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HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
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妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

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2007/08/13 (Mon)
 今日はアクセス数が異様に多いな、と思ったら恋華関連で検索してきた方が多かったのかな。
 私もこのところ恋華への期待があまりにも大きすぎてひたすらそわそわしてしまってるわ(発売10月じゃん)。

 主題歌はOPは予想通り宮野さんで、EDは吉野さんだって。やるじゃないか、三木三郎!!
 EDのほうがフルコーラス流れておいしいっちゃおいしい。

 前作主要キャラ総登場の件は先日も絶賛したけど、公式によると、なんと前作のデータ引継ぎによる「カップリング設定」なるシステムがあるのだそうだ。

 今回、前作のヒロイン・桜庭鈴花が脇役として出てくる(中の人はCDドラマと同じ植田佳奈さん)んだけど、カップリング設定をしておくと、前作のその相手とのルートのシナリオが反映される。

 つまり今回のヒロインの恋愛模様と同時進行で鈴花の恋愛模様も展開されていくと。

 これ、すごくない??
 かなり画期的。

 今までにありそうでなかったよね。

 すると鈴花は山南さんで設定したら早々に離脱するし、近藤、土方とかで設定するといきなり死亡フラグってことですか。爆。

 私はファーストプレイ三木狙いの予定だから、カップリング設定は平助にしちゃおうかな。
 幕末ロミオの苦悩っぷりを傍らで見守る感じでね。
 
 ただ新キャラはいいとして、鍬次郎はルートによって寿命の長さが違う(笑)わけなんだが、このへんはどうなるのかね。
 まあ、切られてるけど死んだとは名言してないと思うんで、実は生きてた……とかなくはないけどね。
 私は鍬次郎大好きだけど、永倉ルートの彼だけは生理的に無理なんで(あの殺し方だけは……キツイよ)、どういう処理になるにせよ永倉設定でプレイはやめておこうかな。

 一番引っ掛かるのは鹿取だよね。

 ねえ、鹿取ってぶっちゃけ山崎さんの変装じゃ、ないの??

 多分設定公開された時からそうなんだろうな、って誰もが思ってたんじゃない? 私は信じて疑わなかったもん。
 声も同じ人だしさ。ねぇ?

 でもこのカップリング設定って機能がある以上、鈴花と山崎さんが結ばれる可能性もあるわけで、同一人物だと不都合な感じするよね。

 双子か??

 オカマの双子なのか??

 幕末のオスピーですか??

 鹿取はオカマじゃなくて、たまにキャラが変わるのは、入れ替わってるからとかだといいな。

 うう、気になっていきなり鹿取狙いでいっちゃいそう。
 

 気になってることもうひとつ。

 歴史をどのあたりまで取り上げるのか。今回の史実キャラは比較的明治まで生きてる人多いから、どこで落とすのかなって。

 中村ルートは、設定で西郷さんのこと大きく取り上げてるとこからして、西南戦争までいくと思うな。

 三木とか陸奥とか、謎。彼らの人生の山場ってどれなんだ??
 まあ、めでたしで終わるんだろうけど。

 今回エンディングで死にそうなのは、大石、中村、富山……根拠はないがなんとなく、庵? 笑。

 大石は私が殺す。爆。
 そういうエンディングじゃないと嫌です。

 刺し違えて心中、でもいいけど。

 是非安易なハッピーエンドには走らず、乙女ゲーム史上に残る暗黒ラブストーリーにして下さい。
  
 


 
 
 

 

 
 






 


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2007/08/12 (Sun)
 鼓膜を震わせる音。

 潮騒の、ざわめき。

「ここで会ったのも何かの縁だし……ねえ、ボクと心中してくれない?」

「なかなか過激な口説き台詞だな」

 誰もいない、白い砂浜。
「……そんなに、死にたいのか?」

 突拍子もない申し出を、彼女は真顔で受け止める。

「そうでもないけど、そろそろ死んでもいいかな、とは思うよ。
積極的に生きていこうって思うだけの目的とか、楽しみがあるわけじゃないからね」

「そうか。まあ、付き合ってやってもいいぞ」

「……え?」

 道端でナンパされたかのような軽い返答。

「いいの?」

「ああ」


 反対方向から続いてきた2つの足跡が、繋がったその瞬間から運命が巡り始めた。


「ただし私と賭けをして、お前が勝ったらな」













《第7章 秒読みを始めた世界 -knotty-》【3】











「……賭けをしよう、ってあの人は言ったんだ」

 相変わらず殺風景な部屋の真ん中で、三人は向き合って座っていた。

「賭け……?」

「この曲のベースパートを一週間で引きこなせたら……一緒に死んでもいい、って」

 頼りなく細い糸をたぐりよせるように、たどたどしく、けれど確信を持って万楼は語る。

「それがheliodorの曲……『Melting Snow』だったよ」

 一つの有力な可能性に過ぎなかったことを、真実だと裏付けたメロディ。

「ボクの出会った『万楼』は、やっぱり粋さんだった……」

 紅朱は目を伏せて、笑った。

「ああ……それは粋の得意な罠だ」

「罠、ですか?」

 二人の横で静かに話に耳を傾けていた日向子が思わず口を開いた。

「同じ手に引っ掛かった奴が一人いるからな」

 紅朱は思い出し笑いで小さく噴きながら補足する。

「今頃、気色の悪ィ営業スマイルで精出して働いてんだろ」

「有砂様ですか!?」

「……やっぱりお前も気色悪いと思ってたんだな?」

「そ、そのようなことは……」

「気にすんな。その感覚は正常だ」

 日向子はそれをどうしても強く否定出来なかった。

「それで、罠というのは……?」

 話題を元に戻すのがやっとだった。

「粋のベースには、中毒性がある」

 紅朱もそれ以上日向子をいじめるつもりはないようだった。

「言葉で説明するのは難しいが、粋の弾くベースの音自体がな、何か強烈な毒を含んでるんだ」

「うん……痺れるような甘い毒」

 万楼が大きく頷く。

「側で聞いてるとすごく気持ちよくなっちゃうんだ。一週間もずっと聞いてたら、もう抜け出せなくなってしまうほど」


 さながら、船乗りを海に誘い込む魔性のセイレーン。
 魅惑の音色は鼓膜から人々を酔わせ、意のままにする。


「有砂は賭けに負けたらheliodorのメンバーになる筈だった。
けど、あいつは賭けには勝ったが、結局heliodorのメンバーになった。
万楼もそうだったんだろう?」

 紅朱の問掛けに、万楼は苦笑で答えた。

「約束通り心中してやる、って言われたけど、ボクはそんなことより、もっとベースを教えてほしいって頼んだんだ。
……行くところがないなら、ボクの部屋で一緒に……暮らさないかって」

 それが始まり。

 一人の少年が、ベーシストとしての道を歩き始めたきっかけだったのだ。

「ようやく、そこまでは思い出せたんだ」

 万楼は少し興奮した様子だった。

「『Melting Snow』を練習してると、どんどん、思い出すんだ。
すぐに思い出すよ。万楼……粋さんがどこへ行ったのか、どんなふうに別れたのかも」

 日向子はそんな嬉しそうな万楼に一抹の不安を感じてしまった。

 ナイト・アクアリウムで万楼は少し気になることを口にしていた。

 あの人の手を離してしまった……確かそんなような言葉だった。

 普通の状態ではなかった万楼はあの場での自分の発言を曖昧にしか覚えていないようで、確認しても何のことだかわからなかった。

 あの人……それが誰のことかはわからない。

 だがそれが彼女なのだとしたら。

 きっとそこには何か……万楼を苦しめる真実が隠れている。

 万楼は記憶を取り戻したいとずっと願っていた。
 日向子もそれが一番いいことだと信じて見守ってきた。

 今もそれは変わらない。

 だが同時に言いようのない不安も感じてしまう。

 急速に解かれていく封印が、乾ききっていない傷口をも開いてはしまわないかと。

「万楼様」

 日向子は万楼を真っ直ぐに見つめて言った。

「……頑張って下さいませ。お役に立てることなどないかもしれませんけれど、何かありましたら、いつでもわたくしを呼んで下さい」

 万楼は微かに頬をピンク色に染める。

「うん……ありがとう」














 ほどなくして万楼の部屋を出た2人はすぐには帰らず、紅朱のバイクをそこに置いたままで、しばし冬空の下を散歩していた。

 日向子は写真を美々に返却するために待ち合わせをしているのだが、待ち合わせの約束の時間までまだ少し余裕があった。

 ひとりで暇を潰すつもりだったのだが、紅朱は紅朱でバイトの時間までに少し持て余した時間があると言う。

 それならば……ということで今しばらく付き合うこととなったのだ。

 あてもないゆったりとした散歩。白い息を吐きながら交すとりとめない会話の内容は、自然と粋と万楼のことになっていた。

「粋と万楼の音は本当によく似てる。足りないのは毒の量だけだ」

「毒の量……紅朱様は万楼様に粋様と同じように弾けるようになってほしいのですか?」

「いや、思わない。あれは真似して真似出来るもんじゃねェからな……。
むしろ俺は、そろそろ万楼は粋とは違う個性を身に付ける段階にきたと思ってる」

 紅朱の口調は力強い。

「以前の万楼はただ粋の身代わりなろうと必死だった。あの段階で粋の音を聞かせれば、それをただ模倣しようとあがくだけで終わった筈だ。
だが、今の万楼ならそれではダメだとわかるだろう。あいつは、粋に勝ってheliodorのベーシストの座を防衛しなきゃなんねェんだからな」

