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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
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GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2007/07/23 (Mon)
一次創作関連
「お姉さん……可愛い!!」
玄関のドアが開いたかと思うと、挨拶よりも何よりも真っ先に、万楼は声を上げた。
真っ赤なコートに、シンプルな白いニットの帽子、ショートブーツと手袋は黒。
「今日のわたくしはサンタさんですのよ」
にっこり微笑む日向子だったが、万楼は不思議そうに首を傾げた。
「でもお姉さん、今はまだ11月だよ?」
「ええ、世間的に言いますとまだ早いのですけれど、実は……クリスマス企画に参加して頂けないかと思いまして」
「企画?」
日向子はにこにこしながら、後ろ手に持っていたポラロイドカメラを見せる。
「プレゼントと交換に、お写真を撮らせて下さいませ」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【1】
「ああ、よくあるよね。サイン入りポラを読者にプレゼント、って」
「はい。ご協力頂けますか??」
「うん、それはいいんだけど……さっき言ってた『プレゼント』って何?」
万楼は、ざっと一ヶ月半は気の早い小さなサンタクロースをとりあえず部屋に招き入れた。
ほかほかのココアと手製のシナモンパイを振る舞われて、ますますにこにこしながら日向子は先の問いに答えた。
「ただ頂くばかりでは申し訳ないので、わたくしからも何か差し上げるべきではないかと思いまして」
万楼はフォークでサクサクとパイを刻みながら、感心したようにしきりにうなずく。
「そうなんだ、お姉さんって義理堅い人だね。
それで、プレゼントってなあに?」
一口大というにはかなり大きなそれを、万楼は幸せそうに口に運ぶ。
日向子はそれを微笑ましそうに見つめながら、
「はい、わたくしです」
あまりにもさりげない調子で言われたので、
「ほえ?」
パイを頬張ったまま、万楼はかなり間抜けなリアクションを返した。
日向子は上品な仕草でココアを頂きながら、またなんでもない口調で告げる。
「万楼様にわたくし自身をプレゼント致します」
万楼の唇からポロッとパイの欠片がこぼれ落ちた。
「……お姉さんが、プレゼント……??」
「はい。わたくしに出来ることならなんでも、万楼様のご要望に答えたいと思いますの」
「……ちょっと、待ってくれる?」
万楼は瞬き一つせず、無言のままティッシュで唇を拭い、
「それって、お姉さんがボクのお願いを何でも叶えてくれるってこと?」
「はい、公序良俗に反していないことでしたら」
日向子はここ数日クリスマス企画の内容にずっと思い巡らせていて、ようやく決定したこの提案にはかなり自信を持っていた。
heliodorメンバーたちへの日頃の感謝を表すには自分に出来ること全てを尽すべきに違いないと。
万楼は色々な感情がミックスされたような、形容し難い表情で唖然と日向子を見つめていたが、
「……本当に、何でもいい?」
じっと見つめながら、もう一度尋ねる。
「はい……万楼様のお願いは何ですか?」
日向子もじっと見つめ返す。
「じゃあさ……今夜、ボクとデートして」
「デート……ですか?」
日向子にとっては予想外の答えだった。
万楼は、荒れともくすみとも無縁な、陶器のように綺麗な頬をうっすらと桃色に染める。
「……お姉さんと一緒に行きたかった場所があるんだ。そこに、今夜行こう」
「どこへ連れて行って頂けますの?」
「内緒~」
手袋をはめた右手と左手をしっかり繋いで、二人はすっかり日の落ちた夜の街を歩いていた。
仲むつまじく歩く美形ツーショットは、明らかに人目を集めていて、通行人の大半が二度見してくるような有り様だった。
「ねえ、お姉さん。ボクたちはどんなふうに見えてるかな?」
「そうですわね……仲良しな姉弟とか」
「姉弟かあ」
悪意は全くない日向子の純粋な解答に、万楼は少し膨れた。
「……ねえ、寒いからもっとくっついてみない?」
「はい?」
万楼は悪戯っぽく笑って、日向子と繋いだままの手を、自分のからし色のコートのポケットに突っ込んだ。
「あ」
必然的に腕と腕が密着し合う。
「……こういうのは嫌かな?」
斜め上から見下ろす万楼の眼差しはどこかアンニュイで大人びて見えた。
日向子はそれに目を奪われながら、首をそっと左右した。
「……とても温かいですわ」
「……うん、ボクも」
万楼は満足そうに微笑みを浮かべた。
「万楼様、ここ……」
「待ってて。チケット買ってくるから」
万楼は一度日向子の手を離してチケットカウンターへ走っていった。
それを目で追ったあと、日向子は目の前の建物をもう一度眺めた。
この季節には少し寒々しい、寒色を基調としたその入り口には、魚や海洋生物を象ったモニュメントがいくつもある。
「……水族館……」
「お待たせ。はい」
走って戻ってきた万楼は、日向子にそっとチケットを差し出した。
「……あ」
チケットに大きな文字でしっかりと綴られている言葉を、日向子は半ば反射的に読み上げた。
「……ナイト・アクアリウム」
万楼を見やると、先程と同じ、少し大人っぽい笑顔がそこにあった。
「この水族館の売り。18時以降、カップル限定で、夜の海底を散歩できるんだって。ロマンチックだよね」
「え、ええ……ですが」
日向子は戸惑いを隠せなかった。
スノウ・ドームでの一件で、万楼の身に何が起きたかは蝉やいづみから聞いていた。
夜の湖を見て、ひどく心を乱された万楼は、一時間あまりの間我を忘れて蹲っていたという。
それほどまでに万楼は、夜の海が苦手な筈なのだ。
「……万楼様」
「怖いことから逃げてしまうのは、嫌だから」
万楼は静かな声で囁く。
「……ボクが夜の海を恐れるのは、きっと、そこに何か不都合な思い出を封印しているからじゃないかなって思う。
それと向き合う勇気がなければ、いつまで経ってもボクの記憶は戻らないよ」
覚悟を決めた男の瞳。
日向子は万楼の圧倒されそうなほど強い意志に、胸が苦しくなるのを感じていた。
「……怖いけど、最後まで頑張ってみせる。だからボクに、お姉さんの力を貸してほしい」
今度は手袋を外して差し出してきた手。
日向子は自身も片方の手袋を外して、もう一度強く握った。
「……はい……!」
間接照明の中にぼんやり浮かぶ水底の世界。
底しれない闇を一条の光が微かに照らす。
日向子が持つ小さな懐中電灯の灯だ。
もう一方の手がしっかり繋ぎとめる指先はひどく汗ばんで、今にもすり抜けてしまいそうで、日向子は必死に離れないように握っていた。
心地好いヒーリングサウンドに混ざって、まるで高い熱にうなされるような苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
「……はぁ……はぁ……」
「……万楼様?」
呼び掛けても返事は返ってこない。
この闇の中では伺い知れないが、おそらく万楼の顔はすっかり青ざめた色をしているに違いない。
宝石のような綺麗な瞳は苦痛にすがめられ、眉間には皺が寄っている。
冷や汗がサイドの髪を湿らせているのが、なんとなく見てとれた。
ゆっくりとはいえ、着実に前に歩んでいることが奇跡的にすら思える。
「万楼様……」
水槽の中の、本来鑑賞の対象である不思議な色をまとう魚たちが、まるで日向子たちを見守るかのようにすぐ横を行き来する。
「……万楼様」
呼び掛けても届かない。
どうすれば万楼を支えられるのか、日向子は一生懸命考えていた。
けれど思い付かなくて、つかまえた指にただ思いを込めて強く握ることしかできない。
どのくらいの時間が過ぎたのか。
どのくらいの行程を歩いたのか。
ふと万楼が口を開いた。
「……ひとつ……思い出した」
かすれた呟き。
「……夜の海が怖いのは……子どもの頃からずっとだった……」
どこか虚ろな呟き。
「……海に連れていってもらったことなんかなかったのに……小さいボクはいつも海の夢を見ていた」
日向子は黙って、何ひとつ聞きもらすまいと耳を傾ける。
「……温かい、でも暗い海の底にボクはいて……遠くから聞こえる色々な音や、誰かの話声を聞いたりしてて……。
……ボクはできれば、ずっとそこにいたいと思っていて……そこにずっとはいられないこともわかってて……。
怖くて、悲しくて……絶望するんだ。
誰にも会いたくないし……何も見たくない……何も知りたくない……地上に上がっても何もいいことなんかないと、ボクはもう知ってた……から」
日向子にはなんとなく、万楼が語る夢が何を意味しているかわかった気がした。
それは成長する過程で多くの人がいつのまにか捨て去る、けれど誰もが知っている、一番古い記憶。
人は皆その暗い海からいづるのだから。
「……夜の海を見ると……あの夢の中の感覚が戻ってくる……怖くて、指に力が入らなくて……あの人も助けられなかった……」
まなじりからすっと、涙の雫がこぼれる。
「……万楼様……」
日向子は懐中電灯を一度切ってコートのポケットに入れた。
そして、その手を伸ばして、すっと万楼の涙を指先で拭う。
「大丈夫。もう大丈夫です」
万楼は立ち止まり、ぼんやりとした顔付きで日向子を見つめる。
日向子は、微笑む。
「もう万楼様は知っていらっしゃるでしょう?
