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プロフィール
HN:
麻咲
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1983/05/03
職業:
フリーター
趣味:
ライブ、乙女ゲーム、カラオケ
自己紹介:
好きなバンド
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
Sound Schedule
PIERROT
angela
GRANRODEO
Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
janne Da Arc
Angelo
犬神サーカス団
シド
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Acid Black Cherry 他
好きな乙女ゲームとひいきキャラ
アンジェリークシリーズ(チャーリー)
遙かなる時空の中でシリーズ(無印・橘友雅、2.藤原幸鷹、3.平知盛、4・サザキ)
金色のコルダシリーズ(1&2・王崎信武、3・榊大地、氷渡貴史)
ネオアンジェリーク(ジェット)
フルハウスキス(羽倉麻生)
ときめきメモリアルGSシリーズ(1・葉月珪、2・若王子貴文)
幕末恋華シリーズ(大石鍬次郎、陸奥陽之助)
花宵ロマネスク(紫陽)
Vitaminシリーズ(X→七瀬瞬、真田正輝、永田智也 Z→方丈慧、不破千聖、加賀美蘭丸)
僕と私の恋愛事情(シグルド)
ラスト・エスコート2(天祢一星)
アラビアンズ・ロスト(ロベルト=クロムウェル)
魔法使いとご主人様(セラス=ドラグーン)
危険なマイ★アイドル(日下部浩次)
ラブマジ(双薔冬也)
星空のコミックガーデン(轟木圭吾)
リトルアンカー(フェンネル=ヨーク)
暗闇の果てで君を待つ(風野太郎)
ラブΦサミット(ジャン=マリー)
妄想彼氏学園(神崎鷹也) 他
バイト先→某損保系コールセンター
アクセス解析
2007/08/01 (Wed)
雑記
久々にカラッと晴れた休日だったので、川越に行って来た。
ヒトカラしに。
天気関係ねェ。爆。
どんなもんか一回行ってみたかった「カラオケの鉄人」に行ってみたんだけど、5機種ついて平日30分10円なので、パセラに比べるとかなり安い。
他の部屋の音がほとんど聞こえなかったから、防音はしっかりしてる。
が。
店員の感じがあんまりよろしくなかった。
あとリモコンはかなり使い辛いし誤作動が多いので注意が必要。
帰り際に今日唄った曲のリストをくれました。
曲順が唄った順と違うのが謎だが。
こんな感じ↓
gravitation/angela
HEAVEN/GRANRODEO
NightmaRe/SNoW
Once&Forever/GRANRODEO
夏恋/シド
鍾乳洞の彷徨人/和仁
拍動/キリト
亡國覚醒カタルシス/ALI PROJECT
初恋よ夏嵐になれ/イノリ&流山詩紋
flowin'~浮雲~/セフル&ラン
氷炎の薔薇の不幸【UGAクリップ】/シリン
永遠の桜吹雪をあなたに…【UGAクリップ】/八葉
終の刻に抱くもの【UGAクリップ】/アクラム
瞳と瞳のignition【UGAクリップ】/関智一
鳥の詩/Lia
緋色の涙の女よ【UGAクリップ】/橘友雅
翳りの封印 HACHIYO-SHYO MIX【UGAクリップ】/安倍泰明
ミルフィーユ・ドリーム【UGAクリップ】/流山詩紋
儚さと強さのあいだで…【UGAクリップ】/永泉
炎の涙で泣きじゃくれ【UGAクリップ】/イノリ
蒼い秘密の夢をみた/イサト
風待ち月に吹く風のように【UGAクリップ】/藤原鷹通
蒼い魂の龍巻/イサト
追憶の森に捧ぐ【UGAクリップ】/源頼久
SPELL MAGIC/Acid Black Cherry
忘却へのオマージュ/エルンスト
憧憬のプリズムは七色/有川譲
今宵、小悪魔になれ/ヒノエ
Love Power/Aice5
ドキドキ☆ワクワク/埴之塚光邦
遙かのクリップをついに全種類見たぜ~。
アクラムやシリンにまであるとは思わなかったのでなんか感動した。泣。
流石アニソンに力入れまくりのUGAらしく、編集も概ね素晴らしい出来。
八葉個人はだいたい、初登場、宝玉を得る、個人のメインエピソード、四方の札を入手……みたいな流れで構成されてて、見比べると、泰明さんがメインの回はどれも作画が綺麗でなんかずるいと思った。笑。
特に秀逸なのは八葉全員の「永遠の桜吹雪をあなたに…」。
ソロパートのとこ、ちゃんとその八葉が出る!
サビは四神それぞれが札を入手するシーンで統一、間奏も四神ごとで出てくるし、よくできてたなぁ。
ただ。
ツッコミ甲斐のあるクリップもあります。
まず鷹通さん。
半分以上のシーンでシリンと絡んでるので、なんか悪質な女ストーカーに狙われてる人風。笑。
しかもシリン、何故か執拗に鷹通さんの眼鏡を外しまくる。爆。
後ろからひょいっと取り上げたり、鞭で叩き落としたり……そんなに素顔が見たいのかと!
本編で見ると間にたくさん話が入るから気にならないんだけど、続けて見るとすごいことになるのだね。
一方シリンのクリップは八割が鷹通さんとの絡みです。笑。
多分こっちは、編集した人が普通に誤解してるんだと思う。
「氷炎の薔薇の不幸」でシリンが唄っている「あなた」ってもちろん「アクラム」のことなんだけど、鷹通さんのことだと思ってないか?
一番の歌詞だけだと「いくら誘惑してもあの人はあたしなんかに全然興味がないみたい。しくしく」な感じなんで、そうとれなくもないんだけどね。汗。
肝心のアクラムと絡む場面は一番ラストのワンカッとだけという……まさに不幸。
UGA公式カップルなんだね。きっと。
私は鷹通さんとシリンの組み合わせは結構好きなので問題ないがね。
ヒトカラしに。
天気関係ねェ。爆。
どんなもんか一回行ってみたかった「カラオケの鉄人」に行ってみたんだけど、5機種ついて平日30分10円なので、パセラに比べるとかなり安い。
他の部屋の音がほとんど聞こえなかったから、防音はしっかりしてる。
が。
店員の感じがあんまりよろしくなかった。
あとリモコンはかなり使い辛いし誤作動が多いので注意が必要。
帰り際に今日唄った曲のリストをくれました。
曲順が唄った順と違うのが謎だが。
こんな感じ↓
gravitation/angela
HEAVEN/GRANRODEO
NightmaRe/SNoW
Once&Forever/GRANRODEO
夏恋/シド
鍾乳洞の彷徨人/和仁
拍動/キリト
亡國覚醒カタルシス/ALI PROJECT
初恋よ夏嵐になれ/イノリ&流山詩紋
flowin'~浮雲~/セフル&ラン
氷炎の薔薇の不幸【UGAクリップ】/シリン
永遠の桜吹雪をあなたに…【UGAクリップ】/八葉
終の刻に抱くもの【UGAクリップ】/アクラム
瞳と瞳のignition【UGAクリップ】/関智一
鳥の詩/Lia
緋色の涙の女よ【UGAクリップ】/橘友雅
翳りの封印 HACHIYO-SHYO MIX【UGAクリップ】/安倍泰明
ミルフィーユ・ドリーム【UGAクリップ】/流山詩紋
儚さと強さのあいだで…【UGAクリップ】/永泉
炎の涙で泣きじゃくれ【UGAクリップ】/イノリ
蒼い秘密の夢をみた/イサト
風待ち月に吹く風のように【UGAクリップ】/藤原鷹通
蒼い魂の龍巻/イサト
追憶の森に捧ぐ【UGAクリップ】/源頼久
SPELL MAGIC/Acid Black Cherry
忘却へのオマージュ/エルンスト
憧憬のプリズムは七色/有川譲
今宵、小悪魔になれ/ヒノエ
Love Power/Aice5
ドキドキ☆ワクワク/埴之塚光邦
遙かのクリップをついに全種類見たぜ~。
アクラムやシリンにまであるとは思わなかったのでなんか感動した。泣。
流石アニソンに力入れまくりのUGAらしく、編集も概ね素晴らしい出来。
八葉個人はだいたい、初登場、宝玉を得る、個人のメインエピソード、四方の札を入手……みたいな流れで構成されてて、見比べると、泰明さんがメインの回はどれも作画が綺麗でなんかずるいと思った。笑。
特に秀逸なのは八葉全員の「永遠の桜吹雪をあなたに…」。
ソロパートのとこ、ちゃんとその八葉が出る!
サビは四神それぞれが札を入手するシーンで統一、間奏も四神ごとで出てくるし、よくできてたなぁ。
ただ。
ツッコミ甲斐のあるクリップもあります。
まず鷹通さん。
半分以上のシーンでシリンと絡んでるので、なんか悪質な女ストーカーに狙われてる人風。笑。
しかもシリン、何故か執拗に鷹通さんの眼鏡を外しまくる。爆。
後ろからひょいっと取り上げたり、鞭で叩き落としたり……そんなに素顔が見たいのかと!
本編で見ると間にたくさん話が入るから気にならないんだけど、続けて見るとすごいことになるのだね。
一方シリンのクリップは八割が鷹通さんとの絡みです。笑。
多分こっちは、編集した人が普通に誤解してるんだと思う。
「氷炎の薔薇の不幸」でシリンが唄っている「あなた」ってもちろん「アクラム」のことなんだけど、鷹通さんのことだと思ってないか?