 言いきった紅朱の表情は、温かく、優しい。
 万楼へのリーダーとして、バンドの仲間としての愛情を感じとり、日向子の顔も自然と綻んだ。

「まさか、あの曲がきっかけで万楼の記憶があんなにするする戻り始めるとは思わなかったけどな」

 ふと流れてきた雲に太陽が遮られるようにして、紅朱の表情に翳りが浮かんだ。

「……俺は、今更粋と再会してどうしようってんだろうな」

「え……?」

「粋が消えた時、俺はもうバンドを辞める気でいた。粋のいないheliodorに未練はなかった。
それに……まるで、今まで自分がやってきたことを全部否定されたような気分だったんだよな。
そのクセ、いつか帰って来てくれるんじゃないかなんて甘い考えも捨てきれてなかった。
だがもうheliodorは新しく生まれ変わって、着々と前に進んでるじゃないか……今更粋と会ったって仕方ない」

 万楼には粋を見つけだして、勝つことでheliodorのベーシストでい続けたいという願いがある。

 紅朱にはかつてもう一度粋とバンドをやりたいという願いがあったのだろうが、今はもう万楼を仲間として認めているようだ。

 少なくとも日向子にはそう思えた。

「紅朱様……粋様に、会いたくないのですか?」

 紅朱は目を細め、自嘲的に笑う。

「再会したってまた傷付け合って終わるくらいなら、本当はもう会わないほうがいいのかもしれない」

「そんな……」

 胸が苦しくなる。

 昨夜の、電話ごしの震えた声が頭をよぎった。

「……紅朱様も、なのですか……?」

「ん?」

 日向子の言葉の意味はもちろん紅朱にはわからなかったが、思いは伝わる。

「だが……望もうが望むまいが、もう一度出会う運命なら、きっとまた出会う」

 革の黒い手袋をはめた右手が、日向子の頭の上にポン、と乗っかった。

「だからそんな顔すんなよ」


 気遣うような優しい声が、日向子の胸に染み込んでいく。 

「……はい、紅朱様」



 ちょうどその時、二人の横を一台、鮮やかな深紅のフェラーリが通り抜けた。

 それがすれ違う瞬間、ほんの一瞬スピードを緩めたことに二人は気が付くことはなかった。

 だがドライバーのほうはバックミラーを横目で、けれどしっかりと見つめ、小さく呟いた。



「水無子(ミナコ)……?
……なわけないか」













 一方その頃、『気色の悪い営業スマイルで精を出して働いて』いた有砂は、実際慣れない筋肉を酷使して顔面が筋肉痛を起こしそうな勢いで頑張っていた。

「……しんどい……」

 有砂自身可能な限りフロアには出たくないと思っているのだが、

「沢城さん、6番ご指名入りましたよ~」

「……ご指名、ってなんですか。いつからこの店はホストクラブに?」

「まあまあ、いいからいいから」

 有砂は客から掟破りの「ご指名」をされるほど予想外の大人気となっていた。

 おっとりしているが押しの強い店長や、ベテランの先輩店員に押しきられて有砂はフロア専門にさせられつつあった。

 時には「あれってheliodorの有砂じゃない??」といった小声の会話が耳に入ってくることもあったが、最終的には「ま、そんなわけないよね」で会話は終了してしまう。

 クールさが売りの有砂がまさかそんな……と思うのは無理もない話だ。

 結局今日もひたすら接客に明け暮れていた有砂だったが、


「いらっしゃいま……なんや、ジブンか」

 不意に作りかけた笑顔を打ち消す。

「お疲れ様です」

 玄鳥だった。

「何しに来たんや」

「俺はもともと常連です」

 確かにheliodorがここで頻繁にミーティングを行うようになる以前から、玄鳥はこの店をよく利用していた。
 だが、

「有砂さんこそ……何が目的ですか?」

 この警戒心に満ちた言葉は、どう考えてもただお茶を飲みに来ただけ、という雰囲気ではない。

「バイトの目的が金以外にあるか?」

「……本当のところを聞かせて下さい」

 玄鳥は悲愴なほど真面目な顔で問掛ける。

「有砂さんは……日向子さんのこと、どう思ってるんですか?」

 有砂は黙ってテーブルに水を置いた。

「……仕事中や。雑談は後にしてくれ」

「有砂さん……すいません、これだけは言わせて下さい。
……日向子さんのこと、気まぐれや遊びなら絶対にやめて下さい。
あの人を傷付けるようなことをしたら、俺は……許さない」

 真っ直ぐで熱い思いをストレートにぶつけてくる玄鳥は、まさに有砂とはあらゆる意味で対称的だ。

 だが有砂には何故か時々、そんな玄鳥を「懐かしい」と感じる瞬間がある。

 有砂が遠い過去に失ってしまったものを、そのまま心の真ん中に持ち続けて大人になったのが玄鳥……そして、日向子なのかもしれない。

 「純粋な情熱」は強く眩しく、そして……危ういものだ。

「どうなんですか!? 有砂さん」

 答えを聞くまで逃がさないとでも言うような玄鳥の斜め下から突き上げる眼差しに、有砂はゆっくり口を開いた。

「……オレは……」












 局地的に緊迫した雰囲気に包まれたカフェの入り口に、ロングブーツのヒールを鳴らして、近付く者がいた。

「日向子が来る前に……コーヒーを一杯飲むくらいの時間はあるよね……」

 腕時計を気にしながら、彼女はその扉に、手をかけた。
















《つづく》

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2007/08/11 (Sat)
 この秋のお楽しみ、「幕末恋華・花柳剣士伝」のキャストがついに発表!!

 サブからメインに出世した大石鍬次郎と中村半次郎は引き続き加藤木賢志さん、羽多野渉さん。

 二人ともまさか自分がヒロインと恋に落ちる側に回るとは思わなかっただろうね。寝耳に水だったに違いない。笑。


 ここ二人はかなり若手だけど、他は流石の顔触れ。ベテランと今をときめく人気者が大集合。

 庵→子安武人さん
 咲彦→宮野真守さん
 辰巳→諏訪部順一さん
 相馬肇→松風雅也さん
 三木三郎→吉野裕行さん
 陸奥陽之助→谷山紀章さん
 富山弥兵衛→高橋広樹さん
 鹿取菊千代→皆川純子さん(案の定)


