カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
web拍手★
ブログ内検索
お気に入り
Lost Heaven
↑↑美夜プロデューサー様の素敵過ぎるマイドルSSサイト★
ありったけの愛を君に
↑↑かりんプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
ときめきの星たち★彡
↑↑みさきプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
↑↑美夜プロデューサー様の素敵過ぎるマイドルSSサイト★
ありったけの愛を君に
↑↑かりんプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
ときめきの星たち★彡
↑↑みさきプロデューサー様の素敵過ぎるブログ★
新品価格 |
新品価格 |
新品価格 |
カテゴリー
最新記事
(10/31)
(05/23)
(05/19)
(05/18)
(05/13)
(05/09)
(05/02)
(04/22)
(04/19)
(04/17)
カウンター
プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2007/06/20 (Wed)
一次創作関連
「……えげつな」
吐息まじりにぽつりと呟いた有砂に、蝉は浮かない顔のまま視線だけを向けた。
「……なんとでもどーぞ。どうせ完っ全に計算ミスだし……」
すぐ近くで、鼻唄を唄いながらギターをチューニングしているおめでたい青年を見やって、深く嘆息する。
「なんでこうなるかな~……」
「邪魔するつもりが、裏目に出たか。……ジブンの立場もまあ、わからんこともないけどな……せめて、もう少し手段は考えたらどうや?」
「……手段なんか選んでる暇なんてないから」
視線を落とすと、そこには規則的に並んだ黒鍵と白鍵がある。
蝉が最も愛し、最も疎む世界がそこにある。
「……おれは『釘宮漸』でいるためなら、なんでもするよ」
《第1章 人魚の足跡 -missing-》【2】
「あのさ」
玄鳥は思いきり目を半眼した。
「なんで、いるの?」
「暇だったのと、それと腹減ったから」
玄鳥が座っているテーブルの向かいには、日向子がお行儀よく座ってにこにこしている。
そして、玄鳥の隣には自分とよく似た顔をした男がちゃっかり座っている。
「なんだ? 俺がいたらまずい話でもする気だったのか?」
「いや、そんなことは別にないけど……兄貴が一緒に来るとは思わなかったから」
奥歯に物が挟まったようにもごもご話す玄鳥が、何かを隠していることは明白だったが、紅朱はあえて問いつめることなく、
「まあ、とりあえず食おう。俺はマジで腹減った」
と促した。
「あのさ」
玄鳥が再び水を差すように口を開く。
「なんで、杉屋なの?」
「俺が食いたかったからと、あとそいつが乗り気だったから」
「わたくし、杉屋さんでお食事するのは生まれて初めてですのよ!」
日向子は目の前に置かれた、牛丼(並)を覗き込みながら何故かはしゃいでいる。
「牛丼は杉屋に限るからな。絶対気に入るぞ、日向子」
牛丼(特)に七味をかけながら、何の気なしに語る紅朱の言葉に、玄鳥は思いっきりギョクの割り方をしくじった。
「おい、カラ入ってるぞ?」
「カラなんかどうでもいいよ。な、なんで兄貴、日向子さんのこと呼び捨てにしてるんだよ!」
「あ? 悪かったか?」
紅朱は日向子に話を振った。日向子は笑って、
「呼び捨てで結構ですわ。よろしければ玄鳥様もそうなさって下さい」
「えっ……ひ、ひな……こ……」
玄鳥は溜め息をついて首を左右して、
「……さん、でいいです。俺は」
早々に諦めた。
箸で丁寧に、混入したカラを選り分けながらもう一度深く溜め息をつく。
「……ま、いいか……嬉しそうだし」
上品は箸運びで牛肉と玉葱とごはんと紅しょうがを口に運び、頬をほころばせる日向子を見ていると、自然と玄鳥の表情も緩んだ。
「おいしゅうございますわ。紅朱様はよくこれをお召しに?」
「そうだな……俺は滅多に自炊しねェからな」
「実家から送ってきた野菜とかすぐ腐らせたり、カビ生やしたりするからな。兄貴は」
「まあ、それはもったいないですわ……」
日向子は、やはりあくまで上品な仕草でみそ汁を口にしてから、
「わたくしが毎日三度のお食事を作って差し上げられたらよろしいのですけれど」
何気無くとんでもないことを口走ったので、
「げほっ」
お約束通り玄鳥はむせ返った。
「そうか、そうなりゃ楽でいいな」
そして案の定、紅朱は全く動じない。
「……けど、食生活ったら一番問題なのは万楼だな」
「万楼様ですか?」
「ああ、あいつはすごいぞ。冷蔵庫ん中、ジュースと菓子と菓子作りの材料しかねェから」
「……確かにあれはひどい」
なんとか気道を確保した玄鳥も話に加わる。
「自炊するって言うから得意料理は何かって聞いたら、アップルパイと、チョコレートケーキと、フィナンシェと、マドレーヌと……って延々とお菓子列挙したからな……」
「主食が菓子なんだよな、あいつは」
普通ならとても信じ難い話ではあったが、先日のあのスウィーツだらけのテーブルを思い出せば、日向子にも納得できた。
「それは……いくらなんでも……お体に障るのでは?」
「ですよね……俺もそう思います。どうも昔からそうらしいんですけど。お菓子の栄養分だけで、よくあそこまで背が伸びたな……」
玄鳥が半分独り言のように呟いた瞬間、無言のままおもむろに箸を置いた紅朱が、再び七味の容器に手を伸ばすと、外蓋を外してフィルターの無くなったそれを玄鳥の食べかけの牛丼の上で引っくり返した。
「うわっ……何するんだよ兄貴!」
「ふん」
まるで火事場のように真っ赤になった丼の凄まじいビジュアルに、目を白黒する玄鳥をよそに、紅朱は何食わぬ顔で空になった七味の器を元に戻した。
玄鳥は自分が言った言葉のどの部分が原因でこうなったのか、経験上よくわかっていたが、口にしたら薮蛇になりかねないということも経験上よくわかっていた。
「なんてことを……これじゃもう食べられないじゃないか」
「まあ……それはもったいないですわ。わたくしが頂いても?」
「え?」
思わず綺麗にハモる兄弟。
日向子は半分も中身の残っていない玄鳥の丼を自分のほうに引き寄せた。
「お、おい」
「日向子さん……!?」
うろたえる二人をよそに、日向子は溶岩石のようなそれを箸でゆっくり口に運んだ。
そして。
「まあ……これはまた違った味わいで、とてもおいしいですわ」
と感嘆の声を上げた。
「嘘だろ……」
「本当に……?」
度肝を抜かれる二人に日向子はにっこり笑う。
「本当においしいですわよ。ほら、お一口どうですか?」
日向子は箸で、もはや食べ物とは思えないその物体をたっぷりとって、それを玄鳥に差し向けた。
「え?」
いわゆる「あーん、して♪」のシチュエーションである。
しかも割箸は日向子が使っていたもの。
玄鳥は、日向子の邪念の一片もない微笑みと、七味の塊を交互に見る。
玄鳥の胸は激しく動悸していた。
「い、言われてみればおいしそうに見えてきたかも……」
「おい、綾!? しっかりしろ。冷静に考えろ! 早まるなよ!!」
そもそものことの発端であるにも関わらず、必死に止めようとする兄の叫びは……残念ながら弟には届かなかった。
「俺……頂きます……!!」
そしてその直後、玄鳥は一声も発するいとまもなく、全速力でトイレに走って行った。
「綾……あいつ、いつからあんな冒険野郎になったんだ??」
「……まあ、おかしいですわね、こんなにおいしいですのに」
少ししゅんとしながら、もくもくと七味まみれの牛丼を食べ続ける、味覚音痴の疑いのある日向子を、紅朱はしばらく半分引き気味で見守っていたが、
「意外だ」
ふと呟いた。
「お嬢様は他人が箸つけたもんなんて、絶対食わないと思ってたんだが……」
日向子は箸を止めた。紅朱を見やって、言った。
「……わたくし、はしたないことをしてしまったのでしょうか?」
「いや」
紅朱は微笑する。
「そういうお嬢様がいたっていいと思う……お前は本当に、面白い奴だな」
日向子は少し安心したように頷いた。
「父ならおそらく叱ると思いますわ。けれどわたくし、幼少の頃に、けして食べ物は無駄にしてはいけないと母に教えられましたの」
「へえ……そりゃ立派なおふくろさんだな」
「……ええ。自慢の母です。随分前に亡くなりましたけれど」
「……そうか」
紅朱は熱いお茶をすすりながら、微かに目を伏せた。
「……でもそんなふうに母親とのいい思い出があるなら、お前は結構幸せだな」
「紅朱様と玄鳥様のお母様も素敵な方ですわね」
紅朱は苦笑する。
「ああ。優しい母親に、真面目な父親、出来すぎ君な弟……確かに、俺にはもったいないくらいいい家族だと思う……」
顔を合わせると乱暴な口調でそっけなく振る舞う紅朱が、ふと垣間見せた本当の気持ち。
日向子は単純になんだか嬉しかった。
紅朱の言葉の裏には単純ではない思いがあったのだが、それはまだ気付ける筈もないことだった。
「そういえば先程玄鳥様を、綾、とお呼びでしたわね? 玄鳥様の本名は綾様とおっしゃるのですか?」
「ああ、言ってなかったか。浅川綾だ。女みたいな名前だろ?」
少し意地悪く笑う紅朱だったが、
「では紅朱様は?」
と尋ねられ、それを打ち消した。
「……き」
ボソッと告げたものの、日向子には全く聞き取れない。
「はい?」
「……錦(ニシキ)」
認識出来る程度に、少しはっきりした口調で言い直した後、間髪入れず、
「でも俺は紅朱だ! この名前では呼ぶな。絶対にな!!」
語気を荒げて言い放った。
と。
「なッ」
紅朱は言葉を失った。
突然、日向子の両目がうるうると揺れて、ハラハラと涙の滴が溢れ始めたのだ。
無色透明な涙の滴は音もなく、とめどなく、とめどなく、頬を伝い落ちる。
「なッ、なんで泣いてんだよ……!? そんなにキツイ言い方したか!? おい!!」
日向子は黙ったまましくしく泣いている。
「黙ってちゃわけわかんないだろ!? どうしろってんだ、日向子! おい!!」
そしてそんなタイミングで、
「……兄貴、一体何したんだよ!!」
玄鳥が戻って来てしまった。
「別になんにもしてねェよ!」
「じゃあなんで日向子さんは泣いてるんだよ!」
「んなもん俺が知りてェよ……っ!」
日向子はハンカチで涙を拭いながら、言い合いする二人の前でぽつんと呟いた。
「……か、からいです……わ」
かくして日向子の味覚音痴容疑は完璧に晴れた。
日向子はただ、恐ろしく反応が鈍いだけだった。
「料理……?」
思いもよらなかった言葉に、万楼はいぶかしげに反芻した。
「はい、ご一緒にお料理をしながらインタビューをさせて頂こうと思うのですが、いかがでしょうか? 万楼様」
三日後に予定している再取材に際しての、日向子の出した提案は、当然のように先日の浅川兄弟との会食からヒントを得たものだった。
驚いていた万楼もやがて納得した様子で頷いた。
「うん、いいよ。なんだか楽しそうだね、二人で何をつくろうか? カスタードのミルクレープとか、巨峰のババロアなんてどう?」
日向子は首をゆっくり横にした。
「いいえ、今回はわたくし、万楼様とカレーライスを作ろうと思いますの」
「……カレーライス??」
「はい、カレーライスです。栄養たっぷり、具だくさんのカレーを作りましょう?」
《つづく》
吐息まじりにぽつりと呟いた有砂に、蝉は浮かない顔のまま視線だけを向けた。
「……なんとでもどーぞ。どうせ完っ全に計算ミスだし……」
すぐ近くで、鼻唄を唄いながらギターをチューニングしているおめでたい青年を見やって、深く嘆息する。
「なんでこうなるかな~……」
「邪魔するつもりが、裏目に出たか。……ジブンの立場もまあ、わからんこともないけどな……せめて、もう少し手段は考えたらどうや?」
「……手段なんか選んでる暇なんてないから」
視線を落とすと、そこには規則的に並んだ黒鍵と白鍵がある。
蝉が最も愛し、最も疎む世界がそこにある。
「……おれは『釘宮漸』でいるためなら、なんでもするよ」
《第1章 人魚の足跡 -missing-》【2】
「あのさ」
玄鳥は思いきり目を半眼した。
「なんで、いるの?」
「暇だったのと、それと腹減ったから」
玄鳥が座っているテーブルの向かいには、日向子がお行儀よく座ってにこにこしている。
そして、玄鳥の隣には自分とよく似た顔をした男がちゃっかり座っている。
「なんだ? 俺がいたらまずい話でもする気だったのか?」
「いや、そんなことは別にないけど……兄貴が一緒に来るとは思わなかったから」
奥歯に物が挟まったようにもごもご話す玄鳥が、何かを隠していることは明白だったが、紅朱はあえて問いつめることなく、
「まあ、とりあえず食おう。俺はマジで腹減った」
と促した。
「あのさ」
玄鳥が再び水を差すように口を開く。
「なんで、杉屋なの?」
「俺が食いたかったからと、あとそいつが乗り気だったから」
「わたくし、杉屋さんでお食事するのは生まれて初めてですのよ!」
日向子は目の前に置かれた、牛丼(並)を覗き込みながら何故かはしゃいでいる。
「牛丼は杉屋に限るからな。絶対気に入るぞ、日向子」
牛丼(特)に七味をかけながら、何の気なしに語る紅朱の言葉に、玄鳥は思いっきりギョクの割り方をしくじった。
「おい、カラ入ってるぞ?」
「カラなんかどうでもいいよ。な、なんで兄貴、日向子さんのこと呼び捨てにしてるんだよ!」
「あ? 悪かったか?」
紅朱は日向子に話を振った。日向子は笑って、
「呼び捨てで結構ですわ。よろしければ玄鳥様もそうなさって下さい」
「えっ……ひ、ひな……こ……」
玄鳥は溜め息をついて首を左右して、
「……さん、でいいです。俺は」
早々に諦めた。
箸で丁寧に、混入したカラを選り分けながらもう一度深く溜め息をつく。
「……ま、いいか……嬉しそうだし」
上品は箸運びで牛肉と玉葱とごはんと紅しょうがを口に運び、頬をほころばせる日向子を見ていると、自然と玄鳥の表情も緩んだ。
「おいしゅうございますわ。紅朱様はよくこれをお召しに?」
「そうだな……俺は滅多に自炊しねェからな」
「実家から送ってきた野菜とかすぐ腐らせたり、カビ生やしたりするからな。兄貴は」
「まあ、それはもったいないですわ……」
日向子は、やはりあくまで上品な仕草でみそ汁を口にしてから、
「わたくしが毎日三度のお食事を作って差し上げられたらよろしいのですけれど」
何気無くとんでもないことを口走ったので、
「げほっ」
お約束通り玄鳥はむせ返った。
「そうか、そうなりゃ楽でいいな」
そして案の定、紅朱は全く動じない。
「……けど、食生活ったら一番問題なのは万楼だな」
「万楼様ですか?」
「ああ、あいつはすごいぞ。冷蔵庫ん中、ジュースと菓子と菓子作りの材料しかねェから」
「……確かにあれはひどい」
なんとか気道を確保した玄鳥も話に加わる。
「自炊するって言うから得意料理は何かって聞いたら、アップルパイと、チョコレートケーキと、フィナンシェと、マドレーヌと……って延々とお菓子列挙したからな……」
「主食が菓子なんだよな、あいつは」
普通ならとても信じ難い話ではあったが、先日のあのスウィーツだらけのテーブルを思い出せば、日向子にも納得できた。
「それは……いくらなんでも……お体に障るのでは?」
「ですよね……俺もそう思います。どうも昔からそうらしいんですけど。お菓子の栄養分だけで、よくあそこまで背が伸びたな……」
玄鳥が半分独り言のように呟いた瞬間、無言のままおもむろに箸を置いた紅朱が、再び七味の容器に手を伸ばすと、外蓋を外してフィルターの無くなったそれを玄鳥の食べかけの牛丼の上で引っくり返した。
「うわっ……何するんだよ兄貴!」
「ふん」
まるで火事場のように真っ赤になった丼の凄まじいビジュアルに、目を白黒する玄鳥をよそに、紅朱は何食わぬ顔で空になった七味の器を元に戻した。