この世界には、価値のあるものがたくさんあります。愛すべき人がたくさんいます。
あなたは出会うことができました。だからもう絶望しなくていいのです」
「……あ」
万楼の瞳に、喪われていた光が蘇る。
「……っ」
握りしめていた指先に力が込められた。
「万楼様……」
万楼はしっかりと日向子を見つめて言った。
「……暗闇の出口へ行こう。あなたが光を照らしてくれるなら、きっとボクは辿り着く」
日向子は強く頷いて、ポケットの中から懐中電灯を取り出し、再び道の先を照らし出した。
細く、白く伸びる希望の光。
その先を目指して二人は走り出した。
他の利用客、無論カップルである二人組の男女はみんな日向子たちを奇異な目で見るか、迷惑そうに見るか、はたまたまるで目に入らない様子で戯れるかしていたが、そんなことはお構いなく、二人は走った。
そして。
黒いカーテンで覆い隠された、人工の海の果てに、ようやくたどり着いた。
くぐり抜けた瞬間、一気にさしこんだ真っ白な光の洪水が日向子の視界を奪った。
ぎゅっと目をつぶった瞬間、
「……え……?」
頬に、柔かな感触。
「……ありがとう、サンタさん」
すぐ耳元で囁きかける声。
声のほうを振り返って、うっすらと目を開けると、明瞭にならない視界の中は万楼の笑顔で占められていた。
「……ほら見て。ボクたちの出会った世界はこんなに綺麗だ」
日向子は顔を上げて、万楼とともにその景色を眺めた。
朝の光のようなイルミネーションに包まれた、鮮やかに透き通る青いガーデン。
美しい、希望の色。
二人は無言のまま、世界の美しさに見とれていた。
繋いだ手は、離すことなく……。
《つづく》
玄関のドアが開いたかと思うと、挨拶よりも何よりも真っ先に、万楼は声を上げた。
真っ赤なコートに、シンプルな白いニットの帽子、ショートブーツと手袋は黒。
「今日のわたくしはサンタさんですのよ」
にっこり微笑む日向子だったが、万楼は不思議そうに首を傾げた。
「でもお姉さん、今はまだ11月だよ?」
「ええ、世間的に言いますとまだ早いのですけれど、実は……クリスマス企画に参加して頂けないかと思いまして」
「企画?」
日向子はにこにこしながら、後ろ手に持っていたポラロイドカメラを見せる。
「プレゼントと交換に、お写真を撮らせて下さいませ」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【1】
「ああ、よくあるよね。サイン入りポラを読者にプレゼント、って」
「はい。ご協力頂けますか??」
「うん、それはいいんだけど……さっき言ってた『プレゼント』って何?」
万楼は、ざっと一ヶ月半は気の早い小さなサンタクロースをとりあえず部屋に招き入れた。
ほかほかのココアと手製のシナモンパイを振る舞われて、ますますにこにこしながら日向子は先の問いに答えた。
「ただ頂くばかりでは申し訳ないので、わたくしからも何か差し上げるべきではないかと思いまして」
万楼はフォークでサクサクとパイを刻みながら、感心したようにしきりにうなずく。
「そうなんだ、お姉さんって義理堅い人だね。
それで、プレゼントってなあに?」
一口大というにはかなり大きなそれを、万楼は幸せそうに口に運ぶ。
日向子はそれを微笑ましそうに見つめながら、
「はい、わたくしです」
あまりにもさりげない調子で言われたので、
「ほえ?」
パイを頬張ったまま、万楼はかなり間抜けなリアクションを返した。
日向子は上品な仕草でココアを頂きながら、またなんでもない口調で告げる。
「万楼様にわたくし自身をプレゼント致します」
万楼の唇からポロッとパイの欠片がこぼれ落ちた。
「……お姉さんが、プレゼント……??」
「はい。わたくしに出来ることならなんでも、万楼様のご要望に答えたいと思いますの」
「……ちょっと、待ってくれる?」
万楼は瞬き一つせず、無言のままティッシュで唇を拭い、
「それって、お姉さんがボクのお願いを何でも叶えてくれるってこと?」
「はい、公序良俗に反していないことでしたら」
日向子はここ数日クリスマス企画の内容にずっと思い巡らせていて、ようやく決定したこの提案にはかなり自信を持っていた。
heliodorメンバーたちへの日頃の感謝を表すには自分に出来ること全てを尽すべきに違いないと。
万楼は色々な感情がミックスされたような、形容し難い表情で唖然と日向子を見つめていたが、
「……本当に、何でもいい?」
じっと見つめながら、もう一度尋ねる。
「はい……万楼様のお願いは何ですか?」
日向子もじっと見つめ返す。
「じゃあさ……今夜、ボクとデートして」
「デート……ですか?」
日向子にとっては予想外の答えだった。
万楼は、荒れともくすみとも無縁な、陶器のように綺麗な頬をうっすらと桃色に染める。
「……お姉さんと一緒に行きたかった場所があるんだ。そこに、今夜行こう」
「どこへ連れて行って頂けますの?」
「内緒~」
手袋をはめた右手と左手をしっかり繋いで、二人はすっかり日の落ちた夜の街を歩いていた。
仲むつまじく歩く美形ツーショットは、明らかに人目を集めていて、通行人の大半が二度見してくるような有り様だった。
「ねえ、お姉さん。ボクたちはどんなふうに見えてるかな?」
「そうですわね……仲良しな姉弟とか」
「姉弟かあ」
悪意は全くない日向子の純粋な解答に、万楼は少し膨れた。
「……ねえ、寒いからもっとくっついてみない?」
「はい?」
万楼は悪戯っぽく笑って、日向子と繋いだままの手を、自分のからし色のコートのポケットに突っ込んだ。
「あ」
必然的に腕と腕が密着し合う。
「……こういうのは嫌かな?」
斜め上から見下ろす万楼の眼差しはどこかアンニュイで大人びて見えた。
日向子はそれに目を奪われながら、首をそっと左右した。
「……とても温かいですわ」
「……うん、ボクも」
万楼は満足そうに微笑みを浮かべた。
「万楼様、ここ……」
「待ってて。チケット買ってくるから」
万楼は一度日向子の手を離してチケットカウンターへ走っていった。
それを目で追ったあと、日向子は目の前の建物をもう一度眺めた。
この季節には少し寒々しい、寒色を基調としたその入り口には、魚や海洋生物を象ったモニュメントがいくつもある。
「……水族館……」
「お待たせ。はい」
走って戻ってきた万楼は、日向子にそっとチケットを差し出した。
「……あ」
チケットに大きな文字でしっかりと綴られている言葉を、日向子は半ば反射的に読み上げた。
「……ナイト・アクアリウム」
万楼を見やると、先程と同じ、少し大人っぽい笑顔がそこにあった。
「この水族館の売り。18時以降、カップル限定で、夜の海底を散歩できるんだって。ロマンチックだよね」
「え、ええ……ですが」
日向子は戸惑いを隠せなかった。
スノウ・ドームでの一件で、万楼の身に何が起きたかは蝉やいづみから聞いていた。
夜の湖を見て、ひどく心を乱された万楼は、一時間あまりの間我を忘れて蹲っていたという。
それほどまでに万楼は、夜の海が苦手な筈なのだ。
「……万楼様」
「怖いことから逃げてしまうのは、嫌だから」
万楼は静かな声で囁く。
「……ボクが夜の海を恐れるのは、きっと、そこに何か不都合な思い出を封印しているからじゃないかなって思う。
それと向き合う勇気がなければ、いつまで経ってもボクの記憶は戻らないよ」
覚悟を決めた男の瞳。
日向子は万楼の圧倒されそうなほど強い意志に、胸が苦しくなるのを感じていた。
「……怖いけど、最後まで頑張ってみせる。だからボクに、お姉さんの力を貸してほしい」
今度は手袋を外して差し出してきた手。
日向子は自身も片方の手袋を外して、もう一度強く握った。
「……はい……!」
間接照明の中にぼんやり浮かぶ水底の世界。
底しれない闇を一条の光が微かに照らす。
日向子が持つ小さな懐中電灯の灯だ。
もう一方の手がしっかり繋ぎとめる指先はひどく汗ばんで、今にもすり抜けてしまいそうで、日向子は必死に離れないように握っていた。
心地好いヒーリングサウンドに混ざって、まるで高い熱にうなされるような苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
「……はぁ……はぁ……」
「……万楼様?」
呼び掛けても返事は返ってこない。
この闇の中では伺い知れないが、おそらく万楼の顔はすっかり青ざめた色をしているに違いない。
宝石のような綺麗な瞳は苦痛にすがめられ、眉間には皺が寄っている。
冷や汗がサイドの髪を湿らせているのが、なんとなく見てとれた。
ゆっくりとはいえ、着実に前に歩んでいることが奇跡的にすら思える。
「万楼様……」
水槽の中の、本来鑑賞の対象である不思議な色をまとう魚たちが、まるで日向子たちを見守るかのようにすぐ横を行き来する。
「……万楼様」
呼び掛けても届かない。
どうすれば万楼を支えられるのか、日向子は一生懸命考えていた。
けれど思い付かなくて、つかまえた指にただ思いを込めて強く握ることしかできない。
どのくらいの時間が過ぎたのか。
どのくらいの行程を歩いたのか。
ふと万楼が口を開いた。
「……ひとつ……思い出した」
かすれた呟き。
「……夜の海が怖いのは……子どもの頃からずっとだった……」
どこか虚ろな呟き。
「……海に連れていってもらったことなんかなかったのに……小さいボクはいつも海の夢を見ていた」
日向子は黙って、何ひとつ聞きもらすまいと耳を傾ける。
「……温かい、でも暗い海の底にボクはいて……遠くから聞こえる色々な音や、誰かの話声を聞いたりしてて……。
……ボクはできれば、ずっとそこにいたいと思っていて……そこにずっとはいられないこともわかってて……。
怖くて、悲しくて……絶望するんだ。
誰にも会いたくないし……何も見たくない……何も知りたくない……地上に上がっても何もいいことなんかないと、ボクはもう知ってた……から」
日向子にはなんとなく、万楼が語る夢が何を意味しているかわかった気がした。
それは成長する過程で多くの人がいつのまにか捨て去る、けれど誰もが知っている、一番古い記憶。
人は皆その暗い海からいづるのだから。
「……夜の海を見ると……あの夢の中の感覚が戻ってくる……怖くて、指に力が入らなくて……あの人も助けられなかった……」
まなじりからすっと、涙の雫がこぼれる。
「……万楼様……」
日向子は懐中電灯を一度切ってコートのポケットに入れた。
そして、その手を伸ばして、すっと万楼の涙を指先で拭う。
「大丈夫。もう大丈夫です」
万楼は立ち止まり、ぼんやりとした顔付きで日向子を見つめる。
日向子は、微笑む。
「もう万楼様は知っていらっしゃるでしょう?
この世界には、価値のあるものがたくさんあります。愛すべき人がたくさんいます。
あなたは出会うことができました。だからもう絶望しなくていいのです」
「……あ」
万楼の瞳に、喪われていた光が蘇る。
「……っ」
握りしめていた指先に力が込められた。
「万楼様……」
万楼はしっかりと日向子を見つめて言った。
「……暗闇の出口へ行こう。あなたが光を照らしてくれるなら、きっとボクは辿り着く」
日向子は強く頷いて、ポケットの中から懐中電灯を取り出し、再び道の先を照らし出した。
細く、白く伸びる希望の光。
その先を目指して二人は走り出した。
他の利用客、無論カップルである二人組の男女はみんな日向子たちを奇異な目で見るか、迷惑そうに見るか、はたまたまるで目に入らない様子で戯れるかしていたが、そんなことはお構いなく、二人は走った。
そして。
黒いカーテンで覆い隠された、人工の海の果てに、ようやくたどり着いた。
くぐり抜けた瞬間、一気にさしこんだ真っ白な光の洪水が日向子の視界を奪った。
ぎゅっと目をつぶった瞬間、
「……え……?」
頬に、柔かな感触。
「……ありがとう、サンタさん」
すぐ耳元で囁きかける声。
声のほうを振り返って、うっすらと目を開けると、明瞭にならない視界の中は万楼の笑顔で占められていた。
「……ほら見て。ボクたちの出会った世界はこんなに綺麗だ」
日向子は顔を上げて、万楼とともにその景色を眺めた。
朝の光のようなイルミネーションに包まれた、鮮やかに透き通る青いガーデン。
美しい、希望の色。
二人は無言のまま、世界の美しさに見とれていた。
繋いだ手は、離すことなく……。
《つづく》
2007/07/22 (Sun)
遙かなる時空の中でシリーズ関連
桜蘭のキャラソンを聞いたことで、ネオロマソングのクオリティの高さを逆に思い知る。
といってもアンジェの最近の曲とコルダの大半の曲は聞いてなくて、専ら遙かばっかり聞いてるけど。
以前は一人の方が全曲作詞してたど、最近の遙かは色んな作詞者がいて面白いね。
それに、ちゃんと「1」「2」「3」で傾向が違うんだよね。
「1」の八葉の唄は正統派なヒーローソングが多い。
爽やかな曲だったり、情熱的な曲だったり。
「2」は何故かアダルト路線。笑。
頼忠さん、泉水さん以外みんな微エロ系唄ってるし。朱雀チームはもちろん、幸鷹さんまでエロい……。
「3」はシリアス。だいたいの曲はシナリオに添って生きる死ぬか、みたいな悲壮感が漂う曲が多い。
普通の幸せなラブソングなんて数えるほどしかないからなぁ。
ちなみに八葉のキャラソンで今お気に入りなのは、
天の青龍→「追憶の森に捧ぐ(源頼久)」
地の青龍→「火群の地平線(平勝真)」
天の朱雀→「今宵、小悪魔になれ(ヒノエ)」
地の朱雀→「満月の雫は媚薬(武蔵坊弁慶)」
天の白虎→「流星の弓矢となりて(有川譲)」
地の白虎→「緋色の涙の女よ(橘友雅)」
天の玄武→「夢と切なさの万華鏡(永泉)」
地の玄武→「翳りの封印(安倍泰明)」(いや、この方の場合一曲しかないんだけどね 泣)
それ以外のキャラクターだと、アクラムの曲は大体かっこいい。
特に「日蝕の鍵穴」「暗闇の傀儡師」「終の刻に抱くもの」は大好き。
あとシリン姐さんの「氷炎の薔薇の不幸」、和仁様の「鍾乳洞の彷徨人」、藤原泰衡の「白き暝黙の残像」、そしてそして幻影の「想い出は時空の結晶」←これが神曲。なにげに遙か曲で一番好き。
なんといっても飯塚曲、高井曲、影山曲には外れがないよね~。