一番の歌詞だけだと「いくら誘惑してもあの人はあたしなんかに全然興味がないみたい。しくしく」な感じなんで、そうとれなくもないんだけどね。汗。
肝心のアクラムと絡む場面は一番ラストのワンカッとだけという……まさに不幸。
UGA公式カップルなんだね。きっと。
私は鷹通さんとシリンの組み合わせは結構好きなので問題ないがね。
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2007/08/01 (Wed)
アニメ・特撮感想
ルルーシュが入ってるね。7位だ。
昨日は6位だったのか。
コードギアス、じゃなくてあくまでルルーシュなのか。笑。
私も前はルルーシュ、ルルーシュって言ってて「あれ、メインタイトルなんだっけ?」ってよく思ったが。
コードギアスの二期のサブタイトルは「反逆のルルーシュ」じゃない気がするなぁ。
主役交代説もあるけど……私はルルーシュにもうちょっと頑張って頂きたい。
いよいよ性格が歪んできたところで魔王への道を突き進んでほしい。笑。
ここまでやらかして、もう後戻りはありえないんでね。間違っても改心とかしないように。
私からユフィの谷間という癒しを奪ったからには最後まで苦しめと。笑。
二期はもう筋の通った結末が見れるならなんでもいいや。
ひっぱるだけひっぱって伏線も回収せず、「ラストは視聴者の解釈に委ねます」的な説明放棄した最終回は大っ嫌いなので。
製作側の怠慢でしかないじゃん。
物語の余韻として解釈のわかれる要素を残すのは全然ありなんだけど、大したヒントもなく丸投げするのは違うと思うし。
そうなりそうなのがすげぇやなのよね~。
まあ、とってつけたような安易な結末でもそれはそれで微妙だけど……。
昨日は6位だったのか。
コードギアス、じゃなくてあくまでルルーシュなのか。笑。
私も前はルルーシュ、ルルーシュって言ってて「あれ、メインタイトルなんだっけ?」ってよく思ったが。
コードギアスの二期のサブタイトルは「反逆のルルーシュ」じゃない気がするなぁ。
主役交代説もあるけど……私はルルーシュにもうちょっと頑張って頂きたい。
いよいよ性格が歪んできたところで魔王への道を突き進んでほしい。笑。
ここまでやらかして、もう後戻りはありえないんでね。間違っても改心とかしないように。
私からユフィの谷間という癒しを奪ったからには最後まで苦しめと。笑。
二期はもう筋の通った結末が見れるならなんでもいいや。
ひっぱるだけひっぱって伏線も回収せず、「ラストは視聴者の解釈に委ねます」的な説明放棄した最終回は大っ嫌いなので。
製作側の怠慢でしかないじゃん。
物語の余韻として解釈のわかれる要素を残すのは全然ありなんだけど、大したヒントもなく丸投げするのは違うと思うし。
そうなりそうなのがすげぇやなのよね~。
まあ、とってつけたような安易な結末でもそれはそれで微妙だけど……。
2007/08/01 (Wed)
一次創作関連
「すごくいい街なんです。海も、山もあって……都会に比べれば不便なことは多いけど、都会にないものもたくさんあって……日向子さんも気に入ってくれるといいんですけど」
「まあ、楽しみですわ」
よく晴れた高い空の下、関越道を軽快に滑るミニバンの車内は、心なしかいつもより弾んだ青年の声と、楽しげな相槌、そして二人の大好きなハードロックのBGMで満たされている。
「……案内したいところはたくさんあるんですけど、今日は難しいですよね」
「ええ……残念ですけれど、どうしても日帰りでしか都合が」
「いいんですよ。元々兄貴のわがままに付き合ってもらってるんですから。
……見ず知らずの人のお墓参りのためにわざわざすいません」
日向子は、後ろの座席を振り返った。
かすみ草と淡いオレンジ色の百合を合わせたブーケが甘い香りを微かに放ちながら横たわる。
「……いいえ、わたくしはサンタさんですから」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【4】
来たる命日に、自分の替わりに墓前に花を手向けてほしいというのが紅朱の口にした願い事だった。
先日の事件で怪我をしてからまだ一週間、抜糸すら済んでいない紅朱はメンバーたちから絶対安静を強いられていた。
半ばやむなしといえどライブの出演時間に遅れた件もあって、さしものジャリアンも今回はおとなしくメンバーの声を受け入れ、日向子に代理を頼んだのだ。
そしてその日向子を地元まで案内するようにと、玄鳥に依頼した。
もっとも紅朱に言われなくてもそうしたに違いなかったが。
「兄貴、本当は自分で来たかった筈ですよ。
上京してから実家の敷居は一回も跨いでいないのに、叔母さんの命日だけは毎年こっそり帰ってましたからね」
「叔母さん」……玄鳥がなにげなく口にした言葉に日向子はなんとなくドキッとした。
浅川兄弟の母方の叔母……これから行く土地に眠る女性が実際は玄鳥のなんであるか日向子は知っている。
玄鳥自身すら知らない事実……兄弟の秘密。
「……叔母様は、どのような方だったのでしょう」
「……実は亡くなったのは俺が物心つく前だから、全然覚えてないんです。
でも、いい人だったのは間違いないと思いますよ」
玄鳥は苦笑する。
「兄貴の初恋の人らしいですからね」
「え?」
そんな話は初めてだったので、日向子は少し驚いた。
確かに紅朱は叔母によく懐いていたこと、その死が非常にショックだったことを口にはしていた。
幼い頃とはいえ、憧れていた女性が亡くなったのならそれは、忘れられない悲しい記憶になるのは当然だろう。
日向子は自分の獅貴への思いを重ねてしまい、胸が痛んだ。
紅朱はどんな思いで初恋の人の遺した命をすぐ側で見守ってきたのだろうか、と。
「……日向子さん?」
玄鳥は日向子の顔が曇ってしまったのに気付いて、少し慌てる。
「あの、どうかしましたか……? 俺、何か変なことを……あ」
「玄鳥様……?」
「日向子さん……もしかして……」
玄鳥はハンドルに絡む指先にきゅっと少し力を込めた。
「……兄貴のそういう話は、あまり聞きたくなかったですか……?」
「そういう、話……とおっしゃいますと……?」
「それは、だから……なんていうか……」
日向子は玄鳥が何を危惧しているのかわからないまま、苦渋に歪む彼の横顔を見つめていた。
沈黙が訪れる。
「mont sucht」のロックバラードが、二人の沈黙を彩る。
一分半にわたる叙情的で壮大な間奏を経て、大サビに差し掛かったところで、
「……日向子さん」
改まったような声で玄鳥が口を開いた。
「俺の願いもひとつ、聞いてくれるって言ってましたよね」
「ええ……」
「……少しだけ、寄り道をしましょう」
進行方向をじっと見つめる玄鳥の真剣な眼差しは、何がしか決意を秘めているようだった。
「……寒く、ないですか?」
「少しだけ……でも、風がとても気持ちいいですね」
髪やコートの裾を揺らめかせながら微笑む日向子に、玄鳥も微笑を返す。
冬の澄んだ海原は、晴れた空の下、ゆったりと波音を響かせている。
二人の佇む岬からは、ずっと遠くの島までが見渡せた。
「……結構、いい景色でしょう? 今日が晴れでよかった」
「玄鳥様はよくここへいらしていたのですか?」
「いえ……実は初めてなんです。来たくても、一人ではなかなか……」
「え?」
言われて辺りを見回すと、日曜の昼過ぎとあって人もそれなりにいるが、それにしても一人できている者は全く見当たらない。
世代を問わず男女二人連れか、子連れの夫妻ばかりだ。
「……ここ、恋人岬っていうんです」
「恋人岬……」
玄鳥は北風のせいではなく、赤くなった顔を、立てたコートの襟で少しだけ隠した。
「伊豆やグアムにあるのと同じです……恋人たちがここで愛を誓うと必ず幸せになれるっていう……」
成程男一人では二の足を踏んで当然だった。
「まあ……そのような場所にわたくしと来てしまってよろしかったのですか?
素敵な恋人の方とご一緒なさるべきでは……」
かなり的外れな気遣いをそれと全く気付かず口にする日向子に、玄鳥は思わず笑って、それからゆっくりとコートの襟から手を放した。
「……日向子さん」
「……はい?」
ひとつ息を整え、玄鳥はゆっくりと告げた。
「……あなたが、なってくれませんか? ……俺の、その……」
あと一息。
たった一言。
わずか数文字付け足すことができれば玄鳥の告白は完成できた。
しかし。
この男、こんなタイミングで邪魔が入らなかったためしがなく……。
「あのォ」
決死の戦いに挑む男の背後からなんとも間伸びした呑気な声がかけられる。
「……玄鳥さん、ですか~?」
二人が振り返ると、どうやら観光客ではなく地元民らしい親子連れのお父さんが声の主だった。
「はあ、そうですけど」
緊張を強制的に解除された玄鳥がぽかんとしていると、
「おい、やっぱり玄鳥さんだって」
「やっぱり本物!?」
今度はその妻らしき女性が目を輝かせてすごい勢いで玄鳥の前にしゃしゃり出る。
「きゃー、ファンなんですぅ、応援してますぅ!! やぁん、かっこいいっ!!」
「え……あ……はい、ありがとうございます」
幼稚園か小学校低学年くらいであろう娘二人も母親に続いて駆け寄って、
「くろろだ~」
「くろちょだ~」
不正確な発音で玄鳥の名前を大声で呼びながらはしゃいでいる。
その声が潮風に乗って辺りに響くと、
「ねえ、くろと、って……」
「heliodorの玄鳥?」
「玄鳥が来てるらしいよ」
「この辺りの出身ってマジだったんだ?」
「すご~い、本人だ~」
すぐさま10人ほど集まって玄鳥をぐるりと囲んだ。
まだ呆然としたまま握手を求められたり、質問責めにあったりしている玄鳥を、日向子は少し離れて見ていた。
みんな玄鳥にばかり気を取られてのことか、日向子の存在にはどうやら気付いてなさそうだった。
玄鳥がファンに声をかけられたり、囲まれたりする光景を見ること自体は珍しいことではなかったが、バンドの拠点である東京から離れてもファンがこれだけいるのかと思い、日向子は純粋に感嘆していた。
もちろんここは玄鳥の地元からそう遠くないところだから、他の土地よりはいくらか知名度が高いのかもしれないが、それでも驚くべきことだった。
「ねえ、あなたも玄鳥さんのファンなの?」
ふと声をかけてきた一人の女性に、日向子は「はい」と答えた。
heliodorが好きで応援しているのだから別に嘘ではない。
「私は名前くらいしか知らないけど、彼氏が好きらしくって」
女性は、群れにまざって何やらギターの奏法や機材について質問しているらしい金髪の青年を指差す。
「よくわかんないけど、すごいんだってね。heliodorだっけ? メンバー個人のスキルは全員一定以上のレベルに達してるけど、ギターの玄鳥は飛び抜けてるってあいつは言うけど……そうなのかな?」
「そう……なのでしょうか」
「アマチュアバンドのギタリストとして埋もれるような人じゃないのに~、ってしょっちゅう愚痴ってくるんだけど、私に言われたって困るんだよね~」
日向子は相槌を適度に返しながら、真っ赤な顔で何故かぺこぺこ会釈しているシャイで腰の低いギタリストを見つめていた。
玄鳥が巧いのは当たり前だ。もちろん元々相当な才能があるのだろうが、加えて尋常ならざる努力をしているのだから。
そんな玄鳥が評価されるのは正しいことであり、喜ばしいことである。
それなのに不吉にざわめいてしまう自分の心が、日向子にも不思議だった。
何故だろう。
いつか玄鳥が遠くへ行ってしまいそうな気がする。
少しずつ。
少しずつ。
手の届かない、高い場所へと。
「……そんなこと……あるわけありませんのに」
何があっても信じると誓った小指がかじかんで、痛くて。
寂しくなった。
一歩、二歩あとずさって、そのまま日向子はきびすを返した。
玄鳥を見つめていることが、今は少し辛かった。
だからこの場を離れたかったのだ。
「待って!」
呼び止める声とほとんど同時スタートで駆け出した足音と、騒然とする人々の声。
「待って……日向子さん」
黒いコートの右腕が、翼を広げて包み込むように日向子の肩を引き寄せた。
「玄鳥……様」
「みなさんすいません、今日はこのへんで。よかったらまたライブ見に来て下さいね。また、会いましょう」
早口で、けれど最大限の感謝の気持ちを込めてファンにそう挨拶し、一礼すると、玄鳥は日向子の肩を抱いたまま歩き出す。
「く、玄鳥様……あの……これ、誤解、されてしまいませんか?」
思わず小声で尋ねる日向子。
「……あなたの背中が、あまり寂しそうで、つい……」
玄鳥の顔は先刻までより更に更に、赤く赤くなっていく。
「俺……誤解されていいです……」
「え……?」
「……あなたは、嫌ですか?」
真面目な顔で問う、斜め上の眼差しに、日向子はそっと首を横に振った。
玄鳥は少し安心したように溜め息をついた。
「日向子さんのことほったらかしみたいになってしまってごめんなさい……退屈、でしたよね?」
「いいえ……退屈などではありませんでした」
日向子はまた首を左右した。
「先程玄鳥様もおっしゃいましたでしょう?