 とまあ、なんかホスト部人口が多いなあ。笑。
 環、鏡夜(アニメ版の人もCDドラマ版の人も 笑)、蘭花、ボサノバくん……。

 更に前作から引き続き、置鮎さん、石田さん、小西さん、三木さん、森久保さん、中井さん、松野さん、櫻井さんといった神キャストが脇役として登場。

 この顔触れを脇役で使うなんて、なんて贅沢なのかしらっ。




 一人足りないような気がするのは、きっと気のせいです。





 欲ばって、前作のキャラを攻略対象にしたりせず、かといって切り捨てもしない……ベストなやり方だと思った。

 ネオロマともGSとも違う形で続編を作ったという点だけでも私は高く買う。


 今回の主題歌は誰が歌うんだろう。子安さんはイベントで唄わなそうだから違う気がする。
 宮野真守さんあたりかね。

 早くオープニングムービー見たいなあ。
 前作はオープニングムービー見て購入決めたから。

 唄ってる人はともかく、唄も好きだったしね。笑。

 期待していいかい? D3さん。

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2007/08/10 (Fri)
「万楼」

「何? リーダー」

 紅朱がようやくその話を切り出すことができたのは、帰り際のことだった。

 玄鳥の車で送ってもらおうと、乗り込みかけていたところを呼び止めて、紅朱は、

「受け取れ」

 万楼に向けて山なりに何かを投げてよこした。

「わっ、何?」

 両手でなんとかそれをキャッチする。

「……これ、MD?」

「その曲、やるから練習しとけ」

 万楼はラベルの文字をゆっくり読む。

「……『Melting snow』……」

 横で見ていた玄鳥が、はっとしたように紅朱を見た。

「兄貴、この曲は……」

「……綾、お前もギターのアレンジ、ちゃんと考えておけよ」

「……うん」

 真剣な顔をする二人を交互に見やりながら、万楼はただならない雰囲気を感じとっていた。

「『Melting snow』……この曲って……何?」












《第7章 秒読みを始めた世界 -knotty-》【2】










「……それで、今年は急遽、大晦日にカウントダウン・ワンマンライブを開催なさるのですって。今から本当に楽しみですわ」

 カフェでのミーティングで知らされた一ヶ月後の大きなイベント。

 冬休みまでの日数を指折り数える日向子は子どものように、そわそわしていた。

「ですから、大晦日は朝帰りになってしまいますけれど、お父様には内緒にしておいて頂けて?」

 運転席に向けてにこやかに微笑んだ。

 しかし。反応が、ない。

「……雪乃? 信号……青ですわよ?」

「……あ」

 思い出したようにアクセルを踏んで、再発進する。

「……失礼致しました」

「……雪乃、運転中に考え事というのはどうかと思いますわ。何か心配なことでも?」

「……いえ……大したことでは、ありません」

 言葉とは裏腹に、声音には全く覇気がない。

「……雪乃……」

 何があったのだろう。

 雪乃がこんなにもあからさまな動揺を見せるようなことがあったのだろうか。

「雪乃……わたくしでは頼りないかもしれませんけれど、気が向いたら何でも話してね」

 雪乃は何も、答えなかった。













 密閉型のイヤホンを耳に突っ込んで、万楼はシートに横になっていた。

 さながら胎児のように身体を丸めて、目を閉じて音に意識を集中する。


《温もりを拒んで進む
 万年雪の荒野では
 あらがうほどに凍てついて
 僕はもう
 目を開けられない》

 今より少し若い紅朱の声。

《絶望が
 孤独が
 虚偽が
 降り積もる街では
 月の光を憎んだ夜に
 爪先まで冷えて
 ひどく、痛んだ》

 今より少しだけ不安定な有砂のドラムに、今より少しおとなしい蝉の奏でるキーボード。

 だがギターは、玄鳥の音ではない……。

 そして。

《秘密と罪を抱えたまま
 旅を続けてきたけど
 ささやかなともしびは
 ここにあった
 こんな僕すら変えるだろうか
 唄う意味さえ変えるだろうか》

 じわりと、目尻からあふれた雫が、滴る。

 自分とよく似た、けれどずっと存在感とのある重低音。

《いつか解けていくよ
 哀しい夢も
 繰り返した過ちも
 愚かな執着も
 目覚めたら 冬が逝く
 微かな傷痕だけを残して》


「……あの人の、ベースだ……」

 息苦しい程に胸が詰まった。

「……万楼」

 労るような穏やかな声で、運転席から玄鳥が語りかける。

「その曲は、3年前に粋さんが作ったんだ……最後に、ね」

「最後に……?」

「一度もライブで演奏されることのなかった……幻の曲。もし演奏されていればheliodorの代表曲になったかもしれない曲だよ」

 伝説のベーシストが残した、幻の曲。

「……粋さんが戻るまで、封印される筈だった曲を、兄貴は唄うつもりなんだ。万楼のベースで……」

 とめどなく涙があふれてくる。

 涙の理由の半分は、自分は紅朱から本当に認められたのだという感激。

 もう半分は、この曲自体が持つ、引き裂かれるのではないかと思うほど心臓を締め付ける懐かしさ。

「……玄鳥……ボク、この曲聞くの……多分、初めてじゃ、ない」


 閉ざされていた扉が、軋んでいる。開かれようとしている。

 さながら耳に響くこのベースライン自体が、パスワードであるかのように。













 真夜中。
 就寝しようとしていた日向子の携帯が着信を知らせた。

 一瞬また万楼からのメールかと思ったが、それはメールではなく電話で、ディスプレイの名前も違っていた。

「お待たせ致しました、日向子です」

 電話の主は、ファーストネームで気がねなく名乗ることができる相手。

《ごめんね、まだ起きてた?》

「はい、大丈夫ですわ。美々お姉様」

《……そっか、ありがと。あのね、その、たいしたことじゃないんだけど……今日、あんたと別れる時にあたし、落し物……しなかったかなって》

「……写真、ですか?」

 日向子は慎重な声音で問い返した。

《……うん……日向子が、見つけてくれたんだ》

 美々の口調は写真があったことへの安堵と、それを日向子が見つけたということへの微かな動揺……相反する要素を含んでいるように思えた。

「……写真はわたくしが保管しておりますわ、ご安心下さいませ」

《……あたしに、何か聞きたいこと、あるんじゃないの……?》

「……え?」

《……聞いてもいいよ。そのかわり、あたしのお願いもひとつ聞いてくれるならね》

 美々の声は、震えているようだった。
 日向子は、答える。

「……ひとつだけ。
写真の女の子は……美々お姉さまですか?」

 思いつめたような吐息が生んだノイズが、携帯ごしに耳元を通り抜けた。

《……そうだよ》


 予想通りの答えだった。

 偶然にしては出来すぎている。

 だがこれは、偶然ではない。

 あんなにもheliodorに詳しかった美々が、どうしてもheliodorの直接取材を引き受けられなかったその理由がようやくわかった。

 美々はずっとheliodorを見守ってきたのだ。

 けっして気が付かれることのないように、ひっそりと。

 そして自分には出来ないことを日向子に託した。

「……美々お姉さまが……有砂様の」

《日向子》

 まるで咎めるかのような強い口調で、美々は日向子を制した。

《約束だから、あたしのお願い、聞いてくれるよね》

「はい……」


 美々はきっぱりと言い放った。


《余計なことは、絶対しないで》


「美々お姉さま……」

 かつて美々の口から聞いたこともなかった、突き刺さるような冷たい声。

 それは出会ったばかりの頃の有砂を思わせた。


 やはり二人はどこか似ているのだろう。双子の兄妹なのだから。


「……お二人に家族として再会してほしいと願うことは、余計なことですか?」

《……やめて。会いたくなんかないの》

「美々お姉さま……」

《わかって、日向子。あんたのこと、親友と見込んで頼んでるんだよ》

 親友……憧れの先輩からそう呼ばれたことを、嬉しく思わないわけではない。

 しかし日向子はいたたまれず、泣きたいような気持ちでいっぱいだった。

 古い写真の中の無垢な眩しい笑顔、二つ。

 皮肉な運命に引き裂かれてしまっただけだ。

 二人の心と身体に残った傷がどれだけ深いとしても、こんなにも強く結び合っていた絆が、元に戻れないなどということがあるだろうか。

 きっかけさえあれば、きっと……日向子はそう純粋に信じていた。

 それでも。


「……わかりましたわ」

 そのきっかけを本人が望まないというなら、今の日向子にはどうすることもできない。












「余計なお世話かもしれんけど……それは、醤油やで」

「……え。あれ」

 蝉は今自分がグラスに注ごうとしているものをまじまじと見つめた。

「……どうやったら水と醤油を見間違えられるんや。寝惚けとんか?」

 呆れた顔で、ダイニングを通過しようとする有砂を、

「……よっちん」

 蝉は思わず呼び止めた。

「……なんや」

 面倒臭そうに立ち止まった有砂を見つめて、蝉は黙った。

「……はよ言え」

 こんなことを相談出来る相手は、有砂しかいない。

 秘密を知っているのは有砂だけだし、このことは有砂自身にも深く関わることだ。

「……えっと、あのさ……その……」

 どう切り出していいのかわからない。
 
 頭の中で、昼間つきつけられたうづみの言葉が反響している。



「年が明けたらすぐに入籍するの……沢城秀人と。離婚してから半年は籍を入れられないらしくて、随分待たされたけどね。
これでスノウ・ドームを立て直すことが出来るわ。

ようやく、私がゼン兄を自由にしてあげられるの」



 どうしてもっと早く気付かなかったのか。

 思えば随分前からうづみの様子はずっとおかしかったのに。

 自分のことにばかり夢中になっていて思いやることができなかった。

 自分がいつまでも正式な釘宮の後継者になれないばかりにうづみが犠牲になる。

 うづみに……大事な幼馴染みに身売りのような真似をさせてまでバンドを続けるというのか?