それと、UGAで八葉抄ボーカルコレクションの唄を唄うとキャラ毎の名場面集が見れるのよね(まだ天真しか見てないが 笑)。
見たい……友雅さんが見たい……。私をパセラに連れてって。爆。
チャーリーさんが年々、私の好きだったチャーリーさんでなくなりつつある一方(泣)、友雅さんは今でも純粋に萌えれるなぁ。100点だなぁ。
似たようなキャラなのに何故か翡翠さんでは駄目だったという。なんでだ、ズボンはいてるからか??笑。
といってもアンジェの最近の曲とコルダの大半の曲は聞いてなくて、専ら遙かばっかり聞いてるけど。
以前は一人の方が全曲作詞してたど、最近の遙かは色んな作詞者がいて面白いね。
それに、ちゃんと「1」「2」「3」で傾向が違うんだよね。
「1」の八葉の唄は正統派なヒーローソングが多い。
爽やかな曲だったり、情熱的な曲だったり。
「2」は何故かアダルト路線。笑。
頼忠さん、泉水さん以外みんな微エロ系唄ってるし。朱雀チームはもちろん、幸鷹さんまでエロい……。
「3」はシリアス。だいたいの曲はシナリオに添って生きる死ぬか、みたいな悲壮感が漂う曲が多い。
普通の幸せなラブソングなんて数えるほどしかないからなぁ。
ちなみに八葉のキャラソンで今お気に入りなのは、
天の青龍→「追憶の森に捧ぐ(源頼久)」
地の青龍→「火群の地平線(平勝真)」
天の朱雀→「今宵、小悪魔になれ(ヒノエ)」
地の朱雀→「満月の雫は媚薬(武蔵坊弁慶)」
天の白虎→「流星の弓矢となりて(有川譲)」
地の白虎→「緋色の涙の女よ(橘友雅)」
天の玄武→「夢と切なさの万華鏡(永泉)」
地の玄武→「翳りの封印(安倍泰明)」(いや、この方の場合一曲しかないんだけどね 泣)
それ以外のキャラクターだと、アクラムの曲は大体かっこいい。
特に「日蝕の鍵穴」「暗闇の傀儡師」「終の刻に抱くもの」は大好き。
あとシリン姐さんの「氷炎の薔薇の不幸」、和仁様の「鍾乳洞の彷徨人」、藤原泰衡の「白き暝黙の残像」、そしてそして幻影の「想い出は時空の結晶」←これが神曲。なにげに遙か曲で一番好き。
なんといっても飯塚曲、高井曲、影山曲には外れがないよね~。
それと、UGAで八葉抄ボーカルコレクションの唄を唄うとキャラ毎の名場面集が見れるのよね(まだ天真しか見てないが 笑)。
見たい……友雅さんが見たい……。私をパセラに連れてって。爆。
チャーリーさんが年々、私の好きだったチャーリーさんでなくなりつつある一方(泣)、友雅さんは今でも純粋に萌えれるなぁ。100点だなぁ。
似たようなキャラなのに何故か翡翠さんでは駄目だったという。なんでだ、ズボンはいてるからか??笑。
2007/07/22 (Sun)
アニメ・特撮感想
つい最近、桜蘭高校ホスト部のキャラソンアルバムを借りてみたんだけど、正直微妙だった。汗。
歌は比較的うまい人が揃ってるんだけどね~。
好きな曲もあるんだよ。環とハニー先輩のネタに走りっぷりは素晴らしく、この二曲はかなり聞いてる。
環なんて作曲した人が遙かのTVアニメ版主題歌の人だけあって曲はすごくカッコいいのに、歌詞がバカ過ぎて救いようがないのがいい。笑。
ハニー先輩は大塚愛でしかないけど(笑)、小ネタのチョイスがたまらなくツボ。
初回歌詞カード見ないで聞いてたからちょっと噴いたじゃないか。
モリ先輩はもはやモリ先輩ではありません。汗。
内容が相方へのラブソングだということには今更文句はないけど(笑)、何か間違ってる気がするんだよな~。
鏡夜先輩には、もっと毒のある歌を唄ってほしかったのに、普通にせつない系のバラードってあたりが何か残念。何裏声使って気持ちよくラブソング唄い上げてんだ、鏡夜。笑。
曲自体は結構好きだから、私は地獄少女の一目連が唄ってると思うことにした。爆。
双子にいたってはソロ曲ないからねぇ……デュエットもおいしいけど、折角だからソロほしかったわ。
桜蘭なら私は変にかっこいい唄とかより、環やハニー先輩を標準にして電波ソング祭のほうがよかったんじゃないかと……。
あとできればれんげちゃんにも、腐女子代表で萌に賭ける思いを唄って頂きたかったなぁ。
歌は比較的うまい人が揃ってるんだけどね~。
好きな曲もあるんだよ。環とハニー先輩のネタに走りっぷりは素晴らしく、この二曲はかなり聞いてる。
環なんて作曲した人が遙かのTVアニメ版主題歌の人だけあって曲はすごくカッコいいのに、歌詞がバカ過ぎて救いようがないのがいい。笑。
ハニー先輩は大塚愛でしかないけど(笑)、小ネタのチョイスがたまらなくツボ。
初回歌詞カード見ないで聞いてたからちょっと噴いたじゃないか。
モリ先輩はもはやモリ先輩ではありません。汗。
内容が相方へのラブソングだということには今更文句はないけど(笑)、何か間違ってる気がするんだよな~。
鏡夜先輩には、もっと毒のある歌を唄ってほしかったのに、普通にせつない系のバラードってあたりが何か残念。何裏声使って気持ちよくラブソング唄い上げてんだ、鏡夜。笑。
曲自体は結構好きだから、私は地獄少女の一目連が唄ってると思うことにした。爆。
双子にいたってはソロ曲ないからねぇ……デュエットもおいしいけど、折角だからソロほしかったわ。
桜蘭なら私は変にかっこいい唄とかより、環やハニー先輩を標準にして電波ソング祭のほうがよかったんじゃないかと……。
あとできればれんげちゃんにも、腐女子代表で萌に賭ける思いを唄って頂きたかったなぁ。
2007/07/22 (Sun)
雑記
とある女友達(というかネエさんだな 笑)のバイト先が、昼間はカフェで夜はバーっていうお店なんだけれどね、そこに凄い男がいるらしい。
昼間のカフェのアイドル的な女の子と、夜のバーのマドンナ的な女性に二股かけてるんだって。
あまりにも大胆なので当事者を含めて店の人は全員知ってるみたい。
彼は夜の彼女には「3年後に結婚しよう」、昼間の彼女には「5年後に結婚しよう」と言ってるらしい。笑。
女同士の牽制が続いているとかいないとか。
話によると特別美形なわけではないのに妙に女受けするタイプらしいよ。
ネエさんもバイト先では一番イケてるのは間違いないと。
それ何てエロゲ?って感じだよね。
マジでいるんだよな~、そういう人って。
私の父親とかね。笑笑。
小デブなおっさんの分際で、別れた女房を「マーガレットの君」とか呼ぶのはどうなんだろうね。爆。
あんまりにもあんまりだと、もうなんだか一周して憎めないから不思議なもんだ。
昼間のカフェのアイドル的な女の子と、夜のバーのマドンナ的な女性に二股かけてるんだって。
あまりにも大胆なので当事者を含めて店の人は全員知ってるみたい。
彼は夜の彼女には「3年後に結婚しよう」、昼間の彼女には「5年後に結婚しよう」と言ってるらしい。笑。
女同士の牽制が続いているとかいないとか。
話によると特別美形なわけではないのに妙に女受けするタイプらしいよ。
ネエさんもバイト先では一番イケてるのは間違いないと。
それ何てエロゲ?って感じだよね。
マジでいるんだよな~、そういう人って。
私の父親とかね。笑笑。
小デブなおっさんの分際で、別れた女房を「マーガレットの君」とか呼ぶのはどうなんだろうね。爆。
あんまりにもあんまりだと、もうなんだか一周して憎めないから不思議なもんだ。
2007/07/20 (Fri)
一次創作関連
第5章、いかがだったでしょうか?
今回は山場がたくさんあって、他の章より内容盛り沢山な感じなんだけれど、場面転換少ないんで、話の中で流れている時間はかなり短いのよね。
シーンとシーンの間の時間経過も短いしね。
今回メインの紅朱というキャラクター、前にも書いたように着想は「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュくんだったのに、気付いたらごうだのたけしさんでした。笑。
ちなみにジャリアンは、この世界では国民的なアニメ「ドロえもん(のろ太くんがドロで作った人形に命が宿って、不思議な力で助けてくれる話 爆)」のキャラクターです。
特徴的な外見の由来は「灼眼のシャナ」です。
小さくて赤毛でよく動くのが大変可愛くていいなぁと。
前回同様【1】はシリアス要素がまだ少ない。
日向子のおぐし触らせてー、はずっとやりたかった。あんだけ長くて綺麗なら触りたくもなるだろう。
しかしこのコンビは本当に色気がない。汗。
【2】は紅朱を上げて、上げて、上げて、落とす感じ。笑。
雪山で遭難みたいな状況にしたかったんだけど、雪山に行く必然性が全くないので(そりゃそうだ)、停電で危機的状態を作ってみました。
地味に玄鳥がかっこいいエピソード。
これぞ参謀です。
【2】のラストから【3】にかけて衝撃的な事実が出てきてますが、設定段階ではどっちを浅川家の実子にするか悩んだりしましたがこうなりました。
なんかこの章、「あいのり」っぽいんだよね。笑。
蝉と有砂のシーンの最初のほうの地の文とか、あれのナレーションを意識して書いたし。「○○が××していた頃、△△は……?」みたいな。笑。
万楼なんてうっかりすると、玄鳥に遠回しに告白しようとしてるみたいに見えるからね。
「好きな人ができたんだ……それは、玄鳥だよ。一緒に日本に帰ろう!」みたいなね。笑。
何そのセルフやおいパロ。汗。
あと全くの余談だけど、蝉たちのパートで「有砂は憮然と~」って出てくるんだけど、「憮然」が変換できなかったから一応ネットで辞書引いて確認した。
そしたら例として文学作品の引用が載ってたんだけど、その作品のタイトルが「佳人の奇遇」だった。よっちん……。
本当に奇遇だったんで一人で笑ってしまったじゃないか……。
【4】でいきなりの日向子の過去編。
さあ、ロリコンが出て参りました(待て)。
この経緯があって高槻の軽音楽嫌いはヒートアップした模様。
いづみのシーンは、グロいことで有名な某学園二股エロゲの「ノコギリ」のシーンをイメージ。
流石にあんなに猟奇的な描写ではなくなったけど。
だいたいキャラ的に日向子のほうがソレっぽいしね。笑。
いづみはカッターを凶器にしてたけど、何にするか悩みまくった。
なんでかって言えば、刃物で襲いかかると有砂(妹)と被るから。
鈍器とか、硫酸とか考えたんだけど、盾になる紅朱が可哀想だからやめておいた。爆。
正面じゃなく後ろからで、刺すじゃなくて切る、だからよしとしませんか? 笑。
【5】。連続で夢オチはどうかと思ったので、紅朱の過去は回想です。
紅朱、病院送りなのにいつ髪切ったの?
……と思った方もいらっしゃるのでは。多分、日向子に手伝ってもらいつつ、病室で自分で切ったと思われます。案外器用だな。
病室のシーンの最後、みんなに祝福されて、ちょっとエヴァンゲリオンの最終回みたいだと思った。笑。
トウジ・シンジもジャリアン・のろ太の流れを汲んでそうだからまあ、いいか(そういう問題か?)。
シュバルツをクロ助と呼ばれて望音怒ってたけど、シュバルツはドイツ語の「黒」なんで大して変わらないよね~。
さて次は6章だけれど、これは間章というか、一種のボーナスステージみたいな感じで。
ちょっと糖度高めでお送りする予定なのでご期待下さいませ。
ご意見ご感想よろしくお願いしまーす。
今回は山場がたくさんあって、他の章より内容盛り沢山な感じなんだけれど、場面転換少ないんで、話の中で流れている時間はかなり短いのよね。
シーンとシーンの間の時間経過も短いしね。
今回メインの紅朱というキャラクター、前にも書いたように着想は「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュくんだったのに、気付いたらごうだのたけしさんでした。笑。
ちなみにジャリアンは、この世界では国民的なアニメ「ドロえもん(のろ太くんがドロで作った人形に命が宿って、不思議な力で助けてくれる話 爆)」のキャラクターです。
特徴的な外見の由来は「灼眼のシャナ」です。
小さくて赤毛でよく動くのが大変可愛くていいなぁと。
前回同様【1】はシリアス要素がまだ少ない。
日向子のおぐし触らせてー、はずっとやりたかった。あんだけ長くて綺麗なら触りたくもなるだろう。
しかしこのコンビは本当に色気がない。汗。
【2】は紅朱を上げて、上げて、上げて、落とす感じ。笑。
雪山で遭難みたいな状況にしたかったんだけど、雪山に行く必然性が全くないので(そりゃそうだ)、停電で危機的状態を作ってみました。
地味に玄鳥がかっこいいエピソード。
これぞ参謀です。
【2】のラストから【3】にかけて衝撃的な事実が出てきてますが、設定段階ではどっちを浅川家の実子にするか悩んだりしましたがこうなりました。
なんかこの章、「あいのり」っぽいんだよね。笑。
蝉と有砂のシーンの最初のほうの地の文とか、あれのナレーションを意識して書いたし。「○○が××していた頃、△△は……?」みたいな。笑。
万楼なんてうっかりすると、玄鳥に遠回しに告白しようとしてるみたいに見えるからね。
「好きな人ができたんだ……それは、玄鳥だよ。一緒に日本に帰ろう!」みたいなね。笑。
何そのセルフやおいパロ。汗。
あと全くの余談だけど、蝉たちのパートで「有砂は憮然と~」って出てくるんだけど、「憮然」が変換できなかったから一応ネットで辞書引いて確認した。
そしたら例として文学作品の引用が載ってたんだけど、その作品のタイトルが「佳人の奇遇」だった。よっちん……。
本当に奇遇だったんで一人で笑ってしまったじゃないか……。
【4】でいきなりの日向子の過去編。
さあ、ロリコンが出て参りました(待て)。
この経緯があって高槻の軽音楽嫌いはヒートアップした模様。
いづみのシーンは、グロいことで有名な某学園二股エロゲの「ノコギリ」のシーンをイメージ。
流石にあんなに猟奇的な描写ではなくなったけど。
だいたいキャラ的に日向子のほうがソレっぽいしね。笑。
いづみはカッターを凶器にしてたけど、何にするか悩みまくった。
なんでかって言えば、刃物で襲いかかると有砂(妹)と被るから。
鈍器とか、硫酸とか考えたんだけど、盾になる紅朱が可哀想だからやめておいた。爆。
正面じゃなく後ろからで、刺すじゃなくて切る、だからよしとしませんか? 笑。
【5】。連続で夢オチはどうかと思ったので、紅朱の過去は回想です。
紅朱、病院送りなのにいつ髪切ったの?