わたくし……少し、寂しかったのです」
「日向子さん……」
玄鳥は一瞬目を見開いて、その後どこか困ったような笑みを浮かべた。
「……heliodorはどんどん有名になってます。ライブの動員も信じられない勢いで膨れ上がってきています。どうしてだかちゃんとわかってますか?」
「え……?」
「アンケート見ると、新しいお客さんの大半は『RAPTUS(ラプタス)見てheliodorを知りました』って……書いてあるんです」
『RAPTUS』……日向子の記事が載っている音楽雑誌だ。
「だから、日向子さんのおかげなんですよ」
知らなかった。
雑誌の部数自体はメインの記事如何で多少左右されることはあっても、そうは変動しない。
読者アンケートの結果は悪くないとは聞いていたが、日向子が自分の書いている記事の影響を実感することは今まで全くなかったのだ。
「日向子さんは、俺たちにとって幸運の女神様みたいなものなんですよ」
「そんな……いくらなんでも大袈裟ですわ」
「はは、ちょっと恥ずかしい言い回しでしたね。でも、本当に……あなたが見ていてくれるなら、俺は……」
玄鳥は不意に果てしない空を見上げる。
遠くを、見つめる。
「……もっと高く、飛べるかもしれない……」
《つづく》
「まあ、楽しみですわ」
よく晴れた高い空の下、関越道を軽快に滑るミニバンの車内は、心なしかいつもより弾んだ青年の声と、楽しげな相槌、そして二人の大好きなハードロックのBGMで満たされている。
「……案内したいところはたくさんあるんですけど、今日は難しいですよね」
「ええ……残念ですけれど、どうしても日帰りでしか都合が」
「いいんですよ。元々兄貴のわがままに付き合ってもらってるんですから。
……見ず知らずの人のお墓参りのためにわざわざすいません」
日向子は、後ろの座席を振り返った。
かすみ草と淡いオレンジ色の百合を合わせたブーケが甘い香りを微かに放ちながら横たわる。
「……いいえ、わたくしはサンタさんですから」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【4】
来たる命日に、自分の替わりに墓前に花を手向けてほしいというのが紅朱の口にした願い事だった。
先日の事件で怪我をしてからまだ一週間、抜糸すら済んでいない紅朱はメンバーたちから絶対安静を強いられていた。
半ばやむなしといえどライブの出演時間に遅れた件もあって、さしものジャリアンも今回はおとなしくメンバーの声を受け入れ、日向子に代理を頼んだのだ。
そしてその日向子を地元まで案内するようにと、玄鳥に依頼した。
もっとも紅朱に言われなくてもそうしたに違いなかったが。
「兄貴、本当は自分で来たかった筈ですよ。
上京してから実家の敷居は一回も跨いでいないのに、叔母さんの命日だけは毎年こっそり帰ってましたからね」
「叔母さん」……玄鳥がなにげなく口にした言葉に日向子はなんとなくドキッとした。
浅川兄弟の母方の叔母……これから行く土地に眠る女性が実際は玄鳥のなんであるか日向子は知っている。
玄鳥自身すら知らない事実……兄弟の秘密。
「……叔母様は、どのような方だったのでしょう」
「……実は亡くなったのは俺が物心つく前だから、全然覚えてないんです。
でも、いい人だったのは間違いないと思いますよ」
玄鳥は苦笑する。
「兄貴の初恋の人らしいですからね」
「え?」
そんな話は初めてだったので、日向子は少し驚いた。
確かに紅朱は叔母によく懐いていたこと、その死が非常にショックだったことを口にはしていた。
幼い頃とはいえ、憧れていた女性が亡くなったのならそれは、忘れられない悲しい記憶になるのは当然だろう。
日向子は自分の獅貴への思いを重ねてしまい、胸が痛んだ。
紅朱はどんな思いで初恋の人の遺した命をすぐ側で見守ってきたのだろうか、と。
「……日向子さん?」
玄鳥は日向子の顔が曇ってしまったのに気付いて、少し慌てる。
「あの、どうかしましたか……? 俺、何か変なことを……あ」
「玄鳥様……?」
「日向子さん……もしかして……」
玄鳥はハンドルに絡む指先にきゅっと少し力を込めた。
「……兄貴のそういう話は、あまり聞きたくなかったですか……?」
「そういう、話……とおっしゃいますと……?」
「それは、だから……なんていうか……」
日向子は玄鳥が何を危惧しているのかわからないまま、苦渋に歪む彼の横顔を見つめていた。
沈黙が訪れる。
「mont sucht」のロックバラードが、二人の沈黙を彩る。
一分半にわたる叙情的で壮大な間奏を経て、大サビに差し掛かったところで、
「……日向子さん」
改まったような声で玄鳥が口を開いた。
「俺の願いもひとつ、聞いてくれるって言ってましたよね」
「ええ……」
「……少しだけ、寄り道をしましょう」
進行方向をじっと見つめる玄鳥の真剣な眼差しは、何がしか決意を秘めているようだった。
「……寒く、ないですか?」
「少しだけ……でも、風がとても気持ちいいですね」
髪やコートの裾を揺らめかせながら微笑む日向子に、玄鳥も微笑を返す。
冬の澄んだ海原は、晴れた空の下、ゆったりと波音を響かせている。
二人の佇む岬からは、ずっと遠くの島までが見渡せた。
「……結構、いい景色でしょう? 今日が晴れでよかった」
「玄鳥様はよくここへいらしていたのですか?」
「いえ……実は初めてなんです。来たくても、一人ではなかなか……」
「え?」
言われて辺りを見回すと、日曜の昼過ぎとあって人もそれなりにいるが、それにしても一人できている者は全く見当たらない。
世代を問わず男女二人連れか、子連れの夫妻ばかりだ。
「……ここ、恋人岬っていうんです」
「恋人岬……」
玄鳥は北風のせいではなく、赤くなった顔を、立てたコートの襟で少しだけ隠した。
「伊豆やグアムにあるのと同じです……恋人たちがここで愛を誓うと必ず幸せになれるっていう……」
成程男一人では二の足を踏んで当然だった。
「まあ……そのような場所にわたくしと来てしまってよろしかったのですか?
素敵な恋人の方とご一緒なさるべきでは……」
かなり的外れな気遣いをそれと全く気付かず口にする日向子に、玄鳥は思わず笑って、それからゆっくりとコートの襟から手を放した。
「……日向子さん」
「……はい?」
ひとつ息を整え、玄鳥はゆっくりと告げた。
「……あなたが、なってくれませんか? ……俺の、その……」
あと一息。
たった一言。
わずか数文字付け足すことができれば玄鳥の告白は完成できた。
しかし。
この男、こんなタイミングで邪魔が入らなかったためしがなく……。
「あのォ」
決死の戦いに挑む男の背後からなんとも間伸びした呑気な声がかけられる。
「……玄鳥さん、ですか~?」
二人が振り返ると、どうやら観光客ではなく地元民らしい親子連れのお父さんが声の主だった。
「はあ、そうですけど」
緊張を強制的に解除された玄鳥がぽかんとしていると、
「おい、やっぱり玄鳥さんだって」
「やっぱり本物!?」
今度はその妻らしき女性が目を輝かせてすごい勢いで玄鳥の前にしゃしゃり出る。
「きゃー、ファンなんですぅ、応援してますぅ!! やぁん、かっこいいっ!!」
「え……あ……はい、ありがとうございます」
幼稚園か小学校低学年くらいであろう娘二人も母親に続いて駆け寄って、
「くろろだ~」
「くろちょだ~」
不正確な発音で玄鳥の名前を大声で呼びながらはしゃいでいる。
その声が潮風に乗って辺りに響くと、
「ねえ、くろと、って……」
「heliodorの玄鳥?」
「玄鳥が来てるらしいよ」
「この辺りの出身ってマジだったんだ?」
「すご~い、本人だ~」
すぐさま10人ほど集まって玄鳥をぐるりと囲んだ。
まだ呆然としたまま握手を求められたり、質問責めにあったりしている玄鳥を、日向子は少し離れて見ていた。
みんな玄鳥にばかり気を取られてのことか、日向子の存在にはどうやら気付いてなさそうだった。
玄鳥がファンに声をかけられたり、囲まれたりする光景を見ること自体は珍しいことではなかったが、バンドの拠点である東京から離れてもファンがこれだけいるのかと思い、日向子は純粋に感嘆していた。
もちろんここは玄鳥の地元からそう遠くないところだから、他の土地よりはいくらか知名度が高いのかもしれないが、それでも驚くべきことだった。
「ねえ、あなたも玄鳥さんのファンなの?」
ふと声をかけてきた一人の女性に、日向子は「はい」と答えた。
heliodorが好きで応援しているのだから別に嘘ではない。
「私は名前くらいしか知らないけど、彼氏が好きらしくって」
女性は、群れにまざって何やらギターの奏法や機材について質問しているらしい金髪の青年を指差す。
「よくわかんないけど、すごいんだってね。heliodorだっけ? メンバー個人のスキルは全員一定以上のレベルに達してるけど、ギターの玄鳥は飛び抜けてるってあいつは言うけど……そうなのかな?」
「そう……なのでしょうか」
「アマチュアバンドのギタリストとして埋もれるような人じゃないのに~、ってしょっちゅう愚痴ってくるんだけど、私に言われたって困るんだよね~」
日向子は相槌を適度に返しながら、真っ赤な顔で何故かぺこぺこ会釈しているシャイで腰の低いギタリストを見つめていた。
玄鳥が巧いのは当たり前だ。もちろん元々相当な才能があるのだろうが、加えて尋常ならざる努力をしているのだから。
そんな玄鳥が評価されるのは正しいことであり、喜ばしいことである。
それなのに不吉にざわめいてしまう自分の心が、日向子にも不思議だった。
何故だろう。
いつか玄鳥が遠くへ行ってしまいそうな気がする。
少しずつ。
少しずつ。
手の届かない、高い場所へと。
「……そんなこと……あるわけありませんのに」
何があっても信じると誓った小指がかじかんで、痛くて。
寂しくなった。
一歩、二歩あとずさって、そのまま日向子はきびすを返した。
玄鳥を見つめていることが、今は少し辛かった。
だからこの場を離れたかったのだ。
「待って!」
呼び止める声とほとんど同時スタートで駆け出した足音と、騒然とする人々の声。
「待って……日向子さん」
黒いコートの右腕が、翼を広げて包み込むように日向子の肩を引き寄せた。
「玄鳥……様」
「みなさんすいません、今日はこのへんで。よかったらまたライブ見に来て下さいね。また、会いましょう」
早口で、けれど最大限の感謝の気持ちを込めてファンにそう挨拶し、一礼すると、玄鳥は日向子の肩を抱いたまま歩き出す。
「く、玄鳥様……あの……これ、誤解、されてしまいませんか?」
思わず小声で尋ねる日向子。
「……あなたの背中が、あまり寂しそうで、つい……」
玄鳥の顔は先刻までより更に更に、赤く赤くなっていく。
「俺……誤解されていいです……」
「え……?」
「……あなたは、嫌ですか?」
真面目な顔で問う、斜め上の眼差しに、日向子はそっと首を横に振った。
玄鳥は少し安心したように溜め息をついた。
「日向子さんのことほったらかしみたいになってしまってごめんなさい……退屈、でしたよね?」
「いいえ……退屈などではありませんでした」
日向子はまた首を左右した。
「先程玄鳥様もおっしゃいましたでしょう?