 うづみはそうしろと言う。

 蝉がバンドを辞めずに済むなら、それ以上は何もいらないと。



「いいの……だって、私はゼン兄を愛してるから。ゼン兄が幸せになってくれればそれでいいの」



 あまりにも残酷なタイミングで告げられた、一途な想い。

 もう蝉には自分がどうしたいのか、どうしたらいいのかわからなくなってしまっていた。

「……蝉?」

「よっちん……あの」

「……バイトのことやったら、ジブンに非難される謂われはないで」

「え」

「……どこで働こうとオレの自由やろ」

 さっぱり本題とは関係ない話題を不意に出されて、蝉はタイミングを見失ってしまった。

「……やだな、十数年来の親友がやっと社会復帰できたのに非難なんかするワケないじゃん」

 誰に強制されているわけでもないのに明るく振る舞ってしまう。

「しかも動機が、気になるオンナのコがよく利用するお店で働きたいから……なんてそんな純情な高校生みたいな」

「醤油飲み干して死ね」

「幼稚園レベルの愛情表現しかできなかったよっちんが、いっきに高校生レベルまで飛び級なんておれ感動して泣いちゃいそー」

「……そうか。自殺志願なんやな」

 有砂が死ねの殺すのと言い出す時は、あながち否定できない部分を突かれて反論の言葉が浮かばない時なのだと、蝉はとっくに見抜いている。

 そんなことがわからないほど浅い付き合いではない。

「……マジでさ……心配、してないよ」

 蝉は苦笑する。

「よっちんはもう平気じゃん。おれがお節介やく必要ない……」

「蝉……?」

 有砂のほうも蝉の様子が何か普通でないことは感じとれたようだった。

「……もし、さ。マジで、もしもの話だよ?
……おれがもうあの子の側にいられなくなっちゃったらさ……」

 思い詰めた言葉が、あふれ出す。

「……よっちんが、守ってあげてくれる?」

 有砂は一瞬切長の目を見開き、蝉を凝視したが、ほとんど間を空けずにきっぱり答えた。


「断る」

「え……?」

 まさかこんなにはっきり拒否されるとは。

 あっけにとられている蝉に、有砂は呆れ顔で溜め息をもらした。

「……やっぱり寝惚けてるやろ。アホなことゆうてんとはよ水飲んで寝てまえ」

「……あ、うん」

 ダイニングを出て行く有砂を見送って、蝉もまた溜め息をついた。



「……大丈夫だって言ってよ……おれが、いなくなっても……」















《つづく》

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2007/08/08 (Wed)
「ついに買ったの?」

「うん」

 白いボディの最新型携帯を両手で包むようにして、不慣れな手付きでぴこぴことキーを押しながら、万楼は上機嫌な笑みを浮かべている。

「……で、早速誰にメールしてるんだ?」

 問いながらも、玄鳥はそれが愚問だと知っていた。

 連絡がとりにくくて不便だから携帯を持てとみんなで再三説得したにも関わらず、必要性を認識していなかった万楼が自主的に携帯を買ったのだ。

 それは、彼に「繋がりたい」相手が出来たからに相違ない。

「送信、完了っと」

 万楼は満面の笑みで玄鳥に買ったばかりの携帯を見せた。

 メッセージが消えて待受に戻ったディスプレイには、二人で顔を寄せて撮った、まるでカップルのような万楼と日向子の写真。

「お前っ……こんな写真いつ?」

「えへへ」

「えへへ、じゃない!」

 わかりやすく動揺する玄鳥に、万楼は追い討ちをかけるかのように告げた。

「今のはね、またデートしようね、っていうメールだよ」












《第7章 秒読みを始めた世界 -knotty-》【1】








「なんかさっきから30分おきくらいにメール来てない?」

「万楼様は新しい携帯をお持ちになったばかりで、誰かにメールしたくて仕方がないのですわ、きっと」

 別に不慣れということもないのに、緩慢な仕草で返信メールを作成する日向子を、美々は苦笑して見守る。

「けどさ、ほとんど付き合いたてのカップルみたいじゃない? ……いっそ、本当に付き合っちゃったらどう?」

 日向子の脳裏にちらっと、夜の水族館でのことがよぎった。

 あの時の頬の感触……あれは多分……。

 キス。

 そのことを思い出す度に日向子は頭の中で「万楼様は帰国子女・万楼様は帰国子女・万楼様は帰国子女……」と唱えることにしていた。

 きっと頬にキスするくらいは万楼にとっては挨拶程度のものなんだろうという解釈をすることにしたのだ。

 この時も日向子が沈黙したのはお題目を唱えるためだったのだが、美々はそれを少し違う意味で受け取った。

「……日向子は、やっぱり伯爵様じゃなきゃ嫌なの? もったいないよ。あんた、可愛いんだから……その気になればいくらでもイイオトコ捕まえられるのに」

「……美々お姉さまは、どうですの?」

「え?」

 なんとか送信を完了した携帯を閉じて、日向子は美々を振り返る。

「美々お姉さまこそ、殿方とはお付き合いなさらないのですか?」

 美々は一瞬虚をつかれたような顔をしたが、すぐに笑ってみせる。

「別に、今は仕事が楽しいから必要ないよ。結婚願望とかって全っ然ないしね……」

 美々は同性の日向子の目から見てもかなりの美人で、背丈もすらりとしていて細いのに出るところはしっかり出たモデル体型。
 性格も明るくて社交的、面倒見のいい性格だから、年上からも年下からも極めて男性受けはいい。
 それなのに一切特定の恋人を作ろうとはしない。
 挙句に、

「まあ、もしあたしが男だったら、日向子にプロポーズするところだけどね~」

「お姉さまったら……」

 この日向子溺愛っぷりのせいで、定期的にレスビアン疑惑が浮上してしまう有り様だ。

「あ、いけない……そろそろ先方と打ち合わせの時間だ。ごめんね、今日はお茶付き合えなくて」

「いいえ、お仕事頑張ってくださいませ」

 バッグを左手、右手に大量の資料や書類のようなものを抱えて、「じゃあね」と小走りで美々はデスクを後にした。

 その慌ただしい後ろ姿を見送った後、日向子は何気無く今まで美々がいたデスクのほうを見やった。

「あら……」

 デスクのすぐ下の床に何かが落ちている。
 
 美々が今落として行ったのだろうか?

 日向子は少し屈んで、それを拾い上げた。

 拾い上げてみるとそれは、一枚の写真だった。

「……?」

 日向子は写真を見つめながら首を傾げた。

 写真に写っているのは、子どもだった。
 3つか4つくらいの女の子と男の子で、まるでアンティークドールのようなゴシック調の黒い服で、もし姿勢を正して並んで座っていたなら本当に人形と間違えてしまいそうなふうだ。

 しかし写真では、ちょこんと座っている女の子を男の子が縫いぐるみを抱くようにぎゅっと抱き締めていて、二人ともこの上なく活き活きとした笑顔だった。

 なんとも微笑ましい写真ではあるのだが、日向子は思わず凝視してしまっていた。

 写真は昨日今日撮られたものではなく、何年も昔に撮られたような年季を経て色褪せたものであるのに、日向子はかなり最近、この男の子を見ている。

「……菊人、ちゃん?」

 もちろん、似ているがそうではないのだろう。

 菊人でないとするならば、これは……。

「有砂様……?」

 もちろんそうと決まったわけではない。
 しかし、日向子は微かに胸騒ぎを感じた。

 明日、この写真が美々のものなのか、どこで入手したのかを聞いてみなくては……。

 もしこれが有砂の写真なら、一緒に写っているのは……。












「なんだよ、今日も蝉と有砂は遅刻か?」

 紅朱がやって来た時、いつものカフェのいつもの席には、玄鳥と万楼だけが対面に座っていた。

「いや、二人とも今日は来れないみたいだけど……」

「蝉はいつも通りだし、有砂は新しいバイトを始めたばかりだから大変らしいよ~」

「……それ、ミーティング中はしまっとけよ?」

「は~い」

 作成中のメールを保存して、大切そうに携帯をポケットにしまう万楼を見て、紅朱は何故か安堵していた。

 ずっとあのポケットの中には、錆びて重く沈黙した壊れた携帯電話が入っていたのを紅朱は知っている。

 恐らくはたった一人、過去に万楼が「繋がりたい」と願った人物のために持っていた携帯電話。

 けしてもう繋がらない電話を持ち歩くことで、万楼を自分を過去から逃げられないように戒めようとしていたのではないか?