……と思った方もいらっしゃるのでは。多分、日向子に手伝ってもらいつつ、病室で自分で切ったと思われます。案外器用だな。
病室のシーンの最後、みんなに祝福されて、ちょっとエヴァンゲリオンの最終回みたいだと思った。笑。
トウジ・シンジもジャリアン・のろ太の流れを汲んでそうだからまあ、いいか(そういう問題か?)。
シュバルツをクロ助と呼ばれて望音怒ってたけど、シュバルツはドイツ語の「黒」なんで大して変わらないよね~。
さて次は6章だけれど、これは間章というか、一種のボーナスステージみたいな感じで。
ちょっと糖度高めでお送りする予定なのでご期待下さいませ。
ご意見ご感想よろしくお願いしまーす。
2007/07/20 (Fri)
一次創作関連
「紅朱様っ」
何度も何度も「ごめんなさい」を連呼して、泣きながらいづみが去ってしまうと、すぐに、紅朱は崩れるように膝を折った。
黒いジャケットの背中には裂目にそった染みが広がっている。
「……だせェな、綾なら無傷で守れたかもしんねェ」
「何をおっしゃっ……」
感情が一気にあふれ、息が詰まって言葉にならない。
自分を省みず守ってくれたのだ。
そればかりか紅朱はとっさに血のついた凶器を遠くへ蹴り飛ばし、痛々しい傷口をいづみに悟られまいとしたのだ。
彼女の罪を軽くしてあげるために。
立ち直るチャンスをあげるために。
痛みに耐えて、立っていたのだ。
「……おいまさか、泣いてねェだろうな……?」
日向子に背中を向けたまま、紅朱は囁く。苦しげな呼吸の狭間で。
「泣いたりしたら承知しねェからな……」
そしてゆっくりと、冷たいコンクリートにその身を沈めた……。
「……紅朱様……!!!!」
《第5章 今宵、囚われて -attachment-》【5】
「綾。預金通帳とにらめっこは楽しいのか?」
「うわっ……! 兄貴」
急いで引き出しの中に押し込まれる「浅川綾」名義の通帳。
「なんか、でかい買い物すんだろ」
「ち、違うよ……なんでもないよ」
「……あ、そ」
「部屋に入る時はノックしてくれっていつも言ってるだろ」
「はいはい」
適当に返事して部屋を出る。
別にしつこく追求する必要はない。
約10年も「兄弟」をやっていれば大抵のことは察しがつく。
本人は真剣に隠しているつもりなあたりが愉快で、すぐに誰かに話したくなる。
「おい、また綾の病気が始まったぞ、ババア」
夕食の準備をする後ろ姿に話しかける。
「そう……綾ちゃん、今度は何がしたいって?」
とんとんと長葱をリズミカルに刻みながら、尋ねてきた母に、軽い口調で答えた。
「多分、ギターだな」
包丁の音が、止まった。
「ギター……」
「俺がクラスの奴とバンドやってんの見てやりたくなったんだろ。
全くしょうがねェよな、あいつも……」
「お兄ちゃん」
背中を向けたままの母が、嫌に静かな声で告げる。
「そのこと、お父さんにはまだ話しちゃダメよ」
その声と、動かない背中だけでビシビシと伝わってくる感覚。
禁忌の気配。
何か口の中が一気に、乾いてしまったような気がした。
「……なあ」
言葉を絞り出す。
「ジジイ……なんで俺がバンドやりたいって言った時、あんなに反対したんだ……?
他のことは『なんでも経験だからやってみなさい』って感じなのに……なんで、音楽だけ……さ」
母の小さな背中が、微かに震えている気がした。
「きっと……お兄ちゃんを見て、綾ちゃんも音楽をやりたがるから……そうすると母さんが悲しむと、思ったからよ」
か弱い声が、絞り出す。
「……綾ちゃんの本当の両親はね、二人ともミュージックだったの……昔一緒にバンドをやっていたのよ」
「……え?」
「可愛い妹が、ギターケースを抱えて、駆け落ち同然に家を出て行った時は本当に寂しかった……だから。
……怖い……音楽という翼を得たら、綾ちゃんもどこかへ行ってしまいそうで……っ」
「……ババア、泣いてんのか……?」
駆け寄りたいと思う反面、強烈な罪悪感で、金縛りにあったように動けなくなる。
もし自分が音楽の道に進みたいなどと思わなければ、こんなふうに悲しませなかったんだろうか?
「……綾は俺の弟だろ。浅川家の家族だろ……どこにも飛んで行かせたりしねェよ。
……翼をへし折ってでも、俺が繋ぎ留めてやる」
必死に慰めたつもりだったのに、静かなおえつが止まることはなかった。
どうしていいかわからなくて、ただただ立ち尽くすしかなかった。
「……あったま悪ィ……」
「え? 何かおっしゃりまして?」
「なんか昔のことをちょっと思い出したんだ……走馬灯みてェな感じだ」
「まあ、縁起でもない表現をなさらないで下さい」
「センス悪かったか? 多目に見ろ……頭ん中ぼーっとしてっからな」
日向子は即座に救急車を呼び、万楼の件でも世話になった病院に紅朱を搬送してもらった。
無論、今度のことを「事件」にしないためだ。
紅朱の背中の傷は出血量が多く、少々の輸血と15針の縫合を要した。
意識が覚醒して後も、すぐには気分がすっきりしないのは当然とも言える。
「それにしてももったいなかったですわね……紅朱様のおぐし……」
日向子お気に入りの深紅の髪は、カッターで切断され、不揃いになってしまったため、結局切り揃えられてしまった。
サイドと同じ長さになったため、まだ男性としてはかなり長めとはいえ、肩につかないくらいの長さになってしまった。
「別に、たかが髪だしな……。まあ、お前が気に入ってんならまた伸ばしてもいいが」
「ええ、ぜひ!」
日向子は紅朱の傍らで、しゅるしゅると梨をむいていた。
「……そういうことは得意なんだな? お前」
日向子は誉められたことに素直に喜びながら、一切れを楊枝に刺して紅朱に差し出した。
「どうぞ召し上がれ」
「ん」
紅朱は何の躊躇いも恥じらいもなくそれに食らいつくと、しゃくしゃく食べた。
「こういうのは、ガキの頃にババアにやってもらって以来だな」
日向子はほとんど反射的に、
「粋さんにはして頂かなかったのですか?」
言い終わってすぐに後悔するような配慮のない質問を口にしてしまい、その通りにしっかり後悔した。
「……下世話なことをお聞きしてしまいましたわ」
「ねェよ」
「……はい?」
紅朱は大して気を悪くしたふうでもなく答え、
「粋とは別に、恋人だったわけでもないからな」
驚くべき事実を明かした。
「大方蝉辺りが言った冗談を間に受けたんだろ?
一緒に暮らしてたこともあるし、公私ともにかけがえない相手だったことは認める。
俺たちは……言ってみれば親友だった」
「親友……」
「ああ。戦友と言ったっていい。
男だ女だなんて関係ない、信頼で結ばれたパートナーだった。
はっきりした理由も言わず、heliodorを抜けたい、なんて言い出す前までのことだけどな」
微かに目をふせた紅朱の、その表情には嘘があるとは思えなかった。
紅朱と粋は恋人同士ではなかった。
けれど、あるいはもっと深い絆のある関係だったのかもしれない。
紅朱は背中の傷よりもずっと痛みを伴う心の傷を辿って言った。
「あの時、俺は初めて粋に手を上げた。力ずくで、引き留めようとした。
俺のくだらない常套手段だな……」
「紅朱様……」
紅朱は溜め息をついて、それから心配して顔を曇らせる日向子を見つめた。
「全くお前の言う通りだ。力ずくで解決することなんか何もねェな。
ただ力を振るった罪悪感が残るだけだ。
ガキの頃から人の上に立ってやりたい放題やってきたが……俺は元々、リーダーの器じゃねェのかもな……」
「まあ」
日向子は何故か半分怒ったような顔で紅朱を見つめ返した。
「heliodorの皆様は、紅朱様のことが恐ろしくて逆らえないような弱虫さんではありませんわ」
「……あ?」
「あのように個性的な皆様を束ねること、力だけでは無理だとは思いませんか?