わたくし……少し、寂しかったのです」
「日向子さん……」
玄鳥は一瞬目を見開いて、その後どこか困ったような笑みを浮かべた。
「……heliodorはどんどん有名になってます。ライブの動員も信じられない勢いで膨れ上がってきています。どうしてだかちゃんとわかってますか?」
「え……?」
「アンケート見ると、新しいお客さんの大半は『RAPTUS(ラプタス)見てheliodorを知りました』って……書いてあるんです」
『RAPTUS』……日向子の記事が載っている音楽雑誌だ。
「だから、日向子さんのおかげなんですよ」
知らなかった。
雑誌の部数自体はメインの記事如何で多少左右されることはあっても、そうは変動しない。
読者アンケートの結果は悪くないとは聞いていたが、日向子が自分の書いている記事の影響を実感することは今まで全くなかったのだ。
「日向子さんは、俺たちにとって幸運の女神様みたいなものなんですよ」
「そんな……いくらなんでも大袈裟ですわ」
「はは、ちょっと恥ずかしい言い回しでしたね。でも、本当に……あなたが見ていてくれるなら、俺は……」
玄鳥は不意に果てしない空を見上げる。
遠くを、見つめる。
「……もっと高く、飛べるかもしれない……」
《つづく》
2007/07/31 (Tue)
アニメ・特撮感想
本日のコードギアス、以下ネタバレありありです。
普通にロイドに萌えた。そんな一期の終わり……。笑。
誰も救われないというか、どうあがいても絶望な感じで……二期あるとはいえ、えらい幕切れだった。
ラストシーンの「御対面」にあんまりカタルシスを感じなかったのでちょっと残念だった。
こんなに引っ張ったわりには……なんだかなあ。スザクにもカレンぐらいのリアクションがほしかったよ。
しかし、このごに及んでスザクに協力してもらおうとするルルーシュって……本当に妹が絡むと頭弱い子になるので残念です。
先日の萌会議で遙か3将臣ルートの、望美と将臣が戦場でまみえてついにお互いの正体(源氏の神子と平家の将)に気付くシーンについて熱く語り合ったんだけどね、よく考えるとルルーシュとスザクの関係とかなり似てるなあ。
もうしばらく正体バレずに引っ張ってほしかった気もするけど、ここまできたら隠してもしょうがないからなぁ。
ポジション的にはスザクが望美だけど、どうやらナナリーが白龍(っぽくね?)に神子に選ばれたみたいですね。笑。
だから二期はきっとナナリーが時空跳躍のギアスで運命を上書きしてみんなを救うんだ。大団円エンディングなのさ。きっとそうだ。笑。
……だったらいいのになぁ。涙。
ま、今日のところはプリン伯爵と、猫(とスザクの友情 笑)に萌えれたからいいや。寝よう。
普通にロイドに萌えた。そんな一期の終わり……。笑。
誰も救われないというか、どうあがいても絶望な感じで……二期あるとはいえ、えらい幕切れだった。
ラストシーンの「御対面」にあんまりカタルシスを感じなかったのでちょっと残念だった。
こんなに引っ張ったわりには……なんだかなあ。スザクにもカレンぐらいのリアクションがほしかったよ。
しかし、このごに及んでスザクに協力してもらおうとするルルーシュって……本当に妹が絡むと頭弱い子になるので残念です。
先日の萌会議で遙か3将臣ルートの、望美と将臣が戦場でまみえてついにお互いの正体(源氏の神子と平家の将)に気付くシーンについて熱く語り合ったんだけどね、よく考えるとルルーシュとスザクの関係とかなり似てるなあ。
もうしばらく正体バレずに引っ張ってほしかった気もするけど、ここまできたら隠してもしょうがないからなぁ。
ポジション的にはスザクが望美だけど、どうやらナナリーが白龍(っぽくね?)に神子に選ばれたみたいですね。笑。
だから二期はきっとナナリーが時空跳躍のギアスで運命を上書きしてみんなを救うんだ。大団円エンディングなのさ。きっとそうだ。笑。
……だったらいいのになぁ。涙。
ま、今日のところはプリン伯爵と、猫(とスザクの友情 笑)に萌えれたからいいや。寝よう。
2007/07/31 (Tue)
アニメ・特撮感想
Sound Schedule解散宣言から一年、いかがお過ごしですか??
公式のコメントは画面メモしてあるんだけど、これは、今見てもくるね……いろんな意味で。
とはいえ実際に解散したのは10月だからまだまだだけどね。湿っぽい話はその時にとっておこう。汗。
さて今日は早朝四時からコードギアス第一期完結編放送なので、オンタイムで見るさ。明日普通に仕事あるけどね。笑。
ビデオに録画すると後で見るの面倒になっちゃうんだもの。
もう、私の中ではユフィが死んだ時点で半分終わってんだけどさ。
おかげで二期に希望が持てないざます……。
ちなみにヴィレッタとコーネリアが死んだら完璧に終わる。爆。
もう、それが私の最終回でいいんで。
コーネリアはわかんないけどヴィレッタはいかにも死にそうで嫌だ~。汗。
しかし萌キャラが女しかいない……!!
萌といえば日曜日はなゆきさんとうちで萌会議を開いてみた。
主に自作ゲームと、乙女ゲーム話を延々と何時間も……いやあ密度の濃い時間だったよ。笑。
やっぱり自分と微妙に(微妙か?)違う嗜好や感性を持った人と話すと刺激を受けるよね~。
創作意欲びんびんです。
公式のコメントは画面メモしてあるんだけど、これは、今見てもくるね……いろんな意味で。
とはいえ実際に解散したのは10月だからまだまだだけどね。湿っぽい話はその時にとっておこう。汗。
さて今日は早朝四時からコードギアス第一期完結編放送なので、オンタイムで見るさ。明日普通に仕事あるけどね。笑。
ビデオに録画すると後で見るの面倒になっちゃうんだもの。
もう、私の中ではユフィが死んだ時点で半分終わってんだけどさ。
おかげで二期に希望が持てないざます……。
ちなみにヴィレッタとコーネリアが死んだら完璧に終わる。爆。
もう、それが私の最終回でいいんで。
コーネリアはわかんないけどヴィレッタはいかにも死にそうで嫌だ~。汗。
しかし萌キャラが女しかいない……!!
萌といえば日曜日はなゆきさんとうちで萌会議を開いてみた。
主に自作ゲームと、乙女ゲーム話を延々と何時間も……いやあ密度の濃い時間だったよ。笑。
やっぱり自分と微妙に(微妙か?)違う嗜好や感性を持った人と話すと刺激を受けるよね~。
創作意欲びんびんです。
2007/07/29 (Sun)
雑記
今日は昼間の仕事がかなり忙しかったにも関わらず、こっそり隙を見て、落書き用ノート(二冊目)にお絵書き三昧。
ざーっとだけども、heliodor全員と日向子と獅貴と雪乃と望音を(どんだけ描くんだ、自分!!)。
今書いてるところが間章みたいなところなんで、これ終わるともう折り返しかと思うと無意味に寂しい……。
もう自分でハマってるからね。太陽の国に。笑。
自分で書いて自分で萌えるってなんてお手軽なんだろうか。
でも世の中に出回ってる数知れないものから自分の感性に隙間なくぴったりくるものを探すより、自分で作ったほうがはるかに効率はいいと思う。
やりたい放題だからね。
ちなみに写真は落書き用ノートより「雪乃」イメージイラスト。
ざーっとだけども、heliodor全員と日向子と獅貴と雪乃と望音を(どんだけ描くんだ、自分!!)。
今書いてるところが間章みたいなところなんで、これ終わるともう折り返しかと思うと無意味に寂しい……。
もう自分でハマってるからね。太陽の国に。笑。
自分で書いて自分で萌えるってなんてお手軽なんだろうか。
でも世の中に出回ってる数知れないものから自分の感性に隙間なくぴったりくるものを探すより、自分で作ったほうがはるかに効率はいいと思う。
やりたい放題だからね。
ちなみに写真は落書き用ノートより「雪乃」イメージイラスト。
2007/07/27 (Fri)
一次創作関連
『んー……あぁ、ごめん。今日と明日もちょっと都合つかないなぁ……』
「そう、ですか……わかりました」
通話がそっけなく切断された携帯を握って日向子は溜め息をついた。
このところ蝉が忙しいらしいことは有砂から聞いて知ってはいたが、やはり時間を作ってもらうのは難しいようだった。
「今回の企画は蝉様抜きでいくしかないのかしら……」
溜め息が静かにもれたその時、コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
「……お嬢様。そろそろご用意をなさって下さい」
「……雪乃……はい、今参りますわ」
携帯をテーブルの上に置いて、日向子は立ち上がった。
鏡の前で一周くるりと回ってみだしなみを確認する。
赤いイブニングドレスの肩に、淡いピンクのファーショール。
「少し派手……かしら」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【3】
「いいえ、大変品良く着こなしておられます」
先刻の独り言をそのまま投げ掛けると、雪乃は大変無難なリアクションを返してきた。
「ありがとう、雪乃。あなたも素敵ですわよ」
しっかりと正装した雪乃にエスコートされて、日向子はあまり得意ではないヒールをカツカツ鳴らして歩みを進める。
「お父様の代理でパーティーに出席するのも久々ですわね」
「相変わらず、華やかな席は苦手でいらっしゃいますか?」
「ええ……なんとはなしに品定めされているようで……」
肩をすくめて笑う。
ドレスで飾り立て、釘宮の名を背負って社交の場に出て、レディらしくそつなく大人の付き合いをこなす……日向子には肩の凝る役目だった。
「それにしてもお父様は、今回は国内にいらっしゃいますのに、どうしてご出席なさらないのかしら」
「先生は……お仕事がございますから」
「わたくしにもお仕事はありましてよ」
「それは存じておりますが、今夜のところは私の顔を立てては頂けませんか?」
生真面目な顔で問う雪乃に、日向子は首を縦にした。
「わかっていますわ。それに……雪乃とワルツを踊るのは好きですの。足を踏んでしまっても許してくれますものね?」
「……ええ」
短く答える雪乃の横顔には、どこか翳りが見える。
「……どうかしましたの? お身体の具合でも?」
「いいえ……特には」
ほとんど完璧なポーカーフェイスを誇る雪乃ではあったが、このところ日向子は、以前より雪乃の感情の動きを察することができるようになってきていた。
雪乃のほうにわずかな隙が出来てきたのか、日向子のほうが鋭くなってきたのかはわからないし、あるいは両方なのかもしれない。
この時も日向子は、半分直感的に彼が隠し事をしていることを悟っていた。
「……何か、困っているならわたくしにも相談して下さいね」
「……どうぞ、お気遣いなさらず」
そっけない答えに、日向子はそれ以上何も聞くことができなくなってしまった。
「はい、そのように父に申し伝えますわ」
「ええ、そうして下さいな」
「それにしても、日向子さん、随分お綺麗になられて」
「本当に、高槻さんもどこに出しても恥ずかしくないとご自慢に思っていらっしゃるのでは?」
日向子は立て続けに向けられる奥さま方の「社交辞令」をいつものように謙遜と笑顔でかわしていたが、
「ところで、日向子さん。私共の長男の達彦が、是非日向子さんをお招きするようにとこのところうるさく申しておりますの」
と一人が切り出した途端、空気が変わった。