 けれど壊れた携帯は所詮、もうどこにも繋がることはない。

 過去にだって、もう繋がらない。

 止まっていた時間が動き出した今なら……次の段階に進んでもいいのかもしれない。

 紅朱は静かな決意を秘めて席に着いた。

「ちょっとジェラシーだなあ」

「あ?」

 すぐにそんなシリアスな心情は吹っ飛んでしまう。

 当の万楼のおかげで。

「リーダーって必ず、こういう時は玄鳥の横に座るよね」

「は? 別に意識してそうしてるわけじゃねェよ」

「無意識なあたりが更にジェラシーだなあ」

 確かに紅朱は今何も考えず、自然に玄鳥の横に座った。
 理由は別にない。

「ジェラシーってなんだ、気持ち悪ィな」

「まったくだよ、変なこと言わないでくれ」

 呆れ顔の二人が面白かったのか、万楼は楽しそうに笑う。

「リーダーはやっぱり玄鳥が大好きなんだね」

「まだ言うか……」

「兄貴、こいつは今ちょっと変なテンションだから言っても無駄な気がする」

 紅朱は溜め息をついた。
 折角真面目な話をしようと思っていたのに、どう空気を戻せばいいのやら、という感じだ。

 おまけにこのタイミングで、


「まあ、皆様おはようございます」


 ひょっこりと日向子が現れてしまった。

「ミーティングをなさっているのですか?」

 もちろんここは日向子の行き付けの店でもあるのだから、この時間帯なら偶然の鉢合わせは十分考えられることではあったが。

「お姉さん一人なの? 一緒に座ろうよ。席なら空いてるよ」

 万楼はいきなり目を輝かせて、唯一の空席……つまりは自分の横を示す。

「あ、お前っ」

 玄鳥が反射的に身を乗り出す。

「えへへ」

「……」

「……なんで俺を睨むんだ、綾」

「……いや、別に」

 紅朱には窓側に対面で座った二人の間に漂う緊張感や、飛び散る見えない火花が全く察知できていなかった。

 察知できていないのは日向子も同じだったが。


「見て見て、お姉さん。期間限定の新作ケーキがあるんだよ? パイ生地ベースなんだけどね~」

「まあ、美味しそうですわ……」

 メニューを広げて、二人で肩を寄せ合うようにして覗き込む。

 万楼の、人に警戒心を与えることなく距離を縮めるテクニックは最早天性の才能だった。

「……だからなんで俺を恨みがましい目で見るんだ、綾」

「……気のせいだよ」

 すでに十分におかしな空気に包まれたこのテーブルではあったが、今日はこれで終わりではなかった。

 まあ、重なる時は重なるものである。


「……いらっしゃいませ」


 シックな黒のソムリエエプロンをまとった男性店員が、日向子の席に静かに水の入ったグラスを置いた。

「ありがとうございます、あの、オーダーをお願いしま……」


 振り返った状態のまま日向子は固まった。

 そして他三人も見事なくらいカチンカチンに固まってしまっていた。

「あ、あの……」

「な、なんで?」

「……まさか」


「……何やってんだ? お前」



「……ご注文、お決まりでしたら承りますが?」

 四人のよく知っている長身の愛想のない関西弁の男が、嫌味なほどスマートに制服とソムリエエプロンを着こなして、片手に正式名称をハンディターミナルという、お馴染の注文端末、もう一方にはトレイを持って立っていた。

「有砂様……ですわね?」

「……見ればわかるやろ」

 日向子の問掛けに平然と答えるさまは全くいつもの有砂だった。

「有砂さんの新しいバイト先……ってここなんですか?」

「それならそうとボクたちにも言っておいてくれればいいのに」

「よく採用されたな、本当にお前に接客業なんて出来るのか?」

 物珍しそうにしげしげと見つめながらめいめいに口を開くメンバーたちをうるさそうに見やって、

「……注文は?」

 かったるそうに再度促した。

 四人はなんとなく顔を見合わせて、それから、コーラ、カフェオレ、メロンソーダ、紅茶……といういつも通りの飲み物に、限定のフルーツケーキを2つオーダーした。
 有砂は、

「ご注文を繰り返します」

 と、マニュアル通りにオーダーをリピートする。

「……以上でよろしいですか?」

 リピートし終わると、日向子が代表するように、

「はい、結構ですわ」

 と答えた。

「かしこまりました」

 有砂はトレイを持った手を前に持って来て、流れるような身のこなしで一礼すると、


「ごゆっくり、どうぞ」


 にこっ、と日向子に向かって思いきり微笑んだ。

「えっ」

 あまりにも見慣れないものを目の当たりにしてしまった日向子もびっくりしたが、メンバーたちは数珠繋ぎの悲惨な玉突き事故でも目撃したかのような顔で有砂をぽかん、と見ていた。

 有砂はすぐに奇跡の極上スマイルを打ち消して、ふん、と鼻先で笑ってテーブルから離れて行った。

 後に残された四人は、有砂のほうをチラチラ見ながら何か色々言い合って騒いでいる。

「……そんなに驚くことでもないやろ」

 有砂はそんな彼ら……とりわけ、神妙な顔をした日向子を遠目に見ながら、小さく呟く。

「……あのアホに出来ることが、オレに出来ないとでも……?」












「へっくしゅん……!!」

「ゼン兄、風邪?」

「いや、そんなことないんだケド……」

「気をつけてね、最近冷え込むから」

「うん、そーだね……で、さ。何? 大事な話って」

 まだ昼間だというのに、二人が同時に黙ると、壁時計が秒針を打つのが聞こえるほど、「園長室」はいやに静かだった。

「……うづみ、ちゃん?」

 嵐の前というのは、本当に静かなものなんだとこの後蝉は思い知ることとなる。


「ゼン兄……私……結婚、するの」













《つづく》

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2007/08/07 (Tue)
 「魔法使いとご主人様」二人目、ミラー・フェルナンデス攻略。

 アリシアの相手はもうセラスしかいないだろう! と思っていたけど流石、ミラーのシナリオもよくできておりました。

 ミラーはアリシアの幼馴染みで伯爵家の次男。
 幼少の頃、お約束(笑)の結婚の誓いを交した相手。
 それも覗き見したアリシアの両親のディープキスを見よう見まねで実践しながら誓った相手という……最近のちみっ子は進んでるなあ。笑。

 伯爵家程度の家柄じゃ、王族の嫁ぎ先にはふさわしくないと知りながら、約束するところがせつないよね。

 大人になるにつれてどんどん疎遠になって(させられて)、しまいにはミラーが何の相談もなく全寮制のシンフォニアに進学してしまったことでアリシアはちょっとやさぐれてしまい、顔を会わせても喧嘩ばかりという状態になってしまっている。

 ミラーはミラーで、自力でプリンセスにふさわしい男になるべく魔法の最高学府で学びながら、掟に従ってアリシアがやってくるのを待っていた。
 アリシアは自分のことなんて、歯牙にもかけてないと思い込んでいるので、こちらもやさぐれモード。

 セラスが自分より先にアリシアと出会ったミラーが許せないと言っていたけど、確かに卑怯な設定だな。笑。


 なんといってもエンディング直前の恋愛イベントがよかったね~。

 セラスの時も微エロだったけど、ミラーときたらいきなり森の中でアリシアを押し倒す。
 その時のこの台詞。

「それともこんなことはもうあの召し使い(=セラス)にされなれてるのか?」

 うちの子はそんなことしませんよ……!!