玄鳥は自分が言った言葉のどの部分が原因でこうなったのか、経験上よくわかっていたが、口にしたら薮蛇になりかねないということも経験上よくわかっていた。
「なんてことを……これじゃもう食べられないじゃないか」
「まあ……それはもったいないですわ。わたくしが頂いても?」
「え?」
思わず綺麗にハモる兄弟。
日向子は半分も中身の残っていない玄鳥の丼を自分のほうに引き寄せた。
「お、おい」
「日向子さん……!?」
うろたえる二人をよそに、日向子は溶岩石のようなそれを箸でゆっくり口に運んだ。
そして。
「まあ……これはまた違った味わいで、とてもおいしいですわ」
と感嘆の声を上げた。
「嘘だろ……」
「本当に……?」
度肝を抜かれる二人に日向子はにっこり笑う。
「本当においしいですわよ。ほら、お一口どうですか?」
日向子は箸で、もはや食べ物とは思えないその物体をたっぷりとって、それを玄鳥に差し向けた。
「え?」
いわゆる「あーん、して♪」のシチュエーションである。
しかも割箸は日向子が使っていたもの。
玄鳥は、日向子の邪念の一片もない微笑みと、七味の塊を交互に見る。
玄鳥の胸は激しく動悸していた。
「い、言われてみればおいしそうに見えてきたかも……」
「おい、綾!? しっかりしろ。冷静に考えろ! 早まるなよ!!」
そもそものことの発端であるにも関わらず、必死に止めようとする兄の叫びは……残念ながら弟には届かなかった。
「俺……頂きます……!!」
そしてその直後、玄鳥は一声も発するいとまもなく、全速力でトイレに走って行った。
「綾……あいつ、いつからあんな冒険野郎になったんだ??」
「……まあ、おかしいですわね、こんなにおいしいですのに」
少ししゅんとしながら、もくもくと七味まみれの牛丼を食べ続ける、味覚音痴の疑いのある日向子を、紅朱はしばらく半分引き気味で見守っていたが、
「意外だ」
ふと呟いた。
「お嬢様は他人が箸つけたもんなんて、絶対食わないと思ってたんだが……」
日向子は箸を止めた。紅朱を見やって、言った。
「……わたくし、はしたないことをしてしまったのでしょうか?」
「いや」
紅朱は微笑する。
「そういうお嬢様がいたっていいと思う……お前は本当に、面白い奴だな」
日向子は少し安心したように頷いた。
「父ならおそらく叱ると思いますわ。けれどわたくし、幼少の頃に、けして食べ物は無駄にしてはいけないと母に教えられましたの」
「へえ……そりゃ立派なおふくろさんだな」
「……ええ。自慢の母です。随分前に亡くなりましたけれど」
「……そうか」
紅朱は熱いお茶をすすりながら、微かに目を伏せた。
「……でもそんなふうに母親とのいい思い出があるなら、お前は結構幸せだな」
「紅朱様と玄鳥様のお母様も素敵な方ですわね」
紅朱は苦笑する。
「ああ。優しい母親に、真面目な父親、出来すぎ君な弟……確かに、俺にはもったいないくらいいい家族だと思う……」
顔を合わせると乱暴な口調でそっけなく振る舞う紅朱が、ふと垣間見せた本当の気持ち。
日向子は単純になんだか嬉しかった。
紅朱の言葉の裏には単純ではない思いがあったのだが、それはまだ気付ける筈もないことだった。
「そういえば先程玄鳥様を、綾、とお呼びでしたわね? 玄鳥様の本名は綾様とおっしゃるのですか?」
「ああ、言ってなかったか。浅川綾だ。女みたいな名前だろ?」
少し意地悪く笑う紅朱だったが、
「では紅朱様は?」
と尋ねられ、それを打ち消した。
「……き」
ボソッと告げたものの、日向子には全く聞き取れない。
「はい?」
「……錦(ニシキ)」
認識出来る程度に、少しはっきりした口調で言い直した後、間髪入れず、
「でも俺は紅朱だ! この名前では呼ぶな。絶対にな!!」
語気を荒げて言い放った。
と。
「なッ」
紅朱は言葉を失った。
突然、日向子の両目がうるうると揺れて、ハラハラと涙の滴が溢れ始めたのだ。
無色透明な涙の滴は音もなく、とめどなく、とめどなく、頬を伝い落ちる。
「なッ、なんで泣いてんだよ……!? そんなにキツイ言い方したか!? おい!!」
日向子は黙ったまましくしく泣いている。
「黙ってちゃわけわかんないだろ!? どうしろってんだ、日向子! おい!!」
そしてそんなタイミングで、
「……兄貴、一体何したんだよ!!」
玄鳥が戻って来てしまった。
「別になんにもしてねェよ!」
「じゃあなんで日向子さんは泣いてるんだよ!」
「んなもん俺が知りてェよ……っ!」
日向子はハンカチで涙を拭いながら、言い合いする二人の前でぽつんと呟いた。
「……か、からいです……わ」
かくして日向子の味覚音痴容疑は完璧に晴れた。
日向子はただ、恐ろしく反応が鈍いだけだった。
「料理……?」
思いもよらなかった言葉に、万楼はいぶかしげに反芻した。
「はい、ご一緒にお料理をしながらインタビューをさせて頂こうと思うのですが、いかがでしょうか? 万楼様」
三日後に予定している再取材に際しての、日向子の出した提案は、当然のように先日の浅川兄弟との会食からヒントを得たものだった。
驚いていた万楼もやがて納得した様子で頷いた。
「うん、いいよ。なんだか楽しそうだね、二人で何をつくろうか? カスタードのミルクレープとか、巨峰のババロアなんてどう?」
日向子は首をゆっくり横にした。
「いいえ、今回はわたくし、万楼様とカレーライスを作ろうと思いますの」
「……カレーライス??」
「はい、カレーライスです。栄養たっぷり、具だくさんのカレーを作りましょう?」
《つづく》
PR
2007/06/20 (Wed)
一次創作関連
《heliodor》ベース・万楼。
バンド内最年少で経験は浅く、若干荒削りな面もあるが、骨太で力強く存在感のあるプレイが印象的な、将来性を感じさせるベーシストである。
天使のような繊細で甘いルックスの持ち主でもあり、比較的新規の女性ファンからは「マロ様」の愛称で呼ばれる。
一方で古参のファンからは、半ば「伝説」化している先代ベーシストとの比較をもって辛口に評価を受けることも少なくない。
本人はこれについて、以下のように発言している。
「それでいいよ。いつか人魚姫が会いに来たら、ボクはいつでも王子様を譲るつもりだから」
《第1章 人魚の足跡 -missing-》【1】
「月並みな質問ばかりで恐縮ですが、いくつかお伺いしてよろしいですか?」
「うん、いいよ。でもね、ボクもお姉さんに質問していい?」
「はい? わたくしに、万楼さんが質問をなさるんですか??」
「お姉さんがボクにひとつ質問をしたら、ボクもお姉さんにひとつ質問をするんだ。ダメかな?」
「それは構いませんけれど……」
「決まりだね」
heliodorのリーダー・紅朱から正式に取材の許可を得た日向子は、まず最初に各メンバーへのパーソナルインタビューを行うことにした。
今月はまずベースの万楼、ドラムの有砂、キーボードの蝉からそれぞれ話を聞くつもりで、その中で最初に取材の予約がとれたのが万楼だった。
「このお店をよくミーティングに使われてるそうですわね?」
「それが最初の質問? そうだよ。ボクが入る前からだから聞いた話だけど、ここのカフェは元々玄鳥のお気に入りだったらしいんだ。お姉さんも好きだったなんてびっくりだね」
そこは日向子がよく美々と来る店……あの、紅朱たちと初めて遭遇した店だった。
「ボクたちが集まるのはだいたい夜が多いから、お姉さんたちと一緒になる機会は少なかったかもしれないけど、いつかここで会っていたかもしれないなんて、すごい偶然だよね」
そう言いながらメロンソーダをストローでかき回し、そして、ちらっと日向子を見る。
「……運命を感じない?」
「ええ、本当に。ではまたわたくしの番ですわね」
「……流されちゃった」
「はい?」
「なんでもないよ」
万楼はそしらぬ顔でマロンプリンをスプーンですくう。
万楼の目の前にはメロンソーダとマロンプリンの他にも、洋梨とチェリーのカスタードパイ、ミントを添えたチョコレートムース、熱々の特製スイートポテト、そして単体でも迫力十分なジャンボフルーツヨーグルトパフェがテーブル狭しと並んでいる。
一方の日向子はレアチーズケーキと紅茶を頼んだだけだったが、その光景を見ているだけで胸がいっぱいになりそうだった。
「スウィーツがお好きですのね?」
「うん。大好き。みんなが色々言うから普段はこんなに頼めないんだけどね。本当に、ここのは全部おいしいんだ。そういえば、そのチーズケーキは玄鳥も好きだって言ってたよ」
ぷるんとしたプリンを幸せそうに口に運んで、飲み込んだ後、万楼はじーっと日向子を見つめる。
「食べ物の好みが合う人って相性がすごくいいって聞いたことあるよ」
「まあ、そうですの? なんとなくわかるような気も致しますけれど」
「それじゃあボクの番。お姉さんの好きなタイプはどんな人? 優しい人? 真面目な人? 頭が良くて運動神経も良くて、しかもすっごくギターが巧い人とかいいと思わない?」
「伯爵様です」
「……やっぱりそうかぁ……」
何かを考え込むような顔付きでパフェを解体し始めた万楼。一方、日向子はあくまでマイペースに続ける。
「では、万楼様がheliodorに入ったきっかけをお聞きしても?」
万楼は大きな瞳をはっと見開いてきらきら輝かせながら半分を身を乗り出すようにして答えた。
「玄鳥だよ! 玄鳥がみんなにボクを紹介してくれたんだ。それに玄鳥はね……」
「おかしいですわね……」
「どうしたの? 日向子。珍しく難しい顔して」
デスクに戻って、ICレコーダーに録音した万楼へのインタビューの内容を聞き直していた日向子の顔は、確かに美々が言うように複雑な表情を描いていた。
「わたくし……今日は万楼様にインタビューさせて頂きましたのよ」
「うん。それで?」
「それなのにわたくし、何故か玄鳥様のことに詳しくなってしまいました」
「はあ? なんなの、それ」
美々は日向子からイヤホンを受け取って、録音内容を確認した。
半分も聞き終わらないうちに、美々の表情もまた日向子のそれと同じように転じていった。
「……いくらなんでも、これじゃあちょっと記事にはできないね」
「やはりそう思われますか……? わたくし、もう一度お話を伺ってみます」
「玄鳥のことは、ボクがちゃんとアピールしてきたからね」
「アピール??」
「うん」
練習スタジオに現れた万楼の、輝く満面の笑みを見ながら、玄鳥は嫌な予感が全身につき抜けるのを感じていた。
「お前、日向子さんに変なこと言ってないよな?」
「……というわけで、とっても変ですのよ」
「……左様でございますか」
その頃日向子はいつものように帰宅中だった。
いつものように今日の出来事を一方的に報告されているのは、ドライバーの雪乃である。
「一体なぜ万楼様は玄鳥様のお話ばかりなさるんでしょうか……?」
「さあ……私には何とも」
「そうですわよね……雪乃に聞いてもわかるわけないですわねぇ……うーん」
ちょうどマンションの前に停車した車から降り、日向子はほとんど上の空の状態のまま「どうしてかしら」と呟きながら、ふらふらと部屋に帰って行った。
それを見送った「雪乃」は、一つ息をついたかと思うと眼鏡をさっと外して胸ポケットに突っ込んでハンドルに突っ伏した。
「あ、い、つ、ら~……あんだけ念押したのに。うちのお嬢様にみすみす悪い虫つけさすわけにいくかっての……」
《もしもし、日向子ちゃん?》
「はい、森久保日向子です」
就寝間際に日向子の携帯に着信したのは、意外な人物からのコールだった。
《おれおれ、heliodorの蝉くんです♪》
「まあ、蝉様からお電話を頂くとは思いませんでしたわ。ありがとうございます」
パジャマ姿でベッドに横座りしたまま、日向子は電話にも関わらず深く一礼した。
「取材の日程についてのご連絡でしょうか?」
《いや、ごめんね。今日はそーゆーことで電話したんじゃなくてさ、万楼のことでちょっと》
「万楼様ですか?」
《んー、あのさ、今日は万楼の取材だったんだよね? あいつさ、なんかめちゃめちゃ玄鳥の話してこなかった?》
「まあ、どうしておわかりになりましたの!?」
《やっぱな~……だと思ったんだよな~》
どうやら何かを知っていそうな蝉に、日向子はそわそわし始める。
「蝉様はご存じですのね? 万楼様があのように玄鳥様のことばかりお話になるわけを」
《んー……誰にも言わないんだったら教えてあげてもいいんだケド》
「はい。もちろん誰にも口外致しませんわ」
電話にも関わらずなんとなく身を乗り出す日向子。
《実はさ……》
蝉はまるで周囲を気にするかのように声のトーンを一段階落として、ゆっくりもったいぶるように告げた。
《万楼と玄鳥ってデキてるから》
「……」
日向子は頭の中でゆっくりと、今聞いた言葉を一文字ずつスクロールさせた。
「あの……できてる、とはどういうことでしょうか??」
《つまりラブラブってことなわけよ。わかる? バンド内では一応公認なんだケドさ、やっぱ対外的にはちょっとヤバイんだよね~。だから内緒にしてんの》
日向子は早口で話す蝉の言葉を一生懸命拾いながら頭の中でひとつひとつ理解しようと試みる。
「……あの~……間違っていたら申し訳ないのですけれど、つまり万楼様が玄鳥様のことばかりお話されるのは、玄鳥様のことがとてもお好きだからということでしょうか?」
《そう!!それ!正解! もう全くありんこ一匹入れないくらい超ラブラブだから!》
「はあ……」
日向子は喉に引っ掛かった小骨が取れないような顔付きで考え込んだかと思うと、それがいきなりするっと取れたような晴れ晴れとした笑顔に転じた。
「ありがとうございます、わたくしどうしたらいいのかわかりましたわ!」
《え? なにが?》
「蝉様、大変ためになるアドバイスを頂きまして、本当に助かりましたわ」
《え?え? アドバイスって?》
「それでは今夜はもう遅いですし、わたくしはこれで失礼させて頂きます。おやすみなさいませ、蝉様」
《え、ちょっと、もしもしー……?》
「おはようございます、玄鳥様」
「はい、おはようございます」
出会い頭に、お互いに不自然なほど深いおじぎを交す日向子と玄鳥。
「よいお天気ですわね」
「そうですね。小春日和って感じですよね。なんか嬉しくなっちゃいますね。ははは……」
ちょうど横を通った有砂が何か言いたそうな顔をしていたが、一つ息を吐いてそのまま通り過ぎていった。
今日は日向子があらかじめ紅朱からリストアップしてもらっていた「見学OK」の練習日だった。
「今日はよろしくお願い致しますわね」
「はい、こちらこそ。……あの、変なこと聞いていいですか?」
「なんでしょうか?」
「……その、万楼にインタビューした時、あいつ妙なこと言ってなかったかなって……」
玄鳥が万楼の名前を口にした途端、日向子は何故か感心したように首を何度も上下した。
「やはり万楼様のことをお気にかけていらっしゃいますのね」
「え?」
「万楼様と玄鳥様はらぶらぶでいらっしゃるのですよね??」
「……はい?」
「わたくし、何も隠されることはないと思いますの。殿方同士が仲良くされることは別に恥ずかしいことではないですもの!」
「あの、すいません……日向子さん、それは一体……」
だんだん腹でも痛いような顔付きになってきた玄鳥に、日向子はいつものように曇りのない今日の天気のような笑顔を見せた。
「お二人は『できて』いらっしゃるのでしょう?」
「でき……」
玄鳥は一瞬意識が宇宙の彼方に放り出されるのを感じた。
「……な、何言ってるんですか!? 薮から棒に!!」
「まあ、慌てて否定なさることありませんのに……」
「否定します!! 断固として否定します!!」
顔を赤くして抗議する玄鳥に、日向子はますます楽しそうに微笑んだ。
「ご謙遜なさらずに。わたくしから見ても、お二人はとても仲がよろしく……」
「いや、だからそれはッ、あくまで同じバンドのメンバーとして……!」
「はい、同じバンドのメンバーとしての深い信頼関係が『できて』いらっしゃるのですよね?」
「……え? あ、それはまあ……」