「日向子さん、それより私共の息子と……」
「出来の悪いせがれですが、是非……」
いきなり奥様連中は目の色を変えて、自分の子息を猛烈に売り込み始めた。
日向子は「はあ」「ええ」「機会があれば」などと曖昧に答えながら、完全に圧倒されつつあった。
そればかりではなく、
「日向子さん、始めまして。私は勅使河原勝昭と申します。かねてより釘宮先生にはお世話になっておりまして……」
「あなたが釘宮高槻先生のご令嬢でいらっしゃいますか? お話に聞く以上に可憐で優雅な方だ」
「こんばんは、日向子さん……赤いドレスが大変よくお似合いですね」
日向子と同じか少し上の世代男性たちがよってたかって話しかけてくる。
そして。
「是非、私とダンスを」
「いいえ、私と!」
「私と踊って下さい」
争うようにさしのべられる手に、日向子は思わず、
「も、申し訳ありません……また後程……!」
逃げた。
今夜のパーティーはどうも何かがおかしいと日向子も気付いた。
よく見れば来賓は適齢期の男性か、適齢期の息子を持つ奥様方ばかりだ。
フロアから逃れ出て一息ついていた日向子に、
「……お嬢様、お戻り下さい」
雪乃が歩み寄る。
どうやらあとを追ってきたようだった。
「……雪乃……あなた、何か知っているでしょう?」
日向子の問掛けに、雪乃はあくまで冷静な口調で答える。
「先生はこのところお嬢様がお仕事に根を詰めておられる様子なのをご心配なさっております。
お嬢様には一日も早く、釘宮の令嬢に相応な家のご子息とご縁談を……」
「……では今日のパーティーははじめから、結婚相手の候補を集めて、わたくしに選ばせることが目的ですのね……?」
「……はい」
日向子はカツンとヒールを鳴らして雪乃に詰め寄った。
「雪乃も、わたくしは今すぐ仕事を辞めて、結婚するべきだと思っていますの?」
雪乃は日向子の真っ直ぐな視線を受け止めて、静かに告げた。
「……先生がそう望まれるというなら、私には何も意見申し上げる権限はありません」
「お父様に意見しろと言っているのではありません! ……あなたがどう思っているのが、あなたの本心が聞きたいだけです……!!」
真剣に声を震わせて問う日向子に、雪乃は無言のままその目を、そらした。
「……もう、結構ですわ」
日向子は悲しみを込めて雪乃を見つめ、ドレスをひらりと翻した。
「……どちらへ?」
問いには答えず、雪乃に背を向けたままフロアとは逆の方向へ。
「……お嬢様!!」
振り切るように、逃げ出した。
溜め息がまた一つ、夜風に溶けた。
噴水庭園を臨むバルコニーは、寒々しい真冬の二十日月に淡く照らされ、ブルーグレーの影を作る。
「……雪乃は、わかってくれていると思っていましたのに……」
最近は、口ではお説教してきても、日向子の仕事のことは理解してくれていると信じていただけに、雪乃の冷たい態度がショックでならなかった。
日向子にとっては家同士の繋がりのためによく知らない相手と婚約することも、そのために仕事を辞めることも許容し難いことだ。
「……わたくしの味方は……この家にはいないのかしら」
「……こんばんは、ジュリエットちゃん」
ふと、明るい声が孤独な静寂を破った。
「こんなところにいたんだ? 探しちゃった」
日向子は手摺から思わず身を乗り出した。
「蝉様……!?」
カジュアルなジャケットを身に付けたオレンジの髪の青年が庭園に立って、日向子のいるガーデンを見上げていた。
「違う違う、ロミオだよ♪」
おどけてみせる蝉に、日向子は目をしばたかせる。
「何故ここにわたくしがいると? どうやってお屋敷の中に? それに今夜はお忙しいと……」
「そりゃあ、今日のおれはロミオだからさぁ、どんな障害があってもヘーキなワケよ」
「あの……全く答えになっていないような……」
「いいじゃん。おれはキミに会いたかったし、キミもおれに会いたかったんじゃないの?」
「は、はい」
日向子はあまりにも予想を越えた展開に、まだ混乱していたが、完全に蝉のペースにのせられていた。
「……こっちにおいでよ、ジュリエットちゃん?」
「ふうん……政略結婚ってやつかあ。イマドキまだそんなんあるんだね~」
「そうですの……時代錯誤も甚だしいと思いますでしょう?」
石造の噴水の外縁に腰掛けて、水音と月光がつくる幻想的な空間で二人はくっついて並んでいた。
「日向子ちゃん、マジで絶対負けちゃダメだよ!」
蝉は、日向子が誰かに言ってほしかった言葉を臆面なく告げた。
「日向子ちゃんはバリバリ記者の仕事頑張って、いつか心から好きになった一番大事な人と結婚しなよ!!」
けれど、そう言い切った後で何故か蝉の表情に微かな影が生まれた。
「蝉様……?」
心配になった日向子は蝉の顔を覗き込む。
蝉は日向子の眼差しを受けて不意に苦笑した。
「おれ、ズルイわ」
「……え?」
「ズルイ。超ズルイよ」
蝉は長くて綺麗な指先をのべて、日向子のサイドの髪にそっと触れた。
「……『おれ』には無関係だから言えるんだよね。こんな無責任なこと、軽々しくさ……」
「蝉様……」
苦しげに視線をそらした仕草が、先刻の雪乃と何故か一瞬重なって見えた。
「……キミの将来のことはさ、おれからは何にも言えないよ……おれの不用意な言葉で、マルかバツかの答えを出しちゃダメだ」
髪に触れていた指が、頬にかかった。
「おれには何も言えないけど……だけど、キミの幸せを願ってるよ。それだけは、100パーセントの本心だから」
強い思いを感じる輝く双つの瞳に、日向子は吸い込まれるように見入っていた。
「……そう、ですわね……何も言わない、という形でしか表せない誠意もありますのね……」
雪乃を責めていた暗い気持ちが、ゆっくりと消えていく。
日向子の立場は第三者が簡単に結論を出せるほど簡単ではない。
ましてや釘宮家に深く関わる雪乃には、安易な発言は許されない。
日向子を守るためにも……。
「……さて、難しい話はここまでにして、と」
蝉は努めて明るく笑う。
「なんでもおれの願い事、聞いてくれるんだよね?」
「え、ええ」
いきなり頭の隅においやっていたクリスマス企画の話を持ち出され、日向子は一気に我に返る。
「じゃーさ」
蝉は頬に触れていたその手で日向子の手をとった。
「おれと踊ってくれる? ジュリエットちゃん」
指先に唇を落とす。
日向子は思わずどきりと、胸が高鳴るのを感じた。
「……ええ、喜んで。ロミオ様」
月明かりに照らされた庭園で、フロアから流れる円舞曲に合わせて、二人は踊り始めた。
こなれたステップを踏む蝉に、どこでダンスを覚えたのかと聞いても「ロミオだからだよ」と受流すばかり。
全く不思議な、夢のような時間だった。
それが瞬く間に終わってしまうと、日向子は少し名残惜しさを感じながら蝉から離れた。
「……戻らなくては。今日は雪乃の顔を立てる約束ですの」
「そっか……おれも、人に見付かる前に戻るよ。今日は、ありがと。マジで楽しかったよ♪」
「ええ、わたくしも……お会い出来てよかったですわ」
笑って手を振る蝉を何度も何度も振り返りながら、日向子は魔法の庭園を後にした。
「またあとでね、ジュリエットちゃん♪」
「雪乃」
「はい」
「聞きわけのないことを言って困らせてごめんなさい」
「……いえ、私こそお嬢様のお心に沿えなかったことをお詫び致します」
「いいの。わかっているから」
「……左様で、ございますか」
「ねえ……雪乃?」
「はい」
「あなた、先程から足を少し引きずっていませんこと?」
「……はい。これは、その……先程、ワルツのパートナーの方にヒールで思いきり踏まれてしまいましたので……7度ほど」
「まあ……可哀想に。では今夜はわたくしとのダンスは無理かしら?」
「いえ……お望みとあらば。私は、何度でも……」
《つづく》
「そう、ですか……わかりました」
通話がそっけなく切断された携帯を握って日向子は溜め息をついた。
このところ蝉が忙しいらしいことは有砂から聞いて知ってはいたが、やはり時間を作ってもらうのは難しいようだった。
「今回の企画は蝉様抜きでいくしかないのかしら……」
溜め息が静かにもれたその時、コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
「……お嬢様。そろそろご用意をなさって下さい」
「……雪乃……はい、今参りますわ」
携帯をテーブルの上に置いて、日向子は立ち上がった。
鏡の前で一周くるりと回ってみだしなみを確認する。
赤いイブニングドレスの肩に、淡いピンクのファーショール。
「少し派手……かしら」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【3】
「いいえ、大変品良く着こなしておられます」
先刻の独り言をそのまま投げ掛けると、雪乃は大変無難なリアクションを返してきた。
「ありがとう、雪乃。あなたも素敵ですわよ」
しっかりと正装した雪乃にエスコートされて、日向子はあまり得意ではないヒールをカツカツ鳴らして歩みを進める。
「お父様の代理でパーティーに出席するのも久々ですわね」
「相変わらず、華やかな席は苦手でいらっしゃいますか?」
「ええ……なんとはなしに品定めされているようで……」
肩をすくめて笑う。
ドレスで飾り立て、釘宮の名を背負って社交の場に出て、レディらしくそつなく大人の付き合いをこなす……日向子には肩の凝る役目だった。
「それにしてもお父様は、今回は国内にいらっしゃいますのに、どうしてご出席なさらないのかしら」
「先生は……お仕事がございますから」
「わたくしにもお仕事はありましてよ」
「それは存じておりますが、今夜のところは私の顔を立てては頂けませんか?」
生真面目な顔で問う雪乃に、日向子は首を縦にした。
「わかっていますわ。それに……雪乃とワルツを踊るのは好きですの。足を踏んでしまっても許してくれますものね?」
「……ええ」
短く答える雪乃の横顔には、どこか翳りが見える。
「……どうかしましたの? お身体の具合でも?」
「いいえ……特には」
ほとんど完璧なポーカーフェイスを誇る雪乃ではあったが、このところ日向子は、以前より雪乃の感情の動きを察することができるようになってきていた。
雪乃のほうにわずかな隙が出来てきたのか、日向子のほうが鋭くなってきたのかはわからないし、あるいは両方なのかもしれない。
この時も日向子は、半分直感的に彼が隠し事をしていることを悟っていた。
「……何か、困っているならわたくしにも相談して下さいね」
「……どうぞ、お気遣いなさらず」
そっけない答えに、日向子はそれ以上何も聞くことができなくなってしまった。
「はい、そのように父に申し伝えますわ」
「ええ、そうして下さいな」
「それにしても、日向子さん、随分お綺麗になられて」
「本当に、高槻さんもどこに出しても恥ずかしくないとご自慢に思っていらっしゃるのでは?」
日向子は立て続けに向けられる奥さま方の「社交辞令」をいつものように謙遜と笑顔でかわしていたが、
「ところで、日向子さん。私共の長男の達彦が、是非日向子さんをお招きするようにとこのところうるさく申しておりますの」
と一人が切り出した途端、空気が変わった。
「日向子さん、それより私共の息子と……」
「出来の悪いせがれですが、是非……」
いきなり奥様連中は目の色を変えて、自分の子息を猛烈に売り込み始めた。