 しかし流石はアリシア、この危機を蹴りを三発入れて脱します。

 一発でいい筈なのに三発入れちゃうところがアリシア様だよな。笑。


 最後の最後にこんなことをやらかしちゃったので、従者決定の朝には完全に諦めていたミラーは、アリシアを見るなり「従者決定の報告に来たのか?」。

 「ええ、そうなるわ」なんて答えるアリシアの意地悪っぷり。

 ミラー苦しんでいる顔がとても綺麗だから、いじめたくて仕方ない……というトンデモなサドヒロインなんでね。

 しかも、

「従者になれば朝も昼も一緒なのよ……朝も昼も、夜もね……」

 ってミラーの身体(腰やら背中やら)を撫で回しながら口説くのよ、この子!

 君は本当に乙女ゲームのヒロインか? 爆。


 そしてどうやら両思いらしいと判明した時のミラーのこの発言。

「君はあの頭のおかしいトカゲが好きなんだと思ってたよ」




 トゲ~




 ノンノンノン、セラスは頭はおかしいけどトカゲではないぞ(頭がおかしいのは否定しない人)。

 セラスとミラーは昔からお互いの気持ちを悟っていて、牽制し合っていたのにアリシアは全然気付いてなかった模様。

 そして、晴れてミラーが従者となって結ばれて、アリシアが領主になるんだけど……セラスは使い魔だからアリシアの側にい続けるのよね。

 なんとエンディングになってもアリシアを挟んで、「薄汚い使い魔」「たかが従者の分際で」と二人でひたすら大喧嘩。

 両思いになったのに三角関係が継続するゲームってだけでもすごいけど、こっからいきなりアダルト展開。

「お前が近付くとご主人様が汚れる!」とセラスに言われたミラーのこの台詞。

「毎晩僕は彼女を汚しているよ……君のご主人様はいつも実に綺麗ないい声でないてくれるよ」


 この台詞を聞いたアリシアはミラーの首を絞めながら連行して飴と鞭でしっかりお仕置きした後、ベッドに押し倒して……ストレス発散。笑。


 肌の艶もいいし、ぐったりしているミラーも可愛いし……ってどんなモノローグだよ。

 しかもセラスはミラーに同情してちょっと喧嘩が減ったらしい。



 実はセラスのエンディングも非常にエロかったんだけど、なんかもうこのゲームは微エロ通り越して下ネタじゃねぇかと思わないでもない。笑。

 基本的にアリシアがかなりの好きモノっぽいんで、セラスの時なんか「セラスはあれで夜は結構……」だの「父上は在位中に孫の顔が見れるかも」とかほざいてるし。

 PCとはいえ全年齢だし、「乙女」ゲームなのに、重ね重ねすごいよなあ、アリシア……。

 間違っても感情移入できるタイプじゃないんだけど、キャラクターとしては非常に好きだ。

 次は執務長さんかな~。

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2007/08/05 (Sun)
 毎度でございます。第6章も最後までお付き合い頂きまして、大感謝っす。

 今回は間章のような位置付けで、あんまり物語自体は進展していないものの、前半の出来事を踏襲しながら、後半の前ふり?をしている感じ。

 程度や表現は違うけど、それぞれが日向子を「好き」なんだということ、日向子自身も変化を迎えつつあることを強調したエピソードでもあり、たんにまた麻咲が自分の萌を追求したエピソードでもあるという。笑。


 【1】で出てきたナイトアクアリウムっていうのは、池袋のサンシャイン国際水族館で本当にやってる催しもので、なんのことはない、私が行ってみたいの! 爆。
 光る珊瑚とか綺麗だろうなぁ。

 それとコートのポケットに繋いだ手を突っ込む……という描写は有川譲のキャラソン「憧憬のプリズムは七色」から。
 向こうは、手袋をなくしちゃったから、ってポケットの中に手を突っ込んできた望美(悪気なし)に、譲があわあわするんだけど。笑。

 最後の万楼の台詞は、CSで絶賛放映中、私の大好きなアニメ「少女革命ウテナ」の最終回(これより感動した最終回はちょっと思いつかない)の台詞「だから、君とボクの出会う、この世界を恐れないで」を意識してみたり。

 今回は自分の萌を追求しただけあって出典のあるネタが多いな。笑。


 さて【2】、今回はちみっ子が出てきたけど、日向子が二児の母みたいに思えて仕方なかったさ。笑。
 他の人にはそこまでじゃないんだけど、日向子は有砂と絡むと本当、お説教ばっかりしてるから。汗。
 途中で日向子にしてはちょっと意地悪な発言をしたりもしてるんで、彼女は多分有砂のことを「可愛い」と思ってるんでしょうね。
 だから無意識に「お母さん」的になってしまうのでは。笑。

 とはいえ冒頭の発言は素です。
 ちなみに菊人は四才、有砂が薔子と関係を持ち始めたのは早くとも三年前な筈なので、有砂は「光源氏」ではありません。爆。
 いや、念のため。

 菊人は後半にもまだまだ出番があるんだけど、この子は基本的には有砂のミニバージョンなので、有砂と思考パターンが一緒。

 基本的に大人のお姉さんを見つけたらひっついて甘えてみます。
 が、日向子に対して何か特別な意識が芽生えてしまったので、逆に甘え方が不器用になってしまう。
 大人二人でなんか難しい話をしていて放置されていたので関心を引こうと悪戯して、日向子が気持ちよくリアクションしてくれたので満足して寝ちゃった……という。

 四才児と同じことしてりゃ、そりゃ子供扱いされるだろうよ。爆。


 【3】は、雪乃ではなく蝉を日向子に売り込むことを目標に書いたエピソード。
 私はこの、正装で、パーティーで、ダンスというベタなシュチュエーションがマジで大好きなのだよ。大好物!

 部屋に、神同人絵描きさんにオーダーして描いてもらった、チャーリーさんとロザリア様のダンスのイラストを飾ってるくらいなんで。

 え、組み合わせが謎だって? 本編でありえねーから描いてもらったんじゃないか。笑。

 乙女ゲームではリアル、ファンタジーに関わらず頻繁にダンスの場面が登場するから、まあマジョリティだとは思うけどね。

 そして、定番?ロミオとジュリエット。

 蝉(と万楼)は行動がとにかく積極的で自主的に動いてくれるし、柔軟で間口が広いからすげーありがたいのよ。

 
 【4】は新潟日帰り里帰り? ちなみに、今回出てきた「恋人岬」とは柏崎の観光名所で、浅川兄弟の実家はお隣の上越市を想定してる。

 海も山も近いってこと以外、上越市であることに深い意味はないんだけど、あえて柏崎を出したのは、先の震災の追悼と復興へのエールを込めて。
 
 今回は玄鳥にしてはちょっと大胆な行動に出てるんだけど、それは前回兄に認められたことで少し自分に自信をつけたからと思われる。

 万楼の宣戦布告で少し焦っている感もあるし。

 しかしどんだけ有名になってんだheliodor。笑。

 多分何人かは「誰かわかんないけど有名人らしい!」ってことでわけもわからず寄ってきてるんだよ。笑。


 【5】は再び登場・杉屋。笑。
 他のメンバーのようなはっきりした特殊シチュエーションではなくて、あえて日常的な雰囲気を出してみた。

 相変わらず色気のない紅朱だけど、珍しく日向子の感情の機微を察している。

 それは多分、紅朱なりに日向子のことを気にしてるからなんだろうね。

 なんせ彼の場合、自分の気持を自覚するのに一番時間がかかりそうだけど。


 はたして日向子は「好き」という単語から一体誰を連想したのか。

 あなたは誰だったらいいと思います? 笑。

 私は自分の本命は有砂だけど(爆)、日向子が、って考えると玄鳥か蝉がいいのかなあって……思わないでもない。

 やっぱり健気さんには弱いのよね~。
 




 次の章から後半戦、前半は1話完結っぽかったけど、今度はいきなり3つくらいの事件が同時進行する予定なんで、私自身混乱しないようにしっかりプロットを作成してます。

 しばらく胃の痛くなるような展開が続くので、覚悟して下さいな。笑。

 それではご意見ご感想お待ちしてま~す☆

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2007/08/04 (Sat)
「……プロポーズを、なさったのですか?」

