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乙女ゲーマー麻咲(あさき)の、2.5次元を彷徨うブログ
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  カウンター
  プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド

janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド 
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他

好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ) 
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット) 
フルハウスキス(羽倉麻生) 
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文) 
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助) 
花宵ロマネスク(紫陽) 
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸) 
僕と私の恋愛事情(シグルド) 
ラスト・エスコート2(天祢一星) 
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル) 
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク) 
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他

バイト先→某損保系コールセンター 

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2007/05/25 (Fri)
 結局書いてしまった。オリジナル乙女ゲーSS。
 一応一人一人をフィーチャーしながら、ヒロインと出会う前の物語を書いていこうかと。
 第一段はベースの万楼くん。最初なんで電波っぷりは一応抑えめで。



















「ねえ。100円、頂戴」

 なれなれしく肩を叩いてきた赤の他人。

「100円足りないんだ」

 その赤の他人からのぶしつけな要求が、

「……100円?」

 問答無用に黙殺されずに済んだのは、

「うん。412円と、あとはもうおっきいのしかないんだ」

 単純に彼の笑顔が、可愛かったからだ。

「100円玉、キミは持っていないかな」

 その笑顔に捕まった、彼女は重たくマスカラを重ねた睫毛を一瞬しばたかせた。

「え……えっと」

 彼女がポケットに押し込んだコインケースの中身を思い出すよりも早く、


「はい100円!!」


 前後左右から銀色のコインを乗せた掌が彼の前に差し出された。
 合計四枚。

 その持ち主たちはみんな「美少年と仲良くなる突然の大チャンス」に目がぎらついている。

「はは、東京の女の子ってみんな優しいんだな」

 その美少年は、いよいよ嬉しそうに顔をほころばせた。

「どうもありがとう」

 4枚の100円玉を、集めて握り締める。

 そこにもう一枚、100円玉が差し出された。
 肩を叩かれた彼女だった。

「よ、よかったら……」

 美少年はそれも遠慮なく受け取ると、他の四枚と合わせてぎゅっと握った。

「やった。ドリンク代、浮いた」

 「円」で「縁」を買った女の子たちは、さっと彼を取り囲んだ。

「ねえねえ、《東京の》、ってことはお兄さん遠征組?? このイベ」

「どのバンド見に来たの? あたしはねぇ、3ば」

「そのチケ、Bチケ? 前のほう場所とっといてあげるから一緒に見ない? 上手側のほ」

「ねえねえ、せっかくだからメアド交換しな~い? 赤外せ」

「あの、あたし、リサ。あなたは?」


 聖徳太子のアビリティは身に付けていない美少年は、唯一聞き取れた最後の質問にだけ、ゆっくりと、答えた。質問者は、最初の少女だった。

「ボクの、名前? ……万楼(マロウ)、って呼んで」




#1・【万楼 ―2006・春―】






「あれ、帰るの? リサ」

「ううん。目当てのバンド終わったから、残りは後ろで見ようかなって」