メンバーの皆様はもっと違うところを見て、違うところに惹かれて、紅朱様についてきていらっしゃるのではないでしょうか」
紅朱は何か言おうとしたが、それを遮って、とんとんと病室のドアを叩く音がした。
「リーダー、入ってもいい?」
廊下から聞こえてきた声に、一瞬驚いて反応が遅れつつ、
「……ああ」
紅朱は入室を許可した。
「お見舞いにお菓子作って来たよ。エクレア嫌いじゃなかったよね?」
最年少のバンドメンバーが、ラッピング用のバスケットを抱えて顔を出した。
「万楼……」
「この間はリーダーがボクの病室に駆け付けてくれたよね」
日向子にバスケットを預けた万楼は紅朱ににっこり微笑む。
「リーダーは、大切な人、だからね」
万楼に続くように、賑やかな声が飛込んでくる。
「紅朱大丈夫~!?」
蝉だ。
「ってゆーか、一人でカッコつけるからこんなことになるんじゃん。おれたちにも相談してよ!」
「……お嬢が重傷ゆうから来てみれば、案外けろっとしとるやないか、しぶとい男やな」
有砂も続いて部屋に入ってきた。
続々とやってくるメンバーたちに、まだはっきりしていない頭のせいもあって、返す言葉の見付からない紅朱。
日向子はそんな彼をなんとなく微笑ましく思いながら、見つめていた。
そして。
「……兄貴」
病室の入り口から、気まずそうな声。
紅朱のことをこう呼ぶ人間が、世の中に二人といるわけがない。
メンバーと日向子が見守る中、うつ向き加減でゆっくりとベッドに近付く。
「綾……」
「兄貴、あのさ……俺……」
「ちょっと待て」
強い口調で紅朱は玄鳥の言葉を遮った。
「謝ろうとしてるだろ、お前」
「え……うん。だって、俺……」
「謝んな」
玄鳥ばかりでなく、その場にいた全員がいぶかしげな顔で紅朱を見つめていた。
紅朱は、玄鳥を真っ直ぐに見て言った。
「……ここでお前に謝られたら俺はまた、成長できなくなる。
……謝るのは俺だ。俺が、間違ってた」
「兄貴……」
紅朱はゆっくり目を閉じて、告げた。
「……ごめん。あと……ありがとな。お前がいてくれて助かった。
これからも俺の右腕として……支えてくれるか?」
一気に言い切ったあと、気恥ずかしそうに、視線を泳がせながら、紅朱は玄鳥に右手を差し出した。
玄鳥は一瞬惚けたような顔をしていたが、
「……兄貴……」
感極まって瞳を微かにうるませながら破顔一笑した。
「……うんっ。俺、頑張るよ」
しっかりと、手と手が重なり、強く握る。
紅朱の顔にも、ようやく笑みが浮かんだ。
浅川兄弟にとっての新しい始まりの瞬間。
日向子も心からの笑顔で、パチパチと拍手する。
それに万楼が続き、蝉が加わり、ついに有砂も付き合った。
拍手と笑い声の響く病室の中は、日溜まりのような温かい空気に包まれていた。
「D-union」が公式ホームページのトップに解散の告知を出したのはそのすぐ後だった。
会長である「イヅミ」の真摯な謝罪文を残して、「D-union」は消滅した。
紅朱は力ずくではない方法で、事態を収拾したのだ。
暴力より遥かに難しく、遥かに強い……「優しさ」でいづみの心を動かした。
「落着……ってところみたい」
「会員各位」への解散告知・謝罪メールを開くことなくゴミ箱に葬り去りながら、愛想の欠片もない黒ずくめの美少女は紅茶を口に運ぶ。
「助かったわ。まだ彼女は利用出来る……役に立ってもらわないと困るもの」
「……おいクロ助、お前のご主人、また何かすごいこと言ってるぞ」
「にゅ」
ハスキーな声で楽しそうに囁く女性から、差し出されたブラシ状の玩具でじゃれる黒い子猫。
黒衣の美少女はノートパソコンから目を離し、テーブルの向かいで愛猫をもてあそぶ彼女をじっと睨んだ。
「シュバルツよ。今はまだ名前を覚えさせているところなんだから、変な名前で呼ばないで、アルテミス」
「お前こそな……誰がアルテミスだ」
美少女は子猫を手元に引き寄せて、黒で彩った指でくすぐりながら、小さく呟いた。
「たくさん名前があって貴女は面倒だわ。一体どの名前が一番好きなの?」
じゃらす対象のなくなった猫じゃらしを指先でしならせて遊びながら、凛々しき狩猟の女神はふっと笑った。
「……粋、かな」
《第6章へつづく》
何度も何度も「ごめんなさい」を連呼して、泣きながらいづみが去ってしまうと、すぐに、紅朱は崩れるように膝を折った。
黒いジャケットの背中には裂目にそった染みが広がっている。
「……だせェな、綾なら無傷で守れたかもしんねェ」
「何をおっしゃっ……」
感情が一気にあふれ、息が詰まって言葉にならない。
自分を省みず守ってくれたのだ。
そればかりか紅朱はとっさに血のついた凶器を遠くへ蹴り飛ばし、痛々しい傷口をいづみに悟られまいとしたのだ。
彼女の罪を軽くしてあげるために。
立ち直るチャンスをあげるために。
痛みに耐えて、立っていたのだ。
「……おいまさか、泣いてねェだろうな……?」
日向子に背中を向けたまま、紅朱は囁く。苦しげな呼吸の狭間で。
「泣いたりしたら承知しねェからな……」
そしてゆっくりと、冷たいコンクリートにその身を沈めた……。
「……紅朱様……!!!!」
《第5章 今宵、囚われて -attachment-》【5】
「綾。預金通帳とにらめっこは楽しいのか?」
「うわっ……! 兄貴」
急いで引き出しの中に押し込まれる「浅川綾」名義の通帳。
「なんか、でかい買い物すんだろ」
「ち、違うよ……なんでもないよ」
「……あ、そ」
「部屋に入る時はノックしてくれっていつも言ってるだろ」
「はいはい」
適当に返事して部屋を出る。
別にしつこく追求する必要はない。
約10年も「兄弟」をやっていれば大抵のことは察しがつく。
本人は真剣に隠しているつもりなあたりが愉快で、すぐに誰かに話したくなる。
「おい、また綾の病気が始まったぞ、ババア」
夕食の準備をする後ろ姿に話しかける。
「そう……綾ちゃん、今度は何がしたいって?」
とんとんと長葱をリズミカルに刻みながら、尋ねてきた母に、軽い口調で答えた。
「多分、ギターだな」
包丁の音が、止まった。
「ギター……」
「俺がクラスの奴とバンドやってんの見てやりたくなったんだろ。
全くしょうがねェよな、あいつも……」
「お兄ちゃん」
背中を向けたままの母が、嫌に静かな声で告げる。
「そのこと、お父さんにはまだ話しちゃダメよ」
その声と、動かない背中だけでビシビシと伝わってくる感覚。
禁忌の気配。
何か口の中が一気に、乾いてしまったような気がした。
「……なあ」
言葉を絞り出す。
「ジジイ……なんで俺がバンドやりたいって言った時、あんなに反対したんだ……?
他のことは『なんでも経験だからやってみなさい』って感じなのに……なんで、音楽だけ……さ」
母の小さな背中が、微かに震えている気がした。
「きっと……お兄ちゃんを見て、綾ちゃんも音楽をやりたがるから……そうすると母さんが悲しむと、思ったからよ」
か弱い声が、絞り出す。
「……綾ちゃんの本当の両親はね、二人ともミュージックだったの……昔一緒にバンドをやっていたのよ」
「……え?」
「可愛い妹が、ギターケースを抱えて、駆け落ち同然に家を出て行った時は本当に寂しかった……だから。
……怖い……音楽という翼を得たら、綾ちゃんもどこかへ行ってしまいそうで……っ」
「……ババア、泣いてんのか……?」
駆け寄りたいと思う反面、強烈な罪悪感で、金縛りにあったように動けなくなる。
もし自分が音楽の道に進みたいなどと思わなければ、こんなふうに悲しませなかったんだろうか?
「……綾は俺の弟だろ。浅川家の家族だろ……どこにも飛んで行かせたりしねェよ。
……翼をへし折ってでも、俺が繋ぎ留めてやる」
必死に慰めたつもりだったのに、静かなおえつが止まることはなかった。
どうしていいかわからなくて、ただただ立ち尽くすしかなかった。
「……あったま悪ィ……」
「え? 何かおっしゃりまして?」
「なんか昔のことをちょっと思い出したんだ……走馬灯みてェな感じだ」
「まあ、縁起でもない表現をなさらないで下さい」
「センス悪かったか? 多目に見ろ……頭ん中ぼーっとしてっからな」
日向子は即座に救急車を呼び、万楼の件でも世話になった病院に紅朱を搬送してもらった。
無論、今度のことを「事件」にしないためだ。
紅朱の背中の傷は出血量が多く、少々の輸血と15針の縫合を要した。
意識が覚醒して後も、すぐには気分がすっきりしないのは当然とも言える。
「それにしてももったいなかったですわね……紅朱様のおぐし……」
日向子お気に入りの深紅の髪は、カッターで切断され、不揃いになってしまったため、結局切り揃えられてしまった。
サイドと同じ長さになったため、まだ男性としてはかなり長めとはいえ、肩につかないくらいの長さになってしまった。
「別に、たかが髪だしな……。まあ、お前が気に入ってんならまた伸ばしてもいいが」
「ええ、ぜひ!」
日向子は紅朱の傍らで、しゅるしゅると梨をむいていた。
「……そういうことは得意なんだな? お前」
日向子は誉められたことに素直に喜びながら、一切れを楊枝に刺して紅朱に差し出した。
「どうぞ召し上がれ」
「ん」
紅朱は何の躊躇いも恥じらいもなくそれに食らいつくと、しゃくしゃく食べた。
「こういうのは、ガキの頃にババアにやってもらって以来だな」
日向子はほとんど反射的に、
「粋さんにはして頂かなかったのですか?」
言い終わってすぐに後悔するような配慮のない質問を口にしてしまい、その通りにしっかり後悔した。
「……下世話なことをお聞きしてしまいましたわ」
「ねェよ」
「……はい?」
紅朱は大して気を悪くしたふうでもなく答え、
「粋とは別に、恋人だったわけでもないからな」
驚くべき事実を明かした。
「大方蝉辺りが言った冗談を間に受けたんだろ?
一緒に暮らしてたこともあるし、公私ともにかけがえない相手だったことは認める。
俺たちは……言ってみれば親友だった」
「親友……」
「ああ。戦友と言ったっていい。
男だ女だなんて関係ない、信頼で結ばれたパートナーだった。
はっきりした理由も言わず、heliodorを抜けたい、なんて言い出す前までのことだけどな」
微かに目をふせた紅朱の、その表情には嘘があるとは思えなかった。
紅朱と粋は恋人同士ではなかった。
けれど、あるいはもっと深い絆のある関係だったのかもしれない。
紅朱は背中の傷よりもずっと痛みを伴う心の傷を辿って言った。
「あの時、俺は初めて粋に手を上げた。力ずくで、引き留めようとした。
俺のくだらない常套手段だな……」
「紅朱様……」
紅朱は溜め息をついて、それから心配して顔を曇らせる日向子を見つめた。
「全くお前の言う通りだ。力ずくで解決することなんか何もねェな。
ただ力を振るった罪悪感が残るだけだ。
ガキの頃から人の上に立ってやりたい放題やってきたが……俺は元々、リーダーの器じゃねェのかもな……」
「まあ」
日向子は何故か半分怒ったような顔で紅朱を見つめ返した。
「heliodorの皆様は、紅朱様のことが恐ろしくて逆らえないような弱虫さんではありませんわ」
「……あ?」
「あのように個性的な皆様を束ねること、力だけでは無理だとは思いませんか?