「ですから、万楼様は玄鳥様のことをよく知っていらっしゃいましたのね。
ということは、逆に万楼様について知りたければ、玄鳥様にお伺いすればよいのではないかと思いまして……」
いきなり予想外の急カーブを切った日向子に呆然としていた玄鳥だったが、続く言葉で一気に我に返った。
「練習後、もしご予定がないようでしたら、お食事でもしながらお話をお聞かせ頂けませんか?」
「はい……! 喜んで!!」
《つづく》
バンド内最年少で経験は浅く、若干荒削りな面もあるが、骨太で力強く存在感のあるプレイが印象的な、将来性を感じさせるベーシストである。
天使のような繊細で甘いルックスの持ち主でもあり、比較的新規の女性ファンからは「マロ様」の愛称で呼ばれる。
一方で古参のファンからは、半ば「伝説」化している先代ベーシストとの比較をもって辛口に評価を受けることも少なくない。
本人はこれについて、以下のように発言している。
「それでいいよ。いつか人魚姫が会いに来たら、ボクはいつでも王子様を譲るつもりだから」
《第1章 人魚の足跡 -missing-》【1】
「月並みな質問ばかりで恐縮ですが、いくつかお伺いしてよろしいですか?」
「うん、いいよ。でもね、ボクもお姉さんに質問していい?」
「はい? わたくしに、万楼さんが質問をなさるんですか??」
「お姉さんがボクにひとつ質問をしたら、ボクもお姉さんにひとつ質問をするんだ。ダメかな?」
「それは構いませんけれど……」
「決まりだね」
heliodorのリーダー・紅朱から正式に取材の許可を得た日向子は、まず最初に各メンバーへのパーソナルインタビューを行うことにした。
今月はまずベースの万楼、ドラムの有砂、キーボードの蝉からそれぞれ話を聞くつもりで、その中で最初に取材の予約がとれたのが万楼だった。
「このお店をよくミーティングに使われてるそうですわね?」
「それが最初の質問? そうだよ。ボクが入る前からだから聞いた話だけど、ここのカフェは元々玄鳥のお気に入りだったらしいんだ。お姉さんも好きだったなんてびっくりだね」
そこは日向子がよく美々と来る店……あの、紅朱たちと初めて遭遇した店だった。
「ボクたちが集まるのはだいたい夜が多いから、お姉さんたちと一緒になる機会は少なかったかもしれないけど、いつかここで会っていたかもしれないなんて、すごい偶然だよね」
そう言いながらメロンソーダをストローでかき回し、そして、ちらっと日向子を見る。
「……運命を感じない?」
「ええ、本当に。ではまたわたくしの番ですわね」
「……流されちゃった」
「はい?」
「なんでもないよ」
万楼はそしらぬ顔でマロンプリンをスプーンですくう。
万楼の目の前にはメロンソーダとマロンプリンの他にも、洋梨とチェリーのカスタードパイ、ミントを添えたチョコレートムース、熱々の特製スイートポテト、そして単体でも迫力十分なジャンボフルーツヨーグルトパフェがテーブル狭しと並んでいる。
一方の日向子はレアチーズケーキと紅茶を頼んだだけだったが、その光景を見ているだけで胸がいっぱいになりそうだった。
「スウィーツがお好きですのね?」
「うん。大好き。みんなが色々言うから普段はこんなに頼めないんだけどね。本当に、ここのは全部おいしいんだ。そういえば、そのチーズケーキは玄鳥も好きだって言ってたよ」
ぷるんとしたプリンを幸せそうに口に運んで、飲み込んだ後、万楼はじーっと日向子を見つめる。
「食べ物の好みが合う人って相性がすごくいいって聞いたことあるよ」
「まあ、そうですの? なんとなくわかるような気も致しますけれど」
「それじゃあボクの番。お姉さんの好きなタイプはどんな人? 優しい人? 真面目な人? 頭が良くて運動神経も良くて、しかもすっごくギターが巧い人とかいいと思わない?」
「伯爵様です」
「……やっぱりそうかぁ……」
何かを考え込むような顔付きでパフェを解体し始めた万楼。一方、日向子はあくまでマイペースに続ける。
「では、万楼様がheliodorに入ったきっかけをお聞きしても?」
万楼は大きな瞳をはっと見開いてきらきら輝かせながら半分を身を乗り出すようにして答えた。
「玄鳥だよ! 玄鳥がみんなにボクを紹介してくれたんだ。それに玄鳥はね……」
「おかしいですわね……」
「どうしたの? 日向子。珍しく難しい顔して」
デスクに戻って、ICレコーダーに録音した万楼へのインタビューの内容を聞き直していた日向子の顔は、確かに美々が言うように複雑な表情を描いていた。
「わたくし……今日は万楼様にインタビューさせて頂きましたのよ」
「うん。それで?」
「それなのにわたくし、何故か玄鳥様のことに詳しくなってしまいました」
「はあ? なんなの、それ」
美々は日向子からイヤホンを受け取って、録音内容を確認した。
半分も聞き終わらないうちに、美々の表情もまた日向子のそれと同じように転じていった。
「……いくらなんでも、これじゃあちょっと記事にはできないね」
「やはりそう思われますか……? わたくし、もう一度お話を伺ってみます」
「玄鳥のことは、ボクがちゃんとアピールしてきたからね」
「アピール??」
「うん」
練習スタジオに現れた万楼の、輝く満面の笑みを見ながら、玄鳥は嫌な予感が全身につき抜けるのを感じていた。
「お前、日向子さんに変なこと言ってないよな?」
「……というわけで、とっても変ですのよ」
「……左様でございますか」
その頃日向子はいつものように帰宅中だった。
いつものように今日の出来事を一方的に報告されているのは、ドライバーの雪乃である。
「一体なぜ万楼様は玄鳥様のお話ばかりなさるんでしょうか……?」
「さあ……私には何とも」
「そうですわよね……雪乃に聞いてもわかるわけないですわねぇ……うーん」
ちょうどマンションの前に停車した車から降り、日向子はほとんど上の空の状態のまま「どうしてかしら」と呟きながら、ふらふらと部屋に帰って行った。
それを見送った「雪乃」は、一つ息をついたかと思うと眼鏡をさっと外して胸ポケットに突っ込んでハンドルに突っ伏した。
「あ、い、つ、ら~……あんだけ念押したのに。うちのお嬢様にみすみす悪い虫つけさすわけにいくかっての……」
《もしもし、日向子ちゃん?》
「はい、森久保日向子です」
就寝間際に日向子の携帯に着信したのは、意外な人物からのコールだった。
《おれおれ、heliodorの蝉くんです♪》
「まあ、蝉様からお電話を頂くとは思いませんでしたわ。ありがとうございます」
パジャマ姿でベッドに横座りしたまま、日向子は電話にも関わらず深く一礼した。
「取材の日程についてのご連絡でしょうか?」
《いや、ごめんね。今日はそーゆーことで電話したんじゃなくてさ、万楼のことでちょっと》
「万楼様ですか?」
《んー、あのさ、今日は万楼の取材だったんだよね? あいつさ、なんかめちゃめちゃ玄鳥の話してこなかった?》
「まあ、どうしておわかりになりましたの!?」
《やっぱな~……だと思ったんだよな~》
どうやら何かを知っていそうな蝉に、日向子はそわそわし始める。
「蝉様はご存じですのね? 万楼様があのように玄鳥様のことばかりお話になるわけを」
《んー……誰にも言わないんだったら教えてあげてもいいんだケド》
「はい。もちろん誰にも口外致しませんわ」
電話にも関わらずなんとなく身を乗り出す日向子。
《実はさ……》
蝉はまるで周囲を気にするかのように声のトーンを一段階落として、ゆっくりもったいぶるように告げた。
《万楼と玄鳥ってデキてるから》
「……」
日向子は頭の中でゆっくりと、今聞いた言葉を一文字ずつスクロールさせた。
「あの……できてる、とはどういうことでしょうか??」
《つまりラブラブってことなわけよ。わかる? バンド内では一応公認なんだケドさ、やっぱ対外的にはちょっとヤバイんだよね~。だから内緒にしてんの》
日向子は早口で話す蝉の言葉を一生懸命拾いながら頭の中でひとつひとつ理解しようと試みる。
「……あの~……間違っていたら申し訳ないのですけれど、つまり万楼様が玄鳥様のことばかりお話されるのは、玄鳥様のことがとてもお好きだからということでしょうか?」
《そう!!それ!正解! もう全くありんこ一匹入れないくらい超ラブラブだから!》
「はあ……」
日向子は喉に引っ掛かった小骨が取れないような顔付きで考え込んだかと思うと、それがいきなりするっと取れたような晴れ晴れとした笑顔に転じた。
「ありがとうございます、わたくしどうしたらいいのかわかりましたわ!」
《え? なにが?》
「蝉様、大変ためになるアドバイスを頂きまして、本当に助かりましたわ」
《え?え? アドバイスって?》
「それでは今夜はもう遅いですし、わたくしはこれで失礼させて頂きます。おやすみなさいませ、蝉様」
《え、ちょっと、もしもしー……?》
「おはようございます、玄鳥様」
「はい、おはようございます」
出会い頭に、お互いに不自然なほど深いおじぎを交す日向子と玄鳥。
「よいお天気ですわね」
「そうですね。小春日和って感じですよね。なんか嬉しくなっちゃいますね。ははは……」
ちょうど横を通った有砂が何か言いたそうな顔をしていたが、一つ息を吐いてそのまま通り過ぎていった。
今日は日向子があらかじめ紅朱からリストアップしてもらっていた「見学OK」の練習日だった。
「今日はよろしくお願い致しますわね」
「はい、こちらこそ。……あの、変なこと聞いていいですか?」
「なんでしょうか?」
「……その、万楼にインタビューした時、あいつ妙なこと言ってなかったかなって……」
玄鳥が万楼の名前を口にした途端、日向子は何故か感心したように首を何度も上下した。
「やはり万楼様のことをお気にかけていらっしゃいますのね」
「え?」
「万楼様と玄鳥様はらぶらぶでいらっしゃるのですよね??」
「……はい?」
「わたくし、何も隠されることはないと思いますの。殿方同士が仲良くされることは別に恥ずかしいことではないですもの!」
「あの、すいません……日向子さん、それは一体……」
だんだん腹でも痛いような顔付きになってきた玄鳥に、日向子はいつものように曇りのない今日の天気のような笑顔を見せた。
「お二人は『できて』いらっしゃるのでしょう?」
「でき……」
玄鳥は一瞬意識が宇宙の彼方に放り出されるのを感じた。
「……な、何言ってるんですか!? 薮から棒に!!」
「まあ、慌てて否定なさることありませんのに……」
「否定します!! 断固として否定します!!」
顔を赤くして抗議する玄鳥に、日向子はますます楽しそうに微笑んだ。
「ご謙遜なさらずに。わたくしから見ても、お二人はとても仲がよろしく……」
「いや、だからそれはッ、あくまで同じバンドのメンバーとして……!」
「はい、同じバンドのメンバーとしての深い信頼関係が『できて』いらっしゃるのですよね?」
「……え? あ、それはまあ……」
「ですから、万楼様は玄鳥様のことをよく知っていらっしゃいましたのね。
ということは、逆に万楼様について知りたければ、玄鳥様にお伺いすればよいのではないかと思いまして……」
いきなり予想外の急カーブを切った日向子に呆然としていた玄鳥だったが、続く言葉で一気に我に返った。
「練習後、もしご予定がないようでしたら、お食事でもしながらお話をお聞かせ頂けませんか?」
「はい……! 喜んで!!」
《つづく》
2007/06/18 (Mon)
雑記
昨日明らかに風邪で喉がおかしかったのに、昼間うちの人とカラオケ行って、夜は友達とカラオケ行って、案の定完全に声が出なくなった。笑。
わかってるんだけどね~、「カラオケに行こう」と「お寿司食べに行こう」は断れないね。喉が裂けても、腹が破れても断れないね。爆。
なにしろブレインがクレイジーだからね。
しかもパセラだからね。パセラの誘惑には勝てないよな。常に行きたい状態だから。いっそパセラに住みたいくらいさ(ホントかよ)。
UGAに「Janne Da Arcメドレー2」が追加されてて、歌ってみたらインディーズメドレーだったぜ。やるなー。
なんか編集されててちょっと唄い辛い曲もあったけど。汗。
ただ後半はやっぱり思うように唄えなかったからかなり不完全燃焼。
回復したらまたすぐに行きたいなぁ。
そんなわけで身体はボロボロだけど、最近精神がかなり安定してる。
すごく久しぶりな感じ。
少なくとも去年の春からこっち、ずっとこういう精神状態にはなってなかったからね。
上がったり、下がったり、もっと下がったり(笑)、ずっと安定しなかったんだよね。
来月からは夜の仕事を減らして主に昼間働くことにしたし、朝も早くないから生活サイクルももっと楽になる筈。
単純に収入も増えるし、すぐに念願のパソコンも買えると思う。
最近快調なペースで小説も書けてるでしょう?
私は精神状態がよくないとうまく書けなくなることが多い。
一昨年の秋から去年の春過ぎまで半年ちょっと同人サイトをやってて、ほとんど毎日更新してたんだけど、色々あって書けなくなっちゃったしね。
今書いて、って言われてもそのジャンルでは書けないと思う。
あの頃なんであんなに書けてたのかも今や謎だからね。
自分で言うのもなんだけど、同ジャンルでは指折りの人気サイトになってしまって、いろんな人にちやほやされて(笑)、期待に応えるために寝食を削るほど熱中してた時代があったのよ。
あの時は今よりもう一段高いところで安定してたと思う。
あそこまでの位置にはもってけないけど、久々に楽しんで書けてるなって自分でも思うよ。
創作活動に打ち込んでる時が今一番幸せな時だし、それが自分の本質だとも感じるしね。
ああ、これが本当の私だ、ってね。
ライブに行ってる時の充実感も捨てがたい(むしろ絶対捨てられない)けど、自分の力で何かを生産する喜びって時としてそれを凌駕するのよね。
そして生産したからにはなるべく色々な人の目に触れてほしいと思うね。
昨日うちの人に「あれ読んでる?」って聞いたら、あっさり「読んでない」って言われて、わかっちゃいたけど、ちぇっ、って思った。笑。
実際バンドやってる人から感想なりネタ提供なり(笑)してもらえたらと思ったんだけど、まあ、男子向けの内容でもないしなあ。
ただ、自分で人に「読んでる?」って聞くの、実はめちゃめちゃ恥ずかしいから苦手で。ある意味最終手段だからさ。聞かなきゃよかったと思った。笑。
そういえば、うちの母親も全然読んでくれない人で、文芸部時代の小説とかも全く読んでくれなかった。
忙しい人だし、若干老眼入ってるから仕方ないんだけどね。
一回「これはやばい。大変な傑作が出来たわ!!」とか根拠のない自信が湧いた時に、我慢できなくて仕事してる母親の横で音読してたことがあったな。笑。
よくそんな恥ずかしいことができたもんだ。
今どんだけ気に入ったものが書けても、それをやる勇気は全くないよね。笑。
中学生ってすげー。
わかってるんだけどね~、「カラオケに行こう」と「お寿司食べに行こう」は断れないね。喉が裂けても、腹が破れても断れないね。爆。
なにしろブレインがクレイジーだからね。
しかもパセラだからね。パセラの誘惑には勝てないよな。常に行きたい状態だから。いっそパセラに住みたいくらいさ(ホントかよ)。
UGAに「Janne Da Arcメドレー2」が追加されてて、歌ってみたらインディーズメドレーだったぜ。やるなー。
なんか編集されててちょっと唄い辛い曲もあったけど。汗。
ただ後半はやっぱり思うように唄えなかったからかなり不完全燃焼。
回復したらまたすぐに行きたいなぁ。
そんなわけで身体はボロボロだけど、最近精神がかなり安定してる。
すごく久しぶりな感じ。
少なくとも去年の春からこっち、ずっとこういう精神状態にはなってなかったからね。
上がったり、下がったり、もっと下がったり(笑)、ずっと安定しなかったんだよね。
来月からは夜の仕事を減らして主に昼間働くことにしたし、朝も早くないから生活サイクルももっと楽になる筈。
単純に収入も増えるし、すぐに念願のパソコンも買えると思う。
最近快調なペースで小説も書けてるでしょう?