日向子は「はあ」「ええ」「機会があれば」などと曖昧に答えながら、完全に圧倒されつつあった。
そればかりではなく、
「日向子さん、始めまして。私は勅使河原勝昭と申します。かねてより釘宮先生にはお世話になっておりまして……」
「あなたが釘宮高槻先生のご令嬢でいらっしゃいますか? お話に聞く以上に可憐で優雅な方だ」
「こんばんは、日向子さん……赤いドレスが大変よくお似合いですね」
日向子と同じか少し上の世代男性たちがよってたかって話しかけてくる。
そして。
「是非、私とダンスを」
「いいえ、私と!」
「私と踊って下さい」
争うようにさしのべられる手に、日向子は思わず、
「も、申し訳ありません……また後程……!」
逃げた。
今夜のパーティーはどうも何かがおかしいと日向子も気付いた。
よく見れば来賓は適齢期の男性か、適齢期の息子を持つ奥様方ばかりだ。
フロアから逃れ出て一息ついていた日向子に、
「……お嬢様、お戻り下さい」
雪乃が歩み寄る。
どうやらあとを追ってきたようだった。
「……雪乃……あなた、何か知っているでしょう?」
日向子の問掛けに、雪乃はあくまで冷静な口調で答える。
「先生はこのところお嬢様がお仕事に根を詰めておられる様子なのをご心配なさっております。
お嬢様には一日も早く、釘宮の令嬢に相応な家のご子息とご縁談を……」
「……では今日のパーティーははじめから、結婚相手の候補を集めて、わたくしに選ばせることが目的ですのね……?」
「……はい」
日向子はカツンとヒールを鳴らして雪乃に詰め寄った。
「雪乃も、わたくしは今すぐ仕事を辞めて、結婚するべきだと思っていますの?」
雪乃は日向子の真っ直ぐな視線を受け止めて、静かに告げた。
「……先生がそう望まれるというなら、私には何も意見申し上げる権限はありません」
「お父様に意見しろと言っているのではありません! ……あなたがどう思っているのが、あなたの本心が聞きたいだけです……!!」
真剣に声を震わせて問う日向子に、雪乃は無言のままその目を、そらした。
「……もう、結構ですわ」
日向子は悲しみを込めて雪乃を見つめ、ドレスをひらりと翻した。
「……どちらへ?」
問いには答えず、雪乃に背を向けたままフロアとは逆の方向へ。
「……お嬢様!!」
振り切るように、逃げ出した。
溜め息がまた一つ、夜風に溶けた。
噴水庭園を臨むバルコニーは、寒々しい真冬の二十日月に淡く照らされ、ブルーグレーの影を作る。
「……雪乃は、わかってくれていると思っていましたのに……」
最近は、口ではお説教してきても、日向子の仕事のことは理解してくれていると信じていただけに、雪乃の冷たい態度がショックでならなかった。
日向子にとっては家同士の繋がりのためによく知らない相手と婚約することも、そのために仕事を辞めることも許容し難いことだ。
「……わたくしの味方は……この家にはいないのかしら」
「……こんばんは、ジュリエットちゃん」
ふと、明るい声が孤独な静寂を破った。
「こんなところにいたんだ? 探しちゃった」
日向子は手摺から思わず身を乗り出した。
「蝉様……!?」
カジュアルなジャケットを身に付けたオレンジの髪の青年が庭園に立って、日向子のいるガーデンを見上げていた。
「違う違う、ロミオだよ♪」
おどけてみせる蝉に、日向子は目をしばたかせる。
「何故ここにわたくしがいると? どうやってお屋敷の中に? それに今夜はお忙しいと……」
「そりゃあ、今日のおれはロミオだからさぁ、どんな障害があってもヘーキなワケよ」
「あの……全く答えになっていないような……」
「いいじゃん。おれはキミに会いたかったし、キミもおれに会いたかったんじゃないの?」
「は、はい」
日向子はあまりにも予想を越えた展開に、まだ混乱していたが、完全に蝉のペースにのせられていた。
「……こっちにおいでよ、ジュリエットちゃん?」
「ふうん……政略結婚ってやつかあ。イマドキまだそんなんあるんだね~」
「そうですの……時代錯誤も甚だしいと思いますでしょう?」
石造の噴水の外縁に腰掛けて、水音と月光がつくる幻想的な空間で二人はくっついて並んでいた。
「日向子ちゃん、マジで絶対負けちゃダメだよ!」
蝉は、日向子が誰かに言ってほしかった言葉を臆面なく告げた。
「日向子ちゃんはバリバリ記者の仕事頑張って、いつか心から好きになった一番大事な人と結婚しなよ!!」
けれど、そう言い切った後で何故か蝉の表情に微かな影が生まれた。
「蝉様……?」
心配になった日向子は蝉の顔を覗き込む。
蝉は日向子の眼差しを受けて不意に苦笑した。
「おれ、ズルイわ」
「……え?」
「ズルイ。超ズルイよ」
蝉は長くて綺麗な指先をのべて、日向子のサイドの髪にそっと触れた。
「……『おれ』には無関係だから言えるんだよね。こんな無責任なこと、軽々しくさ……」
「蝉様……」
苦しげに視線をそらした仕草が、先刻の雪乃と何故か一瞬重なって見えた。
「……キミの将来のことはさ、おれからは何にも言えないよ……おれの不用意な言葉で、マルかバツかの答えを出しちゃダメだ」
髪に触れていた指が、頬にかかった。
「おれには何も言えないけど……だけど、キミの幸せを願ってるよ。それだけは、100パーセントの本心だから」
強い思いを感じる輝く双つの瞳に、日向子は吸い込まれるように見入っていた。
「……そう、ですわね……何も言わない、という形でしか表せない誠意もありますのね……」
雪乃を責めていた暗い気持ちが、ゆっくりと消えていく。
日向子の立場は第三者が簡単に結論を出せるほど簡単ではない。
ましてや釘宮家に深く関わる雪乃には、安易な発言は許されない。
日向子を守るためにも……。
「……さて、難しい話はここまでにして、と」
蝉は努めて明るく笑う。
「なんでもおれの願い事、聞いてくれるんだよね?」
「え、ええ」
いきなり頭の隅においやっていたクリスマス企画の話を持ち出され、日向子は一気に我に返る。
「じゃーさ」
蝉は頬に触れていたその手で日向子の手をとった。
「おれと踊ってくれる? ジュリエットちゃん」
指先に唇を落とす。
日向子は思わずどきりと、胸が高鳴るのを感じた。
「……ええ、喜んで。ロミオ様」
月明かりに照らされた庭園で、フロアから流れる円舞曲に合わせて、二人は踊り始めた。
こなれたステップを踏む蝉に、どこでダンスを覚えたのかと聞いても「ロミオだからだよ」と受流すばかり。
全く不思議な、夢のような時間だった。
それが瞬く間に終わってしまうと、日向子は少し名残惜しさを感じながら蝉から離れた。
「……戻らなくては。今日は雪乃の顔を立てる約束ですの」
「そっか……おれも、人に見付かる前に戻るよ。今日は、ありがと。マジで楽しかったよ♪」
「ええ、わたくしも……お会い出来てよかったですわ」
笑って手を振る蝉を何度も何度も振り返りながら、日向子は魔法の庭園を後にした。
「またあとでね、ジュリエットちゃん♪」
「雪乃」
「はい」
「聞きわけのないことを言って困らせてごめんなさい」
「……いえ、私こそお嬢様のお心に沿えなかったことをお詫び致します」
「いいの。わかっているから」
「……左様で、ございますか」
「ねえ……雪乃?」
「はい」
「あなた、先程から足を少し引きずっていませんこと?」
「……はい。これは、その……先程、ワルツのパートナーの方にヒールで思いきり踏まれてしまいましたので……7度ほど」
「まあ……可哀想に。では今夜はわたくしとのダンスは無理かしら?」
「いえ……お望みとあらば。私は、何度でも……」
《つづく》
2007/07/26 (Thu)
Vitamin シリーズ関連
再生産が間に合わず、入手がのびのびになっていたVitamin Xのキャラソン全サCDを本日ゲット。
今回は視聴した段階で捨て曲なしと思ってたので、かなり期待してた。
今回二曲ずつで「RED」「BLUE」の二枚のCDに分かれてるんだけど、ちゃんとカラーが二分されててよかった。
まずはちょっと大人な雰囲気?の「RED」。
七瀬瞬くんの「純潔デカダンス」は彼の所属バンドの新曲(気まぐれでヴォーカル担当したらしい)という体なので、クレジット見るとちゃんと「Bass 七瀬瞬」としてある。
曲はうちの人曰く「今時のビジュアル系」。笑。
歌詞はゲームの劇中で再三披露される通りのこっ恥ずかしい歌詞。
こんなのを普段唄うハメになっている祐次に素で同情した。祐次は瞬の感性についてこれるから一緒にやってるのかもしれないけど。笑。
「君、知ってる言葉並べてるだけじゃないよね?」的なフランス語の羅列がまた……。
それをいたって真剣にセクシーに唄い上げる鳥海さんは素敵だ。
2曲目は斑目瑞希くんの「硝子の幻想アモーレ」。何故かスパニッシュな曲です。マイベストヒット。
まずイントロの台詞。
「エスタノッチェ……僕と踊ってもらえませんか?」
これがヤバイ!!
悶える。
超萌え……!!
で、エスタノッチェって何よ? ……と思って調べたら「今夜」って意味らしく。
なんで全部日本語で言わないんだろうね……萌えるからいいけど。
菅沼さんとしてはかなりおとなっぽい唄い方なんではないかと。
比較的まともな曲なんだけどやっぱり笑い要素はあり、「オ・レ!」だの「ト・ゲー!」だの叫んでおります。汗。
「BLUE」はまず仙道清春くんの「青春ダイナマイト」。
田原俊彦っぽい曲と書いてあったけど、うちの人に言われてからもう氣志團にしか聞こえない……。
そして今、氣志團が一発変換できたことにちょっとびっくりした。笑。
途中の清春調のラップがなんか好きだ。
ただこの曲に出てくる女が明らかに悠里じゃないのがちょっと残念といえば残念?
真打ちは風門寺悟郎くんの「放課後ジャーマンスープレックス」。
もう何も言うことはありません。
とりあえず、岸尾だいすけの俳優魂に泣いて下さいという曲。
この電波アイドルソングを彼はどんな顔で歌ったのだろうか。
うちの人は一番気に入ったみたい。
音楽的なことはよくわからないが、ある種の中毒性のある曲であることは間違いない。爆。
とりあえずこれで本格的に菅沼久義さんにハマりそうな予感。流石は元・ギゾク(声優アイドルユニット)。なかなかの歌唱力だし、声質もめっちゃ好き。
岸尾ラジオに出ないかなぁ……。
今回は視聴した段階で捨て曲なしと思ってたので、かなり期待してた。
今回二曲ずつで「RED」「BLUE」の二枚のCDに分かれてるんだけど、ちゃんとカラーが二分されててよかった。
まずはちょっと大人な雰囲気?の「RED」。
七瀬瞬くんの「純潔デカダンス」は彼の所属バンドの新曲(気まぐれでヴォーカル担当したらしい)という体なので、クレジット見るとちゃんと「Bass 七瀬瞬」としてある。
曲はうちの人曰く「今時のビジュアル系」。笑。
歌詞はゲームの劇中で再三披露される通りのこっ恥ずかしい歌詞。
こんなのを普段唄うハメになっている祐次に素で同情した。祐次は瞬の感性についてこれるから一緒にやってるのかもしれないけど。笑。
「君、知ってる言葉並べてるだけじゃないよね?」的なフランス語の羅列がまた……。
それをいたって真剣にセクシーに唄い上げる鳥海さんは素敵だ。
2曲目は斑目瑞希くんの「硝子の幻想アモーレ」。何故かスパニッシュな曲です。マイベストヒット。
まずイントロの台詞。
「エスタノッチェ……僕と踊ってもらえませんか?」
これがヤバイ!!
悶える。
超萌え……!!