メンバーの皆様はもっと違うところを見て、違うところに惹かれて、紅朱様についてきていらっしゃるのではないでしょうか」
紅朱は何か言おうとしたが、それを遮って、とんとんと病室のドアを叩く音がした。
「リーダー、入ってもいい?」
廊下から聞こえてきた声に、一瞬驚いて反応が遅れつつ、
「……ああ」
紅朱は入室を許可した。
「お見舞いにお菓子作って来たよ。エクレア嫌いじゃなかったよね?」
最年少のバンドメンバーが、ラッピング用のバスケットを抱えて顔を出した。
「万楼……」
「この間はリーダーがボクの病室に駆け付けてくれたよね」
日向子にバスケットを預けた万楼は紅朱ににっこり微笑む。
「リーダーは、大切な人、だからね」
万楼に続くように、賑やかな声が飛込んでくる。
「紅朱大丈夫~!?」
蝉だ。
「ってゆーか、一人でカッコつけるからこんなことになるんじゃん。おれたちにも相談してよ!」
「……お嬢が重傷ゆうから来てみれば、案外けろっとしとるやないか、しぶとい男やな」
有砂も続いて部屋に入ってきた。
続々とやってくるメンバーたちに、まだはっきりしていない頭のせいもあって、返す言葉の見付からない紅朱。
日向子はそんな彼をなんとなく微笑ましく思いながら、見つめていた。
そして。
「……兄貴」
病室の入り口から、気まずそうな声。
紅朱のことをこう呼ぶ人間が、世の中に二人といるわけがない。
メンバーと日向子が見守る中、うつ向き加減でゆっくりとベッドに近付く。
「綾……」
「兄貴、あのさ……俺……」
「ちょっと待て」
強い口調で紅朱は玄鳥の言葉を遮った。
「謝ろうとしてるだろ、お前」
「え……うん。だって、俺……」
「謝んな」
玄鳥ばかりでなく、その場にいた全員がいぶかしげな顔で紅朱を見つめていた。
紅朱は、玄鳥を真っ直ぐに見て言った。
「……ここでお前に謝られたら俺はまた、成長できなくなる。
……謝るのは俺だ。俺が、間違ってた」
「兄貴……」
紅朱はゆっくり目を閉じて、告げた。
「……ごめん。あと……ありがとな。お前がいてくれて助かった。
これからも俺の右腕として……支えてくれるか?」
一気に言い切ったあと、気恥ずかしそうに、視線を泳がせながら、紅朱は玄鳥に右手を差し出した。
玄鳥は一瞬惚けたような顔をしていたが、
「……兄貴……」
感極まって瞳を微かにうるませながら破顔一笑した。
「……うんっ。俺、頑張るよ」
しっかりと、手と手が重なり、強く握る。
紅朱の顔にも、ようやく笑みが浮かんだ。
浅川兄弟にとっての新しい始まりの瞬間。
日向子も心からの笑顔で、パチパチと拍手する。
それに万楼が続き、蝉が加わり、ついに有砂も付き合った。
拍手と笑い声の響く病室の中は、日溜まりのような温かい空気に包まれていた。
「D-union」が公式ホームページのトップに解散の告知を出したのはそのすぐ後だった。
会長である「イヅミ」の真摯な謝罪文を残して、「D-union」は消滅した。
紅朱は力ずくではない方法で、事態を収拾したのだ。
暴力より遥かに難しく、遥かに強い……「優しさ」でいづみの心を動かした。
「落着……ってところみたい」
「会員各位」への解散告知・謝罪メールを開くことなくゴミ箱に葬り去りながら、愛想の欠片もない黒ずくめの美少女は紅茶を口に運ぶ。
「助かったわ。まだ彼女は利用出来る……役に立ってもらわないと困るもの」
「……おいクロ助、お前のご主人、また何かすごいこと言ってるぞ」
「にゅ」
ハスキーな声で楽しそうに囁く女性から、差し出されたブラシ状の玩具でじゃれる黒い子猫。
黒衣の美少女はノートパソコンから目を離し、テーブルの向かいで愛猫をもてあそぶ彼女をじっと睨んだ。
「シュバルツよ。今はまだ名前を覚えさせているところなんだから、変な名前で呼ばないで、アルテミス」
「お前こそな……誰がアルテミスだ」
美少女は子猫を手元に引き寄せて、黒で彩った指でくすぐりながら、小さく呟いた。
「たくさん名前があって貴女は面倒だわ。一体どの名前が一番好きなの?」
じゃらす対象のなくなった猫じゃらしを指先でしならせて遊びながら、凛々しき狩猟の女神はふっと笑った。
「……粋、かな」
《第6章へつづく》
2007/07/18 (Wed)
Janne Da Arc周辺
Acid Black Cherry、代々木公園ライブより帰宅。
待ち時間二時間、上演時間一時間半。笑。
今日初めて会う女の子と一緒だったんだけど、明るくていい子だったから話も弾んで、まだよかった。
去年AXに同行した方とも再会できたし……相変わらずお美しく、相変わらず男前なお嬢さんでした。笑。
yasuに合わせてか髪が黒くなってて、それがまた……ああ、なんてよくお似合いでいらっしゃるのかしら……(ぽ)。
同行者の子が彼氏にライブ禁止令を出されて困っている(もちろん今日も内緒)なんて話してたら、一言
「なら……染めてしまえ」
私があなたに染まるかと思いました。
ちなみに彼女が太陽の国の「粋」というキャラクターのモデルでございます。
ライブだけど、曲は本編5曲のアンコ2曲。
当然しょっぱなはシングル曲からだろうと思ったら、違ったからびっくりした。
でも一曲目かなり好きだったなぁ。
メンバーの衣装はPV仕様で(かっこいいほうね 笑)髪アップyasuが普通にかっこよかった。
でもyasuより千聖さんとか淳士さんがよく見えて、やっぱり超かっこよかった。
下手側の二人はさっぱり見えなかったな~、残念。
yasuの動きに合わせて人波が右往左往するのが新鮮だったね。
キリトソロでも前のほうはそうなのかな?? スタンディングでそんなに前行ったことないからよくわからない。
MCでyasuが年齢アンケートしてたんだけど、私の周りはオーバー40多かったなぁ。千聖ファンかもしれないが。
おばちゃんファンはどのバンドでも強烈でびびる。
噂に聞いていた通りにyasu様が「咲け」と煽ってきた。仕方ないので咲いてあげた。笑。
MCで千聖さんが「せっかくだから咲きを前提にした曲作ろうよ。あと長野にサクってところあるからそこでもライブしよう」とか言って、高速な咲きを実演してた。笑。
メンバーMCで一番飛ばしてたのは淳士さんだったけど。
PVの演技について、なんか言い逃れしてた。爆。
ジャンナーはMCに対するレスポンスがすごすぎる。
たまにウザイ時もあるんだけど今日は素直に笑えた。
アンコの時、ソロ活動に関してyasuからのちょっとシリアスな話があったんだけど、
yasu「みんな、本当はJanne Da Arcとして五人でステージに立つ姿が見たいですよね?」
思わずみんな黙ってしまった時、遥か彼方から、
「確かにー」
って叫んだ人がいて、一番ツボった。
確かに、って。笑笑。
更に。
yasu「皆さんの好きなJanne Da Arcってどんな感じですか?」
という問いに、「かっこいい」「面白い」「激しい」 とかってレスポンスに混じって。
「エロいー」
yasu「エロい? 俺一人でもエロいっちゅーねん。一人のほうがエロいくらいや!!」
これもキタね。笑。
真面目な話、yasuはソロ活動についての真意はどうも語りたくても語れない状態みたい。
何か「ソロ活動をしたくなくても、しなくてはいけない事情ある」ってふうに聞こえた。
裏を返せば「Janne Da Arcで活動したくてもできない事情がある」んだろうか?
「このままだと僕の好きなJanne Da Arcじゃなくなってしまう気がした」とも言ってた。
「僕の好きなJanne Da Arcっていうのは、皆さんの好きなJanne Da Arcとは少し違うと思う」とも言ってた。
よくわかんない。
わかっているのはyasuが使うことが許されている数少ない言葉で、一生懸命ファンに説明しようとしてくれてたってこと。
わからないことがあまりにもたくさんで、なんにも安心することはできないけど、そのyasuの気持ちだけは汲んであげなきゃいけないと思った。
それにソロと言いながらほとんどバンド活動に近い形態っていうのに、最初はすごく引っ掛かってたんだけど、今は納得した。
やっぱりyasuはやりたくてソロやってるわけじゃなかったんだ。
何かJanne Da Arcが活動出来ない事情があって、他のことをしろって言われたけど、yasuはやっぱりバンドがやりたかったんだよね。
DVDでも「バンドが好き。ずらって並んでる感じが好き」とか発言してるの聞いて、確信できたし。
せっかくだからこのプロジェクトを楽しんで、プラスにしていこうっていう姿勢にも好感持てた。
今まで散々文句言ってきたけど、私はAcid Black Cherryを……っていうかyasuを応援することにする。
そしてそれがどんなものかわからないけど、yasuの好きなJanne Da Arcとやらに早く会えるといいな。
会える、よね?
さあ次は、ka-yuの番ですよ。
不安、半分。
期待、半分。
待ち時間二時間、上演時間一時間半。笑。
今日初めて会う女の子と一緒だったんだけど、明るくていい子だったから話も弾んで、まだよかった。
去年AXに同行した方とも再会できたし……相変わらずお美しく、相変わらず男前なお嬢さんでした。笑。
yasuに合わせてか髪が黒くなってて、それがまた……ああ、なんてよくお似合いでいらっしゃるのかしら……(ぽ)。
同行者の子が彼氏にライブ禁止令を出されて困っている(もちろん今日も内緒)なんて話してたら、一言
「なら……染めてしまえ」
私があなたに染まるかと思いました。
ちなみに彼女が太陽の国の「粋」というキャラクターのモデルでございます。
ライブだけど、曲は本編5曲のアンコ2曲。
当然しょっぱなはシングル曲からだろうと思ったら、違ったからびっくりした。
でも一曲目かなり好きだったなぁ。
メンバーの衣装はPV仕様で(かっこいいほうね 笑)髪アップyasuが普通にかっこよかった。
でもyasuより千聖さんとか淳士さんがよく見えて、やっぱり超かっこよかった。
下手側の二人はさっぱり見えなかったな~、残念。
yasuの動きに合わせて人波が右往左往するのが新鮮だったね。
キリトソロでも前のほうはそうなのかな?? スタンディングでそんなに前行ったことないからよくわからない。
MCでyasuが年齢アンケートしてたんだけど、私の周りはオーバー40多かったなぁ。千聖ファンかもしれないが。
おばちゃんファンはどのバンドでも強烈でびびる。
噂に聞いていた通りにyasu様が「咲け」と煽ってきた。仕方ないので咲いてあげた。笑。
MCで千聖さんが「せっかくだから咲きを前提にした曲作ろうよ。あと長野にサクってところあるからそこでもライブしよう」とか言って、高速な咲きを実演してた。笑。
メンバーMCで一番飛ばしてたのは淳士さんだったけど。
PVの演技について、なんか言い逃れしてた。爆。
ジャンナーはMCに対するレスポンスがすごすぎる。
たまにウザイ時もあるんだけど今日は素直に笑えた。
アンコの時、ソロ活動に関してyasuからのちょっとシリアスな話があったんだけど、
yasu「みんな、本当はJanne Da Arcとして五人でステージに立つ姿が見たいですよね?」
思わずみんな黙ってしまった時、遥か彼方から、
「確かにー」
って叫んだ人がいて、一番ツボった。
確かに、って。笑笑。
更に。
yasu「皆さんの好きなJanne Da Arcってどんな感じですか?」
という問いに、「かっこいい」「面白い」「激しい」 とかってレスポンスに混じって。
「エロいー」
yasu「エロい? 俺一人でもエロいっちゅーねん。一人のほうがエロいくらいや!!」
これもキタね。笑。
真面目な話、yasuはソロ活動についての真意はどうも語りたくても語れない状態みたい。
何か「ソロ活動をしたくなくても、しなくてはいけない事情ある」ってふうに聞こえた。
裏を返せば「Janne Da Arcで活動したくてもできない事情がある」んだろうか?
「このままだと僕の好きなJanne Da Arcじゃなくなってしまう気がした」とも言ってた。
「僕の好きなJanne Da Arcっていうのは、皆さんの好きなJanne Da Arcとは少し違うと思う」とも言ってた。
よくわかんない。
わかっているのはyasuが使うことが許されている数少ない言葉で、一生懸命ファンに説明しようとしてくれてたってこと。
わからないことがあまりにもたくさんで、なんにも安心することはできないけど、そのyasuの気持ちだけは汲んであげなきゃいけないと思った。
それにソロと言いながらほとんどバンド活動に近い形態っていうのに、最初はすごく引っ掛かってたんだけど、今は納得した。
やっぱりyasuはやりたくてソロやってるわけじゃなかったんだ。
何かJanne Da Arcが活動出来ない事情があって、他のことをしろって言われたけど、yasuはやっぱりバンドがやりたかったんだよね。
DVDでも「バンドが好き。ずらって並んでる感じが好き」とか発言してるの聞いて、確信できたし。
せっかくだからこのプロジェクトを楽しんで、プラスにしていこうっていう姿勢にも好感持てた。
今まで散々文句言ってきたけど、私はAcid Black Cherryを……っていうかyasuを応援することにする。
そしてそれがどんなものかわからないけど、yasuの好きなJanne Da Arcとやらに早く会えるといいな。
会える、よね?
さあ次は、ka-yuの番ですよ。
不安、半分。
期待、半分。
2007/07/18 (Wed)
Janne Da Arc周辺
休日なのに、普段より2時間も早起きしなきゃならんのか……!