私は精神状態がよくないとうまく書けなくなることが多い。
一昨年の秋から去年の春過ぎまで半年ちょっと同人サイトをやってて、ほとんど毎日更新してたんだけど、色々あって書けなくなっちゃったしね。
今書いて、って言われてもそのジャンルでは書けないと思う。
あの頃なんであんなに書けてたのかも今や謎だからね。
自分で言うのもなんだけど、同ジャンルでは指折りの人気サイトになってしまって、いろんな人にちやほやされて(笑)、期待に応えるために寝食を削るほど熱中してた時代があったのよ。
あの時は今よりもう一段高いところで安定してたと思う。
あそこまでの位置にはもってけないけど、久々に楽しんで書けてるなって自分でも思うよ。
創作活動に打ち込んでる時が今一番幸せな時だし、それが自分の本質だとも感じるしね。
ああ、これが本当の私だ、ってね。
ライブに行ってる時の充実感も捨てがたい(むしろ絶対捨てられない)けど、自分の力で何かを生産する喜びって時としてそれを凌駕するのよね。
そして生産したからにはなるべく色々な人の目に触れてほしいと思うね。
昨日うちの人に「あれ読んでる?」って聞いたら、あっさり「読んでない」って言われて、わかっちゃいたけど、ちぇっ、って思った。笑。
実際バンドやってる人から感想なりネタ提供なり(笑)してもらえたらと思ったんだけど、まあ、男子向けの内容でもないしなあ。
ただ、自分で人に「読んでる?」って聞くの、実はめちゃめちゃ恥ずかしいから苦手で。ある意味最終手段だからさ。聞かなきゃよかったと思った。笑。
そういえば、うちの母親も全然読んでくれない人で、文芸部時代の小説とかも全く読んでくれなかった。
忙しい人だし、若干老眼入ってるから仕方ないんだけどね。
一回「これはやばい。大変な傑作が出来たわ!!」とか根拠のない自信が湧いた時に、我慢できなくて仕事してる母親の横で音読してたことがあったな。笑。
よくそんな恥ずかしいことができたもんだ。
今どんだけ気に入ったものが書けても、それをやる勇気は全くないよね。笑。
中学生ってすげー。
2007/06/16 (Sat)
一次創作関連
本編序章、いかがだったでしょうか??
やっぱり【4】までいっちゃったね。しかもかなり削って【4】。
第1章からはもっと長くなるんだろうなぁ。
【1】から振り返ると、まずやっと「雪乃」が出せてよかった。
まあ、お察しの通り、正体はあの人なんだけども。
元々は「オンとオフでキャラクターが180度変わるキャラクターがほしいな」、というのが発端で、更に「実は身近な人なのにヒロインが気付いてないっていうの、おいしくね??」と進化し、「お嬢様には従者が必須だよなぁ」というわけでこのようになった次第。
実はそれぞれのキャラクターにモチーフになる童話というのがあって、
紅朱→眠れる森の美女
玄鳥→親指姫
万楼→人魚姫
蝉→白雪姫
有砂→不思議の国のアリス
獅貴→シンデレラ
……一見有砂だけお姫様系じゃないし、毛色が違うんだけど、実は玄鳥だけディズニー映画になってない。仲間はずれ。笑。
玄鳥(=つばめ)や有砂(←アリス)は名前もモチーフからとってるしね。
【2】で玄鳥が日向子に傷の手当てを受けているのも元ネタは親指姫。
ちらっと出てきた獅貴が前やってたバンド「mont sucht(モントザハト)」って、長田ノオトさんの漫画のタイトルで、「月と耽溺」「月憑き」「夢遊病」とかいう意味合いの言葉。
中学の時に読んで、言葉の響きがすごく気に入ってしまい、内容はだいぶ忘れたのにタイトルだけはいつまでも覚えてるな~。
そしてある意味一番の難所、【3】。
ライブのシーンを書くにあたり、参考として手持ちの雑誌のライブレポートとか片っ端から読んだんだけど、意外と参考にはならなかったね。笑。
今回の特殊なシチュエーションとして、「どういうバンドかイマイチよくわからない状態で初参戦」なんだよね。
そういう感覚で書かれてるレポってそうはないしね。
だからむしろ自分の経験から思い出して、「好きなバンドのイベントライブで、名前しか知らないけど友達の好きなバンドが対バンだった」っていう状況が一番近いかなと。
そういうわけで非常に肌感覚で書いてます。
章に一回はライブシーンを入れるのが目標。
更にゲームでは、「マルチアングル」的な要素をぜひ入れたい。
今回紅朱をメインにした描写になってるけど、そこで任意で注目するメンバーが選べるというシステム。これはほしい。
劇中詞として「Ghost Ship」が出てきたけど、いかがなものでしょうか。
あれは夜のバイト中にレジにメモ帳置いて書いてた。
あんまり苦労してない。バイト終わるまでに完成したからね。笑。
自分の状況をそのまま書いただけだし。
ぶっちゃけバイトのことを恋愛に置き換えた詞なんだよねぇ。
この店はもはや沈む船だな~、って。そろそろ降りなきゃって。笑。
あえて二人称を中心にしているのは、紅朱は内側に向かったセンチメンタルな詞より、外側に向かったメッセージ性の強い(ともすると説教がましい 笑)詞を書きそうだと思ったから。
ちなみに二番とかは全く考えてないから。爆。
【4】は本当に削りまくってて、あとの章で使いたい場面が結構ある。
「出待ち」シーンは書きたかったかも。
heliodorでファンサービス担当は万楼と蝉。
紅朱や有砂は性格的に無理として、玄鳥は捕まると逃げられなくなっちゃうから危険。笑。
今回蝉がいないから万楼は相当苦労したことだろう……。
第1章はそんな万楼をメインとしたお話なので、長さがどんくらいになるかイマイチわかんないけど、まあ頑張ります。
ご意見・ご感想お待ちしてます☆
やっぱり【4】までいっちゃったね。しかもかなり削って【4】。
第1章からはもっと長くなるんだろうなぁ。
【1】から振り返ると、まずやっと「雪乃」が出せてよかった。
まあ、お察しの通り、正体はあの人なんだけども。
元々は「オンとオフでキャラクターが180度変わるキャラクターがほしいな」、というのが発端で、更に「実は身近な人なのにヒロインが気付いてないっていうの、おいしくね??」と進化し、「お嬢様には従者が必須だよなぁ」というわけでこのようになった次第。
実はそれぞれのキャラクターにモチーフになる童話というのがあって、
紅朱→眠れる森の美女
玄鳥→親指姫
万楼→人魚姫
蝉→白雪姫
有砂→不思議の国のアリス
獅貴→シンデレラ
……一見有砂だけお姫様系じゃないし、毛色が違うんだけど、実は玄鳥だけディズニー映画になってない。仲間はずれ。笑。
玄鳥(=つばめ)や有砂(←アリス)は名前もモチーフからとってるしね。
【2】で玄鳥が日向子に傷の手当てを受けているのも元ネタは親指姫。
ちらっと出てきた獅貴が前やってたバンド「mont sucht(モントザハト)」って、長田ノオトさんの漫画のタイトルで、「月と耽溺」「月憑き」「夢遊病」とかいう意味合いの言葉。
中学の時に読んで、言葉の響きがすごく気に入ってしまい、内容はだいぶ忘れたのにタイトルだけはいつまでも覚えてるな~。
そしてある意味一番の難所、【3】。
ライブのシーンを書くにあたり、参考として手持ちの雑誌のライブレポートとか片っ端から読んだんだけど、意外と参考にはならなかったね。笑。
今回の特殊なシチュエーションとして、「どういうバンドかイマイチよくわからない状態で初参戦」なんだよね。
そういう感覚で書かれてるレポってそうはないしね。
だからむしろ自分の経験から思い出して、「好きなバンドのイベントライブで、名前しか知らないけど友達の好きなバンドが対バンだった」っていう状況が一番近いかなと。
そういうわけで非常に肌感覚で書いてます。
章に一回はライブシーンを入れるのが目標。
更にゲームでは、「マルチアングル」的な要素をぜひ入れたい。
今回紅朱をメインにした描写になってるけど、そこで任意で注目するメンバーが選べるというシステム。これはほしい。
劇中詞として「Ghost Ship」が出てきたけど、いかがなものでしょうか。
あれは夜のバイト中にレジにメモ帳置いて書いてた。
あんまり苦労してない。バイト終わるまでに完成したからね。笑。
自分の状況をそのまま書いただけだし。
ぶっちゃけバイトのことを恋愛に置き換えた詞なんだよねぇ。
この店はもはや沈む船だな~、って。そろそろ降りなきゃって。笑。
あえて二人称を中心にしているのは、紅朱は内側に向かったセンチメンタルな詞より、外側に向かったメッセージ性の強い(ともすると説教がましい 笑)詞を書きそうだと思ったから。
ちなみに二番とかは全く考えてないから。爆。
【4】は本当に削りまくってて、あとの章で使いたい場面が結構ある。
「出待ち」シーンは書きたかったかも。
heliodorでファンサービス担当は万楼と蝉。
紅朱や有砂は性格的に無理として、玄鳥は捕まると逃げられなくなっちゃうから危険。笑。
今回蝉がいないから万楼は相当苦労したことだろう……。
第1章はそんな万楼をメインとしたお話なので、長さがどんくらいになるかイマイチわかんないけど、まあ頑張ります。
ご意見・ご感想お待ちしてます☆
2007/06/16 (Sat)
一次創作関連
「日向子さんは、ライターさんなんですよね」
「はい。そうは言いましても、まだまだ駆け出しですけれど」
「ということは業界の人なわけですよね……」
「一応はそういうことになるかと思います」
「そうか……そうなのか……」
「あの~、どうかなさいましたか?」
「気にしないで、お姉さん。玄鳥は『やったー。これで兄貴に怒られずに、堂々と打ち上げに誘えるぞ』と思って少しニヤニヤしちゃっただけだから」
「はい??」
「ちょッ、ちょっと……痛ッ!!」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【4】
「変なこと言わないでくれよ、日向子さんが気を悪くするだろ」
玄鳥はいささか大袈裟な剣幕で万楼に詰め寄った。
詰め寄られた万楼は一切動じる様子もない。
「天井に頭ぶつけるほど慌てることないのに。ボクだってお姉さんが打ち上げに来てくれたら嬉しいからね」
「打ち上げ……わたくしがお邪魔してよろしいのですか??」
「もちろん、俺も歓迎しますよ……その、参加するのheliodorのメンバーだけだから、遠慮しないで下さい。
うちはリーダーの兄貴がアルコールダメだし、万楼がまだ未成年なんで、他のバンドとはあんまり付き合いがなくて。場所もファミレスだったり、誰かの家だったり」
「有砂や蝉はちょっと不満そうだけどね」
日向子は二人に向かってにっこりと微笑を返した。
「ありがとうございます。是非ご一緒させて下さい」
終演後2時間近くが経過し、人気のほとんど無くなった搬入口で、作業を一通り終えた玄鳥と万楼、それに日向子は機材車(玄鳥が私有、提供しているミニバンである)に乗り込んで他のメンバーを待っているところだった。
運転席に玄鳥、2列目のシートに日向子と万楼が少し間をおいて座っていて、ついさっきまで騒がしかった「出待ち」のファンが去った後は、祭の後の静けさだけが残っている。
紅朱は有砂に車を出させて母親を宿泊するホテルまで送りに行っていて、蝉は他バンドの打ち上げに少し顔を出すということだったが……。
「蝉、逃げたね」
万楼がぽつんと呟いた。
「うん……」
複雑な表情で頷いた玄鳥を見やりながら、日向子は先刻の……終演直後の楽屋での出来事を思い出していた。
「……お前、やる気あんのかよ」
低いところから発せられた声とともに、鋭い視線が蝉を射抜いていた。
「とても金が取れるプレイじゃなかった」
腕を組んで壁に背をつけて立つ紅朱は、けして広くはない楽屋でありながら、彼の周囲だけぽっかり無人になるほどの迫力を有していた。
日向子や、他のメンバーたちも楽屋の外に出て、入り口付近からそれを見守っていた。
「あれは……その……」
椅子に座って、少しうつ向き加減なオレンジ頭の青年は、もごもごと口を開く。
「ちょっと……調子、悪かったってゆーか……アクシデントがあって……動揺、して……」
「本編はむしろ調子よかったじゃねェか……なんでアンコールだけあんなザマなんだよ」
「だから……アクシデントが……」
「だとしてもステージでは表に出すな。当たり前だろ?」
「うん……ごめん」
あまりにも修羅場然とした雰囲気に、日向子は心配になってくる。
「お厳しい方ですのね。紅朱様」
「まあ、確かにリーダーはライブにこだわり持ってるから、よくダメ出ししてくるけどね……」
「今日の兄貴はいつもより機嫌悪いな」
「……恥をかかされたと感じとるんちゃうか? 母親がわざわざ見に来とったからな」
冷静に分析する有砂のほうを他三人が思わず振り返ったのは、紅朱に負けず劣らず、彼の機嫌が悪そうだったからだ。
「……確かに蝉はミスを連発したかもしれへん。けど素人が気付くのはせいぜい1つか2つやろ。実際、絶賛やったやないか」
「まあ……確かに母さんは喜んでましたね。出来がどうとかは大して関係ないんでしょうけど……」
「そうですわね」
日向子も玄鳥に同意する。
「ご自分のお子さんが、ご立派にステージに立っていらっしゃったら、それだけで無条件に感動なさるに違いませんもの」
その時、万楼が苦笑して長い睫毛を少し伏せたこと。そして有砂が小さく舌打ちしたことに日向子は気付かなかった。
「もしや……蝉様はわたくしのような部外者が横で見ていたから、調子を崩されたのでは……」
という不安が突如脳裏に浮かび、次の瞬間には、
「あの……!」
修羅場空間に突入していたからだ。
「……!!」
全員が声にならない叫びを上げた。
「なんだ、今取り込み中だから入ってくるな」
紅朱の怒りの矛先は日向子のほうへベクトルを変えようとした。
「待った!」
いきなり蝉が顔を上げた。
「おれが悪いよ。全部悪い……マジで、全部おれの責任だから。関係ない人には当たらないでよ」
一瞬前までとは別人のようなキッパリした口調に、紅朱も微かにひるんだ。
「蝉……お前?」
蝉は、日向子のほうをチラッと見やった。
「キミは、悪くない」
「蝉様……」
「ただあれが《heliodor》だって思わないで。ホントはもっとずっとカッコいいバンドだからさ」
日向子は大きく首を縦にした。
「……はい。わたくし、もっとheliodorを知りたいと思いました。そして……たくさんの人に伝えなくてはと」
日向子は、紅朱のすぐ側までゆっくり歩み寄り、真っ直ぐに彼を見つめた。
「取材を、させて下さい」
「……あんた、マスコミ関係か?」
「はい。わたくしは……」
日向子は、昼間危うく奪われかけたバッグの中に手を突っ込んで、名刺ケースから名刺を引っ張り出した……つもりだったのだが。
「こういうものです」
「……17530」
「え?」
読みあげられた数字に驚いて、自分が手にしているものを良く確かめる。
「あら、間違えましたわ。これは伯爵様のファンクラブの会員証でした」
「……耽溺同盟?」
「はい、耽溺同盟です」
「……へえ。あんた、あいつのファンなんだ」
「あ」
日向子は今更思い出していた。
美々から受けた重要なアドバイスを。
『あんたの高山獅貴命はわかってるけど、伯爵様ネタはheliodorのメンバーの前では言わないようにね』
「……そうでしたわ……」
『リーダーの紅朱がね……高山獅貴のアンチだから』
「……あの、わたくしは……」
『そう。ファンの間じゃ超有名な話。heliodorのメンバーは全員加入する時に高山獅貴の踏み絵踏まされた、とかってネットで通説になってるらしいよ』
「わたくし、踏めません!!」
沈黙の後、最初に蝉が吹き出した。
「ヤバっ……ウケる、それ」
楽屋の外からも笑い声が聞こえてくる。
日向子は何が起きたかよくわからず、ただおろおろしながら紅朱を見つめていた。
紅朱は一つ大きく息を吐いた。
「ネタに決まってんだろ」
「ネタ……?」
「未だに踏み絵説を信じてる奴がいたとは……」
呆れ果てたような顔で目を半眼する。
しかし、微かにではあるが紅朱も笑っていた。
「確かに俺は高山獅貴の野郎は大嫌いだが、別に他の奴が支持するのに口出したりしねェから」
「そう、なのですか……」
日向子は胸を撫で下ろした。
「大体、うちの弟がそれのクリスタル会員だからな」
「クリスタル?」
「なんだ知らねェのか? ナンバーが2桁までの奴は会員証がクリスタルで出来てっから、俗にクリスタル会員って呼ばれてるらしい」
「……まあ」
「それにしても驚きましたわ、玄鳥様が伯爵様のファンでいらしたなんて……しかも、クリスタル会員様とは」
「99番なんで、滑り込みですけどね。持ち歩くと壊しそうで部屋に飾りっぱなしだし……そんなにいいものでも」
「玄鳥は獅貴マニアだから、部屋に遊びに行くと色んなものがあって楽しいよ」
「まあ、是非拝見したいですわ」
「えっ……あ……」
「……ご迷惑ですの?」
「気にしないで、お姉さん。玄鳥は自分の部屋に女の子を上げたことがないから慌てているだけなんだ」
「だ、だからッ、変なこと言うなよ」
「また頭ぶつけるよ」
ライブ後特有の、身体は疲れているのに異様に興奮してハイテンションな状態になりながら、待ち惚け組の話は弾んでいた。
「わたくしの部屋にも、お客様はまだお招きしておりませんわ。時々父の遣いで雪乃は参りますけれど」
「執事さんか何かですか?」
「メイドさんじゃない?」
「いえ、雪乃はわたくしのお世話をしてくれてはいますけれど、使用人ではありませんのよ。
父に師事して勉強しておりますの。後継者候補として父が後見人になっていまして」
「師事、ですか……」
「お姉さんのお父さんって何やってる人??」
「それは……」
真実を口にすべきか否か一瞬躊躇った。
その瞬間、まるで狙いすましたように日向子の携帯が鳴った。
「まあ……噂をすれば、雪乃からですわ」
日向子はまだ視界の隅にあるミニバンを名残惜しそうに振り返った。
「今すぐ迎えに来る……などと。お父様の命令は理不尽ですわ……」
雪乃からの電話を切った日向子は玄鳥と万楼に、打ち上げに参加出来なくなった旨を伝えた。
二人はとても残念そうだったが、日向子も心から残念で仕方がなかった。
通りに向けて歩いていた日向子は、ふと向こうから歩いてくる人影を見て歩みを止めた。
「紅朱様……?」
風でふわりと揺れる赤い髪は、夜の薄闇でもはっきりとわかる。
「あんたか」
紅朱は日向子から数メートル離れたところまで歩いてきて、同じように立ち止まった。