「ああ。本気でな」

 紅朱はいたって真面目な顔で語る。

「俺は綾の父親になるつもりだった」

 幼く淡い恋の記憶を辿る紅朱はそれを恥じらうどころか、誇らしげにすら見える。

「叔母様は、何と?」

 日向子もそんな紅朱をもちろん嘲笑ったりしなかった。

「フラれた」

「まあ」

「幼稚園バッグ引っ掛けたガキに面と向かって、『年下には興味がないの。ごめんね』だってよ」

 まるで今しがたの出来事を語るかのように不機嫌そうに口をへの字に曲げる紅朱に、日向子は微笑する。

「叔母様は……紅朱様を子供扱いなさらなかったのですね?」

 紅朱もそれに、小さく笑った。

「そうだな。あの人はいつだって俺を一人の人間として扱ってくれた。
……もっとも、俺はやっぱりガキでしかなかったがな」












《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【5】











「紅朱、様……?」

 意味深な言葉の意味を問おうとした日向子に、紅朱は笑って、おもむろに割箸を差し出した。

「……冷めるぞ、とりあえず食え」

「あ、はい。頂きますわ」

 二人の前には少し前に運ばれてきたばかりの杉屋謹製牛丼とみそ汁、それにサラダがある。

 ランチタイムを少し外した中途半端な時間のせいで、杉屋店内は比較的閑散としている。

 向かい合ってもくもくと牛丼を食べるこの二人連れは、通りかかる度に店員にチラ見されている。

 日向子は相変わらずこういった店が全く似合わないし、連れている男も相当ミスマッチである。

 間違いなく、異色なのだ。


 さながら月と太陽が同じ空で輝くような。



 当の二人はそんなことを気にする様子もなかったが。

「たまごと絡めるとお味がまろやかになりますわね」

「うまいか?」

「はい、とっても」

「そうか。よかったな」


 何とも和やかな空気をかもし出しながら、楽しそうに食事している。


「ところでお前は東京生まれの東京育ちなのか?」

 お茶を呑みながら、ふと思い出したように紅朱が口を開いた。

「はい、そうですの。お母様は北海道の生まれですけれど」

「ふーん、オヤジさんとどうやって出会ったんだ? やっぱり親の決めた相手同士だったり、見合いとかか?」

「知り合ったのは病院ですわ」

「……病院?」

「お母様は看護婦でしたのよ。お父様が胃を患って入院した時に出会ったと聞きました」

 紅朱は箸を止めて日向子を見やった。

「……もしかして病院ってのは、あの病院か?」

「はい。我が家のかかりつけの病院のことですわ」

 紅朱にとっても、つい先日運びこまれたばかりの記憶も新しいあの病院。

「……もしかしてお前のおふくろさんて、普通の家の生まれだったりするか?」

「はい。お母様の実家は由緒ある家柄でもなければ、資産家でもありませんわ」

 日向子は、紅朱が驚いた顔をするのも無理はないと思った。
 日向子の話を聞いていれば、その父親は家柄や世間体を何より気にする厳格な人物というイメージを抱かざるをえない。
 そしてそれは実際その通りなのだった。

「お母様が亡くなってからというもの、お父様は口酸っぱくおっしゃるようになりましたわ……人にはそれぞれ生きるべき世界があると。
生きるべき世界からはみだすと人は必ず不幸になると……。
お母様は、家の名に恥じない妻になろうと気を張りすぎて寿命を縮めたと思っていらっしゃるのかしら……」

 平凡な家庭で生まれ育った女性が、名家……とりわけ釘宮のような特殊な家で生きていくのは、けして楽なことではなかっただろう。
 若さと、抑えきれない想いにつき動かされて、周囲の反対を押し切って結婚した結果が、最愛の人に死に至るほどの苦労を背負わせることになったのだとしたら……父が深く後悔するのは無理もないことだ。

「……だからオヤジさんはお前がマスコミみたいな特殊な仕事についたり、俺たちみたいな連中と関わるのが面白くねェんだな」

「ええ……そうかもしれません」

 娘を不幸にさせないためにあらゆる災いの種を遠ざけ、排除する。

 いばら姫を呪いから守るために国中の糸車を燃やしてしまった王様のように。

「お前が時々変にお嬢様らしからぬ言動をとる理由はよくわかった」

 紅朱は苦笑し、けれどすぐに真顔になった。

「……人にはそれぞれ生きるべき世界があるって意見は俺も賛成だな。そこからはみだすと不幸になるってのもわからなくはない。
……だがその世界、ってのは血筋や家柄で決まるもんじゃねェよ。生まれた瞬間から運命が決まるなんて俺は信じねェからな……だってガキは親を選べねェだろ?」

 日向子は頷いた。
 万楼や有砂のように親の都合に振り回されて苦労する者がいれば、玄鳥や蝉のようにあっけなく家族を失ってしまう者もいる。

 とても理不尽な不幸を意思に関係なく背負わされる。

「生きるべき世界ってのは、生まれとは関係なく、生きながら自分で見付けるもんだと俺は思う。
より自分らしく、より気持ちよく生きることができる世界……俺にとってはheliodorだけどな」

 日向子はまた頷いた。紅朱は満足そうに笑う。

「今heliodorを手放せば間違いなく俺は不幸になるだろうしな」

 日向子には紅朱の語る「世界」に純粋に共感することができた。

 「生きるべき世界で生きる」、それはその人のけして譲れない、大切な、心の真ん中にあるもを守って生きること。

 それは簡単なようで難しいこと。

「メンバーも、ライブに来るファンもそれぞれが違う生きるべき世界を持ってるのかもしれねェが、少なくともheliodorの音楽を共有している間はな……繋がって、ひとつになる。
その瞬間の快感は半端ねェよな」

 日向子は更にまた頷いた。

 その感覚は、初めてheliodorと出会ったあの時から何度も感じてきた。

 紅朱はいつの間にか空になった丼の縁に割箸を置きながら、日向子を見つめる。

「heliodorが好きか? 日向子」

「もちろんですわ」

「なら大丈夫だ……俺とお前の世界はちゃんと繋がってる」

 heliodor……熱狂と歓喜、そして燃え盛る情熱と温かい想いを抱いた太陽の国。

 二人の世界が交わる場所。


「わたくしにとって、heliodorはいつの間にか本当にかけがえのないものになってしまいましたわ」


 今まで高山獅貴……伯爵への憧れだけが日向子の世界の中心だった。

 伯爵にいつか食べてもらいたくて料理を練習し、伯爵を想う故に他の男性に興味を持つこともなく、伯爵のもとにたどり着くために父親と対立してまで音楽雑誌の記者を志し、伯爵と少しでも関係のあるものは何でも手を出し、ただ伯爵と再び出会うことだけを目的に生きてきたようなものだったのに。

