている記号……「×」。
意味するところは「拒絶」だった。
有砂が拒絶の意志を表明したアトラクションは、コースター、フリーホール、バイキング……心臓に疾患のある人や、妊婦さんが乗ってはいけない類いのものたち。
あるいは、身長130センチ未満の子どもが一緒なら、乗らなくて済むジャンル。
「有砂様、あの……もしや絶叫マシーンが」
「うるさい。とりあえず、向こう行くで」
それ以上追及するなとばかりに、先んじて早足で歩き出す有砂の後ろ姿を見つめながら、日向子は笑いを堪えるのに必死だった。
「あの」
「……ん?」
「どうしてここも『×』なのですか?」
いくつかの『平和な』アトラクションを回って、次はどこへ行こうかとマップを眺めていた日向子は、他とは少し趣の違う『拒絶』ポイントを見つけた。
しかもそれは、今まさに目の前に建っている。
「『ミラー・キャッスル』は絶叫マシーンではないですわよね」
「そうやな……」
キラキラと、陽光を照り返す銀色の城。
それを見上げながら、有砂は複雑な表情を浮かべていた。
「……思い出がある」
「悪い思い出ですか?」
「……そう悪い思い出でもないところが始末が悪い」
「それは……」
そこにそれ以上踏み込んでも平気なのかどうか、躊躇して言葉を選ぶ日向子。それをチラリと見やって、有砂のほうから口を開いた。
「ガキの頃1回だけ、家族4人でここに来たことがあった。
……けど、その頃から円満な家庭やなかったから……些細なことで両親が険悪な雰囲気になってな。
俺は幼心に嫌気がさして、妹連れて2人でここに逃げ込んだ」
「……綺麗なお城ですものね」
「まあ、当然ながら、そう長くはおれんかったけどな」
小さな子どもが2人、アトラクションの中に入ったまま出て来なくなれば、すぐに従業員も気がつくだろう。想像にたやすい。
「ほんの小一時間くらいのことやったのに、母さんはボロボロ泣いてて化粧がぐちゃぐちゃやった。
おまけにあのクソ親父まで、めちゃめちゃ嬉しそうに『お前たちが無事で良かった』……とか……」
沢城家の事情を知らない者が聞けば、何とも微笑ましいエピソードだと思うだろう。
しかし日向子は知っている。彼が何故、苦い薬を飲み干すような顔で記憶を辿っているのか。
その優しい思い出はやがて彼を裏切り、より深い絶望をもたらしたのだ。
「……有砂様……」
日向子はたまらず、有砂の手を取った。
はっとしたように、切れ長の眼差しが日向子を見つめてくる。
愛情深いが故に、寂しげな瞳。
「……幸せに、なりましょう」
「……なんて?」
「幸せに……ならなくてはダメだと思います」
有砂の大きな手を、ギュッと握った。
「有砂様も、美々お姉さまも、秀人様も、有佳様も、薔子様も、菊人ちゃんも、メンバーの皆様も、それにわたくしも……有砂様と、有砂様の人生に関わった人がみんな幸せにならなければダメだと思います。
有砂様を悲しませた出来事や、刻まれた傷が全て、無駄なことでも間違ったことでもなかったと……証明するために」
どんな不幸も後悔も、幸せな未来に繋がっていたのだと……そう思えれば何もかも報われる。
そんな気がする。
有砂は無言でしばらく日向子を見つめていたが、やがて低い声で呟いた。
「……中、入ってみるか」
「え?」
「『ミラー・キャッスル』……久々に入ってみたくなった」
そう言うと、日向子の答えを待つことなく、歩き出す。
「あっ」
自然と手を繋いだまま歩く格好になってしまっていた。
「まあ……綺麗」
『ミラー・キャッスル』の中では、鏡張りの壁が色とりどりのライトを反射して、キラキラと星のように瞬いていた。
「ロマンチックで幻想的で……夢の中の景色のようですわね」
思わず口をついた言葉に、有砂は小さく溜め息をついた。
ふと足が止まる。
「……お嬢は、いつもこんな綺麗な夢を見てきたんやな。
俺はずっと、悪夢しか見たことがなかった気がする……」
「有砂様……」
彼を苛んで来た哀しい過去……穏やかな眠りを奪ってきた悪夢。
「……でも、最近はそうでもない。
俺も綺麗なものを、夢に見るようになってきた」
「綺麗なもの……? どんな夢ですか?」
「……そうやな、例えば……」
え? ……と、驚くのが間に合わないほど突然、さりげなく、有砂の顔が日向子のすぐ目の前まで近づいて来ていた。
「……嫌なら、殴ってもええから」
囁かれた言葉の意味を把握するより先に、唇が触れ合っていた。
キスされたのだと理解した時には、もう離れていて、日向子はただ呆気にとられたように自分の唇に指で触れていた。
「……有砂様……今……」
「……例えば、こういう夢は悪くない」
夢?
夢なのだろうか?
夢だと言われれば、そんな気がする。
「これは……わたくしの見ている夢なのかしら……」
そうでなければ、有砂がこんなことをする理由がわからない。
「……わたくしが、有砂様のことばかり考えているからこんな夢を見ているのでしょうか……」
独り言のように呟く日向子を、見たこともないような優しい笑みを浮かべた有砂が見下ろしている。
「夢にしておきたいんやったら……まあ、それでもええ。
……ただし、二度と覚めないかもしれんけど」
「……そんなことをおっしゃるなんて、秀人様みたいで変です」
思わず日向子も笑ってしまった。
「……そうやな。俺もゆうててそう思った」
ああ、これが夢だとしたら本当に、なんて幸せな夢だろう。
「……けど、惚れた女の前でくらいは、こういうのもええんちゃうか」
美しい景色の中で、好きな人と想いが通じ合う夢。
気づけば腕の中にいて、抱き締められていて。
「……好きや、お嬢」
愛の言葉を捧げてくれていて、それに頷く自分がいて。
もう一度、唇が重なった……。
プリズムの海から、再び青い空の下へ。
まだ2月とは思えない暖かな日差しの元へと戻って来た。
斜め上を見やれば、そこにあった2つの瞳が、慌てたように逃げる。
「……恥ずかしいから、あんまり見るな」
何故か今更、照れているらしい。
そんなところがまたたまらなく愛しくて、見つめずにはいられない。
「ふふふ」
「笑うな」
幾千の鏡が見せる美しい幻想の世界が終わっても、まだ夢が覚める気配はない。
彼のコートのポケットの中、微かに熱を帯びた右手と左手は繋がったままだった。
《END》
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