「有砂様は……?」
「一応蝉を迎えに行かせた。ま、本当によその打ち上げに参加してんのかどうかは怪しいとこだけどな……」
「そうですの……」
「あんたはもう帰るのか? 打ち上げに誘われなかったのか?」
日向子が事情を話すと、紅朱は「そうか」と呟くように言って、少し間をおいて尋ねた。
「あんた、お嬢様なんだろ? なんで雑誌記者になんかなろうと思った?」
日向子は何の躊躇もなく即答した。
「伯爵様のお近付きになりたかったからです」
「……よくそんな不純な動機を堂々と言えるな」
「嘘をついても仕方がありませんわ。それに、今はそれだけではないですし」
紅朱はフッと軽く笑みを浮かべた。
「まあ、正直なところは買ってやってもいいか」
「はい?」
「……一応、メンバーには取材に協力するように言っておいてやる。言われなくても協力しそうな奴もいるが……」
「まあ、ありがとうございます! では、改めてお渡しし損なった名刺を……」
日向子はバッグを探りながら、紅朱までの数メートルの距離を走って近付こうとした。が。
「きゃ……!」
残り1メートルの石畳を蹴った爪先が、石の割れ目に引っ掛かった。
「なっ」
滑り落ちた名刺入れからこぼれた名刺が少し風に泳ぎながらぱらぱらと散らばる。
そして。
日向子の華奢な身体は紅朱の胸に飛び込み……そしてそのまま、勢い余って押し倒した。
「……」
「……」
冷たい地べたに尻餅をついた紅朱、そしてその上に完全に乗っかった状態の日向子。
日向子は状況の整理が追い付かず、きょとんとした顔のまま、
「これ、どうぞ」
拾った名刺の一枚を差し出した。
「ん……ああ」
紅朱も呆然としたまま、それを受け取った。
「森久保日向子、か」
息がかかるほど近くで、あの美声が囁いた。
「色々大胆な奴だな」
親愛なる伯爵様。
日向子は今日、初めて殿方を押し倒してしまいました。
ともあれ……素敵な夜でした。
記念すべき、第一歩の夜です。
《第1章につづく》
「はい。そうは言いましても、まだまだ駆け出しですけれど」
「ということは業界の人なわけですよね……」
「一応はそういうことになるかと思います」
「そうか……そうなのか……」
「あの~、どうかなさいましたか?」
「気にしないで、お姉さん。玄鳥は『やったー。これで兄貴に怒られずに、堂々と打ち上げに誘えるぞ』と思って少しニヤニヤしちゃっただけだから」
「はい??」
「ちょッ、ちょっと……痛ッ!!」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【4】
「変なこと言わないでくれよ、日向子さんが気を悪くするだろ」
玄鳥はいささか大袈裟な剣幕で万楼に詰め寄った。
詰め寄られた万楼は一切動じる様子もない。
「天井に頭ぶつけるほど慌てることないのに。ボクだってお姉さんが打ち上げに来てくれたら嬉しいからね」
「打ち上げ……わたくしがお邪魔してよろしいのですか??」
「もちろん、俺も歓迎しますよ……その、参加するのheliodorのメンバーだけだから、遠慮しないで下さい。
うちはリーダーの兄貴がアルコールダメだし、万楼がまだ未成年なんで、他のバンドとはあんまり付き合いがなくて。場所もファミレスだったり、誰かの家だったり」
「有砂や蝉はちょっと不満そうだけどね」
日向子は二人に向かってにっこりと微笑を返した。
「ありがとうございます。是非ご一緒させて下さい」
終演後2時間近くが経過し、人気のほとんど無くなった搬入口で、作業を一通り終えた玄鳥と万楼、それに日向子は機材車(玄鳥が私有、提供しているミニバンである)に乗り込んで他のメンバーを待っているところだった。
運転席に玄鳥、2列目のシートに日向子と万楼が少し間をおいて座っていて、ついさっきまで騒がしかった「出待ち」のファンが去った後は、祭の後の静けさだけが残っている。
紅朱は有砂に車を出させて母親を宿泊するホテルまで送りに行っていて、蝉は他バンドの打ち上げに少し顔を出すということだったが……。
「蝉、逃げたね」
万楼がぽつんと呟いた。
「うん……」
複雑な表情で頷いた玄鳥を見やりながら、日向子は先刻の……終演直後の楽屋での出来事を思い出していた。
「……お前、やる気あんのかよ」
低いところから発せられた声とともに、鋭い視線が蝉を射抜いていた。
「とても金が取れるプレイじゃなかった」
腕を組んで壁に背をつけて立つ紅朱は、けして広くはない楽屋でありながら、彼の周囲だけぽっかり無人になるほどの迫力を有していた。
日向子や、他のメンバーたちも楽屋の外に出て、入り口付近からそれを見守っていた。
「あれは……その……」
椅子に座って、少しうつ向き加減なオレンジ頭の青年は、もごもごと口を開く。
「ちょっと……調子、悪かったってゆーか……アクシデントがあって……動揺、して……」
「本編はむしろ調子よかったじゃねェか……なんでアンコールだけあんなザマなんだよ」
「だから……アクシデントが……」
「だとしてもステージでは表に出すな。当たり前だろ?」
「うん……ごめん」
あまりにも修羅場然とした雰囲気に、日向子は心配になってくる。
「お厳しい方ですのね。紅朱様」
「まあ、確かにリーダーはライブにこだわり持ってるから、よくダメ出ししてくるけどね……」
「今日の兄貴はいつもより機嫌悪いな」
「……恥をかかされたと感じとるんちゃうか? 母親がわざわざ見に来とったからな」
冷静に分析する有砂のほうを他三人が思わず振り返ったのは、紅朱に負けず劣らず、彼の機嫌が悪そうだったからだ。
「……確かに蝉はミスを連発したかもしれへん。けど素人が気付くのはせいぜい1つか2つやろ。実際、絶賛やったやないか」
「まあ……確かに母さんは喜んでましたね。出来がどうとかは大して関係ないんでしょうけど……」
「そうですわね」
日向子も玄鳥に同意する。
「ご自分のお子さんが、ご立派にステージに立っていらっしゃったら、それだけで無条件に感動なさるに違いませんもの」
その時、万楼が苦笑して長い睫毛を少し伏せたこと。そして有砂が小さく舌打ちしたことに日向子は気付かなかった。
「もしや……蝉様はわたくしのような部外者が横で見ていたから、調子を崩されたのでは……」
という不安が突如脳裏に浮かび、次の瞬間には、
「あの……!」
修羅場空間に突入していたからだ。
「……!!」
全員が声にならない叫びを上げた。
「なんだ、今取り込み中だから入ってくるな」
紅朱の怒りの矛先は日向子のほうへベクトルを変えようとした。
「待った!」
いきなり蝉が顔を上げた。
「おれが悪いよ。全部悪い……マジで、全部おれの責任だから。関係ない人には当たらないでよ」
一瞬前までとは別人のようなキッパリした口調に、紅朱も微かにひるんだ。
「蝉……お前?」
蝉は、日向子のほうをチラッと見やった。
「キミは、悪くない」
「蝉様……」
「ただあれが《heliodor》だって思わないで。ホントはもっとずっとカッコいいバンドだからさ」
日向子は大きく首を縦にした。
「……はい。わたくし、もっとheliodorを知りたいと思いました。そして……たくさんの人に伝えなくてはと」
日向子は、紅朱のすぐ側までゆっくり歩み寄り、真っ直ぐに彼を見つめた。
「取材を、させて下さい」
「……あんた、マスコミ関係か?」
「はい。わたくしは……」
日向子は、昼間危うく奪われかけたバッグの中に手を突っ込んで、名刺ケースから名刺を引っ張り出した……つもりだったのだが。
「こういうものです」
「……17530」
「え?」
読みあげられた数字に驚いて、自分が手にしているものを良く確かめる。
「あら、間違えましたわ。これは伯爵様のファンクラブの会員証でした」
「……耽溺同盟?」
「はい、耽溺同盟です」
「……へえ。あんた、あいつのファンなんだ」
「あ」
日向子は今更思い出していた。
美々から受けた重要なアドバイスを。
『あんたの高山獅貴命はわかってるけど、伯爵様ネタはheliodorのメンバーの前では言わないようにね』
「……そうでしたわ……」
『リーダーの紅朱がね……高山獅貴のアンチだから』
「……あの、わたくしは……」
『そう。ファンの間じゃ超有名な話。heliodorのメンバーは全員加入する時に高山獅貴の踏み絵踏まされた、とかってネットで通説になってるらしいよ』
「わたくし、踏めません!!」
沈黙の後、最初に蝉が吹き出した。
「ヤバっ……ウケる、それ」
楽屋の外からも笑い声が聞こえてくる。
日向子は何が起きたかよくわからず、ただおろおろしながら紅朱を見つめていた。
紅朱は一つ大きく息を吐いた。
「ネタに決まってんだろ」
「ネタ……?」
「未だに踏み絵説を信じてる奴がいたとは……」
呆れ果てたような顔で目を半眼する。
しかし、微かにではあるが紅朱も笑っていた。
「確かに俺は高山獅貴の野郎は大嫌いだが、別に他の奴が支持するのに口出したりしねェから」
「そう、なのですか……」
日向子は胸を撫で下ろした。
「大体、うちの弟がそれのクリスタル会員だからな」
「クリスタル?」
「なんだ知らねェのか? ナンバーが2桁までの奴は会員証がクリスタルで出来てっから、俗にクリスタル会員って呼ばれてるらしい」
「……まあ」
「それにしても驚きましたわ、玄鳥様が伯爵様のファンでいらしたなんて……しかも、クリスタル会員様とは」
「99番なんで、滑り込みですけどね。持ち歩くと壊しそうで部屋に飾りっぱなしだし……そんなにいいものでも」
「玄鳥は獅貴マニアだから、部屋に遊びに行くと色んなものがあって楽しいよ」
「まあ、是非拝見したいですわ」
「えっ……あ……」
「……ご迷惑ですの?」
「気にしないで、お姉さん。玄鳥は自分の部屋に女の子を上げたことがないから慌てているだけなんだ」
「だ、だからッ、変なこと言うなよ」
「また頭ぶつけるよ」
ライブ後特有の、身体は疲れているのに異様に興奮してハイテンションな状態になりながら、待ち惚け組の話は弾んでいた。
「わたくしの部屋にも、お客様はまだお招きしておりませんわ。時々父の遣いで雪乃は参りますけれど」
「執事さんか何かですか?」
「メイドさんじゃない?」
「いえ、雪乃はわたくしのお世話をしてくれてはいますけれど、使用人ではありませんのよ。
父に師事して勉強しておりますの。後継者候補として父が後見人になっていまして」
「師事、ですか……」
「お姉さんのお父さんって何やってる人??」
「それは……」
真実を口にすべきか否か一瞬躊躇った。
その瞬間、まるで狙いすましたように日向子の携帯が鳴った。
「まあ……噂をすれば、雪乃からですわ」
日向子はまだ視界の隅にあるミニバンを名残惜しそうに振り返った。
「今すぐ迎えに来る……などと。お父様の命令は理不尽ですわ……」
雪乃からの電話を切った日向子は玄鳥と万楼に、打ち上げに参加出来なくなった旨を伝えた。
二人はとても残念そうだったが、日向子も心から残念で仕方がなかった。
通りに向けて歩いていた日向子は、ふと向こうから歩いてくる人影を見て歩みを止めた。
「紅朱様……?」
風でふわりと揺れる赤い髪は、夜の薄闇でもはっきりとわかる。
「あんたか」
紅朱は日向子から数メートル離れたところまで歩いてきて、同じように立ち止まった。
「有砂様は……?」
「一応蝉を迎えに行かせた。ま、本当によその打ち上げに参加してんのかどうかは怪しいとこだけどな……」
「そうですの……」
「あんたはもう帰るのか? 打ち上げに誘われなかったのか?」
日向子が事情を話すと、紅朱は「そうか」と呟くように言って、少し間をおいて尋ねた。
「あんた、お嬢様なんだろ? なんで雑誌記者になんかなろうと思った?」
日向子は何の躊躇もなく即答した。
「伯爵様のお近付きになりたかったからです」
「……よくそんな不純な動機を堂々と言えるな」
「嘘をついても仕方がありませんわ。それに、今はそれだけではないですし」
紅朱はフッと軽く笑みを浮かべた。
「まあ、正直なところは買ってやってもいいか」
「はい?」
「……一応、メンバーには取材に協力するように言っておいてやる。言われなくても協力しそうな奴もいるが……」
「まあ、ありがとうございます! では、改めてお渡しし損なった名刺を……」
日向子はバッグを探りながら、紅朱までの数メートルの距離を走って近付こうとした。が。
「きゃ……!」
残り1メートルの石畳を蹴った爪先が、石の割れ目に引っ掛かった。
「なっ」
滑り落ちた名刺入れからこぼれた名刺が少し風に泳ぎながらぱらぱらと散らばる。
そして。
日向子の華奢な身体は紅朱の胸に飛び込み……そしてそのまま、勢い余って押し倒した。
「……」
「……」
冷たい地べたに尻餅をついた紅朱、そしてその上に完全に乗っかった状態の日向子。
日向子は状況の整理が追い付かず、きょとんとした顔のまま、
「これ、どうぞ」
拾った名刺の一枚を差し出した。
「ん……ああ」
紅朱も呆然としたまま、それを受け取った。
「森久保日向子、か」
息がかかるほど近くで、あの美声が囁いた。
「色々大胆な奴だな」
親愛なる伯爵様。
日向子は今日、初めて殿方を押し倒してしまいました。
ともあれ……素敵な夜でした。
記念すべき、第一歩の夜です。
《第1章につづく》
2007/06/13 (Wed)
一次創作関連
「……番までのチケットをお持ちのお客様ご入場下さい」
「どうぞ押し合わず前へお進み下さい」
「こちらでチケットを拝見致します」
「カメラ、テープレコーダーはお持ちじゃありませんか??」
「ドリンク代500円です……はい、どうぞ」
「今日はどちらのバンドを見にいらっしゃいましたか??」
「……heliodor、です」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【3】
キャパシティの1.6倍ほどの人数を飲み込んだライブハウス「渋谷カルテット」。
4バンド目の演奏が終わり、客電がついた。
あとはトリの一組を残すばかりだ。
日向子は、わずかに逆流を始める人波の真っ只中でぴょんぴょん飛び跳ねていた。
一切の段差が存在しないこのライブハウスでは、身長150センチジャストの日向子の視界は完全に閉ざされてしまう。
「皆様……どちらにいらっしゃるのでしょう」
日向子が探しているのは先刻出会ったあの3人だった。
「実は、俺たちもそこに行くんです……だから、きっとまたすぐ会えますね」
どこか恥ずかしそうにそう言った、青年の顔を思い出す。
「……もしお会い出来なかったらどうしましょう。お名前も伺っておりませんし……」
男性客はあまりいないし、3人のうち1人はかなりの長身なのだから、 絶対に目立つと思うが、なぜかそれらしきは見当たらない。
「いらっしゃいませんわ……ワイン色の髪の背の高い方と、薄い桃色の髪のお綺麗な方と、それに黒髪に白いメッシュの……」
確認するようにボソボソ呟いていた日向子は、ふと何かを思い出しそうになった。
「……なぜでしょう……何かが引っ掛かりますわ……」
「誰かを探しているの? お友達とはぐれたのかしら」
明らかに挙動不審な様子だった日向子に、親切にも声をかけてきた女性がいた。
客層からやや逸脱した、少々年配とおぼしき女性で、優しそうな雰囲気だった。
「お友達……になりたい方々を探しておりますの」
「そう。見付かるといいわね」
その笑顔が、なんとなくあの黒髪の青年のそれとダブって見えた。
「あの……もしやあなた様は……」
問掛けは悲鳴にかき消えた。
目の前の風景が闇に溶けて、1秒の半分くらいの間をおいて、甲高い波音を響かせて押し寄せた怒濤が、自分の意思とは関係なしに身体を前へ前へと押し流していく。
「あ……」
一瞬波の隙間で、あの年配女性が倒れかけているのが目に入ったが、日向子はもう波に沈み、運ばれていくしかなかった。
「今の方……大丈夫でしょうか……」
スモークで煙るステージが、人の頭ごしにモザイクのように見え隠れする。日向子は身動きのとれない、他人の体温や呼吸や鼓動がダイレクトに4方から伝わる密集地帯で、爪先が攣るほど必死に背伸びしながら、なんとか可視の領域を広げようと頑張っていた。
本日のトリを飾るバンド……この華やかな狂乱の津波が求めるもの。
heliodor、をその目に焼き付けるために。
そしてギターのサウンドを全面に出したオープニングSEが響く中、とうとうメンバーが姿を現した。
「紅朱~ッ!!」
「マロ様ぁ!!」
叫ぶ声が幾重にも重なって、際限なくボルテージが上がっていくフロアで、日向子だけが爪先立ちでぽかんと立ち尽くす。
「……まあ」
先程いくら見渡しても見付からなかった人たちの姿を、ステージの上に見つけた。
一瞬、人違いだろうかと思ったが、すぐにそれは一転して確信となる。
すぐ隣にいた二人組の会話が耳に届いた。
「ねえ、玄鳥さぁ、右手に絆創膏貼ってない?」
「怪我してんのかなあ」
日向子もまさにそれを見ていた。
右手の甲に絆創膏を貼ったギタリストはまるで誰かを探すように、こちらを見渡している。
「あの方々……heliodorのメンバー様たちでしたのね……!」
どおりで引っ掛かった筈だった。
彼らの容姿の特徴は、資料に載っていた写真と全く同じだったのだから。
私服かステージ衣装か、メイクをしているかいないかの違いがそれに気付かせなかった。
ほの暗い緋色の照明を浴びながら、センターで意識を集中するように斜め下を向いている赤い髪の小柄な青年もまた、昨日カフェで出会ったあの人物。
そうに違いなかった。
「なんというめぐり会わせでしょう……」
ここに到る前にメンバー五人のうち四人と偶然にも出会っていたとは。
実はそれだけではないのだが、少なくとも日向子はそう思っていた。
SEがフェードするのと比例して、フロアはやがて水を打ったような静けさに変わっていった。
そして。
ボーカル、紅朱が顔を上げた。
「Ghost Ship」
ウイスパーボイスでタイトルが告げられた瞬間、再び沸き起こる歓声とともに、歪んだ重低音のイントロが空気を震わせるように鳴り響いた。
疾走感あふれるギターにタイトなビートを刻むドラム、風貌からは想像出来ない骨太なベースのライン、無機質なほど正確に絡み合うそれらの音に、彩りを与える華やかな音色はキーボード。
聞く者全てを強制的にバンドの生み出す世界に引っ張りこむ、畳み掛けるようなスピードチューン。
《まだ許すの? まだ揺れるの?