で、エスタノッチェって何よ? ……と思って調べたら「今夜」って意味らしく。
なんで全部日本語で言わないんだろうね……萌えるからいいけど。
菅沼さんとしてはかなりおとなっぽい唄い方なんではないかと。
比較的まともな曲なんだけどやっぱり笑い要素はあり、「オ・レ!」だの「ト・ゲー!」だの叫んでおります。汗。
「BLUE」はまず仙道清春くんの「青春ダイナマイト」。
田原俊彦っぽい曲と書いてあったけど、うちの人に言われてからもう氣志團にしか聞こえない……。
そして今、氣志團が一発変換できたことにちょっとびっくりした。笑。
途中の清春調のラップがなんか好きだ。
ただこの曲に出てくる女が明らかに悠里じゃないのがちょっと残念といえば残念?
真打ちは風門寺悟郎くんの「放課後ジャーマンスープレックス」。
もう何も言うことはありません。
とりあえず、岸尾だいすけの俳優魂に泣いて下さいという曲。
この電波アイドルソングを彼はどんな顔で歌ったのだろうか。
うちの人は一番気に入ったみたい。
音楽的なことはよくわからないが、ある種の中毒性のある曲であることは間違いない。爆。
とりあえずこれで本格的に菅沼久義さんにハマりそうな予感。流石は元・ギゾク(声優アイドルユニット)。なかなかの歌唱力だし、声質もめっちゃ好き。
岸尾ラジオに出ないかなぁ……。
2007/07/25 (Wed)
一次創作関連
三度目のチャイムでようやくゆっくりドアが開いた。
「おはようございます!」
日向子サンタは、もちろんそこにはこの部屋の住人のどちらかが立っているものと信じ、元気よく挨拶した。
「あら……?」
しかし、日向子の視界には何故か誰もいなかった。
ドアを開けた人物は、実はもう少し下にいたのだ。
「……だあれ?」
何故か足元から可愛らしい声がする。
日向子はゆっくりと視線を下方へスライドさせた。
「まあ」
小さい男の子が日向子を見上げていた。
初めて見る子どもの筈だが、なんとはなしに見覚えがあるような気がする。
日向子と男の子はお互いに不思議そうな顔をして見つめ合っていた。
と。
「おいクソガキ、何勝手に開けと……」
奥から有砂が姿を見せたが、日向子の姿を見つけるなり、一気に顔を引きつらせた。
「お嬢……っ」
日向子は何気無く男の子と有砂を交互に見比べた。
似ている。
「有砂様……お子様いらっしゃったのですか??」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【2】
「……帰れ」
すっかり目をすわらせて、即座に玄関のドアを閉めようとする有砂に、日向子は少し慌てて、
「も、申し訳ありません! お待ち下さいませ!」
なんとかそれを制する。
「では、この子は一体どこの子なのですか?」
「それは……」
有砂は彼にしては珍しく当惑したように目を泳がせる。
「……まあ、ここではなんやから」
どうにか入室を許された日向子は、本来の目的はひとまずおいておいて、
「……それであの、この子はこの状態でよろしいですか?」
と、自分の膝の上を示す。
有砂にどことなく顔立ちの似た、謎の少年は日向子がソファに座るなり、その膝の上にどかっと頭を乗せて寝転がってしまったのだ。
「……このガキは生意気に……」
有砂はなんだか面白くなさそうだったが、
「まあ、おとなしゅうしとんのやったらええか……」
と溜め息をついた。
何やらリラックスした様子だったが、目線はじっと日向子の顔へ向いたままだ。
「お可愛らしい。甘えん坊さんですわね?」
にこっと笑いかけると、びくっと反応していきなり、うつ伏せ寝に切り替わった。
「……あら?」
「……何を照れとんねん、ガキのくせに」
「うふふ」
日向子は、少年の頭を撫で撫でしてあげながら、
「……お話、聞かせて頂けますか?」
と有砂を見やる。
有砂は相変わらず、何故かひどく気まずそうな顔をしている。
「……そいつは、菊人(キクヒト)。薔子さんと親父の子……やねんけど……今、ちょっと預かっとんねんか」
回りくどい言い方だったせいで日向子は一瞬考えてしまってから、
「では有砂様の弟様ですの!?」
思いきり驚いた。
「弟ゆうても、コレが生まれる頃にはオレは家を出とったから……ほとんど初対面やな。
しかも薔子さんともども半年近く前に沢城の籍抜けとるから、姓もちゃうし」
「そうですか、薔子様が引き取られたのですね」
日向子がそう言うと、何故か有砂はますます決まりの悪そうな顔になった。
「あの……何か、お気に障りまして?」
心配して尋ねると、
「……別にそういうわけちゃうけど……」
などと曖昧に答えながら、そんな有り様が自分でも嫌になったのか、一つ息をついて、切り出した。
「オレは、菊人を薔子さんから預かったんやで」
「?……ええ」
「ということは、未だに薔子さんと会おたりしとるんやで」
「はあ」
「はあ、て……お嬢は、別に気にならへんのか?」
「……はい、特に」
「……あ、そう」
「あの……気にしたほうがよろしいですか?」
「……別に結構や」
有砂はどこか不満そうに見えたが、日向子にはその理由がよくわからなかった。
だが本当は、有砂にも自分が苛立っている理由がよくわかっていなかった。
よくわからないまま無言の気まずい空気が流れ出し、
「……あの……」
日向子は何か別のことを尋ねようとしたが、その瞬間、いつの間にか仰向けになっていた菊人が、なんの前ぶれもなく口を開いた。
「……おねえちゃん、おとななのにおっぱいないの?」
言うが早いか手を伸ばして、もふ、と日向子の胸にタッチした。
「ぺったんこ」
色々な意味で大人二人は絶句した。
「このガキは……ホンマ……」
呆れ果てる有砂。一方、日向子はしばらく固まった後で、じんわり顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……ぺったんこ」
「密かに気にしとったんやな、お嬢……」
「……ぺったんこ」
あまりにも深く沈んでしまったAカップの令嬢に、流石の有砂も同情せずにはいられなかったようで、
「別に、そない気にすることないやろ……こいつの場合基準のハードル高いからな」
どうやらフォローらしき言葉を口にしたのだが、日向子はしょんぼりしたままじっと有砂を上目で見つめた。
「薔子様のお胸はそんなに豊かでいらっしゃるのですか……?」
有砂は一瞬間をおいて、
「……まあ……結構」
「……今、どんなだったか思い出してらっしゃいました?」
「っ、違っ……」
有砂はとっさにソファから若干腰を浮かせた。
「……冗談ですわ」
と、日向子は苦笑して見せた。
「あまりにもショッキングだったので、ちょっぴり八つ当たりしてしまいました。申し訳ありません」
有砂は黙って、一つ息を吐いてから、まるで取り繕うように座り直した。
「……まったく、特に気にならへんとかゆうて、案外気になっとるんちゃうやろうな、ジブン……」
口をつくのは文句だったが、何故か有砂は先刻までよりいくらか機嫌がよさそうに見える。
日向子は、そんな有砂をどこかとらえどころなく感じつつも、改めて充実しているとはお世辞にも言い難い胸に手を当てた。
「……やはり殿方はお胸が大きいほうがお好みなのでしょうか……?」
「……さあ、人によるんちゃうか」
「有砂様はいかがですか?」
「……別に」
有砂の口許に、意味深な笑みが浮かぶ。
「後腐れなくヤレるオンナやったら誰でも」
「有砂様!」
日向子は思わず菊人を見やった。
いつの間にか、膝上を占拠した大胆不敵な少年は少し身体を丸めて寝息を立てていた。
どうやら今の、幼児にはちょっと聞かせられない過激発言は耳に届いていないようだ。
日向子は少しほっとして、微笑した。
「けれど、今は違うのですわよね?」
「……ん?」
「蝉様からお聞き致しました。このところ有砂様が無断外泊せずに毎晩ちゃんと帰っておられると」
「……それは……」
何も不都合な話をしているわけではないのに、有砂は何故か居心地の悪そうな顔をする。
「……今は職探しで忙しいねんで。遊んでる暇がないだけや」
何故か言い訳を求める。
「なかなか癖が直りませんのね……?」
日向子は呟く。
「……癖?」
有砂はいぶかしげに反芻する。
「そのように天邪鬼に振る舞って、進んで誤解を受けようとなさいますでしょう?」
「……なんて?」
「本当はお心の温かい、真面目な方だと、人に知られるのがお嫌なのですか?」
「……また説教か……」
有砂は明らかに当惑している様子だったが、日向子は構わずに続ける。
「……薔子様とのこと、気にはならないかとお聞きになりましたでしょう?
本当言うと、お会いしたばかりの頃の有砂様を思い出すと、たくさん泣いた時のことがよぎって、胸が苦しくなります。
けれど、今はもう大丈夫です。有砂様は少しずつ本来のお姿に戻られようとなさってますものね」
有砂に言い訳の隙を与えないように、日向子は切れ間なく畳み掛ける。
「薔子様と連絡を取っていらっしゃったのも、菊人ちゃんとお会いになったのも、ご心配でいらしたからでしょう?
かつての妹様のような不幸が起きないように、見守ってらっしゃるのでしょう?
そのくらいはわたくしにとてわかりますわ」
日向子がなんとか遮られることなく全てを言い切ると、有砂は頭痛をこらえるように苦しげな表情で、片手で顔を覆った。
「……あんまり、オレを甘やかすな」
戸惑い、微かに震える声。
「……全然あかんねん。ガキ連れて帰ったんはええけど、何をしたらええかわからん。
こいつも何したい、とか一切言わへんし……」
「有砂様……」
「……優しくする、てどうしたらええんや?