「そうなんだ」

「……万楼、ライブハウスってあんまり慣れてない?」

「初めてなんだ」

 開場時間まで万楼を質問ぜめにしていた「バンギャ」たちは、前方の似たような集団の中にめいめいに潜り込んで、もう薄闇の中でなくても見分けがつきそうになかった。

 一方。機材の入れ換えを行う暗転したステージを、壁に寄りかかりながら見つめる万楼の、中性的で整った横顔は、すれ違う人をいつも少し振り向かせた。

 リサは少しだけ得意気に、そんな万楼の隣に立った。

「高松から来たって言ってたよね」

「うん。飛行機で」

「万楼はリッチだね。あたしは金沢から。高速バスの夜行で」

「遠征、っていうんだっけ」

「うん。当たり前みたいにうちらは使うけど、改めて言われるとなんか仰々しい言葉だよね」

「カッコいいと思うよ」

 万楼はそう言って、サラサラした直毛の髪をサイドかき上げる。
 長い前髪の隙間からのぞく大きな瞳は、正面からではきっと直視できないほど眩く煌めく。

「ねえところで、携帯、ホントに持ってないの?」

「持ってないんだ。携帯もパソコンも」

「不便じゃないの?」

「なぜ? 昔はそんなものなかったのに、みんな平気だったよ」

「……万楼って、だいぶ変わってるね」

「そうかな」

「うん。変」

「変かぁ」


 リサの言いようにも特に気を悪くするでもなく、万楼は、

「リサは東京のバンド、詳しいのかな」

 ふと話題を変えてきた。

「《heliodor(ヘリオドール)》っていうバンド、知ってる?」

「ヘリオドール?」

 シャン、とステージの上でセッティング中のシンバルが鳴った。

「ボクは本当はそのバンドを探しているんだ。だけど」

 万楼の大きな瞳が微かに揺れた。

「ずっと前に活動休止して、行方がわからないって言われたんだ」

 溜め息を吐いて、一瞬、唇を噛む。
 彼が初めて見せたうかない表情だった。

「だけど、今日のイベントに出るバンドの、サポートギターの人が、heliodorのメンバーによく似てるから見てみたら?って言われたから」

「紅朱(コウシュ)に、似てるんだよね」

「知ってるの?」

「heliodorは、有名だからね。人気あったし」

「紅朱って人が、ギタリスト?」

「紅朱はボーカルだよ。ギタボ。でも」

 リサはなぜか申し訳なさそうに声をひそめた。

「私は事故に遭って死んだって聞いたけど」

「……」

 万楼はリサを振り返り、緩慢な動きで首を左右した。

「それは、困る」

「困るって言われても……あ」

「どうしたの?」

「多分、あの人がそうだよ。サポートギターの人。確かに顔は紅朱そっくりだから、ネットでも話題になってる」

 リサはステージの上手を指差した。
 なんとはなしに、オーディエンスにも波のようなどよめきがあったようだった。

 ギターのチューニングをしているのは、20代前半くらいの細身の青年だった。
 黒と思われる短い髪に、一部白いメッシュを入れている。
 他のメンバーと同じようなカジュアルな黒いジャケットを羽織っていた。

「ペンギンみたいだ」

 万楼がボソッと評した。

「ペンギンって……」



 ほどなくしてステージを照明が照らし出し、人の塊がだっと前方に押し寄せる。SEと黄色い歓声がフェードインし、そしてアウトした。


 鳴り出した演奏の音に負けないように万楼は少し声のトーンをあげる。

「紅朱って人とは本当に違うの?」


「……違うと思う」

「どうして?」

「紅朱より、ずっと巧いから」










「全っ然動かない」

「終演後のドリンクカウンターは混むからね」

「覚えておくよ」

 ドリンクチケットを指先でもてあそびながら、万楼は小さく笑った。
 一方通行の人波に揉まれながら、渋滞するロビーで立ち往生する二人は、やはりなんとなく注目を集めている気がした。

「リサ、あのペンギンさんと話をするにはどうしたらいいのかな?」

「う~ん……噂だと《待ち》しても、ほとんどスルーらしいからね」

「話せないの?」

「難しいかな。でも、万楼は男の子だし、警戒されにくいから、少しくらいなら聞いてくれるかもしれないよ」

「本当に!?」

 久々に明るい表情に戻った万楼に、リサも笑った。そしてそっと手を差しのべた。

「ドリンクチケット、貸して。私が引き換えるから、万楼は先に行って待ってなよ。このハコなら多分、正面に向かって右奥の入り口からメンが出入りする筈だから、そこにいるといいんじゃないかな」