独り遊びが 思い出せない
君は夜型 彼仕様
泥の船だと 知りながら
降りられない 君
night cruise
航海は 終わらない》
艶を含んだハリのあるボーカルは、甘く耳に心地好い音域。
《言えないから?
癒えないから?
ぬるま湯も 5年浸かれば媚薬
シャドウの藍も 彼仕様
純愛の亡霊船(ゴースト・シップ)
風のない海
dead rock
後悔は 終わらない》
ステージの端ギリギリに立って、マイクスタンドを自在に操りながら唄う紅朱は、このそれぞれに独特の輝きを放つメンバーの中において、誰よりも鮮明なオーラをかもし出す。
間違いなく、このバンドの主役は彼だ。
《ねえ そろそろ
僕と行きませんか?
角度の違うキスと
平手打ちする勇気を 君に》
日向子は息をするのすら忘れるほど、ステージに釘付けになっていた。
「すごい……」
《「馴れ合い」「お芝居」「述懐」
他愛ない 「自愛」
言い訳を全て 論破して
君の弱さは 殺してあげる
残骸は そこに沈めて
海底に 辿り着く頃には
多分 朝に気付く筈だから……》
「あ」
日向子が明確な意識を取り戻したのは、アンコールの第一声が響いた瞬間だった。
すぐに沸き起こるアンコールの嵐の中で、日向子は立ち尽くす。
頭の芯が痺れていて、なんだかぼーっとするようだった。
高山獅貴のライブに行った後も似たような状態になるが、それとはまた違うような気もする。
散らばった思考をかき集めていると、ふと先程の二人組の声がまた聞こえた。
「さっき、途中で倒れて運ばれてた人いたね」
「うん、見えた。結構いいトシのおばさんだよね」
日向子の脳裏に、あの女性の優しげな顔が浮かんだ。
「まさか……」
日向子は、暗転したまま再びメンバーたちが戻るのを待ち続けるステージを見上げて、一瞬悩んだが、意を決したようにそちらに背を向けた。
日向子はまだ人もまばらなドリンクカウンターでミネラルウォーターを引き換えて、物販スペースを横切り、あの女性の姿を探し求めた。
と。
「だから言わんこっちゃないだろうが!」
聞き覚えのある怒声が響いた。
バックステージに向かう通路の扉の前で、今の今までステージに立っていたボーカルの紅朱が仁王立ちしていた。
激しいライブの余韻で、赤い長髪は汗で首筋に張り付き、肩口に引っ掛けた白いタオルとコントラストを描いている。
「ババアにはスタンディングのライブなんて無理に決まってる……だから俺は来るなって言ったんだよ」
紅朱の見下ろした目線の先には、パイプ椅子にしなだれかかるように座ったあの女性だった。
心なしか青い顔をしている。
「……ごめんね、お兄ちゃん」
少しかすれた囁き。
やっぱり、と日向子は思った。
あの女性は兄弟の母なのだろう。
女性的な柔らかい雰囲気ではあるが、よく見れば顔のパーツが二人によく似ている。
「……綾ちゃんもね、最初はすごく反対したんだけど……母さん、どうしても二人のやっているバンドが見たかったから無理を言って頼んだの……だからお兄ちゃん、綾ちゃんを叱らないであげてね」
紅朱は渋い顔をしたまま、深く溜め息をつく。
「あんたになんかあったら……ジジイに会わす顔ないだろ。頼むから、無茶するなよ……」
「……父さんも本当は来たかったみたいよ」
「……まさか」
「本当よ。確かに昔は父さん、二人が音楽の道に進んだこと、よく思ってなかったかもしれない。だけど今は応援してるのよ」
「……そんなわけねェだろ……だって俺は」
紅朱の、ステージの上で観客を堂々と煽っていた姿からは想像もできないような、どこか悲しげな顔。
それは日向子の胸を少し締め付けた。
「……我慢なんて、しなくていいの」
紅朱の母は苦しげながらも、優しく微笑んだ。
「お兄ちゃんも綾ちゃんも、私たちの自慢の息子……あんなにかっこいい姿見たら、ますます鼻が高いわね」
「……ありが、とう」
ぎこちなく感謝を口にする様は、不器用な優しさを感じさせた。
「……紅朱様」
とっさに呼び掛けていた。
驚いたように振り返る紅朱。
「げッ、昨日の……っていうか、なんでいる? 見てたのかよ!」
顔を赤くしてうろたえる息子を、母親は微笑ましいものを見るように見ていた。
日向子は二人に歩み寄り、いきなり頭を下げた。
「昨日のこと、申し訳ありませんでした」
「……あ?」
「紅朱様はお言葉こそ乱暴でいらっしゃいますが、お母様思いの優しい殿方でしたのね」
「な、何言ってんだ、お前……やめろ。俺はそういうキャラでは売ってねェ」
タオルで赤らんだ顔を半分多いながら顔を背ける。
「紅朱~、そろそろ出ないとお客さんはけちゃうかもしんないよ~」」
バックステージのほうからメンバーの一人、アップにしたオレンジの髪が鮮やかなキーボードの蝉がやって来た。
「ってちょっとちょっと、何こんな時に女のコナンパして……」
目が合った瞬間、蝉はまるで幽霊でも目撃したような顔で硬直した。
「おじょ……!?」
「はい?」
「……こ、紅朱ッ、とにかく早く来てッ」
尻に火がついたような勢いでUターンしてステージ裏に去ってしまった。
「なんだ、あいつ……」
紅朱もいぶかしがりながら、それを目で見送ったあと、
「ババアは椅子に座って袖からステージ見ろよ……それと……まあ、いいや。お前も一緒に来い」
と日向子に顎で通路を示した。
「よくわからないが、うちのギタリストが、昨日の女に会ったらVIP待遇にしてやれって言うんでな」
《つづく》
「どうぞ押し合わず前へお進み下さい」
「こちらでチケットを拝見致します」
「カメラ、テープレコーダーはお持ちじゃありませんか??」
「ドリンク代500円です……はい、どうぞ」
「今日はどちらのバンドを見にいらっしゃいましたか??」
「……heliodor、です」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【3】
キャパシティの1.6倍ほどの人数を飲み込んだライブハウス「渋谷カルテット」。
4バンド目の演奏が終わり、客電がついた。
あとはトリの一組を残すばかりだ。
日向子は、わずかに逆流を始める人波の真っ只中でぴょんぴょん飛び跳ねていた。
一切の段差が存在しないこのライブハウスでは、身長150センチジャストの日向子の視界は完全に閉ざされてしまう。
「皆様……どちらにいらっしゃるのでしょう」
日向子が探しているのは先刻出会ったあの3人だった。
「実は、俺たちもそこに行くんです……だから、きっとまたすぐ会えますね」
どこか恥ずかしそうにそう言った、青年の顔を思い出す。
「……もしお会い出来なかったらどうしましょう。お名前も伺っておりませんし……」
男性客はあまりいないし、3人のうち1人はかなりの長身なのだから、 絶対に目立つと思うが、なぜかそれらしきは見当たらない。
「いらっしゃいませんわ……ワイン色の髪の背の高い方と、薄い桃色の髪のお綺麗な方と、それに黒髪に白いメッシュの……」
確認するようにボソボソ呟いていた日向子は、ふと何かを思い出しそうになった。
「……なぜでしょう……何かが引っ掛かりますわ……」
「誰かを探しているの? お友達とはぐれたのかしら」
明らかに挙動不審な様子だった日向子に、親切にも声をかけてきた女性がいた。
客層からやや逸脱した、少々年配とおぼしき女性で、優しそうな雰囲気だった。
「お友達……になりたい方々を探しておりますの」
「そう。見付かるといいわね」
その笑顔が、なんとなくあの黒髪の青年のそれとダブって見えた。
「あの……もしやあなた様は……」
問掛けは悲鳴にかき消えた。
目の前の風景が闇に溶けて、1秒の半分くらいの間をおいて、甲高い波音を響かせて押し寄せた怒濤が、自分の意思とは関係なしに身体を前へ前へと押し流していく。
「あ……」
一瞬波の隙間で、あの年配女性が倒れかけているのが目に入ったが、日向子はもう波に沈み、運ばれていくしかなかった。
「今の方……大丈夫でしょうか……」
スモークで煙るステージが、人の頭ごしにモザイクのように見え隠れする。日向子は身動きのとれない、他人の体温や呼吸や鼓動がダイレクトに4方から伝わる密集地帯で、爪先が攣るほど必死に背伸びしながら、なんとか可視の領域を広げようと頑張っていた。
本日のトリを飾るバンド……この華やかな狂乱の津波が求めるもの。
heliodor、をその目に焼き付けるために。
そしてギターのサウンドを全面に出したオープニングSEが響く中、とうとうメンバーが姿を現した。
「紅朱~ッ!!」
「マロ様ぁ!!」
叫ぶ声が幾重にも重なって、際限なくボルテージが上がっていくフロアで、日向子だけが爪先立ちでぽかんと立ち尽くす。
「……まあ」
先程いくら見渡しても見付からなかった人たちの姿を、ステージの上に見つけた。
一瞬、人違いだろうかと思ったが、すぐにそれは一転して確信となる。
すぐ隣にいた二人組の会話が耳に届いた。
「ねえ、玄鳥さぁ、右手に絆創膏貼ってない?」
「怪我してんのかなあ」
日向子もまさにそれを見ていた。
右手の甲に絆創膏を貼ったギタリストはまるで誰かを探すように、こちらを見渡している。
「あの方々……heliodorのメンバー様たちでしたのね……!」
どおりで引っ掛かった筈だった。
彼らの容姿の特徴は、資料に載っていた写真と全く同じだったのだから。
私服かステージ衣装か、メイクをしているかいないかの違いがそれに気付かせなかった。
ほの暗い緋色の照明を浴びながら、センターで意識を集中するように斜め下を向いている赤い髪の小柄な青年もまた、昨日カフェで出会ったあの人物。
そうに違いなかった。
「なんというめぐり会わせでしょう……」
ここに到る前にメンバー五人のうち四人と偶然にも出会っていたとは。
実はそれだけではないのだが、少なくとも日向子はそう思っていた。
SEがフェードするのと比例して、フロアはやがて水を打ったような静けさに変わっていった。
そして。
ボーカル、紅朱が顔を上げた。
「Ghost Ship」
ウイスパーボイスでタイトルが告げられた瞬間、再び沸き起こる歓声とともに、歪んだ重低音のイントロが空気を震わせるように鳴り響いた。
疾走感あふれるギターにタイトなビートを刻むドラム、風貌からは想像出来ない骨太なベースのライン、無機質なほど正確に絡み合うそれらの音に、彩りを与える華やかな音色はキーボード。
聞く者全てを強制的にバンドの生み出す世界に引っ張りこむ、畳み掛けるようなスピードチューン。
《まだ許すの? まだ揺れるの?
独り遊びが 思い出せない
君は夜型 彼仕様
泥の船だと 知りながら
降りられない 君
night cruise
航海は 終わらない》
艶を含んだハリのあるボーカルは、甘く耳に心地好い音域。
《言えないから?
癒えないから?
ぬるま湯も 5年浸かれば媚薬
シャドウの藍も 彼仕様
純愛の亡霊船(ゴースト・シップ)
風のない海
dead rock
後悔は 終わらない》
ステージの端ギリギリに立って、マイクスタンドを自在に操りながら唄う紅朱は、このそれぞれに独特の輝きを放つメンバーの中において、誰よりも鮮明なオーラをかもし出す。
間違いなく、このバンドの主役は彼だ。
《ねえ そろそろ
僕と行きませんか?