……愛したいと思っても、オレには愛し方がようわからん」
それはようやく有砂からこぼれ落ちた、一欠片の真実の思い。
隠していた素直な言葉。
そしてそれ自体が、彼が素直になれない理由でもあった。
「焦らないで下さい、有砂様」
微かに垣間見えた素顔に、日向子は語りかける。
「……ゆっくり思い出せばよろしいではありませんか。お一人では難しければ、わたくしがお手伝い致しますわ」
有砂はしばしの沈黙の後、顔を覆っていた手をどかして、日向子を見やった。
「……お嬢には、みっともないところ見せてばっかりやな」
「……いいえ、また一つ有砂様のことがわかった気が致します」
そう言って微笑む日向子に、有砂もまた、小さく笑った。
「……オレもオレのことが少しわかった気ぃする」
「はい?」
「……自分が何を必要としとったんか、とかな」
「……あの?」
「まあええ……ところでジブン、今日は何しにきたんや?」
不意に問われ、日向子はすっかり忘れていたクリスマス企画の件を思い出した。
「実は……」
日向子はポラロイド撮影の許可を得たいということと、その代わりに何でも有砂の希望に応えたいということを、説明した。
「なるほどな……」
「はい、有砂様のお願いはなんでしょうか?」
有砂は特に迷うこともなく、即答した。
「八時に、薔子さんが迎えに来る……それまで、ガキのお守りを手伝ってくれるか?」
「ええ、もちろん……どの道この状態では立ち上がることもできませんし」
膝上のあどけない寝顔を見つめてくすくす笑う。
「……そういえば、わたくしや有砂様にもこのくらいの子どもがいてもおかしくないのでしたわね?」
「……そうやな。その前に、結婚せなあかんけどな」
「結婚……」
日向子にはまだ少し、リアリティのない言葉だった。
その相手といえば今まで伯爵以外考えられなかったが、しかし伯爵との結婚を今リアルに想像出来るかと聞かれればかなり難しい。
なんだか考え込んでしまう日向子だったが、有砂はそんな様を見て、意地悪く笑った。
「……まあ心配せんでも、世の中には『ぺったんこ』が好きなオトコもようさんおるからな」
「……ぺったんこ」
せっかく忘れていたことを蒸し返されて、日向子はまたしゅんとうなだれてしまった。
有砂は、一瞬笑みを打ち消して、小さな声で呟いた。
「……万が一行き遅れたら、オレが引き取ったってもええ」
日向子は顔をあげる。
「はい? ……何かおっしゃいましたか?」
「いや……ただの独り言や」
この極めて天邪鬼な男が、本当に素直になるにはやはりもう少し、時間がかかりそうだ。
《つづく》
「おはようございます!」
日向子サンタは、もちろんそこにはこの部屋の住人のどちらかが立っているものと信じ、元気よく挨拶した。
「あら……?」
しかし、日向子の視界には何故か誰もいなかった。
ドアを開けた人物は、実はもう少し下にいたのだ。
「……だあれ?」
何故か足元から可愛らしい声がする。
日向子はゆっくりと視線を下方へスライドさせた。
「まあ」
小さい男の子が日向子を見上げていた。
初めて見る子どもの筈だが、なんとはなしに見覚えがあるような気がする。
日向子と男の子はお互いに不思議そうな顔をして見つめ合っていた。
と。
「おいクソガキ、何勝手に開けと……」
奥から有砂が姿を見せたが、日向子の姿を見つけるなり、一気に顔を引きつらせた。
「お嬢……っ」
日向子は何気無く男の子と有砂を交互に見比べた。
似ている。
「有砂様……お子様いらっしゃったのですか??」
《第6章 11月のキャロル -May I fall in love with you?-》【2】
「……帰れ」
すっかり目をすわらせて、即座に玄関のドアを閉めようとする有砂に、日向子は少し慌てて、
「も、申し訳ありません! お待ち下さいませ!」
なんとかそれを制する。
「では、この子は一体どこの子なのですか?」
「それは……」
有砂は彼にしては珍しく当惑したように目を泳がせる。
「……まあ、ここではなんやから」
どうにか入室を許された日向子は、本来の目的はひとまずおいておいて、
「……それであの、この子はこの状態でよろしいですか?」
と、自分の膝の上を示す。
有砂にどことなく顔立ちの似た、謎の少年は日向子がソファに座るなり、その膝の上にどかっと頭を乗せて寝転がってしまったのだ。
「……このガキは生意気に……」
有砂はなんだか面白くなさそうだったが、
「まあ、おとなしゅうしとんのやったらええか……」
と溜め息をついた。
何やらリラックスした様子だったが、目線はじっと日向子の顔へ向いたままだ。
「お可愛らしい。甘えん坊さんですわね?」
にこっと笑いかけると、びくっと反応していきなり、うつ伏せ寝に切り替わった。
「……あら?」
「……何を照れとんねん、ガキのくせに」
「うふふ」
日向子は、少年の頭を撫で撫でしてあげながら、
「……お話、聞かせて頂けますか?」
と有砂を見やる。
有砂は相変わらず、何故かひどく気まずそうな顔をしている。
「……そいつは、菊人(キクヒト)。薔子さんと親父の子……やねんけど……今、ちょっと預かっとんねんか」
回りくどい言い方だったせいで日向子は一瞬考えてしまってから、
「では有砂様の弟様ですの!?」
思いきり驚いた。
「弟ゆうても、コレが生まれる頃にはオレは家を出とったから……ほとんど初対面やな。
しかも薔子さんともども半年近く前に沢城の籍抜けとるから、姓もちゃうし」
「そうですか、薔子様が引き取られたのですね」
日向子がそう言うと、何故か有砂はますます決まりの悪そうな顔になった。
「あの……何か、お気に障りまして?」
心配して尋ねると、
「……別にそういうわけちゃうけど……」
などと曖昧に答えながら、そんな有り様が自分でも嫌になったのか、一つ息をついて、切り出した。
「オレは、菊人を薔子さんから預かったんやで」
「?……ええ」
「ということは、未だに薔子さんと会おたりしとるんやで」
「はあ」
「はあ、て……お嬢は、別に気にならへんのか?」
「……はい、特に」
「……あ、そう」
「あの……気にしたほうがよろしいですか?」
「……別に結構や」
有砂はどこか不満そうに見えたが、日向子にはその理由がよくわからなかった。
だが本当は、有砂にも自分が苛立っている理由がよくわかっていなかった。
よくわからないまま無言の気まずい空気が流れ出し、
「……あの……」
日向子は何か別のことを尋ねようとしたが、その瞬間、いつの間にか仰向けになっていた菊人が、なんの前ぶれもなく口を開いた。
「……おねえちゃん、おとななのにおっぱいないの?」
言うが早いか手を伸ばして、もふ、と日向子の胸にタッチした。
「ぺったんこ」
色々な意味で大人二人は絶句した。
「このガキは……ホンマ……」
呆れ果てる有砂。一方、日向子はしばらく固まった後で、じんわり顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……ぺったんこ」
「密かに気にしとったんやな、お嬢……」
「……ぺったんこ」
あまりにも深く沈んでしまったAカップの令嬢に、流石の有砂も同情せずにはいられなかったようで、
「別に、そない気にすることないやろ……こいつの場合基準のハードル高いからな」
どうやらフォローらしき言葉を口にしたのだが、日向子はしょんぼりしたままじっと有砂を上目で見つめた。
「薔子様のお胸はそんなに豊かでいらっしゃるのですか……?」
有砂は一瞬間をおいて、
「……まあ……結構」
「……今、どんなだったか思い出してらっしゃいました?」
「っ、違っ……」
有砂はとっさにソファから若干腰を浮かせた。
「……冗談ですわ」
と、日向子は苦笑して見せた。
「あまりにもショッキングだったので、ちょっぴり八つ当たりしてしまいました。申し訳ありません」
有砂は黙って、一つ息を吐いてから、まるで取り繕うように座り直した。
「……まったく、特に気にならへんとかゆうて、案外気になっとるんちゃうやろうな、ジブン……」
口をつくのは文句だったが、何故か有砂は先刻までよりいくらか機嫌がよさそうに見える。
日向子は、そんな有砂をどこかとらえどころなく感じつつも、改めて充実しているとはお世辞にも言い難い胸に手を当てた。
「……やはり殿方はお胸が大きいほうがお好みなのでしょうか……?」
「……さあ、人によるんちゃうか」
「有砂様はいかがですか?」
「……別に」
有砂の口許に、意味深な笑みが浮かぶ。
「後腐れなくヤレるオンナやったら誰でも」
「有砂様!」
日向子は思わず菊人を見やった。
いつの間にか、膝上を占拠した大胆不敵な少年は少し身体を丸めて寝息を立てていた。
どうやら今の、幼児にはちょっと聞かせられない過激発言は耳に届いていないようだ。
日向子は少しほっとして、微笑した。
「けれど、今は違うのですわよね?」
「……ん?」
「蝉様からお聞き致しました。このところ有砂様が無断外泊せずに毎晩ちゃんと帰っておられると」
「……それは……」
何も不都合な話をしているわけではないのに、有砂は何故か居心地の悪そうな顔をする。
「……今は職探しで忙しいねんで。遊んでる暇がないだけや」
何故か言い訳を求める。
「なかなか癖が直りませんのね……?」
日向子は呟く。
「……癖?」
有砂はいぶかしげに反芻する。
「そのように天邪鬼に振る舞って、進んで誤解を受けようとなさいますでしょう?」
「……なんて?」
「本当はお心の温かい、真面目な方だと、人に知られるのがお嫌なのですか?」
「……また説教か……」
有砂は明らかに当惑している様子だったが、日向子は構わずに続ける。
「……薔子様とのこと、気にはならないかとお聞きになりましたでしょう?
本当言うと、お会いしたばかりの頃の有砂様を思い出すと、たくさん泣いた時のことがよぎって、胸が苦しくなります。
けれど、今はもう大丈夫です。有砂様は少しずつ本来のお姿に戻られようとなさってますものね」
有砂に言い訳の隙を与えないように、日向子は切れ間なく畳み掛ける。
「薔子様と連絡を取っていらっしゃったのも、菊人ちゃんとお会いになったのも、ご心配でいらしたからでしょう?
かつての妹様のような不幸が起きないように、見守ってらっしゃるのでしょう?
そのくらいはわたくしにとてわかりますわ」
日向子がなんとか遮られることなく全てを言い切ると、有砂は頭痛をこらえるように苦しげな表情で、片手で顔を覆った。
「……あんまり、オレを甘やかすな」
戸惑い、微かに震える声。
「……全然あかんねん。ガキ連れて帰ったんはええけど、何をしたらええかわからん。
こいつも何したい、とか一切言わへんし……」
「有砂様……」
「……優しくする、てどうしたらええんや?
……愛したいと思っても、オレには愛し方がようわからん」
それはようやく有砂からこぼれ落ちた、一欠片の真実の思い。
隠していた素直な言葉。
そしてそれ自体が、彼が素直になれない理由でもあった。
「焦らないで下さい、有砂様」
微かに垣間見えた素顔に、日向子は語りかける。
「……ゆっくり思い出せばよろしいではありませんか。お一人では難しければ、わたくしがお手伝い致しますわ」
有砂はしばしの沈黙の後、顔を覆っていた手をどかして、日向子を見やった。
「……お嬢には、みっともないところ見せてばっかりやな」
「……いいえ、また一つ有砂様のことがわかった気が致します」
そう言って微笑む日向子に、有砂もまた、小さく笑った。
「……オレもオレのことが少しわかった気ぃする」
「はい?」
「……自分が何を必要としとったんか、とかな」
「……あの?」
「まあええ……ところでジブン、今日は何しにきたんや?」
不意に問われ、日向子はすっかり忘れていたクリスマス企画の件を思い出した。
「実は……」
日向子はポラロイド撮影の許可を得たいということと、その代わりに何でも有砂の希望に応えたいということを、説明した。
「なるほどな……」
「はい、有砂様のお願いはなんでしょうか?」
有砂は特に迷うこともなく、即答した。
「八時に、薔子さんが迎えに来る……それまで、ガキのお守りを手伝ってくれるか?」
「ええ、もちろん……どの道この状態では立ち上がることもできませんし」
膝上のあどけない寝顔を見つめてくすくす笑う。
「……そういえば、わたくしや有砂様にもこのくらいの子どもがいてもおかしくないのでしたわね?」
「……そうやな。その前に、結婚せなあかんけどな」
「結婚……」
日向子にはまだ少し、リアリティのない言葉だった。
その相手といえば今まで伯爵以外考えられなかったが、しかし伯爵との結婚を今リアルに想像出来るかと聞かれればかなり難しい。
なんだか考え込んでしまう日向子だったが、有砂はそんな様を見て、意地悪く笑った。
「……まあ心配せんでも、世の中には『ぺったんこ』が好きなオトコもようさんおるからな」
「……ぺったんこ」
せっかく忘れていたことを蒸し返されて、日向子はまたしゅんとうなだれてしまった。
有砂は、一瞬笑みを打ち消して、小さな声で呟いた。
「……万が一行き遅れたら、オレが引き取ったってもええ」
日向子は顔をあげる。
「はい? ……何かおっしゃいましたか?」
「いや……ただの独り言や」
この極めて天邪鬼な男が、本当に素直になるにはやはりもう少し、時間がかかりそうだ。
《つづく》