「いいの?」

「ペンギンさんと話せるといいね」

「ありがとう……!!」

 お互いに今日一番の笑顔を浮かべた。

 万楼からリサへ、ラミ加工された小さなチケットが渡される。

「メロンソーダにして」

「OK」










「お疲れ、玄鳥(クロト)」

「お疲れ様です。今日はありがとうございました」

 右手に持ったプラスチックカップに入ったビールが傾いて、危うく溢れそうなくらい深く一礼する。

「勉強させてもらいました」

「何言ってんだ、こっちはお前に食われないかハラハラもんだったぜ」

「そんな」

「だな。お前はちゃんと自分の存在感を演出しながら、メインを引き立てるコツを得てる。大したギタリストだよ」

「……褒め過ぎですって」

 いきなり手放しに称賛されて、玄鳥と呼ばれた青年は照れ臭そうに白メッシュの頭をかいた。

「……なんだか、紅朱が照れてるみたいでキモイな」

「……」

 それに関してはノーコメントで、玄鳥はビールを口に運んだ。

「なあ、玄鳥」

 同じようにビールをあおりながら、つい先刻同じステージに上がったボーカリストは、少し改まった声で問うた。

「heliodorはまだ動かないのか?」

 玄鳥は吊り気味のアーモンド型の眼をすがめた。

「まだです。肝心のベースが……」

「やっぱり、《粋(スイ)》ほどのベーシストの代わりが務まる人間はそうはいないか」

「ええ……特に、有砂(アリサ)さんがなかなか納得してくれなくて。みんな、毎日日本中を飛び回ってますよ。オレもそうするべきなのかもしれないけど、それより今はこうやって少しでも経験を積みたいと思ってます……オレは兄貴の右腕ですから」

「そう、か」

 残念そうに嘆息する先輩ミュージシャンに、玄鳥はカップを握る手に少し力を込めた。







 人々は暗黒の空を見上げ、ひざまずいて待望する。

 再びこの空に太陽が昇ることを。







「ペンギンさん!」

 玄鳥が思わず振り返ってしまったのは、あまりにも呼ばれ慣れない名前だったからだろう。

 すぐ側で誰かが吹き出したのがわかった。

「あの……オレ?」

「ペンギンさん、ペンギンさん」

 「ペンギンさん」を連呼するとびきりの美少年に唖然としつつも、玄鳥はコホンとベタな咳払いをした。

「あの、オレはペンギンさんじゃ……」

「ペンギンさんは、本当は紅朱さんって人なの?」

 直球な問掛けをぶつける美少年は、妙に真剣な顔付きだった。

「ボクは万楼。heliodorでベースを弾くために高松から来たんだよ」

「え……? 君は」

「ある人に、頼まれたんだ。だから……」

 「heliodor」の名前を出したことで、ただでも目立っていた二人は一気に周囲の視線を集めていた。
 それを察した玄鳥は、とっさに万楼の手首を掴んで引き寄せた。

「君、とりあえず一緒に来て……話を聞くから」










「その人なら、例の紅朱のソックリさんとどっかに行っちゃいましたよ。私もおっかけたんだけど、撒かれちゃった~」

「そう……ですか」


 リサは両手にプラスチックのコップを持ったまま、人もまばらになり始めた搬入口に立ち尽くしていた。

「万楼……ペンギンさんと話せたのかな……」


 もう一度会ってメロンソーダを渡せなかったのは残念だったが、リサには不思議な予感があった。

 万楼にはいつかまた会える気がする。そしてその時彼は、もしかしたら「向こう側」かもしれないと。

 どうしてそう思うかと聞かれれば、それは「バンギャの勘」というやつだろうか。

 カップの中でたゆたう、透き通った鮮やかな緑の液体を、迷った挙句口に持っていった。

「……少なくとも、二割はあたしのだし」

 






 潮騒の街からやってきたその少年こそが、最後の欠片だった。

 一度は完成し、そしてあっけなく瓦解してしまった「太陽の国」を再び形造るための……。


 明けない夜はない。
 朝日はもうすぐ、世界を照らす。










《END》

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