角度の違うキスと
平手打ちする勇気を 君に》
日向子は息をするのすら忘れるほど、ステージに釘付けになっていた。
「すごい……」
《「馴れ合い」「お芝居」「述懐」
他愛ない 「自愛」
言い訳を全て 論破して
君の弱さは 殺してあげる
残骸は そこに沈めて
海底に 辿り着く頃には
多分 朝に気付く筈だから……》
「あ」
日向子が明確な意識を取り戻したのは、アンコールの第一声が響いた瞬間だった。
すぐに沸き起こるアンコールの嵐の中で、日向子は立ち尽くす。
頭の芯が痺れていて、なんだかぼーっとするようだった。
高山獅貴のライブに行った後も似たような状態になるが、それとはまた違うような気もする。
散らばった思考をかき集めていると、ふと先程の二人組の声がまた聞こえた。
「さっき、途中で倒れて運ばれてた人いたね」
「うん、見えた。結構いいトシのおばさんだよね」
日向子の脳裏に、あの女性の優しげな顔が浮かんだ。
「まさか……」
日向子は、暗転したまま再びメンバーたちが戻るのを待ち続けるステージを見上げて、一瞬悩んだが、意を決したようにそちらに背を向けた。
日向子はまだ人もまばらなドリンクカウンターでミネラルウォーターを引き換えて、物販スペースを横切り、あの女性の姿を探し求めた。
と。
「だから言わんこっちゃないだろうが!」
聞き覚えのある怒声が響いた。
バックステージに向かう通路の扉の前で、今の今までステージに立っていたボーカルの紅朱が仁王立ちしていた。
激しいライブの余韻で、赤い長髪は汗で首筋に張り付き、肩口に引っ掛けた白いタオルとコントラストを描いている。
「ババアにはスタンディングのライブなんて無理に決まってる……だから俺は来るなって言ったんだよ」
紅朱の見下ろした目線の先には、パイプ椅子にしなだれかかるように座ったあの女性だった。
心なしか青い顔をしている。
「……ごめんね、お兄ちゃん」
少しかすれた囁き。
やっぱり、と日向子は思った。
あの女性は兄弟の母なのだろう。
女性的な柔らかい雰囲気ではあるが、よく見れば顔のパーツが二人によく似ている。
「……綾ちゃんもね、最初はすごく反対したんだけど……母さん、どうしても二人のやっているバンドが見たかったから無理を言って頼んだの……だからお兄ちゃん、綾ちゃんを叱らないであげてね」
紅朱は渋い顔をしたまま、深く溜め息をつく。
「あんたになんかあったら……ジジイに会わす顔ないだろ。頼むから、無茶するなよ……」
「……父さんも本当は来たかったみたいよ」
「……まさか」
「本当よ。確かに昔は父さん、二人が音楽の道に進んだこと、よく思ってなかったかもしれない。だけど今は応援してるのよ」
「……そんなわけねェだろ……だって俺は」
紅朱の、ステージの上で観客を堂々と煽っていた姿からは想像もできないような、どこか悲しげな顔。
それは日向子の胸を少し締め付けた。
「……我慢なんて、しなくていいの」
紅朱の母は苦しげながらも、優しく微笑んだ。
「お兄ちゃんも綾ちゃんも、私たちの自慢の息子……あんなにかっこいい姿見たら、ますます鼻が高いわね」
「……ありが、とう」
ぎこちなく感謝を口にする様は、不器用な優しさを感じさせた。
「……紅朱様」
とっさに呼び掛けていた。
驚いたように振り返る紅朱。
「げッ、昨日の……っていうか、なんでいる? 見てたのかよ!」
顔を赤くしてうろたえる息子を、母親は微笑ましいものを見るように見ていた。
日向子は二人に歩み寄り、いきなり頭を下げた。
「昨日のこと、申し訳ありませんでした」
「……あ?」
「紅朱様はお言葉こそ乱暴でいらっしゃいますが、お母様思いの優しい殿方でしたのね」
「な、何言ってんだ、お前……やめろ。俺はそういうキャラでは売ってねェ」
タオルで赤らんだ顔を半分多いながら顔を背ける。
「紅朱~、そろそろ出ないとお客さんはけちゃうかもしんないよ~」」
バックステージのほうからメンバーの一人、アップにしたオレンジの髪が鮮やかなキーボードの蝉がやって来た。
「ってちょっとちょっと、何こんな時に女のコナンパして……」
目が合った瞬間、蝉はまるで幽霊でも目撃したような顔で硬直した。
「おじょ……!?」
「はい?」
「……こ、紅朱ッ、とにかく早く来てッ」
尻に火がついたような勢いでUターンしてステージ裏に去ってしまった。
「なんだ、あいつ……」
紅朱もいぶかしがりながら、それを目で見送ったあと、
「ババアは椅子に座って袖からステージ見ろよ……それと……まあ、いいや。お前も一緒に来い」
と日向子に顎で通路を示した。
「よくわからないが、うちのギタリストが、昨日の女に会ったらVIP待遇にしてやれって言うんでな」
《つづく》
2007/06/12 (Tue)
雑記
昨日仕事のことで大ダメージを受けたせいか、安定しない気象のせいか、若干風邪を引いたかも。汗。
まあ喉が痛い程度なんだけどね。私はいっつも喉からだからね~。気を付けてないと。
声の仕事をやろうとしてるわけだし。
それにしても……やっぱりムカつく。超ムカつく。ムカつくとしか言いようのない胸焼けみたいな苛立ちが未だにくすぶってる感じ。
今月から天冲殺だからあんまり大胆な行動は控えたかったんだけど、ちょっと我慢の限界なんで。
生活かかってんのがわかってんなら、なんでそんないい加減な対応するのかな。
意味がわからん。
乗り換えます。
誰が何と言おうと、もう嫌です。
続くかどうかはわかんないけど、これからは自分がやりたい仕事より、自分を必要としてくれる仕事をやってみよう。
まあ喉が痛い程度なんだけどね。私はいっつも喉からだからね~。気を付けてないと。
声の仕事をやろうとしてるわけだし。
それにしても……やっぱりムカつく。超ムカつく。ムカつくとしか言いようのない胸焼けみたいな苛立ちが未だにくすぶってる感じ。
今月から天冲殺だからあんまり大胆な行動は控えたかったんだけど、ちょっと我慢の限界なんで。
生活かかってんのがわかってんなら、なんでそんないい加減な対応するのかな。
意味がわからん。
乗り換えます。
誰が何と言おうと、もう嫌です。
続くかどうかはわかんないけど、これからは自分がやりたい仕事より、自分を必要としてくれる仕事をやってみよう。
2007/06/11 (Mon)
一次創作関連
写真の真ん中に指を置く。
「赤い髪がボーカルの紅朱(コウシュ)様」
そのすぐ右。
「黒い髪に白いメッシュがギターの玄鳥(クロト)様」
その更に右。
「ワイン色の髪の背の高い方がドラムの有砂(アリサ)様」
反対側。
「オレンジ色の髪はキーボードの蝉(ゼン)様」
そして最後。
「白っぽいピンク色の髪の方はベースの万楼(マロウ)様ですわね」
「うん、合ってる。ちゃんと覚えられたね」
美々は満足そうに頷く。
「彼等が『heliodor(ヘリオドール)』。あんたが担当するバンドだよ」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【2】
「2000年冬、ボーカルの紅朱、キーボードの蝉、初代ベースの粋(スイ)による3ピースのメロコアバンドとして結成。
2002年夏、ドラムの……有砂が加入。
2004年秋、粋の脱退とともに突然の活動休止。
2006年春、ギターの玄鳥と2代目ベースの万楼を加えて、これも突然の活動再開。
再開以後はハードロックに移行したと言われているけど、これは主なメロディーメーカーが粋から玄鳥に変わったからだね。
結成当時から現代に到るまで音源はデモテの一本すら発表されてないから、初期のheliodorを知らないファンも多いって話」
「まあ……波瀾万丈なバンド様でいらっしゃいますのね」
デスクに並べた資料に黄色い蛍光ペンでラインを引きながら、日向子は感心したように呟いた。
「ファンの方もさぞやご心配なさったでしょうね。わたくしも《mont sucht(モントザハト)》が解散して、伯爵様がおひとりで活動を再開されるまでは生きた心地が致しませんでしたもの」
「そっか~、あんたのルーツは《mont sucht》だもんね」
「ええ、《mont sucht》のデビュー曲をたまたまラジオで耳にすることがなければ今のわたくしはありませんでしたわ。
ああ、この声はわたくしの伯爵様……と、一瞬で確信致しましたのよ」
手首を飾る月の意匠のシルバーブレスを指でなぞりながら恍惚とした表情を浮かべる、日向子のいつものクセが出始めたことに苦笑いしながら、美々はコホンと咳払いした。
「あんたの高山獅貴命はわかってるけど、伯爵様ネタはheliodorのメンバーの前では言わないようにね」
「……はい? 何故でしょうか」
「リーダーの紅朱がね……高山獅貴のアンチだから」
「アンチ……」
「そう。ファンの間じゃ超有名な話。heliodorのメンバーは全員加入する時に高山獅貴の踏み絵踏まされた、とかってネットで通説になってるらしいよ」
「まあ……そのようなことが?」
世の中に色々な考えの人間がいるのは当然のことではあるが、自分の何より大好きなものが嫌いなどと聞くと少なからず寂しい気持ちになるのは仕方のないことだった。
「……それは残念ですわね」
「ま、嫌いなもんはしょうがないって。とにかくそこだけ気を付けてね。忠告は以上……はい、これ」
美々は、ラインだらけの資料の上にそっと……チケットを一枚置いた。
「実際音聞かなきゃどうにもなんないでしょ? 今日、渋谷カルテットのイベントライブにこのバンドが参加するから、見ておいで」
それは都内では比較的小規模なライブハウスで、日向子も何度か取材のアシストで先輩記者に同行したことがあった。
資料で見たheliodorの現在の動員数からすれば、随分と狭い会場であり、更に対バンが4組もいるということであれば、単純に計算しても倍率が5倍である。恐らくファンにとってはプレミアとも言えるチケットだ。
「本来はシークレットに近いライブで、マスコミ関係者も遮断なんだけどね。知り合いのバンドが出るからなんとか一枚確保してもらったよ」
「美々お姉さま……わざわざわたくしのために?」
「厄介な仕事押し付けたんだからこのくらいは任せてよね」
美々の面倒見の良さは日向子もよくわかっていることだが、この取材に関しては妙に気合いが入っているように感じていた。
ただ新米の日向子を心配してのことなのだろうか。
それとも美々はheliodorというバンドに何か特別な思い入れがあるのだろうか……?
日向子には未だに美々がこの企画を自ら手掛けないことが不思議に思えてならなかった。
「あの……本当にわたくしが行ってよろしいのですか?」
念を押すように問う。
「あたしは、日向子に任せる……あたしには出来ないことも日向子になら出来る……そう思うから」
念を押すように答えが返ってきた。
日向子はしっかり頷いて、チケットを手に取った。
新たな決意を胸に抱きながら。
「まあ……あれは……!」
いきなり立ち止まるなり、日向子はうっとりと斜め上を見上げた。
通行人がちょっと迷惑そうに日向子を避けていく。
視線の先にあったものは、大手CDショップの入り口……その上方を飾る広告看板だった。
《高山獅貴 New Single 「Phase of the moon」DROP》
あの涼しげな眼差しが日向子を見下ろしていた。
CD自体は当然のように予約して、一昨日の火曜に「フライングゲット」していたが、広告を見掛ける度に日向子はこの状態に陥る。
そして今日は残念ながら、そんな日向子をたしなめてくれる人間は周りに存在しなかった。
ドン。
「きゃっ」
思いきり突き飛ばされて日向子の身体が前のめりに傾いた。
そしてその瞬間、肩にかけていた白いショルダーバッグが、ぐっと引っ張られ、そして腕をすり抜けた。
「……あッ」
慣性の法則に導かれてアスファルトに向かうところだった日向子の身体は不意に支えを得た。
「大丈夫??」
くの字に曲がった細い腰を誰かの腕がしっかり支える。
「あ、ありがとうございます」
体勢を立て直して声の主を見た。
まるで白磁の人形のような美少年が大きな瞳で日向子を見つめていた。
日向子の危機を救った少年は、少し前に流れた、薄桃色のサラサラした髪を横によけて微笑んだ。
「怪我はない?」
「あ、はい……でもバッグが」
「それなら多分、ちゃんと取り返してくれるから心配しないで」
「……え??」
すぐに少し離れたところで大きな歓声が上がった。
「ほらね」
美少年が視線を歓声のほうへスライドさせ、日向子もそれに倣い、すぐに驚きの表情を浮かべた。
「まあ……」
歩行者が円形に避けてぽっかり空いた空間に、うつ伏せに倒れた中年男と、その肩口を足で踏みつけながら、男の手からバッグをもぎ取る青年の姿があった。
「ひったくりです。誰か、110番をお願いします」
青年の声に、近くにいたサラリーマン風の男が急いで携帯を取り出していた。
中年のひったくり男は完全に失神しているらしく、青年が離れても立ち上がるどころかぴくりとも動かなかった。
「大丈夫でしょうか……あのおじさま」
思わず呟いてしまった日向子に、美少年は一瞬目を丸くした。
「お姉さん、ひったくりの心配をしてあげてるの? 随分優しいというか……」
「ただのマヌケちゃうか?」
いつからそこにいたのか、日本人離れして背の高い別の青年が抑揚のない関西弁で淡々と評した。
「高そうなバッグぶら下げて、こんな往来でぼんやりつっ立っとったほうも悪いと思うで……」
日向子は青年の顔を見上げて、ぱちぱち瞬きした。
「わたくしもそう思います。もう8回目ですもの」
「……8回目……?」
「わたくしは、バッグを持つのに向いてないんでしょうか??」
「……なんやそれ」
思わず毒気を抜かれて唖然としている青年に、横の美少年が小さく吹き出した。
「面白いお姉さんだ……毒舌大魔王様に勝っちゃったね」
「……アホか。勝手にけったいな異名つけんといてくれ」
仲がいいのか悪いのかよくわからないコンビを、とりあえず見守っていた日向子に、
「あの」
背中から声をかけてきたのは、たった今ひったくり犯を成敗して大活躍したにも関わらず、一瞬全員に忘れられていたお手柄青年だった。
「これ……中身、確認してみて下さいね」
奪還したバッグを差し出す彼を見て、日向子はあることに気付き、「まあ」と短く声を上げた。
青年も気付いていたらしく、少し複雑な笑みを浮かべた。
「あの、昨日もお会いしましたよね? あの時はお騒がせしてすいませんでした」
青年はカフェで遭遇したあの兄弟の、弟、のほうだった。
「いいえ、そのようなことよりも、危ないところを本当にありがとうございました。あなた様のおかげで大切なものを持っていかれずに済みましたわ」
「そんなに大切なものが入ってたんですか?」
「ええ、ですけれど……」
日向子は唐突に顔を曇らせて、バッグを持っていた青年の手を、取った。
「えっ」
青年は驚いて反射的に手を引こうとしたが、日向子は、離さない。
「わたくしのせいで、お怪我をなさいましたのね」
「えッ……いや、それは……ただ、えっと、バッグを取る時に、相手の爪がちょっと……ってだけだし……」
何故か完全にしどろもどろになった青年の右手の甲に、赤くみみず腫れのような跡が2センチほど残っていて、じわっと血がにじみ出している。
「……あの、別に痛くもないし。問題ないんで……」
その言葉は日向子だけでなく、連れの二人にも向けられているようだった。
長身の青年は、
「……ま、仮に粉砕骨折してようが甘やかさへんけどな」
と鼻で笑い、美少年は、
「男の勲章だね」
と楽しそうに評した。
「少々お待ち下さいませ」
日向子はいそいそと……いや、傍目からはかなり緩慢なアクションであったが、本人としては大急ぎでバッグを開いて、小さなポーチから絆創膏を取り出した。
「後できちんと消毒なさって下さいませね?」
「あ……はい」
日向子は青年の手に、丁寧に絆創膏を貼って、その上から手を重ねた。
「お大事になさいませね?」
少し小首を傾けてにっこり笑ってみせた。
それが、いかに罪深い微笑みであるか。
日向子本人はまったく気が付いていなかった。
それも仕方ないだろう。日向子の手が離れた後も、固まったまま立ち尽くしている青年ですら、まだ自覚できていなかったのだから。
「……」
「どうかなさいまして?」
「え、いや……なんでも……その、早く、大切なものが無事か確認を……」
「あ、そうでしたわね」
日向子は急いで(もちろん彼女なりの全速力で、ということである)バッグを探り、
「大丈夫ですわ。ちゃんとありました」
今一番大切なもの……美々から貰ったライブチケットを取り出して見せた。
「あ」
日向子を囲む三人は、ほとんど同時に声を上げた。
「はい?」
不思議そうな日向子に、それぞれがどこか含みのある表情を浮かべた。
「あの~……何か??」
太陽はその強大な引力で、運命を少しずつ引き寄せている。
《END》
「赤い髪がボーカルの紅朱(コウシュ)様」
そのすぐ右。
「黒い髪に白いメッシュがギターの玄鳥(クロト)様」
その更に右。
「ワイン色の髪の背の高い方がドラムの有砂(アリサ)様」
反対側。
「オレンジ色の髪はキーボードの蝉(ゼン)様」
そして最後。
「白っぽいピンク色の髪の方はベースの万楼(マロウ)様ですわね」
「うん、合ってる。ちゃんと覚えられたね」
美々は満足そうに頷く。
「彼等が『heliodor(ヘリオドール)』。あんたが担当するバンドだよ」
《序章 太陽の国へ -Let's go,Rock'n'Role lady-》【2】
「2000年冬、ボーカルの紅朱、キーボードの蝉、初代ベースの粋(スイ)による3ピースのメロコアバンドとして結成。
2002年夏、ドラムの……有砂が加入。
2004年秋、粋の脱退とともに突然の活動休止。
2006年春、ギターの玄鳥と2代目ベースの万楼を加えて、これも突然の活動再開。
再開以後はハードロックに移行したと言われているけど、これは主なメロディーメーカーが粋から玄鳥に変わったからだね。
結成当時から現代に到るまで音源はデモテの一本すら発表されてないから、初期のheliodorを知らないファンも多いって話」
「まあ……波瀾万丈なバンド様でいらっしゃいますのね」
デスクに並べた資料に黄色い蛍光ペンでラインを引きながら、日向子は感心したように呟いた。
「ファンの方もさぞやご心配なさったでしょうね。わたくしも《mont sucht(モントザハト)》が解散して、伯爵様がおひとりで活動を再開されるまでは生きた心地が致しませんでしたもの」
「そっか~、あんたのルーツは《mont sucht》だもんね」
「ええ、《mont sucht》のデビュー曲をたまたまラジオで耳にすることがなければ今のわたくしはありませんでしたわ。
ああ、この声はわたくしの伯爵様……と、一瞬で確信致しましたのよ」
手首を飾る月の意匠のシルバーブレスを指でなぞりながら恍惚とした表情を浮かべる、日向子のいつものクセが出始めたことに苦笑いしながら、美々はコホンと咳払いした。
「あんたの高山獅貴命はわかってるけど、伯爵様ネタはheliodorのメンバーの前では言わないようにね」
「……はい? 何故でしょうか」
「リーダーの紅朱がね……高山獅貴のアンチだから」
「アンチ……」
「そう。ファンの間じゃ超有名な話。heliodorのメンバーは全員加入する時に高山獅貴の踏み絵踏まされた、とかってネットで通説になってるらしいよ」
「まあ……そのようなことが?」
世の中に色々な考えの人間がいるのは当然のことではあるが、自分の何より大好きなものが嫌いなどと聞くと少なからず寂しい気持ちになるのは仕方のないことだった。
「……それは残念ですわね」
「ま、嫌いなもんはしょうがないって。とにかくそこだけ気を付けてね。忠告は以上……はい、これ」
美々は、ラインだらけの資料の上にそっと……チケットを一枚置いた。
「実際音聞かなきゃどうにもなんないでしょ? 今日、渋谷カルテットのイベントライブにこのバンドが参加するから、見ておいで」
それは都内では比較的小規模なライブハウスで、日向子も何度か取材のアシストで先輩記者に同行したことがあった。
資料で見たheliodorの現在の動員数からすれば、随分と狭い会場であり、更に対バンが4組もいるということであれば、単純に計算しても倍率が5倍である。恐らくファンにとってはプレミアとも言えるチケットだ。
「本来はシークレットに近いライブで、マスコミ関係者も遮断なんだけどね。知り合いのバンドが出るからなんとか一枚確保してもらったよ」
「美々お姉さま……わざわざわたくしのために?」
「厄介な仕事押し付けたんだからこのくらいは任せてよね」
美々の面倒見の良さは日向子もよくわかっていることだが、この取材に関しては妙に気合いが入っているように感じていた。
ただ新米の日向子を心配してのことなのだろうか。
それとも美々はheliodorというバンドに何か特別な思い入れがあるのだろうか……?