 今はもうそれだけではない。

「わたくしは記者を志してよかったと心より思いますわ」

 紅朱はそんな日向子を、色素の薄い瞳で優しく見つめる。

「……確かにお前の記事は読んでるほうが恥ずかしくなるほど愛に満ちてるよな」

「まあ……お読み頂いてるのですか?」

「そりゃ読んでるさ、全員な」

 日向子があまり大袈裟に驚いたので、紅朱はいかにも愉快そうに声をたてて笑った。

「いい加減しっかり自覚しろよ……俺たちはみんなお前が好きなんだ」

「好き……ですか」

「……あ」

 大して深く意味もなく発した言葉を反芻されて、紅朱は今更のように、

「いや、好き……ってのは、変な意味じゃねェけど」

 慌てて注釈する。

 だがそのことがかえって日向子に「好き」という言葉を意識させた。

「……」

「おい、お前なんで無言で頬染めてんだよ」

「……え」

 日向子は自分の頬に思わず手を当てた。

 確かになんだか体温が少し上がった気がする。

 温かいお味噌汁や、牛丼に振掛けた七味のせいではなく……。

 紅朱は、何故かぼーっとしてしまっている日向子をじっと凝視した。


「……お前、まさかうちのメンバーの中に誰か気になる奴がいるのか?」


 いきなりストレートにぶつけられた質問に、日向子はとっさに答えることができず、混乱してしまっていた。

 その沈黙をどう受け止めたのか、紅朱はぐっと身を乗り出した。

「なあ、そうなのか? 誰だ? お前は誰が好きなんだ??」

「いえ、その……」

 あまりの勢いに圧倒されて、日向子はどんどん思考回路を混線させていった。

「わたくし……わたくしは……伯爵様しか好きになりません……」


 ほんの数ヵ月前まで真実だったそれは、まるでとってつけたような逃げの言い訳のようだった。

 本当の気持ちを無意識に隠そうとしているかのような、建前の言葉。

 自覚した瞬間に壊れてしまいそうな、微かな恋の兆しをその裏側に秘めた言葉。

「……そんなに高山獅貴が好きなのかよ」

 紅朱はそれを文字通りに受け取って、不機嫌そうに目をそらした。

「……面白くねェ」

「紅朱様……」

 冷めたお茶を飲み干すと、ようやくなんとか頭が回り始める。

「紅朱様は何故それほど伯爵様を嫌われるのですか?」

「お前こそあんな奴なんかのどこが好きなんだ」

 紅朱は苛立ちを隠そうともせずに語気を荒げる。

「高山獅貴がどういう男かちゃんとわかってて言ってんのか?」

 鋭い問掛けだった。
 日向子にとって伯爵と過ごした時間など幼い頃のほんの数日間……それも真夜中の僅かな時間だけのこと。

 伯爵のことをちゃんとわかっているなどとは間違っても言い切ることはできない。


「……わたくしは伯爵様のことをよく知らないかもしれません……だからこそ、近くに行って、もっと知りたいのです。
そして自分の気持ちも、確かめなくては……」

「……初恋なんて、綺麗なまんましまっておいたほうが幸せかもしれないぞ……?」

 紅朱は呟く。

「……真実なんて、知らなくて済むなら知らないはうがいい……」

 日向子に対してのみ向けられた言葉ではないように聞こえた。

 それは玄鳥のことを言っているのだろうか?
 それとも……彼自身が真実と引き替えに何か大切なものを壊してしまったということなのか。

 誰にでも秘密があり、誰にでも苦悩があり……日向子はheliodorのメンバーたちを取材し、交流することで少しずつ彼等の真実を知ってきた。

 ステージの上に立つ姿からは想像もできないほど、弱い一面も見てしまった。

 そんなことは当たり前のことかもしれない。

 彼等は普通の人間で、普通の……男、なのだから。

 もしもあの颯爽として優雅で、欠点などなにもなさそうな伯爵にもそんな真実があるなら、日向子はやはり知りたいと思う。

 それが例えば、耳を塞ぎたくなるような残酷な真実でも。

「……それでもわたくしは、伯爵様を好きになったことを悔やんだりは致しませんわ」

 はっきりと告げた言葉に、紅朱はしばらくの沈黙の後で溜め息をついて、苦笑した。

「……強情な奴だ。オヤジさんの苦労が偲ばれるよな、まったく……」

「ふふふ」

「……まあいい。俺は負けてやる気はねェしな」

「……はい?」



「……あんな奴なんか忘れちまうくらい、夢中にさせてやるからな」



 ファンなら腰が砕けるような美声の囁きに、日向子は目を丸くして固まった。

「……heliodorに、な!」

 と紅朱が付け足す瞬間まで。










 穏やかな時が流れていた。

 しかしゆっくりと、カウントダウンは始まっている。

 運命の日に向かって……。













《第7章につづく》

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2007/08/03 (Fri)
 「魔法使いとご主人様」、セラス・ドラグーン(ドラゴン)の領主ED(ヒロインの進路によって後日談が変化)を見た。

 めくるめく狂気の世界へようこそ。笑。

 いくら根本的にコメディタッチだからって、乙女ゲームでこんなディープな愛情を表現してしまうとは、全く恐ろしい。

 まさにJanne Da Arcの「HELL or HEAVEN」そのものなんだけど、それを全面的に肯定しちゃってるところがすごい。

 自由で気高い筈のドラゴンを縛り付けて、本来の生き方を失わさせ、自分の側でなければ生きていけないようにしてしまったことを「彼を不幸にしている」とはっきり自覚しながら、「それが嬉しい」というアリシア。

 アリシアの側にいられないくらいなら死ぬ、と断言するセラス。
 何千年も生きるというドラゴンと人間では寿命が違いすぎるので、「私が死んだらどうするの?」と聞かれ、笑顔で「自害します」と言い切る。

 どうかご主人様はシワシワのお婆さんになるまでたくさん長生きして、最後に一言「死ね」と命じて下さい、と。

 セラスはともかく、アリシアは一応常識的な感覚を持ち合わせているので、「狂ってる」「ヤバイ」 「サイコだ」とと連発するんだけど、でも二人は満たされているのよね。

 アリシアが領主になってからも、アリシアが口にする政策を全て絶賛するダメな従者っぷり。

「私はご主人様さえよければどうなってもいいので、領民だってきっとそう思ってますよ!」

 いや、絶対思ってねェだろ。笑。

 自分がいきなり暴君になって領民を皆殺しにしろと命じたら、喜んでやるに違いないとまで表現される奴隷根性。笑。

 怖いねぇ。

 でもなんだろう、このふつふつと沸き上がる萌は……。

 セラスが愛し過ぎて他キャラにしばらく手を出せないかもしれない。笑。

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2007/08/02 (Thu)
 「アラビアンズ・ロスト」の情報見ようと思って「QuinRose」携帯サイトいってみたんだけど、ここの乙女ゲームは本当にどれもアクが強くて乙女ゲー玄人向けな雰囲気がたまらないね。笑。

 PCゲーで出てた「魔法使いとご主人様」っていうゲームのアプリ版やってるんだけど、どツボにハマってどっぴんしゃんざます。

 ファンタスティックフォーチュンみたいなシステムなんで、シナリオは厚くはないけれど、設定も世界観も面白いし、キャラが立ってて素晴らしい。

 簡単にストーリーを説明すると、魔法の国のプリンセス・アリシアはなぜか生まれつき魔力がない。

 そのため、特例的な掟に従い25日間、一般生徒には身分を隠して魔法学校で生活し、生涯自分を守り、従者として連れ添う魔法使いを選抜することになった。
 従者候補(彼らはアリシアの身分を知っている)は、アリシアがおともに連れてきた使い魔のドラゴン(人間に化身している)、幼馴染みでツンデレな伯爵家のぼんぼん、眼鏡クールな秀才、武骨な武術の家柄の爽やか好青年、一見いい人そうだけど明らかに裏がありそう(笑)な先生、紅一点のおっとり系お嬢様(しかしなにげに腹黒) といった面々。

 こっから期限までに従者を選びなさい、というわけだ(ちなみに攻略対象は従者候補以外にもいる)。

 この世界では従者と主人の結婚は普通に認められてるので、残念ながら禁断の恋要素はないんだがね。


 ドラゴンと幼馴染みは最初から主人公を好き設定なんだけど、特にドラゴンの主人公溺愛っぷりは病的で素晴らしい。ご主人様命。爆。

 神に近い誇り高い種族なのに、主人公に対してだけはほとんど犬っころ状態。
 寝る時も一緒じゃないと寂しがる有り様。……あ、ちゃんと可愛いチビ龍になって一緒に寝てるんだけどね! 笑。

 ヒロインと出会った頃は渋くてカッコいい、いかにも高潔なドラゴン(「人間ふぜいがこの私を従えようと言うのか?」みたいな)なのに、完璧に飼い馴らされとります。

 たまに元の尊大な口調に戻って恋敵を罵ったりしますがね。笑。

 対するヒロインもかなりいいキャラしてて、例えば出会って早々眼鏡クールに冷たくされた時のリアクションが、「こういうタイプを屈服させるのも面白そうよね」だからね。笑。
 ドラゴンが「お呼び下さればいつでも参りますよ?」といじらしいことを言えば、「使い魔なら、呼ばなくても主人の意向を察して出て来なさいよ」みたいなことを言う。

 しかもそれで好意が上がります。笑笑。

 会話選択肢とか乙女ゲームの常識を逸脱してる。

 ドラゴンが「向こうにこんなお花が咲いてましたよ~」って花を摘んで駆け寄ってくるじゃん?

 普通の乙女ゲームだったら、「ありがとう」って感謝するとか、「これは何ていう花なの?」って興味を示す選択肢が正解じゃん?

 このゲームの正しいリアクションはこう。


「……で? それがどうかした?」


 これで好意がアップします。爆。

 ドラゴンは「いつも自信満々で強いご主人様」が大好きで、そんなご主人様にこき遣われるのが至福……という、マゾ龍なので。


 そんなバカな。


 もっともヒロインのほうもそんなドラゴンを実は大変可愛がっていて、毎回頭を撫で撫でしては(人間でもミニドラゴンでも関係なし)、「愛い奴……」と呟いてます。

 ういやつ……て。

 攻略対象に対してそんなこと言うヒロインがかつていただろうか。いや、いまい。

 ありえないんだけどイイ!! 
 この二人にはマジで萌え殺されそうです。

 隠し?攻略キャラの執務長さんもいいんだけど、やっぱこのカプが本命だなぁ。

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* ILLUSTRATION BY nyao *