単身でAcid Black Cherryの代々木フリーライブに行くんだけど、FC優先エリアは集合時間決まってるのよね。
しかもAからFまでアルファベットで番号分かれてて、アルファベット早いほうが集合時間も早い。
なんで私はうっかりAチケなんて引いてしまったのだろう。笑。
違うところで使いたかった、このチケ運……。
とりあえず行くなら上手かな~。千聖さんとやらを見ておかないといけないし。
うちの人はこの方に影響受けてギター始めたらしいので。
CDも一応限定盤をゲットしたけど、まだDVDは見てない……。
とりあえず近年のJanne Da Arcが絶対にシングルで切れないような曲だから面白いと思ったし、歌詞もyasu節炸裂って感じでなかなか(林保徳名義だけども)。
「だって私猫だもの」には参ったさ。笑笑。
でもこれ、そっくりそのままここ一年のジャンナーの心境だと思うんだけど。どうよ。
まあ、この曲、個人的にはすっごい好きかと聞かれれば、そうでもないんだけどね。
キリトソロも最初はそういう感じだったから、ライブ行ったり、他の曲も聞いてみないと何とも言えない。
さあ、そんなわけだから明日は頑張るか……。
ああ、そういえば今日は「学園キノ」の二巻を仕事中に読んでたんだけど、一巻より断然よかった。
とりあえず茶子先生がめちゃめちゃ好き。
「茶子の爆弾物語」はオチの後日談もよかったし。ベタなんだけど、ぐっときてしまったじゃないか。
時雨沢さんはこの確信犯的ベタがたまんない。
わかっててやってるんだもん。そこがすごい。
あと学園キノで個人的にすごく好きな設定が、木乃と男子二人の関係。
変身前の静にはときめいてしまうのに、変身してサモエド仮面になると邪魔者扱い。
変身前の犬山は大嫌いなのに、変身してワンワン刑事になるとなんだかいい雰囲気。
木乃、二人の正体を知ったらどっちがよりショックだろうか。静に一票。笑。
そんな複雑な三角関係はどこ吹く風で、フリースペースに静×犬山イラストを描いてしまう黒星先生にもびっくりだが。笑。
誘い受だったのか、犬山……。笑笑。
しかし今回ヤヲイネタ多かった気がするけど、犬山人気で女性ファンが増えてるんかね。
単身でAcid Black Cherryの代々木フリーライブに行くんだけど、FC優先エリアは集合時間決まってるのよね。
しかもAからFまでアルファベットで番号分かれてて、アルファベット早いほうが集合時間も早い。
なんで私はうっかりAチケなんて引いてしまったのだろう。笑。
違うところで使いたかった、このチケ運……。
とりあえず行くなら上手かな~。千聖さんとやらを見ておかないといけないし。
うちの人はこの方に影響受けてギター始めたらしいので。
CDも一応限定盤をゲットしたけど、まだDVDは見てない……。
とりあえず近年のJanne Da Arcが絶対にシングルで切れないような曲だから面白いと思ったし、歌詞もyasu節炸裂って感じでなかなか(林保徳名義だけども)。
「だって私猫だもの」には参ったさ。笑笑。
でもこれ、そっくりそのままここ一年のジャンナーの心境だと思うんだけど。どうよ。
まあ、この曲、個人的にはすっごい好きかと聞かれれば、そうでもないんだけどね。
キリトソロも最初はそういう感じだったから、ライブ行ったり、他の曲も聞いてみないと何とも言えない。
さあ、そんなわけだから明日は頑張るか……。
ああ、そういえば今日は「学園キノ」の二巻を仕事中に読んでたんだけど、一巻より断然よかった。
とりあえず茶子先生がめちゃめちゃ好き。
「茶子の爆弾物語」はオチの後日談もよかったし。ベタなんだけど、ぐっときてしまったじゃないか。
時雨沢さんはこの確信犯的ベタがたまんない。
わかっててやってるんだもん。そこがすごい。
あと学園キノで個人的にすごく好きな設定が、木乃と男子二人の関係。
変身前の静にはときめいてしまうのに、変身してサモエド仮面になると邪魔者扱い。
変身前の犬山は大嫌いなのに、変身してワンワン刑事になるとなんだかいい雰囲気。
木乃、二人の正体を知ったらどっちがよりショックだろうか。静に一票。笑。
そんな複雑な三角関係はどこ吹く風で、フリースペースに静×犬山イラストを描いてしまう黒星先生にもびっくりだが。笑。
誘い受だったのか、犬山……。笑笑。
しかし今回ヤヲイネタ多かった気がするけど、犬山人気で女性ファンが増えてるんかね。
2007/07/17 (Tue)
一次創作関連
クラシカルなデザインの紺色のセーラーをまとった可憐な少女は、冬の冷たい風に身震いしながらも、自室の窓から見える白亜の建物を背伸びして眺めていた。
「お嬢様、お召し換えをな…らないのですか?」
まだ中学に上がったばかりの少年が、声変わり前のボーイソプラノには似合わない口調で話しかけても、幼い少女は外ばかり見ている。
「……ねえ、雪乃?」
「はい……?」
「……一昨日からゲストハウスにお泊まりのお客様……一度もお姿を拝見しておりませんが、どういった方なのかご存じでして?」
「詳しくは存じませんが、先生の音大教授時代の教え子の方と伺っております」
「まあ、では雪乃にとっては兄弟子様にあたるのですわね?」
「はい……確かに」
そういえば先程から、風に乗って微かにピアノの音が聞こえる。
冴え冴えとして冷たい、冬の景色によく似合う音色。
「……なんて美しくて……せつないメロディ……」
《第5章 今宵、囚われて -attachment-》【4】
「……お嬢様?」
呼び掛けには応答がなかった。
雪乃はバックミラーから、後部座席をうかがった。
日向子はバッグを抱えたままウインドウに頭を預けてすっかり眠ってしまっている。
彼女は深く深く、「思い出」という名の夢の世界へと旅立っていた。
雪乃は、溜め息をつき、眼鏡を少し下にずらして独り言を呟いた。
「……ゆうべは帰るの遅かったのかな……。
お疲れ様、日向子ちゃん」
それは冴えわたる満月の夜。
フリルたっぷりの白いガウンをまとった小さな少女は、寒さに震えながらも、大理石の渡り廊下を忍び足で歩いていた。
こんなところを誰かに見付かればただでは済まないに違いないが、好奇心には勝てない。
ゲストハウスから時折流れるあの旋律。
奏でているのがどんな人なのか、突き止めなければ眠れない。
幸運にも誰の目にもとまらずに白亜の建物まで行き着くことができたが、どうやらそこには最もたちの悪い先客が来てしまっているようだった。
彼女の父親が、誰か……恐らくは例の客人と話している声が聞こえる。
はしたないことと知りながら、少女は大きな扉の鍵穴を片目で覗きこんだ。
「……釘宮先生」
甘く、たっぷり艶を含んだ声で、青年が囁く。
「……これ以上押し問答を続けて何とします?
私の気が変わることは、金輪際ないと断言致します」
「君はどうしても、その珠玉のような才能を自らドブ川に棄てたいというのかね」
「ドブ川とは……また、実に手厳しい」
対面にどかりと腰を下ろし厳しい目付きで睨む中年男性に、青年はふっと含みのある笑みを見せる。
「ならば先生、私はドブにつかりきったドブねずみということですよ。
こんな卑しい奴めはお捨て置き下さい」
「馬鹿なことを言うんじゃない。君のピアニストとしての才能は本物だ、今からだって遅くはない。
私は君を釘宮の後継に指名したい」
「……後継なら、勤勉で素様ある利口な少年を見つけられたのでは?」
「あれはまだほんの原石だ、磨き上げても君を越える大器となる保証はない」
「……まあ、ごもっともですね」
青年は不思議な笑みを浮かべたまま、中年男性をその切長の眼差しで見つめる。
「あいにくと私にとりましては、音楽大学に進んだことも、ピアノを専攻したこともほんの暇潰しです。
私は何故か、暇潰しで始めたことでも人より巧く出来てしまうことが多いものですからね。
釘宮先生の後継……というのは、暇潰しで襲名するには少々荷が重いのでお断り致します」
「君という男は……」
呆れたようにうめく中年。
「……お約束通り、5日後の式典が最後です。お諦め下さい、先生」
中年男性……父親がこちらに来るのに気付き、少女はとっさに開く扉の陰に身を潜めた。
憤慨した様子ですたすたと歩く父親は、一人娘がそんなところに隠れていることには全く気付かなかった。
少女が小さな胸を撫で下ろしていると、
「……今晩は、どちら様かな」
あの甘い囁き声が部屋の中から響いた。
「もう隠れなくていいですから、入っていらっしゃい」
少女はおずおずと、部屋の中へ入って行った。
20代後半と思われる、背の高い細身の青年が革張りのソファに腰かけて笑っている。
「おや、これは可愛いレディのおでましだ」
レディ、と呼ばれたことで少女はにわかに姿勢を正し、ガウンのすそをつまんでレディらしいお辞儀をした。
「釘宮日向子と申します。どうぞお見知り置きを」
青年は楽しそうに微笑しながら立ち上がり、こちらも紳士らしく丁重に、
「お目にかかれて光栄です。私のことは……伯爵とお呼び下さい、レディ」
「かう……んと様ですの?」
「無論、爵位を賜った本物の伯爵ではないが……人からは何故かそう呼ばれていてね」
日向子は、確かにその呼び名はこの青年に本当によく似合うと思った。
「伯爵様……ピアノをお辞めになりますの?」
父親と青年の会話は11歳の少女にはいささか難解極まり、更にはところどころ聞き取れなかったため、全てを理解出来たわけではなかったが、どうやら青年はピアニストになるつもりがなさそうなのは確かだった。
「さて……折りを見て弾くこともあるやもしれないが。あなたのお父上の望むような形ではないだろうね」
「そうですの……」
日向子が少し残念そうな顔をしたので、伯爵はふと微かに目を細め、ゆっくりと歩み寄った。
「レディ」
膝を折って日向子の視線の高さに合わせると、ここにくる間にすっかり冷えてしまった柔らかい頬に、大きな手を当てがった。
温かい部屋の中にいた筈の伯爵の手が、更に冷たいことに日向子は驚いた。
けれどそれよりも、間近で見る伯爵の瞳は氷塊のように冷たかった。
「……人にはそれぞれ偽れない本性というものがある。本性を隠したまま生きることは窮屈で不自由で、退屈なものになるでしょう。
私は自分の本性が何者か、何を求めるか……よくわかっているので、他のものは全て切り捨てることができるのだよ」
「切り捨てる……?」
「本当に欲しいものを手に入れるためなら、その覚悟は必要になる……例えば将来美しく成長したレディには、何人もの紳士から求愛されるかもしれない。しかしその中から選べるのは一人しかいない」
日向子はこくんと頷いた。
伯爵はあくまでも優しい笑顔を見せる。
「いつかそんな相手と出会ったら、けして躊躇ってはいけないよ」
いつか、と伯爵は言う。
けれど日向子は今、目の前の双つの瞳が放つ月光のような光に釘付けになっていた。
まるで満ちた月の引力のように。
伯爵の声も眼差しも、冷たい指も、日向子の心をするすると引き寄せる。
そっと小さな手を、頬を包む伯爵の大きな手にそわせ、真っ直ぐに見つめる。
「ではわたくしは……何を捨てれば伯爵様を手に入れることができますかしら……?」
伯爵は一瞬眉を持ち上げ、すぐにまた余裕げな笑みに戻った。
「この伯爵を求めるのですか? レディ」
「……お嬢様!」
はっと日向子は目を開いた。
「恐れ入りますが、そろそろお目覚め下さい」
ドライバーシートから、ボーイソプラノではないが、夢の中と変わらない口調で語りかける幼馴染みをしばらくぼんやり見つめていた日向子だったが、だんだん頭がはっきりしてくる。
「そうでしたわ……お仕事……行かなければいけないのでしたわね?」
「左様でございます。お疲れのところ大変かと思いますが、お急ぎにならないと遅刻されます」
遅刻、の二文字に一気に覚醒した日向子は、
「ありがとう、雪乃」
短く労って、雪乃にドアを開けてもらうのを待たずにバッグを抱えて飛び出して行った。
駐車場からオフィスビルへ向けて、本人的には全速力で走りながら、日向子は今しがた見た夢を思い出していた。
それは間違いなく過去、本当にあったこと。
日向子が初めて伯爵を名乗る紳士と出会い、瞬く間に囚われてしまった不思議な夜の記憶。
どうして今になってこんな夢を見たのだろうか、と疑問に思いはしたが、思いがけず夢の中で伯爵と会えたことに日向子はときめきを感じた。
今日は素敵な一日になるかもしれない。
そんな淡い期待は、驚くほど早く裏切られた。
「森久保日向子」
編集部のビルまであとほんの少しというところで、目の前に立ちはだかった者がいた。
それが見知った少女だったので、日向子は立ち止まる。
「あなたは……いづみ、さん?」
柔らかなピンク色のダッフルコートを着た少女が、真っ白な息を吐きながら、日向子を凝視していた。
「意気地なしな連中はとっとと諦めたけど、わたしは引かない」
「何を、おっしゃってますの……?」
少女の瞳には深い闇が映っている……狂気という名の闇が。
「お金の力を使ったの? それともその可愛い顔でメンバーに取り入ったの?