日向子には未だに美々がこの企画を自ら手掛けないことが不思議に思えてならなかった。
「あの……本当にわたくしが行ってよろしいのですか?」
念を押すように問う。
「あたしは、日向子に任せる……あたしには出来ないことも日向子になら出来る……そう思うから」
念を押すように答えが返ってきた。
日向子はしっかり頷いて、チケットを手に取った。
新たな決意を胸に抱きながら。
「まあ……あれは……!」
いきなり立ち止まるなり、日向子はうっとりと斜め上を見上げた。
通行人がちょっと迷惑そうに日向子を避けていく。
視線の先にあったものは、大手CDショップの入り口……その上方を飾る広告看板だった。
《高山獅貴 New Single 「Phase of the moon」DROP》
あの涼しげな眼差しが日向子を見下ろしていた。
CD自体は当然のように予約して、一昨日の火曜に「フライングゲット」していたが、広告を見掛ける度に日向子はこの状態に陥る。
そして今日は残念ながら、そんな日向子をたしなめてくれる人間は周りに存在しなかった。
ドン。
「きゃっ」
思いきり突き飛ばされて日向子の身体が前のめりに傾いた。
そしてその瞬間、肩にかけていた白いショルダーバッグが、ぐっと引っ張られ、そして腕をすり抜けた。
「……あッ」
慣性の法則に導かれてアスファルトに向かうところだった日向子の身体は不意に支えを得た。
「大丈夫??」
くの字に曲がった細い腰を誰かの腕がしっかり支える。
「あ、ありがとうございます」
体勢を立て直して声の主を見た。
まるで白磁の人形のような美少年が大きな瞳で日向子を見つめていた。
日向子の危機を救った少年は、少し前に流れた、薄桃色のサラサラした髪を横によけて微笑んだ。
「怪我はない?」
「あ、はい……でもバッグが」
「それなら多分、ちゃんと取り返してくれるから心配しないで」
「……え??」
すぐに少し離れたところで大きな歓声が上がった。
「ほらね」
美少年が視線を歓声のほうへスライドさせ、日向子もそれに倣い、すぐに驚きの表情を浮かべた。
「まあ……」
歩行者が円形に避けてぽっかり空いた空間に、うつ伏せに倒れた中年男と、その肩口を足で踏みつけながら、男の手からバッグをもぎ取る青年の姿があった。
「ひったくりです。誰か、110番をお願いします」
青年の声に、近くにいたサラリーマン風の男が急いで携帯を取り出していた。
中年のひったくり男は完全に失神しているらしく、青年が離れても立ち上がるどころかぴくりとも動かなかった。
「大丈夫でしょうか……あのおじさま」
思わず呟いてしまった日向子に、美少年は一瞬目を丸くした。
「お姉さん、ひったくりの心配をしてあげてるの? 随分優しいというか……」
「ただのマヌケちゃうか?」
いつからそこにいたのか、日本人離れして背の高い別の青年が抑揚のない関西弁で淡々と評した。
「高そうなバッグぶら下げて、こんな往来でぼんやりつっ立っとったほうも悪いと思うで……」
日向子は青年の顔を見上げて、ぱちぱち瞬きした。
「わたくしもそう思います。もう8回目ですもの」
「……8回目……?」
「わたくしは、バッグを持つのに向いてないんでしょうか??」
「……なんやそれ」
思わず毒気を抜かれて唖然としている青年に、横の美少年が小さく吹き出した。
「面白いお姉さんだ……毒舌大魔王様に勝っちゃったね」
「……アホか。勝手にけったいな異名つけんといてくれ」
仲がいいのか悪いのかよくわからないコンビを、とりあえず見守っていた日向子に、
「あの」
背中から声をかけてきたのは、たった今ひったくり犯を成敗して大活躍したにも関わらず、一瞬全員に忘れられていたお手柄青年だった。
「これ……中身、確認してみて下さいね」
奪還したバッグを差し出す彼を見て、日向子はあることに気付き、「まあ」と短く声を上げた。
青年も気付いていたらしく、少し複雑な笑みを浮かべた。
「あの、昨日もお会いしましたよね? あの時はお騒がせしてすいませんでした」
青年はカフェで遭遇したあの兄弟の、弟、のほうだった。
「いいえ、そのようなことよりも、危ないところを本当にありがとうございました。あなた様のおかげで大切なものを持っていかれずに済みましたわ」
「そんなに大切なものが入ってたんですか?」
「ええ、ですけれど……」
日向子は唐突に顔を曇らせて、バッグを持っていた青年の手を、取った。
「えっ」
青年は驚いて反射的に手を引こうとしたが、日向子は、離さない。
「わたくしのせいで、お怪我をなさいましたのね」
「えッ……いや、それは……ただ、えっと、バッグを取る時に、相手の爪がちょっと……ってだけだし……」
何故か完全にしどろもどろになった青年の右手の甲に、赤くみみず腫れのような跡が2センチほど残っていて、じわっと血がにじみ出している。
「……あの、別に痛くもないし。問題ないんで……」
その言葉は日向子だけでなく、連れの二人にも向けられているようだった。
長身の青年は、
「……ま、仮に粉砕骨折してようが甘やかさへんけどな」
と鼻で笑い、美少年は、
「男の勲章だね」
と楽しそうに評した。
「少々お待ち下さいませ」
日向子はいそいそと……いや、傍目からはかなり緩慢なアクションであったが、本人としては大急ぎでバッグを開いて、小さなポーチから絆創膏を取り出した。
「後できちんと消毒なさって下さいませね?」
「あ……はい」
日向子は青年の手に、丁寧に絆創膏を貼って、その上から手を重ねた。
「お大事になさいませね?」
少し小首を傾けてにっこり笑ってみせた。
それが、いかに罪深い微笑みであるか。
日向子本人はまったく気が付いていなかった。
それも仕方ないだろう。日向子の手が離れた後も、固まったまま立ち尽くしている青年ですら、まだ自覚できていなかったのだから。
「……」
「どうかなさいまして?」
「え、いや……なんでも……その、早く、大切なものが無事か確認を……」
「あ、そうでしたわね」
日向子は急いで(もちろん彼女なりの全速力で、ということである)バッグを探り、
「大丈夫ですわ。ちゃんとありました」
今一番大切なもの……美々から貰ったライブチケットを取り出して見せた。
「あ」
日向子を囲む三人は、ほとんど同時に声を上げた。
「はい?」
不思議そうな日向子に、それぞれがどこか含みのある表情を浮かべた。
「あの~……何か??」
太陽はその強大な引力で、運命を少しずつ引き寄せている。
《END》
2007/06/10 (Sun)
Angelo周辺
今日はAngeloETツアー@東京ファイナルに参戦してきた。
場所はZepp東京。しかもCSで生中継という、ね。Angeloで生って。
お茶の間にエロスとフェロモンとゲイとその他アレな集団をダイレクトにお届けするのかと。しかも夕飯時に。
よく考えてみたらなんで誰も止めなかったんだろうね。笑。
雨が上がってから出掛けても余裕で間に合った。会場に着いたらまずは荷物をロッカーに入れようと思ったんだけど、流石にだいぶ埋まってて、通路も狭いからあんまり奥まで行きたくないし、「まあここでいっかなぁ」って膝くらいの高さのとこにとりあえず入れて。
通路抜けてから気付いた。
54番だった。笑。
ち、違うから。私ジャーの残党じゃないから。笑笑。
今日はKOHTAさんの真っ正面の五列目くらいにたどり着き、見るのは二の次で(ビデオ録画セットしてあるから)暴れようと思ってたんだけど、なぜか目の前が背の低い人ばっかりでKOHTA可視率90%というミラクルが発生。
なんで、暴れつつもそこはもう堪能したさ。早速セルフブランドの衣装着てて(背中にロゴ入ってた)久々に萌え死に危機。
とりあえず今すぐそれを売れと。売ってくれと。笑。
と思ってたら最後もの投げの時に大量に投げてた。Tシャツ? タンク?? タンク希望。笑。
前半はMC短目でわりとスピーディーに展開してたような印象だった。
キリトの煽りはとりあえず放送コードを守って「ブレインがクレイジーなボーイズ・アンド・ガールズ」と。笑。
前半のセトリだと、やっぱりセレモニーいいよなぁ。最近超楽しみ。お立ち台ベースソロから始まるしさ~!!
キターってなるよなあ。
そのうちパラノイアみたいに煽ってから始めてくれやしないかと期待。笑。
あとキリトがテレビ向けに「人格を変えて」披露した挨拶?がだいたいこんな感じ。
「みんな元気か~? みんなのAngeloです! みんな愛してるよー!!」
逆にこれ放送して大丈夫か。笑。
アンコールの時にはもう、何かの封印が解かれたように放送事故の嵐だしね。
「(中継してくれるのは)ありがたいんですけど、スカパーは本当にAngeloを知っているんでしょうか。これからやる曲とかわかってるんでしょうか」
「一応カメラに向かって……スカパー大好き!(フォロー??)」
っていうことでやらないかと覚悟していた「猿」も普通に演奏。流石だ。笑。
メンバー紹介では、TAKEOさんにキリトから「TAKEOフェロモン男爵、T F Dです」とついに略称が送られていた。笑。
最近のあまりの男爵っぷり(?)に一瞬タカーになりそうになる私がいる……。
ま、次で引き戻されるんだけどね。
KOHTAしゃんはいつの間にか「タンクトップ王子」に即位していた。
王子だけど男爵には勝てないらしい。なぜ。笑。
しかも「まあゲイよりは王子のほうが……ねえ?」って誰も聞いてないのに生中継でゲイ発言だよ。
放送しか見てない人がガチだと思ったらどうするんだ。爆。
ラストにもっかいホロやって終わりだったんだけど、最後に全員並んだ時完全に上手に寄っちゃっててウケた。なんか全然真ん中じゃないのよ。テレビだとどんな感じなんだか。笑。
そして帰りにガチャガチャやったら八回中五回が男爵。一人男爵祭で。笑。
でも前も書いたようにやっぱり3分の1ではスリルが足りないのよねー。汗。
とりあえず帰ったらビデオチェックだなぁ。
場所はZepp東京。しかもCSで生中継という、ね。Angeloで生って。
お茶の間にエロスとフェロモンとゲイとその他アレな集団をダイレクトにお届けするのかと。しかも夕飯時に。
よく考えてみたらなんで誰も止めなかったんだろうね。笑。
雨が上がってから出掛けても余裕で間に合った。会場に着いたらまずは荷物をロッカーに入れようと思ったんだけど、流石にだいぶ埋まってて、通路も狭いからあんまり奥まで行きたくないし、「まあここでいっかなぁ」って膝くらいの高さのとこにとりあえず入れて。
通路抜けてから気付いた。
54番だった。笑。
ち、違うから。私ジャーの残党じゃないから。笑笑。
今日はKOHTAさんの真っ正面の五列目くらいにたどり着き、見るのは二の次で(ビデオ録画セットしてあるから)暴れようと思ってたんだけど、なぜか目の前が背の低い人ばっかりでKOHTA可視率90%というミラクルが発生。
なんで、暴れつつもそこはもう堪能したさ。早速セルフブランドの衣装着てて(背中にロゴ入ってた)久々に萌え死に危機。
とりあえず今すぐそれを売れと。売ってくれと。笑。
と思ってたら最後もの投げの時に大量に投げてた。Tシャツ? タンク?? タンク希望。笑。
前半はMC短目でわりとスピーディーに展開してたような印象だった。
キリトの煽りはとりあえず放送コードを守って「ブレインがクレイジーなボーイズ・アンド・ガールズ」と。笑。
前半のセトリだと、やっぱりセレモニーいいよなぁ。最近超楽しみ。お立ち台ベースソロから始まるしさ~!!
キターってなるよなあ。
そのうちパラノイアみたいに煽ってから始めてくれやしないかと期待。笑。
あとキリトがテレビ向けに「人格を変えて」披露した挨拶?がだいたいこんな感じ。
「みんな元気か~? みんなのAngeloです! みんな愛してるよー!!」
逆にこれ放送して大丈夫か。笑。
アンコールの時にはもう、何かの封印が解かれたように放送事故の嵐だしね。
「(中継してくれるのは)ありがたいんですけど、スカパーは本当にAngeloを知っているんでしょうか。これからやる曲とかわかってるんでしょうか」
「一応カメラに向かって……スカパー大好き!(フォロー??)」
っていうことでやらないかと覚悟していた「猿」も普通に演奏。流石だ。笑。
メンバー紹介では、TAKEOさんにキリトから「TAKEOフェロモン男爵、T F Dです」とついに略称が送られていた。笑。
最近のあまりの男爵っぷり(?)に一瞬タカーになりそうになる私がいる……。
ま、次で引き戻されるんだけどね。
KOHTAしゃんはいつの間にか「タンクトップ王子」に即位していた。
王子だけど男爵には勝てないらしい。なぜ。笑。
しかも「まあゲイよりは王子のほうが……ねえ?」って誰も聞いてないのに生中継でゲイ発言だよ。
放送しか見てない人がガチだと思ったらどうするんだ。爆。
ラストにもっかいホロやって終わりだったんだけど、最後に全員並んだ時完全に上手に寄っちゃっててウケた。なんか全然真ん中じゃないのよ。テレビだとどんな感じなんだか。笑。
そして帰りにガチャガチャやったら八回中五回が男爵。一人男爵祭で。笑。
でも前も書いたようにやっぱり3分の1ではスリルが足りないのよねー。汗。
とりあえず帰ったらビデオチェックだなぁ。