……それともやっぱり、寝たの?」
日向子はざりっと一歩後ずさった。
「いづみさん……」
少女がコートのポケットに突っ込んでいた手を引くと、そこには危うく輝く銀色の刃が握られていた。
「いづみ……さん……」
壊れたラジカセのように、呆然と繰り返す日向子。
いづみはキリキリと最大まで刃を押し上げたカッターを右手に握って、叫んだ。
「粛清……!!」
カッターを握ったいづみがスプリンターのように全速力で駆け込むのが見えた、その直後。
日向子が見たのは千切れて風に踊る「深紅」の破片だった。
その向こうにへたりこむいづみと、コンクリの地面に叩き付けられて、刃が真っ二つになったカッター。
「……っ」
短い吐息が耳をくすぐった。
「……間に合ったな」
囁く声は甘く、けれどよく通る強い響き。
日向子の身体を片腕で支えながら、覆い被さるようにして立っていたその声の主は、
「……お前は絶対に一言も喋るな」
きっぱりと命令して、日向子に背を向けた。
日向子は今更のように頷いて、声には出さずに彼の名前を呼んだ。
紅朱様……。
「なんで……あなたが?」
愕然としているいづみに、紅朱は告げる。
「ああして宣戦布告してやれば、反応は2つに1つだろ。諦めるか、ぶちキレるか……。
こんくらいは想定してるに決まってんだろ」
紅朱は舌打ちして足元のカッターを蹴った。
「バカだろ、お前。こんな工作カッターじゃ、ジャケットすら貫通しねェよ」
日向子は、思わず声を上げそうになった。
言葉とは裏腹に、綺麗に袈裟がけに切り裂かれたジャケットからはとめどなく血が滲み始めている。
「……気に入らねェから力ずくで排除なんて馬鹿馬鹿しい考えは捨てちまえ。
そんなもんじゃ、人の絆は左右出来ない……この女に教わったことだ。
俺なんかよりずっと森久保日向子は器のデカイ女なんだよ。
それを逆恨みなんてとんだお角違いだ」
痛みなど感じていないというように、全くなんでもない口調で紅朱は、いづみに呼び掛ける。
「わかったら、謝れ」
《つづく》
「お嬢様、お召し換えをな…らないのですか?」
まだ中学に上がったばかりの少年が、声変わり前のボーイソプラノには似合わない口調で話しかけても、幼い少女は外ばかり見ている。
「……ねえ、雪乃?」
「はい……?」
「……一昨日からゲストハウスにお泊まりのお客様……一度もお姿を拝見しておりませんが、どういった方なのかご存じでして?」
「詳しくは存じませんが、先生の音大教授時代の教え子の方と伺っております」
「まあ、では雪乃にとっては兄弟子様にあたるのですわね?」
「はい……確かに」
そういえば先程から、風に乗って微かにピアノの音が聞こえる。
冴え冴えとして冷たい、冬の景色によく似合う音色。
「……なんて美しくて……せつないメロディ……」
《第5章 今宵、囚われて -attachment-》【4】
「……お嬢様?」
呼び掛けには応答がなかった。
雪乃はバックミラーから、後部座席をうかがった。
日向子はバッグを抱えたままウインドウに頭を預けてすっかり眠ってしまっている。
彼女は深く深く、「思い出」という名の夢の世界へと旅立っていた。
雪乃は、溜め息をつき、眼鏡を少し下にずらして独り言を呟いた。
「……ゆうべは帰るの遅かったのかな……。
お疲れ様、日向子ちゃん」
それは冴えわたる満月の夜。
フリルたっぷりの白いガウンをまとった小さな少女は、寒さに震えながらも、大理石の渡り廊下を忍び足で歩いていた。
こんなところを誰かに見付かればただでは済まないに違いないが、好奇心には勝てない。
ゲストハウスから時折流れるあの旋律。
奏でているのがどんな人なのか、突き止めなければ眠れない。
幸運にも誰の目にもとまらずに白亜の建物まで行き着くことができたが、どうやらそこには最もたちの悪い先客が来てしまっているようだった。
彼女の父親が、誰か……恐らくは例の客人と話している声が聞こえる。
はしたないことと知りながら、少女は大きな扉の鍵穴を片目で覗きこんだ。
「……釘宮先生」
甘く、たっぷり艶を含んだ声で、青年が囁く。
「……これ以上押し問答を続けて何とします?
私の気が変わることは、金輪際ないと断言致します」
「君はどうしても、その珠玉のような才能を自らドブ川に棄てたいというのかね」
「ドブ川とは……また、実に手厳しい」
対面にどかりと腰を下ろし厳しい目付きで睨む中年男性に、青年はふっと含みのある笑みを見せる。
「ならば先生、私はドブにつかりきったドブねずみということですよ。
こんな卑しい奴めはお捨て置き下さい」
「馬鹿なことを言うんじゃない。君のピアニストとしての才能は本物だ、今からだって遅くはない。
私は君を釘宮の後継に指名したい」
「……後継なら、勤勉で素様ある利口な少年を見つけられたのでは?」
「あれはまだほんの原石だ、磨き上げても君を越える大器となる保証はない」
「……まあ、ごもっともですね」
青年は不思議な笑みを浮かべたまま、中年男性をその切長の眼差しで見つめる。
「あいにくと私にとりましては、音楽大学に進んだことも、ピアノを専攻したこともほんの暇潰しです。
私は何故か、暇潰しで始めたことでも人より巧く出来てしまうことが多いものですからね。
釘宮先生の後継……というのは、暇潰しで襲名するには少々荷が重いのでお断り致します」
「君という男は……」
呆れたようにうめく中年。
「……お約束通り、5日後の式典が最後です。お諦め下さい、先生」
中年男性……父親がこちらに来るのに気付き、少女はとっさに開く扉の陰に身を潜めた。
憤慨した様子ですたすたと歩く父親は、一人娘がそんなところに隠れていることには全く気付かなかった。
少女が小さな胸を撫で下ろしていると、
「……今晩は、どちら様かな」
あの甘い囁き声が部屋の中から響いた。
「もう隠れなくていいですから、入っていらっしゃい」
少女はおずおずと、部屋の中へ入って行った。
20代後半と思われる、背の高い細身の青年が革張りのソファに腰かけて笑っている。
「おや、これは可愛いレディのおでましだ」
レディ、と呼ばれたことで少女はにわかに姿勢を正し、ガウンのすそをつまんでレディらしいお辞儀をした。
「釘宮日向子と申します。どうぞお見知り置きを」
青年は楽しそうに微笑しながら立ち上がり、こちらも紳士らしく丁重に、
「お目にかかれて光栄です。私のことは……伯爵とお呼び下さい、レディ」
「かう……んと様ですの?」
「無論、爵位を賜った本物の伯爵ではないが……人からは何故かそう呼ばれていてね」
日向子は、確かにその呼び名はこの青年に本当によく似合うと思った。
「伯爵様……ピアノをお辞めになりますの?」
父親と青年の会話は11歳の少女にはいささか難解極まり、更にはところどころ聞き取れなかったため、全てを理解出来たわけではなかったが、どうやら青年はピアニストになるつもりがなさそうなのは確かだった。
「さて……折りを見て弾くこともあるやもしれないが。あなたのお父上の望むような形ではないだろうね」
「そうですの……」
日向子が少し残念そうな顔をしたので、伯爵はふと微かに目を細め、ゆっくりと歩み寄った。
「レディ」
膝を折って日向子の視線の高さに合わせると、ここにくる間にすっかり冷えてしまった柔らかい頬に、大きな手を当てがった。
温かい部屋の中にいた筈の伯爵の手が、更に冷たいことに日向子は驚いた。
けれどそれよりも、間近で見る伯爵の瞳は氷塊のように冷たかった。
「……人にはそれぞれ偽れない本性というものがある。本性を隠したまま生きることは窮屈で不自由で、退屈なものになるでしょう。
私は自分の本性が何者か、何を求めるか……よくわかっているので、他のものは全て切り捨てることができるのだよ」
「切り捨てる……?」
「本当に欲しいものを手に入れるためなら、その覚悟は必要になる……例えば将来美しく成長したレディには、何人もの紳士から求愛されるかもしれない。しかしその中から選べるのは一人しかいない」
日向子はこくんと頷いた。
伯爵はあくまでも優しい笑顔を見せる。
「いつかそんな相手と出会ったら、けして躊躇ってはいけないよ」
いつか、と伯爵は言う。
けれど日向子は今、目の前の双つの瞳が放つ月光のような光に釘付けになっていた。
まるで満ちた月の引力のように。
伯爵の声も眼差しも、冷たい指も、日向子の心をするすると引き寄せる。
そっと小さな手を、頬を包む伯爵の大きな手にそわせ、真っ直ぐに見つめる。
「ではわたくしは……何を捨てれば伯爵様を手に入れることができますかしら……?」
伯爵は一瞬眉を持ち上げ、すぐにまた余裕げな笑みに戻った。
「この伯爵を求めるのですか? レディ」
「……お嬢様!」
はっと日向子は目を開いた。
「恐れ入りますが、そろそろお目覚め下さい」
ドライバーシートから、ボーイソプラノではないが、夢の中と変わらない口調で語りかける幼馴染みをしばらくぼんやり見つめていた日向子だったが、だんだん頭がはっきりしてくる。
「そうでしたわ……お仕事……行かなければいけないのでしたわね?」
「左様でございます。お疲れのところ大変かと思いますが、お急ぎにならないと遅刻されます」
遅刻、の二文字に一気に覚醒した日向子は、
「ありがとう、雪乃」
短く労って、雪乃にドアを開けてもらうのを待たずにバッグを抱えて飛び出して行った。
駐車場からオフィスビルへ向けて、本人的には全速力で走りながら、日向子は今しがた見た夢を思い出していた。
それは間違いなく過去、本当にあったこと。
日向子が初めて伯爵を名乗る紳士と出会い、瞬く間に囚われてしまった不思議な夜の記憶。
どうして今になってこんな夢を見たのだろうか、と疑問に思いはしたが、思いがけず夢の中で伯爵と会えたことに日向子はときめきを感じた。
今日は素敵な一日になるかもしれない。
そんな淡い期待は、驚くほど早く裏切られた。
「森久保日向子」
編集部のビルまであとほんの少しというところで、目の前に立ちはだかった者がいた。
それが見知った少女だったので、日向子は立ち止まる。
「あなたは……いづみ、さん?」
柔らかなピンク色のダッフルコートを着た少女が、真っ白な息を吐きながら、日向子を凝視していた。
「意気地なしな連中はとっとと諦めたけど、わたしは引かない」
「何を、おっしゃってますの……?」
少女の瞳には深い闇が映っている……狂気という名の闇が。
「お金の力を使ったの? それともその可愛い顔でメンバーに取り入ったの?
……それともやっぱり、寝たの?」
日向子はざりっと一歩後ずさった。
「いづみさん……」
少女がコートのポケットに突っ込んでいた手を引くと、そこには危うく輝く銀色の刃が握られていた。
「いづみ……さん……」
壊れたラジカセのように、呆然と繰り返す日向子。
いづみはキリキリと最大まで刃を押し上げたカッターを右手に握って、叫んだ。
「粛清……!!」
カッターを握ったいづみがスプリンターのように全速力で駆け込むのが見えた、その直後。
日向子が見たのは千切れて風に踊る「深紅」の破片だった。
その向こうにへたりこむいづみと、コンクリの地面に叩き付けられて、刃が真っ二つになったカッター。
「……っ」
短い吐息が耳をくすぐった。
「……間に合ったな」
囁く声は甘く、けれどよく通る強い響き。
日向子の身体を片腕で支えながら、覆い被さるようにして立っていたその声の主は、
「……お前は絶対に一言も喋るな」
きっぱりと命令して、日向子に背を向けた。
日向子は今更のように頷いて、声には出さずに彼の名前を呼んだ。
紅朱様……。
「なんで……あなたが?」
愕然としているいづみに、紅朱は告げる。
「ああして宣戦布告してやれば、反応は2つに1つだろ。諦めるか、ぶちキレるか……。
こんくらいは想定してるに決まってんだろ」
紅朱は舌打ちして足元のカッターを蹴った。
「バカだろ、お前。こんな工作カッターじゃ、ジャケットすら貫通しねェよ」
日向子は、思わず声を上げそうになった。
言葉とは裏腹に、綺麗に袈裟がけに切り裂かれたジャケットからはとめどなく血が滲み始めている。
「……気に入らねェから力ずくで排除なんて馬鹿馬鹿しい考えは捨てちまえ。
そんなもんじゃ、人の絆は左右出来ない……この女に教わったことだ。
俺なんかよりずっと森久保日向子は器のデカイ女なんだよ。
それを逆恨みなんてとんだお角違いだ」
痛みなど感じていないというように、全くなんでもない口調で紅朱は、いづみに呼び掛ける。
「わかったら、謝れ」
《つづく》